輸入許可をもらい、港からコンテナを引き取ります。港から引き取った後は、コンテナから商品を取り出します。これを「デバンニング(デバン)」と言います。そこで、この記事では、デバンの意味、デバンオントラック、デバンニングレポート、注意点、流れ、効率的な作業方法をご紹介していきます。
デバン=コンテナから商品を取り出す作業
デバン作業とは?
デバンは、英語名「Devanning」の略です。通称、デバンと言われており、コンテナから貨物を取り出す作業です。ちなみに、コンテナに貨物を詰めることを「バンニング」といいます。また、デバンには、大きくわけて次の2つがあります。
- 保税デバン(輸入許可前)
- 輸入許可後のデバン
一般的なイメージのデバンは、2番の輸入許可後の物です。それでは、それぞれを詳しく確認していきましょう!
1.保税デバン(輸入許可前)/デバンニングレポート
保税デバンとは、輸入の許可を受ける「前」に、保税地域と呼ばれる特殊な場所で、専門の業者によりデバンをすることです。輸入許可前に外国貨物を取り出すことが特徴です。=LCL形態の貨物を保税倉庫に保管するために行います。この保税デバンに関係するキーワードが「搬入日」「デバンニングレポート」及び「リマーク」です。
搬入日とは、保税デバンが完了した後、それを貨物に保管した上でナックス(コンピュータシステム)に登録する日を指します。輸入者は、この搬入がされる前でに予備申告などをし、税関審査を終わらせておきます。これにより、搬入があがると同時に輸入許可を取得できます。
また、この保税デバンと関係するのが「デバンニングレポート」です。デバンニングレポートは、貨物をデバンしたときの状態を示します。デバン時に何らかのダメージが見つかったときは、このデバンニングレポートにダメージ内容(リマーク)が記入されます。
貨物を受け取ったときにダメージが見つかったら?
もし、貨物を受け取ったときにダメージがわかったら、次の手順で手続きします。
1.取引がある通関業者に依頼して、デバンニングレポートを取り寄せてもらう。
2.貨物のリマークを確認する。リマークとダメージ内容をチェック。
3.運送責任が濃厚な場合は、クレームノーティスの作成及び保険求償をする。
保税デバンのスケジュールは?
本船や港、指定の業者によりもよりますが、入港日の翌々日にデバンが完了し、搬入報告が上がるところが多いです。もし、急ぎの場合は、あらかじめ「HDS」のオプションを付けたり、大阪揚げや門司港揚げのフェリー船を使ったりするのが良いです。
輸入許可前のデバン代金はどうなるの?
保税デバンの料金は、アライバルノーティスにある「CFSチャージ」に含まれます。ちなみに、輸入許可前の外国貨物に対する作業なので、消費税は免税扱いです。
2.輸入許可後のデバン
一方、輸入許可後に行うデバンとは、税関から許可を受けた後、コンテナターミナルから指定の場所まで輸送した後に行うことです。以降は、この輸入許可後のデバンをする場合の注意点を確認してきましょう!
輸入許可後のデバン
輸入許可後のデバン作業には、大きく分けて次の2つのがあります。
- 他社デバン
- 自社デバン
1.他社デバン
他社デバンとは、他社の所有する倉庫などでデバン作業をした後、指定の配送先に貨物を届けることです。これと関連するのが「デバンオントラック」です。
デバンオントラックとは?
デバンオントラックとは、デバン後に、そのままトラックに「オン」して、各配送先に納品する方法です。後述するデバン作業やドレージ代金などを削減するときに便利です。デバンオントラックは、港近くのドレージ屋が提供しています。もし、通関業者に依頼をしている場合は「デバンオントラックを希望」と伝えて下さい。
ただし、通関業者に依頼をする場合は、デバンオントラックにも手数料がかかるため、自らドレージ屋さんを開拓して、通関業者は、通関業務。そこから先は、自社手配のドレージ屋に依頼するなど、依頼のすみわけをした方がいいと思います。特に月間の取り扱い量が多い所は、十分、交渉の対象です。
他社デバンの費用は?
