RCEPは中国式協定? 世界経済の救世主? 各国メディアの反応

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    2020年11月、世界最大規模の自由貿易圏を実現する協定「RCEP(地域的な包括的経済連携協定、アールセップ)」に参加各国が合意、署名した。参加国は、東南アジアのASEAN加盟10カ国に加えて、中国、韓国、日本、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国だ。署名後、参加各国は、それぞれの議会での承認段階に入っている。

    交渉のテーブルに着いたものの不参加となったのは、インドと台湾だ。インドは交渉途中で離脱し、今のところは不参加となっている。また台湾も参加を希望していたが、中国の圧力があったとして加盟していない。

    さて、RCEPに関する各国メディアの記事からは、国内事情や隣国との関係など、それぞれの事情や思惑が見え隠れする。また加盟していないインドの批判は、RCEPの弱点を鋭く指摘する。各国メディアが見るRCEPの長所と短所をまとめたい。

    パンデミックからの再建 しかし中国主導に批判も

    中国:世界のリーダーを自負 大規模な輸送ネットワーク構築も

    中国は、RCEPの参加によって世界貿易における存在感を高め、リードしていく強い姿勢を見せている。このことから、中国共産党傘下にある国内大手新聞メディアは、いずれもRCEPの宣伝に終始している。それらの記事には、中国がRCEPの実施を主導し、その推進が同国の解放と拡大、そして改革を促進するという共産党の謳い文句が踊っている。

    しかしながら、中国メディアが発信するニュースからは喧伝だけでなく、以下のような今後の具体的なビジョンや準備状況も伺える。

    長所:原産地規則の明確化

    RCEPの大きな利点は、取引全体の関税の免除や引き下げだけではない。生産品の原産地を特定して関税の免除などが受けられる「原産地規則」において、より原産地の幅を広げられる「累積規定」などのきめ細やかなルールを用いることができる。このルールは、参加国の貿易関係をより促進し、サプライチェーンを安定させ、産業の発展につなげられると伝えている。この「原産地規則」の明確化については、オーストラリアなど他国も評価しているポイントだ。

    準備状況:輸送ネットワークの充実、中小零細企業のサポート

    中国政府は、RCEPに署名後、すぐに輸送ネットワークの充実に着手している。今年1月には、日本車の大連港経由の海上輸送ルートを新設した。それまでは日本から中央アジア諸国に輸送されるまで80日以上かかっていたが、このルートで30日以内の輸送が可能になり、コスト削減も実現している。中国政府は、2035年までに、近隣諸国や主要な国際都市に2~3日で商品を届けることができるグローバルなロジスティクスサービスを構築する計画を発表している。

    政府はまた、RCEPの実施のためには、大企業だけでなく、特に中小零細企業が制度を理解する必要性を強調している。そのため、協定の規定や関税、原産地証明書などの手続きを学ぶためのトレーニングプログラムを計画している。

    韓国:市場の多様化に期待 日本との関係は?

    韓国では、長期的な利益の獲得には懐疑的な声もあるが、概ね前向きに期待する声が優勢だ。

    長所:輸出市場の多様化、日本との関係改善

    パンデミックによる経済衰退からの回復や、アメリカと中国間の貿易の増加によって被った韓国経済の損失からの回復に大きな期待を寄せている。そもそも韓国は、輸出の40%をアメリカと中国に依存しているため、ASEAN諸国を含めることで、輸出市場を多様化したいと考えている。

    また日本同様に、RCEPが今後の日韓関係に影響するという見方がある。両国は2019年に、歴史的問題が発端となった貿易紛争に突入した。しかし今回のRCEPをきっかけに経済関係に前向きな変化をもたらす可能性もある。つまり韓国は米中依存から脱却するためにも、日本との関係を改善することが利益になるだろうという見方だ。

    短所:ライバル日本の利益が大きい?

    しかし両国は、過去にFTAに署名したことがないため、利益を得られるかどうかは不確実という声もあり、さらには、日本製品の韓国による輸出関税の大幅な免除によって、日本の方が大きな利益を得るというリスクにさらされるという懐疑論も強い。韓国の貿易大臣は、日本に対して競争力が低い材料、部品、設備などの品目を拘束的関税から除外することが必須だと述べており、日本対策を練っているようだ。

    産業別の見通し:電気業界が大歓迎

    • 車:韓国車はASEAN市場において、日本の品質や中国の低価格と競わなければならないため、長期的な利益には懐疑的な声が強い。
    • 電化製品:RCEPの実施によって最も期待される産業。例えば韓国大手電機メーカーLGは、日本の関税が免除される事によって、競争力の向上を見込んでいる。
    • 農産物:最大の競争相手は中国、オーストラリア、NZであり、韓国の優位性は依然として低い。そのため、韓国政府は農水産物の関税を、既存のレベルで維持することを決定している。

    オーストラリア:期待高くも、中国には慎重な姿勢

    オーストラリアも、RCEPに対しては前向きな姿勢を取っている。しかし近年、中国と激しい貿易対立を繰り広げてきたこともあり、中国による影響をしっかりと管理する必要があるとする慎重な姿勢も見せている。

