国際輸送の費用は、FCL(コンテナ単位)とLCL(混載)で仕組みが違い、追加の費用もいろいろあります。見積もりを出すときは、船社立替金やsystem charge、倉庫保管料の計算、LCLのフリータイム延長、デマレージが発生するかなどを確認しましょう。さらに、フリーハウスチャージとDDPの違いも知っておくと安心です。
この記事では、はじめて国際輸送を行う中小企業や個人事業主の方に向けて、見積もりの仕組みや追加費用の内容、注意点をわかりやすくまとめています。
この記事で取り扱う話題
国際輸送費の全てがわかる
輸送の見積もりは誰に依頼する?
輸送の見積もりは、基本的に「フォワーダー(貨物利用運送事業者)」に依頼します。フォワーダーは、船会社からコンテナスペースをまとめて購入し、小規模な荷主にも対応できるように再販売しています。つまり、個人や中小規模の輸出入事業者にとっては、船会社と直接契約するよりも、コスト面・実務面ともにフォワーダーの活用が現実的かつ合理的です。
以下の情報を整えて業者に見積もり依頼をしましょう!ちなみに、HUNADEも見積もり書をお出しできます。よろしければ、こちらから見積もりの依頼をお願いします。
見積もりを出してもらうときに必要な9つの情報(輸出コンテナの見積)
国際輸送の見積もりをスムーズに出してもらうには、次の9つの情報を伝えると良いです。
1. 輸送方法(船・飛行機・フェリー)
基本は船便が一番安いですが、急ぎの場合は飛行機も検討しましょう。まだ決まっていなければ「未定」でOKです。
2. 出発地と到着地(POL/POD)
「どこからどこへ運ぶのか」を、できるだけ正確に伝えましょう。都市名ではなく、港や倉庫の名前を使うのがポイントです。(例:EXW SHANGHAI C/T → 東京港)
3. FCLかLCLか?
荷物の量によって「コンテナ貸切(FCL)」か「混載(LCL)」かを選びます。わからないときは、荷物リストを見せれば業者が判断してくれます。
4. 荷物の形・サイズ・重さ
縦×横×高さ、重さ、個数を伝えましょう。パレットを使う場合は、パレットを含めた重さでOKです。
5. 商品の内容と注意点
壊れやすい物、冷蔵が必要な物、危険品などがある場合は必ず伝えてください。申告しないとトラブルの元になります。
6. インコタームズと価格
取引条件(EXW、FOBなど)とインボイス金額(請求書に書かれた金額)を伝えると、保険の有無なども判断できます。
取引条件(インコタームズ)によって、どこまでの費用を誰が負担するかが明確に異なります。詳細は建値(インコタームズ)の意味と費用負担の境界を参考にしてください。
7. 出荷予定日
いつ出荷する予定かも大切な情報です。早めに相談すれば、より良い船便を提案してもらえます。
8. バンニング(コンテナ詰め)の担当
コンテナ詰めを自社でやるのか、倉庫に頼むのかを決めておきましょう。倉庫に頼むなら、搬入予定日も伝えてください。バンニング作業を倉庫に依頼する場合は、積載計画書(CLP)をもとに作業指示を出すのが一般的です。コンテナロードプラン(CLP)とは?でその役割と記載内容をご確認いただけます。
9. B/L(船荷証券)の形式
B/Lは荷物を引き取るときに必要な書類です。最近は電子形式(サレンダーB/L)が主流ですが、原本が必要な場合もあるので事前に確認しましょう。

これらの情報が不足していると、運送業者から詳細な見積もりを取得できないことがあります。
見積書の費用項目例
見積書には、主に以下の費用が書かれています。輸入側では、これらの費用が「船社立替金」として請求されることがあります。*後述
- Ocean Freight(海上運賃)
- 各種サーチャージ(後述)
- THC(港での荷物の積み下ろし費用)
- Doc Fee(書類作成の手数料)
- ドレージ費(港から倉庫までの陸送費)
- その他(特別な対応費など)
例えば、このように提示されます。
FCL(コンテナ単位)の例
- 出発港:SHANGHAI CY
