輸出入業務の業務委託(外注化)ガイド
輸出入業務の一部又は全ての業務委託(外注化)を検討されていますか?
新しく輸出入ビジネスに取り組む際、人材不足、経験不足、スキル不足等から、物事を前に進められず困ることがあります。
又は、すでに輸出入事業をされている企業様で、人材確保の難しさ、業務の多忙さなどから、貿易業務の一部を業務委託(外注化)されたい所もあるでしょう。
この記事では、輸出入業務の外注化を成功させるポイント、メリット、選び方、注意点、成功事例を解説していきます。
輸出入の業務委託(外注化)とは?
輸出入業務の外注化(業務委託)とは、貿易実務する上で必要となる各種作業の一部または全部を第三者に依頼することです。第三者とは、貿易業務を受託する企業の他、スキルを持つ個人等も含まれます。
貿易業務を業務委託(外注化)するメリット
- 即戦力となる人材が担当する →教育不要
- 人材のレベルが担保されている →ミスマッチ防止
- 業務にかかるコストを削減できる。(全体の最適化)
- 採用コストを下げられる。 →採用にかける時間・お金を削減
- 社会保険料や残業代の概念がない。
- 業務量に応じて社内の体制を調節できる。
- 自社に不足する専門知識を補える。
- 本業に集中できる。
特に大きな魅力は、次の3点です!
- 貿易実務に慣れた人間が対応する。(実務対応レベルが約束されている)
- 必要なときに依頼ができる。=派遣よりも機動的な運営が可能
- 雇用しなくても良い。=コスト削減につながる。
- 派遣社員は、時間に対するコスト。
- 業務委託は「業務」に対するコスト。
業務委託は、その全てが契約に基づき実行されるため、煩わしい労働管理等も不要です。=貴社の本来の業務(本業)に集中できることにもつながります。
派遣社員と業務委託(外注化)の比較
では、貿易業務の一部を外部人材に任せる前提の下、その手段を比較してみましょう。ここでは、次の2つを考えてみます。
- 業務委託(外注化)サービスを利用する場合
- 派遣社員を迎え入れる場合
項目 | 業務委託(外注化) | 派遣社員 |
コスト | 業務量に応じた費用のみ |
|
社会保険料の負担 | なし | 派遣契約の場合は、直接、社会保険料の負担はないです。 しかし、派遣会社への支払いは、社会保険料分も上乗せされているため、結局は同じことです。社会保険料として支払っていないだけです。 |
人材のスキル | 貿易業務に精通する人材が担当する。スキルが足りない場合は、契約に基づき担当者の変更等も比較的、柔軟にできる。 |
|
契約期間 | 契約のみに縛られる。契約を続けたくない場合は、解消するだけで良い。 例えば、スキルレベルが足りないと判断した場合は、最短、一か月程度での契約解消も可能。 | 人材を派遣してもらう為、最低限、数か月間の契約期間の縛りがある。 例えば、全く業務ができない人材でも我慢をして雇い続ける期間が発生する。 |
業務範囲・経験値 | 業務委託を請け負える人は、ベテランが多く、非常に幅広い業務を経験している。これは、業務範囲の調整ができる余地が大きいとも言えます。 例えば、当初は、貿易書類の処理だけを依頼していた。所が自社の海外営業を強化するために、新たに海外販路の開拓営業も依頼するなど。 | 基本的に貿易実務の範囲内の業務に対応するのみです。少しでも外れると対応できないことが多い。=応用力が小さい。 例えば、貿易業務が一年目の新人がくる可能性がある一方、10年目のベテランがくる可能性もあります。当然、対応できる業務範囲もバラバラです。 |
貿易業務は、少し特殊な世界であるため、一般の事務職よりもミスマッチが発生しやすいです。「○○の業務経験がある」とのことで採用したはずなのに、ふたを開けてみたら….などの事例もあります。であるにも関わらず、派遣契約のため、すぐに交代させることも難しいです。
一方、業務委託契約は、ベテランが対応します。雇用契約ではないため、万が一、実務レベルが低いと感じたら契約の解消ができます。これによりいつても自由に調整ができます。
業務委託(外注化)と派遣社員との比較 コスト感のとらえ方
ここで業務委託(外注化)する場合と派遣社員を雇う場合の費用を考えてみましょう。