    長所:経済再建、原産地規則の明確化

    雇用の1/5が貿易に依存しているオーストラリアは、RCEPによる貿易推進によって、ロックダウンによる経済的な被害からの再建が大きく期待できる。

    また同国がRCEPに関して進歩的だと評価している点は、原産地規則における累積規定だ。RCEP参加国の原材料を使用している商品は、従来の自由貿易協定では関税の対象になることもあったが、RCEPでは自国で製造されたものとしてカウントできるため、作業が簡素化でき、また利益を生み出すことができる。

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    その他、中国との貿易対立によって途絶えた対話が再開するだろうという期待も強い。

    短所:中国依存の深まり

    オーストラリア国内では、RCEPに対してさほど期待できないとする見方も強い。RCEPは「欧州連合のアジア版」とも呼ばれるが、「それは誇張だ」とバッサリと切り捨てている。オーストラリアは日本と同様、自国の農業を守るために農産物に対する引き下げはしないと決定している。また、他の分野における改善も段階的なものでしかなく、同国にとっての具体的なメリットが不明瞭だ。また中国に対する姿勢も慎重だ。RCEPは中国が近隣諸国とのサプライチェーンの統合を深める施策であり、参加各国が中国への経済的依存から逃れられないことを指摘している。

    インド(未加盟): 強い批判が優勢、しかし経済衰退の懸念も

    インドは、日本をはじめとする加盟各国によって復帰を促されていたが、交渉のテーブルに復帰することはなかった。離脱理由は、中国や東南アジアなどから安価な輸入品が大量に流れ込み、自国産業に悪影響を及ぼすという点だ。

    特に近年、軍事衝突を発端とする中国製品ボイコットが発生するなど、中国との対立を深めるインドは、中国主導のRCEPを「中国式の貿易協定であり効果はない」と切り捨てる。

    一方で、インド国内では、日本をはじめとする中国以外の加盟国との協力関係の重要性も指摘されており、RCEPに参加しないというインドの決定を「経済的失敗」とも批判されている。

    短所

    • 基本関税がすでに低くなっている状況での関税引き下げは意味がない。また、中国の悪い素行を阻止できない。例えば、中国に輸入する日本の機械製品に対する関税をさらに引き下げようとし、オーストラリアワインにたいする関税の圧力をかけるなどだ。
    • 各国は、懲罰的な関税を課すこともできる。
    • 中国に不利な案件は手付かずのままで、透明性に欠ける。中国国営企業への行きすぎた補助金のほか、国家間紛争、労働基準について言及していない。

    加盟国以外からの反応:英BBC 恩恵を受けるのは誰か?

    イギリス公共放送BBCは、RCEPを次のように評価している。

    • RCEPはその規模の大きさが特徴。重要性が高い。
    • 原産地規則における累積規定は大きなメリット。既存の自由貿易協定には、累積規定がない場合もある。

    それでは、どの加盟国が恩恵を受けるとみているのだろうか?

    BBCは、中国、日本、韓国が、どの加盟国よりも利益を得るだろうと明言している。ASEAN諸国にとっては、経済的利益がごくわずであることや、反中国感情から、各国政府による批准が遅れる場合もあるだろうとも指摘している。

    まとめ

    各国メディアの反応から見えるRCEPのポイントは以下の通りだ。

    期待ポイントまとめ:
    • パンデミックからの経済回復
    • 隣国との関係性改善
    • 原産地規則における累積規則の適用
    • (特に中国の)輸送ネットワークの拡大
    懸念ポイントまとめ:
    • 各国の中国依存の深まり
    • 中国に不利に働く案件の放置
    • 国による格差

    このように、中国が主導的立場を取っていることで、メリットもデメリットもあるのは確かだ。しかしBBCが伝える通り、日本には大きなメリットがあると期待されている点は見逃せない。

    ちなみに本協定は、ASEAN6カ国とその他3カ国以上の批准後に発効されるため、今年度中の発効が見込まれている。

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    この記事の参考サイト
    • Xinhua Net, China to advance domestic efforts for implementing RCEP agreement
    • South China Morning Post, China ratifies RCEP trade deal three months ahead of schedule, urges other members to follow suit
    • China Daily, New rules to bolster China’s trade, ODI
    • Chia Daily, New transport channel boosts trade among RCEP members
    • Global Times, China plans mega transport network to boost trade, economic growth
    • Asia Power Watch, South Korea’s signing of RCEP and future implications
    • Sydney Morning Herald, Regional trade deal offers a chance to work constructively with China
    • Financial Review, Australia looks beyond China with world’s largest trade deal
    • Foreign Policy, Cutting Through the Hype on Asia’s New Trade Deal
    • The Economic Times, View: India’s absence from RCEP raises questions about its role in Asia
    • BBC, RCEP: Asia-Pacific countries form world’s largest trading bloc
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