海外から商品を仕入れて販売するビジネスを始めたい。でも、もし販売した商品で事故が起きたら…そんな不安はありませんか?
この記事では、輸入事業を守る「PL保険」について、分かりやすく解説します。保険の選び方から、中国輸入での注意点まで、安心してビジネスを始めるために必要な情報をご紹介します。
貿易ビジネスとPL保険
PL保険って何?
PL保険は、輸入販売した商品が原因で事故が起きたときに、お客様への補償金を支払う保険です。
例えば…..
- 販売した商品が壊れてケガをさせてしまった
- 商品の不具合で他の物を壊してしまった
- 説明書の間違いで事故が起きた
といった場合に、保険会社が補償してくれます。
参考情報:製造物責任法に規定する輸入者の責任
製造物責任法では、責任者を「商品の製造者」と定めています。そして、海外から商品を輸入した商品の製造者は「輸入した者」です。
根拠:製造物責任法2条3-1
製造物責任法上の責任には、次の3つがあります。
- 商品代金自体の弁済
- 不良商品を使用したことによる治療費と慰謝料
- 不良商品を回収する責任
個人で輸入ビジネスを始める方へ
どんな人がPL保険に入る必要がある?
- 海外から商品を輸入して販売する全ての人(方法、規模、販売先問わず)
- フリマアプリやネットモールで販売する人
特に毎月、一定の金額を輸入し、販売している方は、必ず加入した方が良いです。
保険料はどのくらい?
PL保険の料金の基準は「売上高」と「補償タイプ」です。売上高とは、年間で見込まれる売り上げの額。補償タイプとは、粗悪な商品の回収費用まで対象にするか?です。
- 年間の売り上げ高の見込み
- PL保険単体のみなのか?PL保険+回収なのか?
PL保険の概算相場
- 年間の売り上げが2億円までは、30万程度(年間)
- 1億円までは、数万~10万程度(年間)です。
この料金には「回収」が含まれているため、PL保険の単体であれば、もう少し安いです。また、PL保険の料金を決めるときは、補償される部分、補償されない部分を確認することをお勧めします。
例えば、食品を輸入するときであれば「食品表示法」の規制を受けます。この中で決められている賞味期限や消費期限、アレルギー表示が間違っていたことによる消費者へのダメージは、補償対象外になどの適用除外規定があります。
「何であれば補償される、されない。」というのは、保険会社との打ち合わせで決まります。その結果、貴社における保険料金が算出されます。
PL保険の算出方法
- 保険期間 一年間
- 支払う保険料=前年度売上高×保険料率
中国から商品を輸入する時の注意点
特に注意するべき点
- 商品の品質が日本の基準に合っている?
- 説明書や注意書きが正しく日本語に訳されている?
- 製造元がしっかりした会社なのか?
特に思わぬ商品が日本側で規制されているので注意が必要です。(例:乳幼児用のおもちなど)
リスクへの対策
基本的に様々な問題が発生することを想定して対策することをお勧めします。
例えば……
- 商品が届いたら必ず確認する
- 説明書は日本語をしっかりチェックする
- 信頼できる工場を選ぶ(海外側)
- 必ずPL保険に入る
特に恒常的、かつ一定以上の数量を輸入するようになったら、迷わずPL保険に加入しましょう!
PL保険の種類と加入条件等(個人事業主等)
PL保険は、各社によって法人のみとしていたり、個人事業主まで対象としていたりと様々です。加入方法は、民間の保険会社や各地にある商工会議所などを通して加入します。
1.各保険会社が提供するもの
2.団体契約の中にある個別契約
1つめは、民間の保険会社が提供しています。ネット上で「PL保険 輸入」などと検索をすれば、すぐに見つかります。また、最近では「PL保険の選び方」がわからない方に対して、会社の状態に合わせたPL保険を設計する専門業者もいます。
三井住友、AIG損保など
2つめは、各種団体が提供する個別契約です。この団体には、主に商工会議所があります。商工会議所が保険会社と大口契約をして、会員は、その中で小口契約を結ぶ形です。保険料金単体で見ると、商工会議所の保険料金の方が安いです。しかし、商工会議所の会員になるには、年会費が発生するため、それを併せて考えると、本当に安いのかは疑問です。
すでに商工会議所のメンバーであるなら二番の選択。個人事業主など、特に商工会議所に加入していないのであれば、1番を選べばいいと思います。
実際、多くの輸入者さんは、AIG(旧AIU)さんを使われている所が多いです。
- AIG(旧AIU)
- あいおいニッセイ同和損保
- 東京海上日動
- 日本包装機械工業会
- 共栄火災
- 三井住友海上/ビジネスプロテクター
- 全国 商工会 連合 会
- 全国中小企業団体中央会/中小企業海外PL保険制度
- 損保 ジャパン/海外展開サポートプラン
- 大阪商工会議所
- 日本商工会議所/ビジネス総合保険制度
保険に入るときのチェックポイント
確認することリスト
この商品は保険の対象になる?
