この記事では、輸入と原産国の表示義務について解説していきます。
海外から商品を輸入し、国内販売を考えたとき、景品表示法の一つである「原産国表示」は重要です。原産国表示とは「Made in~●●」など、該当の商品が生産された国を示します。この原産国表示の内、ここでは、輸入通関と原産国表示義務の関係を解説していきます。

輸入ビジネスと原産国の表示義務
原産国の表示義務に関する基本制度
海外産の商品は、基本的に原産国を示す義務があります。但し、これは、必ずしも輸入通関時に求めていないです。*特定品目(例:牛肉、医薬品、特定の安全規制対象品目)は表示義務がある。原産国表示のルールは、関税法71条などに規定されています。
ポイントは2つです。
- 通関時に必ずしも原産地表示を求めていない。
- しかし、税関は、誤認を表示させる恐れがある場合は、訂正させられる。
実は、この原産地表示の問題は、実際の通関時でも度々、問題となります。特に、これまで海外通販の経験しかない方が指摘されるケースが多いです。
原産国表示をめぐる基本制度
その他の法律、制度は以下の通りです。
法制度 | 主な規定内容 | 適用場面 |
---|---|---|
関税法 第71条 | 原産地を偽った表示や誤認を生じさせる表示がある貨物は輸入許可を受けられない。税関長は訂正・積み戻しを命じることができる。 | 輸入通関時 |
関税暫定措置法・施行令・規則 | 原産地規則(原産品認定・実質的変更基準)を定める。但し、原産国表示とは目的が異なります。 | 関税優遇制度の利用時 |
景品表示法(不当表示防止法) | 消費者に誤認を与える表示を禁止。原産国表示も対象。 | 国内販売時 |
食品表示法・食品表示基準 | 輸入食品には「原産国名」の表示を義務付け。 | 食品分野 |
家庭用品品質表示法等 | 品質表示の一環として原産国名を併記することが多い。 | 日用品・衣類等 |

これらの制度は目的が異なり、「通関上の原産地」と「販売表示上の原産国」が一致しないケースもあります。=通関と販売の双方からチェックが必要
通関時の原産地表示と実務の流れ
1. 通関段階の基本的考え方
通関時点で、貨物に「Made in〜」などの表示が必須ではありません。しかし、誤認を招く表示がある場合は輸入を許可しないとされています(関税法第71条)。
2. 指摘を受けた場合の対応手順
- 税関による通知:原産地表示に誤認の恐れがある場合、訂正・抹消または積み戻しを命じられます。
- 保税地域での訂正作業:税関監督下でラベルの貼り替え・抹消作業を実施。
- 再確認・輸入許可:訂正後に再審査を受け、輸入許可が判断されます。
これらの作業は保税倉庫内でしか行えず、費用もすべて輸入者負担です。そのため、輸出国側で正しい表示を完了させるのが現実的です。
3. よくある指摘事例
- 実際は中国製なのに、包装にイタリア国旗や都市名を印刷していた。
- インボイス・ラベルの原産国が一致していなかった。
- 表示ラベルが輸送中に剥がれ、誤認の恐れが生じた。
税関判断には一定の裁量があり、同一貨物でも担当者によって判断が異なる場合があります。どの税関でも誤認と見なされない「明確な表示」を準備しておくことが重要です。
国内販売時の原産国表示義務
景品表示法の規制
景品表示法第5条第3号では、消費者が誤認するおそれのある表示を禁止しています。公正取引委員会の告示(昭和48年告示第34号)により、原産国を誤解させる表示例が具体的に示されています。
- 実際の生産国と異なる国名を表示する。
- 国旗や外国語を使用して他国製品と誤認させる。
- 原産国を意図的に省略する。
違反した場合は、措置命令や罰金などの行政処分が科される可能性があります。
食品表示法の義務
食品の場合は、輸入食品に「原産国名」を表示することが義務付けられています。加工食品については、国内製造品は「原料原産地表示制度」、輸入食品は「原産国名表示」が対象です。複数国原料を使用している場合は、重量割合順に国名を併記するのが原則です。
家庭用品・衣類等の扱い
家庭用品品質表示法では、原産国名の表示義務は明記されていませんが、品質・安全性表示の一部として記載されるのが一般的です。特に衣類などでは「Made in ○○」表示が実務上の慣行として定着しています。
原産国表示ミスを防ぐための6つのポイント
- 製造工程の確認:どの国で最終加工・組立が行われたかを明確化。
- 書類整合性のチェック:インボイス、パッキングリスト、現物表示を統一。
- パッケージデザインの見直し:他国を連想させる国旗・都市名・ブランド名を排除。
- 出荷前検品(インスペクション):第三者機関による事前確認を活用。
- 契約書で責任範囲を明確化:誤表示訂正や費用負担の取り決めを明文化。
- 通関業者との連携:事前に原産地表示方針を相談。
参考情報1.こんな違反事例もあり!
過去、原産国の表記ミスに関わる問題は、次の事例があります。
- 決済者 台湾
- 購入者 日本
- 生産地 台湾
- 保管場所 中国
台湾のメーカーと日本企業の取引です。商品は台湾で製造された物です。
しかし、ある理由により、物は、中国の工場にあります。決済は、日本と台湾企業との間で行う。物自体は、中国から日本に発送される。
この場合に次のことが発生しました。
- カートン外装のシッピングマークや説明書には「Made in China」と記載されている
- インボイスや現物の写真は「Made in Taiwan」と記載されている
幸いなことに、輸入申告前に気付いて、全て訂正したため、大ごとにはならなかったです。この状態で申告をしていたら….と思うと、とても冷や冷やさせられる案件です。インボイスやパッキングリストを中国本土で作成しているため、このような原産国の表示ミスがあります。
参考情報2.原産地について指摘されたら、どうなる?
では、仮に、税関から「このままの状態であれば、輸入は許可しません」と言われた場合は、どのよな手続きになるのでしょうか? 次の手順で原産地に関する疑念を払拭して、輸入許可を取得できます。
- 税関から原産地表示を訂正するための許可を得る
- 保税地内で、適切な原産地を訂正する作業をする。
- 再度、税関に確認をしてもらい、輸入可否の判断を仰ぐ。
この1~3の流れで、原産地表示に関する問題をクリアできます。
まとめ
- 通関時に「原産国表示」が義務付けられているわけではないが、誤認表示(貨物表示)があれば輸入不許可となる。
- 国内販売時には、景品表示法・食品表示法などによる表示ルールを遵守する必要がある。
- 訂正作業は保税倉庫でのみ可能で、費用は輸入者負担。
- もっとも重要なのは、輸出国側での正確な原産国表示準備と、輸入書類・パッケージ間の整合性確認である


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