業者、港等により異なりますが、おおむね1000円~1500円/M3の料金が多いです。例:20M3の場合=1000×20=20000円
2.自社デバン
港で輸入許可を取得、その後、自社の倉庫や敷地までドレージをした後にするのが「自社デバン」です。おそらく、この記事をお読みになる、あなたが想像するデバンです。自社デバンをする場合の注意点は次の通りです。
- ドレージ料金
- フリータイム内での引き取り
- デバン環境とデバン人員の確保
- 貨物ダメージとコンテナダメージ
1.ドレージ料金
ドレージ料金とは、港から指定の倉庫までの往復送料です。この配送料金は、ラウンド制になっており、昭和に制定されたタリフに対して、各荷主ごとに設定する料率をかけることできまります。
タリフ×荷主ごとの料率=ドレージ代金
例えば、コンテナターミナルからの距離が片道30キロの場合は、タリフのラウンド60を確認します。ただし、タリフを見ても、あなたの料金は分かりません。タリフに表示されている金額に「50%」や「55%」など、荷主毎の料率を適用して、ドレージ料金が決まります。ちなみに、このドレージ代金は、輸入許可後の内国貨物なので、消費税は課税対象です。
2.フリータイム内の引き取り
輸入許可を受けた貨物は、フリータイム期間内は、無料で引きとれます。もし、フリータイムを過ぎると「デマレッジ」(追加の費用)が掛かるため注意しましょう。ちなみに、デバン後の空コンテナの戻し期間にも制限があります。この期間を過ぎると「ディテンションチャージ」がかかります。
3.デバン環境とデバン人員の確保
自社デバンをするには、施設の用意とデバン人員の確保も必要です。この点は、後述で詳しく解説します。
4.貨物ダメージとコンテナダメージの処理
自社デバンをするときは、貨物のダメージとコンテナのダメージに気を付けます。想定されるダメージは、次の2つです。
- 貨物に対するダメージの有無(輸送上の瑕疵/かしの認定)
- デバン作業中のコンテナへのダメージ
もし、コンテナを開封したときに「貨物が水濡れ」をしていたり、何らかのダメージが発生していたりしたときは、クレームノーティス及び保険求償の手続きが必要です。また、これとは別に、あなた又は、あなたの同僚によるコンテナへダメージを与えることもあります。コンテナは「EIR」により管理されており、書類と現物に差異が見つかると賠償請求の対象です。
以上が自社デバンをする上での注意です。なお、この部分は後述する「自社デバン7つのポイント」でも詳しく解説していきます。
他社と自社デバンの比較ポイント
良い所 | 悪い所 | |
他社デバン |
| デバン料金が発生する。(1000円~1500円/M3)
|
自社デバン |
|
|
他社、自社を選ぶ場合は、両社の良い所と悪い所を総合的に考えて選ぶことが望ましいです。港からのドレージ代金も意外に高いです。また、作業人員の確保も意外に大変です。この点を総合的に考えると、必ずしも「自社デバンが安い」と考えるのは、間違いです。
自社デバン7つのポイント
デバンは、コンテナ輸送されてきた商品を外に出す作業です。このデバン作業を終えると、輸入取引はすべて完了します。この「商品出し」を行うときは、いくつか気をつけるポイントがあります。それが次の7つのポイントです。
- デバン環境を整える。
- デバンする場所に制限なし
- 貨物ダメージが見つかったら報告
- ドレーの運転手は手伝わない。
- 敷地内にコンテナを入れやすいかを考える。
- デバンの作業場とコンテナの高さが同じだと理想
- デバン時間は、原則2時間以内
1.デバンの環境を整える。
デバン作業をするときは、作業しやすい環境を整えます。環境を整えない作業は事故の原因です。
例えば、作業着に安全靴、ヘルメットは当然です。また、真夏日などはコンテナ内が高温になりやすいです。この場合の対策には、コンテナの上から水をかけて内部を冷やします。もちろん、作業者自身の水分補給も大切です。
2.デバン場所に制限なし。
輸入許可後のコンテナは、どこでデバンしても問題はありません。すでに輸入許可を受けている国内貨物だからです。一般的には、自社の倉庫などでデバンを行う方が多いですが、ときには、ただの空き地でデバンをする方もいます。ただし、いずれの場合も、コンテナなどがすべて自分の土地、又は、他者の敷地内(借りている)ですることが条件です。公道上は、一切認められていません。