- 到着港:TOKYO CY
- コンテナ:1本(40フィート)
- 運賃:USD ○○ / 本
- 書類費:USD 50 / B/L
LCL(混載)の例
- 運賃:USD 100 / W/M(重さか容積の大きい方)
- 書類費:USD 20 / B/L
- 出発日:12/22(SHANGHAI)
- 到着予定:12/25(TOKYO)

コンテナのドレー費用(港から倉庫までの陸送費)は、距離や地域によって大きく変動します。コンテナのドレー料金はいくら?基準のタリフを解説に具体的な目安があります。
船社立替金とは?(国際輸送費の基本的な仕組み)
船社立替金とは、船会社が一時的に立て替えてくれている費用のことです。この費用は、輸入のときに届く「アライバルノーティス(Arrival Notice)」にまとめて書かれています。
このアライバルノーティスを見ると、どんな費用が含まれているかがわかります。
詳しい見本や見方は、以下のページで紹介しています
また、航空便の場合の費用の計算方法については、こちらをご覧ください。
→「航空輸送の費用計算方法」
以下の費用が含まれます。
- オーシャンフレート(海上運賃・航空運賃)
- サーチャージ(燃料、為替、危険回避など)
- 港湾使用料・THC・CFSチャージなど
- 書類発行手数料(DOC FEE、D/O FEE)
- 通関・検査・横持ち費用
- 配送費(デリバリー)
- D/O発行手数料
国際輸送費の計算方法
海上輸送には、次の2つの料金体系があります。
- 定額制(FCL):コンテナ1本ごとに決まった料金(例:10万円/本)
- 従量制(LCL)荷物の重さか大きさで料金を決定。どちらか大きい方を採用。
例えば、LCLの場合は、
重さ:1,200kg、容積:0.8㎥(=800kg換算)の荷物があるとすると…..
1,200kgで計算します。
※かさばる荷物(ぬいぐるみなど)は体積で計算されやすいです。
このような「実重量と容積重量のうち大きい方を採用する」仕組みは、RT(Revenue Ton)またはCBMという単位で表されます。詳しい違いと計算例はRT(R/T)とCBM(M3)の違いとは?をご覧ください。
見積もりの取り方
- ネット見積もりサービス
- フォワーダー・通関業者に依頼
フォワーダーや通関業者の対応力は、見積だけでなくトラブル時の対応にも影響します。フォワーダー・乙仲・通関業者の違いとは?もあわせてご確認ください。
よくある誤解
プリペイド(運賃先払い)でも、日本側でTHCなどの費用はかかります。
消費税について
- 非課税:輸入許可前(海上運賃など)
- 課税対象:輸入許可後(国内配送費など)
また、見積に含まれる海上保険料の計算方法や料率も重要なポイントです。詳細は海上保険の計算方法と料率の相場をご参照ください。
よくある追加費用とその正体(System Charge等)
以下は見積書に頻出するが、内容がわかりにくい項目の代表例です。
- System Charge:コンテナ管理や書類手数料などを含む包括的な費用(※内容や呼称は業者によって異なります)
- AMSチャージ:米国向け貨物に必要な申告関連費用
- CAF・BAF:為替や燃料価格の変動を調整するための費用
これらは「請求書を見て初めて知る」ケースも多いため、事前に業者に確認しておきましょう。
システムチャージとは? 通関で「加算要素」に該当
中国からの輸送で「システムチャージ」と呼ばれる費用が発生することがあります。これは、本来、中国側が払うべき輸送費を、日本側が負担させられているものです。
なぜ発生する?
中国のフォワーダーが現地の荷主に無料サービスを提供し、その分を日本側に請求する仕組みです。料金は1立方メートルあたり2,000〜12,000円*と大きく差があります。
*弊社の独自調査、数十のアライバルノーティスを調べた結果
問題点は?
- 金額が不明確で高額になりやすい
- 初心者が狙われやすい
- アライバルノーティスにこっそり記載される
防ぐ方法は?
