輸出する貨物をどのように梱包したのかを説明する書類が「パッキングリスト」です。輸出や輸入の通関時において、インボイスと一緒に税関へ提出される書類です。この記事では、パッキングリストの役割とどのような情報が書かれているのかをお伝えします。

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パッキングリスト
輸出者と輸入者の間で「どんな商品を、いくらで、いくつ売買したのか」を示す書類が「インボイス」です。税関は、この書類を見るだけで貿易取引の内容を把握できます。しかし、このインボイスだけだと、どのように貨物が梱包されているのかがわかりません。
下の画像をご覧ください。こちらはインボイスの見本の画像です。赤丸の部分に「商品の名前と個数」が示されています。個数の部分は「10CARTON」となっています。この場合の梱包方法は、次の3通りがあると推測できます。
- 1カートンにつき1つの商品が入っている。
- 1カートンにつき10の小箱が入っている。
- 1カートンにつき10の小箱が入っていて、さらに小箱の中には100の商品が入っている。
インボイス上に記載されている「10カートン」という表現だけで、色々なパターンがあることがわかります。この梱包内容を明確にするものがパッキンギリストの役割です。

- インボイスは、貨物の価格を証明する書類
- パッキングリストは、貨物の梱包内容を示す書類
必ずパッキングリストはいるの?
必ず用意するべき書類ではありません。貨物の個数が少ないときは、インボイス&パッキングリストにしていることもあります。ただし、L/C決済にしているときは、用意するべき書類として記載されている場合が多いです。
パッキングリストのフォーマットと目的
パッキングリスト(包装明細書・略称 P/L)は、包装ごとの荷印、内容、正味重量、総重量、容積などを記載した書類です。具体的には、次の書類を輸出者が作成後、輸入者に送付します。輸入者は、パッキンリストの他、インボイスやB/L、アライバルノーティス、特定原産地証明書などの輸入書類を一式にして税関に提出します。これがパッキングリストの目的と役割です。

パッキングリストの見本と記載内容
では、パッキングリストを詳しく確認していきましょう! 基本的に、パッキングには、次の3つに関する情報が詳しく記載されていると理解すれば良いです。
- 輸出者と輸入者に関する情報
- 船積みする船の情報(出港する場所、入港する場所、本船の名前など)
- 商品に関するマーク情報、重さ、数量、容積
| 項目 | 意味 |
| DATE | パッキングリストの作成日 |
| INVOICE NO | パッキングリストが対応するインボイスナンバー |
| Shipper | 輸出者 |
| Consignee | 輸入者 |
| VESSEL NAME | 本船名(貨物を積み込む予定の本船名) |
| ON BOARD | 船積み日 |
| PORT OF LOADING | 輸出港 |
| PORT OF DISCHARGE | 輸入港 |
| SHIPPING MARK | 荷印 |
| DESCRIPTION OF GOODS | 荷物の詳細情報 |
これらのうち、特にインボイスと違う点は、マーク情報、重さ、容積の部分です。

容積と重量の計測方法は?
容積と重量は、ご自身でも可能ですが、一般的には、通関業者経由でわかる「容積重量証明書(CLM)=専門の検数業者が発行する書類」の数値を記入します。仮に、自身で計算していた場合で、容積重量証明書と食い違いが出たときは「CLM」の数値に合わせます。
貨物の紛失を防ぐ、シッピングマーク(荷印)とは?
貿易輸送は、移動距離が長く、いくつもの業者が輸送に携わります。そのため、荷物の紛失事故をなくすために、ダンボールの外箱には「輸入者情報を記載したマーク」を書いておきます。これを「荷印」や「Shipping Marks(シッピングマーク)」といいます。
輸入者側は、パッキングリストとダンボールに記載されている荷印を照合することで「どのダンボールに、どんな商品が入っているのか」を確認できます。下の画像をご覧ください。緑枠の部分がシッピングマークです。この場合であれば、カートンNOは1から20まであることがわかります。
例えば、ダンボールの外箱にカートンNO15が書かれている場合であれば「▲▲ TYPE」の商品が入っています。

B/Lとダンボールへの表示例


ネットウェイトとグロスウェイトの違いとは?
パッキングリストには、貨物の重さと容積を記載する欄があります。それぞれは「NET WEIGHT」、「GROSS WEIGHT」、「MEASUREMENT」などと表します。