3.貨物ダメージが見つかったら報告
デバンをしていると、何らかの原因で積み荷にダメージがあります。この場合は、輸入保険の対象です。もし、ダメージが見つかった場合は、できるだけ速やかに写真などを取り、保険会社に「求償請求(保険を請求する事)」します。これは何よりも優先すべきことです。一旦、全てのデバン作業をストップして、保険会社(通関業者等)に対処方法を確認します、勝手なことをすると、保険の適用が拒否されます。
コンテナダメージ2つの原因
- 輸出国でのバンニング(コンテナ詰め)のときに、ダメージがあった。
- 2つめは、船の輸送中にダメージが発生した。
船の輸送中にダメージが発生する原因は、船の揺れと、コンテナ自体の穴あきなどがあります。よくコンテナが水濡れしているなどの現象は、この穴あきが原因です。この場合は、目視での確認は当然のこと、コンテナのEIR(機器受渡証)を確認します。
機器受け渡し証には、コンテナのダメージ項目が記載されています。この書類と現物での状況を合わせると、保険が認められやすくなります。また、このとき、合わせて船会社(フォワーダー)に対して「クレームノーティス」を提出します。これで船会社(フォワーダー)との間に「貨物に関する補償を請求している状況」として明示できます。いずれにしろ、何よりも早く行動することが大切です。
関連記事:貨物が水濡れしている!? コンテナ輸送時に頻発するトラブル事例と対処方法
4.トラックの運転手は手伝わない。
これもよく勘違いをする点です。コンテナを運んできた運転手は「コンテナを納品先につける」ことが仕事です。そのため、デバン作業は一切手伝いません。というか、手伝う義務もないのです。これを勝手に拡大解釈して「なぜデバンを手伝わない」と怒る人がいます。→勘違いはやめましょう!
5.敷地内にコンテナを入れやすいかを考える。
コンテナはドレーと呼ばれるトラックに引っ張られてきます。あなたの作業場まで引っ張ってきたドレーは、最後にバッグで停車させます。その際にドレーがバッグしやすい環境を整えます。コンテナが入る付近に余分な物はありませんか。ドライバーの気分になって「バッグで入れやすいか」を考えてください。この点については、次の動画が参考になります。
6.作業場はドレーの車体と同じ高さが理想
コンテナは、ドレーの車体上に乗せられています。基本的に、車体からコンテナを降ろさずにデバンをします。そうなると、車体の高さだけコンテナが上にあります。
7.デバン時間は、原則2時間
デバン作業は、コンテナが到着してから原則で2時間以内に終わらせるルールがあります。
例えば、2020/6/17日の9:00にコンテナを到着したとします。この場合、デバンは2時間後の11:00時までに終わらせなければなりません。もし、この時間をオーバーすると、30分刻み、または一時間刻みで3000円/時間の待機料金が発生します。
この待機料金を考えると、デバンはできるだけ多くの人員を投入して、短い時間で完了させます。デバン時間が長くなるほど、待機料金がどんどんと加算されていきます。もし、あなたの会社があまり人員が確保できないのであれば、便利屋などにスポットでの依頼も検討します。
便利屋に依頼した場合の料金例:
- 二人を2時間
- 出張料金:3000×2=6000円
- 作業料金 3000円(一時間×一人)×4=12000円
合計で18000円ほどです。この料金をデバン作業のスポット料金として判断するのかは、あなたの考え方によります。
デバン作業の手順とコツ
最後に、実際のデバン作業の流れ、効率的にデバンをするためのコツをご紹介していきます。
- コンテナが到着する
- 特殊用具で封印を解除する。
- 後ろの扉を開ける。
- デバンを開始する。
- 完了
1.コンテナが到着する。
港からコンテナが到着します。あらかじめ人員を集めてデバン作業の待機をしておきます。ドライバーにコンテナを付ける位置を指示します。理想は、コンテナと同じ高さになるプラットフォームにつけることです。もし、プラットフォームがない場合は、次の2つの方法があります。
- コンテナスロープを導入
- パレットを活用する。
1.コンテナスロープを導入
コンテナスロープを使うと、フォークリフト等で効率的に荷下ろしができます。
2.パレットを使う。
あまりお勧めはしませんが、パレットを使い、コンテナの高さと同じ「台」を作りあげます。手順は、次の通りです。