例えば、東京等の大都市圏で、一般的な貿易事務員(高度な経験が無い方)を雇う場合のコストを平均2000円~2500円前後/時間(派遣会社への支払いベース)だとします。
一日8時間、月に22日を派遣してもらう場合
上記の場合、派遣会社への月間の支払い額は30〰︎40万前後/月です。
よって、業務委託(外注化)するべきか?は、上記の金額が一つの判断基準になると言えるでしょう。なお、派遣社員は「時間」が賃金の基準である一方、業務委託は「業務」が基準です。これにより、残業や社会保険料等の法的な取り扱いも違います。
社会保険料 | 残業代 | |
外注サービス | 不要 | 不要 |
派遣社員 | 〇(実質的に負担) | 〇 |
業務委託(外注化)は社会保険料の負担、残業の概念がない。
業務委託(外注化)は、以下2つの点でもメリットがあります。
- 社会保険料の負担がない。
- 残業代の概念がない。
外注サービスは、業務に対しての報酬です。労働時間に対する対価でないため、社会保険料や残業代の概念がないです。これは、企業側としては、大きなメリットです。
例えば、現在の貿易業務の一部を業務委託(外注化)することで、このコストが10万円下がると、年間120万円の負担が無くなります。これは、別の見方では、利益が増えたとも考えられます。粗利が30万円なら、400万円分の売上が増えたこと同じです。
生産人口の減少問題も関係する!長期的に採用が難しくなる
長期的には、派遣社員の採用、貿易人材の獲得が難しくなる、又は、獲得できても大幅に賃金の上昇が続く可能性が高いと思います。
- 2000 8,638
- 2005 8,127
- 2010 7,507
- 2015 7,062
- 2020 6,766
- 2021 6,886
上記は、生産年齢年齢の推移です。2050年には、5275万人まで減少すると言われています。当然、この減少にあわせて派遣社員に支払う料金も増えていきます。
情報元:厚生労働省の資料 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/1-01.pdf
業務委託(外注化)の成功事例
ここでは、2つの成功事例をご紹介します。
- 業務多忙による一部業務の外注化
- 新規貿易ビジネスの立ち上げに伴う業務委託
1.業務多忙による一部業務の外注化
貿易商社のD社。ビジネスは順調に推移し、業務量が拡大している。ところが昨今の人材不足の影響により、中々、人材を獲得できない。また、人材を獲得できとしても一から教育する余力はない。こんなときに、即戦力かつ経験豊富な人に業務委託(外注化)を依頼した。
2.新規貿易ビジネスの立ち上げに伴う業務委託
新しく貿易ビジネスの始めようとしている。既存の業務とは全く別の為、自社に貿易のスキルを持つ人材等がいない。但し、貿易ビジネスの立ち上げとなるので、一般の貿易事務員ではスキルや経験値が足りないと考えていた。そこで、貿易業務の委託を検討する。求めていたイメージは、貿易の秘書。様々なアイディアに対して貿易分野の実現性の観点からアドバイスを受けている。
業務委託は、一般的な貿易事務よりも経験値が高く、応用域が広いのが特徴です。単純な書類業務の他、販路開拓等のビジネスの拡大につながる業務にも対応できます。
輸出業務・輸入業務を外注する際のステップ
次に業務委託(外注化)を検討する場合に考えるべきことを確認していきましょう。次の4つの手順で検討していきます。
- 外注する内容を明確にする。
- 外注先を探す
- 交渉をする
- 契約書を交わす
1.業務委託(外注)する内容を明確にする。
まずは、業務委託(外注化)する業務内容を明確にします。現状の貴社の業務を一つのシートに落とし込み、一つ一つ検証していきましょう!この作業により、一般的な貿易事務で良いのか? 高度貿易事務が必要なのか?を判断できます。
例えば、以下のような業務リストを作成します。
- 要望をベースに販売先/仕入先の実態調査を開始。
- 初回アプローチ
- テーブル交渉をセットする
- 海外の取引相手の意思を伝える。
- 海外の取引相手とzoom等で交渉する。