食品や化粧品は特別な保険が必要なこともあります。一般的な雑貨なら基本的にOKです。
いくらまで補償してくれる?
小規模なら5,000万円くらいの補償でスタートすると良いと思います。売上が増えてきたら、補償額も増やすようにしましょう!
保険料の支払い方は?
年払い、月払いが選べることが多いです。また、PL保険の会社によっては、クレジットカードで支払いができるとこもあります。
事故が起きたらどうする?
すぐにすべきこと
保険会社に連絡をしましょう!
- 24時間受付の電話番号を控えておく
- どんな小さな事故でもまず報告
お客様へ対応する
- 誠意を持って謝罪する
- 勝手な判断はせず、保険会社に相談します。
昨今は、SNS等で情報が拡散しやすいです。お客様への対応を間違えると、すぐに炎上することもあるので注意が必要です。
同じ商品の確認
- 在庫の商品をチェック
- 必要なら販売を一時停止
問題が発生した商品が一個単位で発生しているのか? ロットなのか?など、すぐに既存の在庫を確認します。必要な場合は、販売を停止して、これ以上、被害が拡大しないよういします。
よくある疑問
どんな商品にPL保険がかけられているの?
種類を問わず様々です。例えば、下記の品目などがございます。
お 酒、おもちゃ、エアコン、スキー、スマホ、ハンドメイド、ヘルメット、モバイル バッテリー、アクセサリー、フェイスシールド、プラモデル、ペットフード
海外のメーカーが設定しているPL法は使えないの?
おっしゃる通り、海外メーカーがPL保険を設定しているときは、その保険で賄われる可能性が高いです。ただし、この場合は、対象の製造メーカーと契約書などを結び、賠償範囲の費用的な部分での責任(日本の法律上の責任は輸入者)をどのように負担するのかを話し合いで決めておきます。
例えば、先ほどでもご紹介した通り、輸入者側が当然、守るべきことを怠っていたことによる事故(賞味期限誤表記、アレルギーなど)は、補償の対象外です。メーカー側の落ち度(製造時からの欠陥など)であれば、海外メーカーが加入しているPL保険で賄われる可能性があります。
PL保険が適用されないケースは?
次に示すいずれかのケースに当てはまる場合は、PL保険の対象外です。
- 罰金、懲罰的賠償金
- 契約によって加重された責任
- 予期していた身体的障害など
- 製品自体の損壊
- 汚染物質の排出・流出
- ジョイントベンチャー運営
- 核物質
- 戦争
- 地震、噴火、津波などの自然災害
- アスベスト
- 製品のリコール(特約を付ければ対応可能)
まとめ
輸入は、魅力的な商品を日本で販売できるやりがいのある仕事です。でも、思わぬ事故が起きることもあります。PL保険は、あなたのビジネスを守る「安全装置」です。
最初は少し費用がかかるように感じるかもしれませんが、大きな事故が起きたときのことを考えると、必要な投資だと言えます。分からないことがあれば、保険会社や代理店に相談してみましょう。初心者でも分かりやすく説明してくれるはずです。
- PL法は、日本国内で生産された物が消費者を傷つけたときに補償する法律
- 海外から輸入した物は、それを輸入した人がPLの規制対象になります。
- PL保険は、民間保険会社提供の物と、商工会議所提供の物があります。
- PL保険には、PL保険単体と回収費用が含まれている物の2つがあります。
- PL保険の料金は、年間売り上げ高が一億円を超えるのか?で変わってきます。
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