ネットウェイト
貨物本体だけの正味の数量を指します。
グロスウェイト
貨物の本体と梱包材(ダンボールなど)を合わせた重量です。
メジャー/容積とは?
貨物を縦×横×高さの大きさで図った数値です。1㎥は、縦、横、高さがそれぞれ1m四方の貨物を示します。
例えば、30cm×40cm×100cmの箱が100個あるときの容積は、次のように求めます。
(0.3×0.4×1)×100=12㎥
そして、この容積を基にして求める「容積重量」と実重量を比較し、重い方を基準重量として輸送代金が決まります。
パッキングリストの具体的な作り方(貿易実務者向け)
パッキングリストは、輸出貨物の梱包内容を示す実務書類です。ここでは、実務担当者が実際の船積み前に作成できるよう、作成手順と判断ポイントを整理します。
作成する順番
パッキングリストは、インボイスの品名・数量を基礎にしながら、実際の梱包単位(カートン単位・パレット単位)へと細かく落とし込む手順で作成します。基本の流れは次の通りです。
1.インボイス記載の品名・数量を確認する
品名、個数、型番、ロットがある場合はロット別の数量も確認する。
2.実際の梱包仕様を確認する
- 1カートンに何個入れるか(内装箱の有無も含める)
- パレットに積む場合は、1パレットあたりのカートン数を確定する。
- 危険品や割れ物の場合、梱包強度の有無を確認する。
3.カートン番号(Carton No.)を決める
1から連番で付ける。 ・パレットを組む場合は、「P1-1〜P1-40」のようにパレット番号+カートン番号で管理すると混乱が少ない(推奨)。
4.シッピングマーク(荷印)を決める
輸入者名の略称+PO番号+カートン番号の組合せが一般的。 ・例:ABC / PO12345 / CTN 1–50
5.重量・容積を計測する
正味重量(NET):中身だけの重量 ・総重量(GROSS):外箱を含む重量 ・寸法(MEAS):縦×横×高さ。パレット貨物の場合はパレット単位の寸法も必要。
6.一覧表に落とし込む
「Carton No」「Description」「Qty」「N.W」「G.W」「MEAS」「Shipping Marks」を表形式にまとめる。
実務担当者が迷いやすいポイント
実務現場で特に間違いが起きやすい点を整理します。
カートン番号の付け方
- 番号飛びは輸入時の照合ミスにつながるため避ける。
- 複数品目が混在する場合、「1カートン=1品目」が基本。混載カートンにすると輸入検査が煩雑になる。
重量・容積の精度
- 通関業者からのCLM(容積重量証明書)がある場合は、必ずその数値に合わせる。
- 社内計測と差がある場合、税関は正しい値を求めるため、必ずCLM基準に統一する。
シッピングマーク
- 英数字のみで構成(記号・特殊文字は避ける)。
- 箱の側面2〜3か所に明確に印字する。
- 入港後の倉庫での仕分け効率が大きく変わるため、特に輸入者側の運用と合わせることが重要。
パッキングリストの典型フォーマット
以下のような形式にまとめると、税関・フォワーダー・輸入者の三者すべてが確認しやすい。
【ヘッダー項目】
- DATE(作成日)
- INVOICE NO(対応するインボイス番号)
- Shipper(輸出者)
- Consignee(輸入者)
- Vessel Name(本船名)
- Port of Loading(輸出港)
- Port of Discharge(輸入港)
- Shipping Marks(荷印)
【明細項目】
| Carton No | Description of Goods | Quantity | N.W | G.W | MEAS |
|---|---|---|---|---|---|
| 1–10 | ABC TYPE | 100 PCS | 120 KG | 135 KG | 0.45 CBM |
※複数品目がある場合は、品目ごとに行を分ける。
1. 計量器(スケール)
正味重量と総重量を量るために使います。実務では、以下を使い分けます。 ・小型デジタルスケール:部品や小型製品向け ・床置きスケール(台はかり):段ボールやパレット単位の計量に使用 重量差が出ると通関トラブルにつながるため、できるだけ校正されたスケールを使うことが望ましいです。
2. 巻き尺・レーザー距離計
貨物の縦・横・高さ(寸法)を測定するために使います。 ・段ボール:巻き尺が便利 ・パレット:レーザー距離計が早く、正確 寸法は容積計算の基礎になるため、測定ミスの影響が大きい項目です。
3. パッキングリスト作成用の表計算ソフト(Excel/Googleスプレッドシート)
ほぼ全ての企業がExcelで作成しています。一般的には次のような形式で管理します。 ・カートン番号 ・品名 ・入数 ・N.W/G.W ・MEAS(縦×横×高さ) ・Shipping Marks 複数品目のときは「商品別シート」と「全体シート」を分けておくと、計算式のミスが減ります。
4. CLM取得のための検数業者のシステム
自社計測ではなく、検数業者が提供するCLM(容積重量証明書)を利用するケースが多いです。 現場で計測後、PDFで数値が送られてくるため、そのままパッキングリストの数値に転記します。
———–|———————-|———-|——|——|——–| |1–10|ABC TYPE|100 PCS|120 KG|135 KG|0.45 CBM|
※複数品目がある場合は、品目ごとに行を分ける。
作成時の品質チェック(実務者向け)
パッキングリストは、誤記があると荷受け混乱、通関遅延、検査強化の原因になります。次の点を必ず確認してください。
- インボイス数量との整合性
- カートン番号の欠番有無
- Shipping Marksの記載統一
- 重量と寸法の単位(kg/cm/CBM)が統一されているか
- パレットがある場合、パレット単位のMEASが誤っていないか
輸入者が特に重視するポイント
輸入側の倉庫現場では、以下の3点が最も重要視されます。
- Carton Noが連番であること
- Shipping Marksが明瞭であること
- Description(商品名)と入数(Qty)がカートンごとに明確であること
ここが不十分だと、倉庫での仕分け時間・コストが増え、クレームにつながりやすいです。
まとめ
インボイスと一緒に提出するパッキンギリストは、貨物をどのように梱包しているのかを確認するための書類です。税関の輸入検査などを行うさいは、このパッキングリストを基にして輸入検査貨物をチェックすることになっています。また、パッキングリストは輸入者側の荷受けと管理にも役立ちます。
海外からコンテナが届くと、大量のダンボールの整理と格闘することになります。このとき「どのダンボールに、何の商品が入っているのか」をできるだけ素早く判断することが大切です。パッキングリストとダンボールに記載されているシッピングマークを照合すれば、そのような判断もスムーズに行うことができます。

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