- コレポン対応
- 合意した諸条件をベースにPO(発注書)を作成する
- 乙仲、フォワーダー対応
その後、これら一つ一つの業務をリスト化し、業務委託(外注化)できる部分を精査します。契約等にもよりますが、基本的には、依頼する業務量・範囲に応じた委託料がかかります。又は、年間契約等である程度、許容範囲を設定して契約することもあります。(包括的な契約)
2.外注先を探す
業務リストの作成が完了したら、次の検索キーワード等を使い外注先を探します。
- 貿易業務 外注
- 貿易事務 外注
- 貿易サポート サービス
- 貿易アウトソーシング
- 貿易実務 サービス
- 貿易代行 サービス
- 貿易コンサルティング
- 国際貿易 外注
- 通関業務 外注
- 輸出入代行 サービス
- 貿易書類作成 サポート
- インボイス作成 サービス
- B/L 作成 サービス
- 貿易業務 支援
- 貿易物流 アウトソーシング
- 貿易事務 アウトソーシング
- 輸出入 サポート
いくつか外注先の候補をリストアップしたら、1番で作成した業務リストを提出し、先方からの見積もりを待ちます。外注先に見積もりを依頼する場合は、次の点も一緒にまとめると良いです。
- 業務委託(外注化)する動機(業務多忙による外注化? コスト削減?)
- 現在の貿易状況(どれくらいの規模で貿易をしている?)
- 一回の取引規模は?(例:インボイス価格など)
- 主な取り扱い品目
- 業務委託(外注化)したい内容
- 依頼頻度は?
- 現在の労務費(例:業務を任せている派遣社員の人件費等)
これにより、外注支援会社は、貴社の貿易状況を把握でき、より最適な見積もりを提示しやすくなります。
3.交渉をする
交渉は、メールの他、ズーム等での打ち合わせ、必要な場合は、面談もお勧めです。オンラインが全盛の時代でも顔を合わせてお話をすることにかなうことはありません。文章ではごまかせても面談では隠しきれないことも多いです。この意味でも面談は有効です。
代行会社から見積書が提出されたら社内で検討します。既述した派遣社員を雇入れる場合のコスト感、外注業務に対するコスト感が自社の貿易ビジネスにあっているのかを考えます。
もし、希望の価格よりも高いと感じた場合は、価格の引き下げや業務委託(外注化)する業務内容を見直してみると良いです。わからない点があれば、逆に質問をするのも手です。
例えば、この業務を削ると、どれくらいの価格が変わるのか?などです。日本の会社は、交渉をせず、社内検討で終わることも多いです。ですが、これは非常にもったいないです。見積書は、交渉開始のスタートラインだと考えて、両者の意見をぶつけ妥結点を模索するべきだと考えます。
4.交渉妥結後、準委任業務委託契約書を交わす
契約後は、必ず契約書を交わします。特に何らかのイレギュラー時の責任範囲、業務内容の秘密保持に関する契約は必須です。
契約書には、甲と乙の二者を登場させます。全般的な考え方、解約事項、免責などの一般的なルールの他、業務委託(外注化)する貿易業務の一覧、何らかの事故が発生した場合の責任等を記載します。契約書自体の作成は、どちらでも良いです。基本は、契約書を作成した方に有利な内容になっています。この辺りは、契約する司法書士さん?等に見て頂いた方がいいと思います。
無事に契約が完了したら、業務の依頼をお願いします。
輸出業務・輸入業務の外注における注意点
業務委託(外注化)は、様々なメリットがある一方、気を付けなければならないこともあります。特に以下の点には、留意しましょう。
- 情報漏洩
- 業務品質リスク
- コミュニケーション不足(意思の疎通不足によるミス)
自社の商品情報、取引関係の情報が漏洩したら大変です。この辺りは、外注先と秘密保持契約等を交わし、万が一の罰則規定等を含めて考えます。他、業務委託(外注化)できない業務を知ることも大切です。
例えば、海外との交渉をする際、交渉業務自体を業務委託すると、弁護士に関する法律に違反する可能性があります。この場合は、交渉自体を業務委託するのではなく、交渉の「補助」をしてもらう形にします。
よくある質問(FAQ)
業務委託(外注化)費用の相場は?