- コンテナの入り口辺りに、パレットを積み上げる。高さは、コンテナの床と同じ。これを2セット用意する。
- コンテナの中に入り、貨物を積んでいるパレットの上に乗せていく。最低でも二人
- パレットが一杯になったら、一つ目のパレットをフォークリフトで移動。パレットを移動している最中に、もう一方のパレットに商品を積み上げていく。
- ある程度、荷下ろしが終わると、コンテナの後方にスペースができる。以降は、ここにパレットをのせて商品を積み込む。
2.特殊用具で封印を解除する。
コンテナは、荷主や税関以外の者が開封できないように、輸出国でシール(封印)をします。コンテナ到着後、大きなカッターで開錠します。以下がコンテナシールです。壊すと元に戻せない仕組みです。
3.後ろの扉を開ける。
シールの開封が終わったら、ドライバーが後ろの扉を開けてくれます。このとき、ドアの開封と同時に後方部分が荷崩れする可能性があるため十分に注意します。
4.デバンを開始する。
デバンを開始します。デバン作業は、標準作業時間として二時間が設定されています。つまり、これ以上、コンテナを留め置くと、ドレージ会社から「待機料金(一時間3000円前後)」が請求されます。ある意味、時間との勝負なので注意しましょう!もし、二時間以内で終わらせられないときは、便利屋などを検討します。
デバンは、大きく分けると次の2つの方法があります。
- 手下ろし
- フォークリフト
1.手おろし
デッドスペースを最小化するために、あえてパレット積みせず、ダンボールに入れることがあります。この場合は手下ろしをしていきます。手下ろしは、意外にきついです。真夏は、コンテナ内部の温度が非常に高くなります。そのため、会社によっては、コンテナの上から水をかけて内部温度を下げるところもあります。
効率的な手下ろしの方法は、パレットの活用にあります。以下に紹介する動画(2つめの動画)を見ていただければわかりますが、手下ろしした商品をパレットの上に置いていますね!これがポイントです。
2.フォークリフト
フォークリフトを使う場合は、コンテナ高さを考慮して適切な物を選びます。当然、コンテナの内寸以上の高さがあるフォークリフトを使えば、コンテナを壊します。コンテナを破損すると、EIR OUT と比較して、ダメージが検出されるので、船会社(フォワーダー等)から修理代金等を請求されます。
デバン作業の様子
フォークリフトによるデバン作業例
手下ろしによるデバン作業の様子
- ドライバーは、デバン作業を手伝わない。
- 人員が必要であれば便利屋の活用も一つの方法
- 標準デバン時間は二時間。それ以降は待機料が発生する。
- フォークリフトを使うときは、コンテナの内寸に注意
- コンテナを破損すると、賠償請求の対象
- 夏場のデバンは非常にきつい。水分を取るなどして熱中症に気を付けよう!
- 手下ろしは、パレットをうまく活用することがポイント
5.完了
デバンが完了したら最後に掃き掃除をします。梱包材やラッシング等もすべて取り除き「空バン」の状態にします。その後、ドライバーに伝えて、空コンテナを港に返しに行ってもらいます。
ドライバーは、港に到着するとゲートにてEIRを提出します。これが「EIR IN」です。ゲートには、コンテナの破損をチェックする専門員が一つ一つコンテナをチェックします。このとき、EIR OUT(コンテナ場を出た時の状態)と EIR IN(コンテナ場に戻ってきた)の差を確認します。
もし、EIR OUTのときに無かったダメージ等が見つかった場合は、荷主によりコンテナダメージがつけられたと判断し通関業者等を通して連絡がきます。
以上、デバン完全ガイドでした。
余談:デバン専用ロボの誕生
最近は、デバン作業から先の部分(倉庫管理)等でロボットが活躍するようになっています。詳しくは、以下の動画をご覧ください。
まとめ
デバンに関する決まりごとを説明してきました。デバンは、コンテナから商品を出す作業です。しかし、この作業を効率的に行うことも輸入ビジネスのカギだと思います。もし、このデバンを行えないと思うのであれば、輸入当初から「LCL(混載)」として行います。この場合、あなたの会社には、デバンされた後の貨物が到着します。ただし、やはりFCL(コンテナ)で輸入するときより割高になるのがネックです。
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