これは千差万別です。
- 依頼する業務内容
- 業者ごとの設定
- 一般貿易業務なのか?、高度貿易業務なのか?
などによっても変わります。一般的な相場は、最低価格を設定の上、インボイス価格の〇〇%などが多いです。
上記の代行料金を支払うことで、海外交渉から輸入許可、国内手配完了または、この逆の輸出完了までの煩わしい業務を全てを丸投げできます。具体的な金額やパーセントは、個別の交渉次第です。
- この業務は自社でやるからもう少し下げ欲しい。
- 年間で通して契約をしてほしいなど
業務委託先(外注先)の選定で気をつけるべき点は?
最初は、必ず短期間で契約で契約することです。交渉時は、あれもできます。これもできます!と伝えていたにも関わらず、実際に業務が始まったら、全くできない可能性もあります。最初に面談等を重ねて人となりを確認することはもちろんのこと、短期間の契約を結び実力を見ることも重要です。
外注後のトラブルを防ぐためには?
出来る限り、契約書に盛り込むことです。万が一、トラブルになった際は、必ず電話、ズーム、又は面談による意思疎通が好ましいいです。トラブル時は、契約書の内容が一つの基準になります。最初にこの基準をできるだけ明らかにすることが何よりも重要です。
新しく貿易業務を始める場合でも大丈夫?
はい、対応可能です。ご希望であれば、商品選定の段階から二人三脚で対応可能です。弊社サービスのイメージは「貿易秘書」です。依頼者が貿易業務なら、できるだけ対応させていたたきます。まずは、お気軽にお問い合わせください。
HUNADEの貿易業務委託サービス(外注化)
貿易の業務委託化(外注化)にお困りですか?
HUNADEでは、貿易業務の一部又は全部の受託サービスを提供しています。以下の支援ができます。もし、よろしければ、一度、弊社にもお見積もりの機会を頂きたいと思います。
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業務委託(外注化)の真の目的を見失わないことが重要
業務委託(外注化)を検討する際は、業務委託(外注化)の真の目的を見失わないようにします。
例えば、委託する業務内容を調整し一万円でも少ない業務費にすることが貴社の真に望むことなのか?追求するべきことなのか?などです。
大切なことは業務委託費を少しでも安くすることではないはずです。貴社でなくても良い業務を外注化することで、本業に集中し、ビジネスの拡大を目指すことだと考えます。
どんな業務をするにしても必ずコストがかかります。業務委託(外注化)を進めるにあたり、無理なコスト減を追求すれば、どこの会社も依頼を受けてくれないでしょう。
業務委託費は、仕入れから販売までの一連の流れにある必要経費として考えるようにします。業務を実行するわけですから、相応のコストがかかるのは当然です。このコストが派遣社員等を雇い入れる場合と比較して下がるのであれば、業務委託(外注化)のメリットがあると考えられます。
業務委託により自社のリソースを集中させ、本業を拡大させることが何よりも重要です。