- 請求書の明細をよく確認
- 輸送条件を「EXW」にする。但し、完全には防げない。
- 自分で信頼できるフォワーダーを手配する
よくある質問
Q. 支払いを拒否できる?→実質的に困難。支払い拒否で貨物が引き取れなくなり、追加費用が発生することも。
Q. 関税に影響する?→はい。税関はシステムチャージも課税対象として見るため、関税が増える可能性があります。
CFSチャージと混載輸送の費用構造
LCL(混載輸送)の場合、港での取り扱い費用(CFSチャージ)が発生します。これは荷物の搬入・仕分け・積み込み作業などにかかるコストです。FCLと比べて単価が割高になる傾向があるため、小口輸送を検討する際には総費用をよく見積もりましょう。
詳細は、CFSチャージの計算方法を参照してください。
LCLを使う場合、荷物の重量や長さにも制限があります。詳しくは混載便の最大重量と長尺物への対応でご確認いただけます。
フリータイム・デマレージ・保管料の違い
コンテナ輸送は、貨物量に関係なく一定料金で輸送できるのが特徴です。ただし、追加費用(チャージ)が発生します。
- フリータイム:港で無料で保管できる期間(例:5日間)
- デマレージ:それを超過した際に発生する罰金的費用(コンテナ単位)
- 保管料:CY(コンテナヤード)や倉庫での日額保管料
スケジュールの遅れがこれらの追加コストにつながるため、到着後の迅速な対応が重要です。
フリータイム
フリータイムとは、外国から届いたコンテナを無料で港や倉庫に置ける期間のことです。期間内に税関の許可を取り、貨物を引き取らないと追加料金(デマレッジ)が発生します。
フリータイムの基本ルール
- 一般的に5営業日(会社や契約により異なる)
- 起算日は搬入日の翌日0時
- 土日祝はカウント外(超過後は加算されることも)
例:船会社 MAERSK のケース(2025年6月現在)
- 20フィートコンテナ:1〜7日間無料、その後1日ごとに11,000円~
- 40フィートコンテナ:同様に1〜7日間無料、その後17,500円〜段階的に加算
フリータイムの起算タイミング
- FCL(コンテナ単位):入港の翌日が搬入日、その翌日が起算
- LCL(混載貨物):入港の翌々日が搬入日
LCLやFCLのフリータイムを延長できる?
延長申請は通関業者または船会社に依頼。会社により有料の場合もある。
- FCL延長:1日あたり数千円~数万円(コンテナサイズ・種類による)
- LCL延長:1日あたり数百円~数千円/CBM(混載業者による)
フリータイムの残り日数の確認方法
アライバルノーティスや搬入先倉庫に電話。船名やコンテナ番号で確認可能。
初心者の方は「入港日から一週間前後」と目安を決め、早めの搬出を心がけましょう。
デマレージとは?
コンテナが港に到着した後、一定期間(例:5日)以内に引き取らなければ発生。
- 通常、搬入の翌日からカウント。
- 相場:1日あたり4,000円〜(日数が長くなると高くなる)
- 輸入許可前の費用なので非課税
デマレージ(延滞料金)例
- 40Fリーファー:超過1日あたり13,500円〜
- 数日分まとめてではなく、1日単位で加算される点に注意
ディテンションチャージとは?
- コンテナを引き取った後、空コンテナを港に返すのが遅れると発生。
- 通常、搬出した日から5日以内に返却しないと課金。
- 相場:1日あたり1,200〜4,800円(コンテナサイズや日数で異なる)
- 輸入許可後の費用なので課税対象
例:ディテンションチャージ
コンテナサイズ | 1〜5日 | 6〜10日 | 11日以降 |
20F | 無料 | 1,200円 | 2,400円 |
40F | 無料 | 2,400円 | 4,800円 |
ポイントまとめ
- デマレージ=「港に置きすぎた罰金」
- ディテンション=「返却が遅れた罰金」
- どちらもフリータイムを過ぎると急に高くなる
- 正確な料金は契約するフォワーダーや船会社による
輸入品の保管に必要な倉庫とは?
輸入ビジネスでは、商品を保管するための倉庫が必要です。以下、基本だけをシンプルに説明します。
倉庫の種類
1.保税倉庫
- 関税・消費税を払う前の商品を保管
- 販売タイミングを見て国内に出せる
- 消費税が非課税になる場合も
2.一般倉庫
- 税金支払い後の商品を保管
- FBAやオープンロジが代表例
- 少量はアマゾン倉庫、大量は港近くの倉庫が便利
- 小規模事業者の輸入品保管に便利な倉庫
- 月島倉庫株式会社(Day倉庫/「ちょ庫っと」)
- 北王流通株式会社(食品)
- SBSフレック(食品)
- メーデルジャパン(ワイン保管)
- SBSロジコム(ワイン保管)
- 月島倉庫株式会社(ワイン保管)
倉庫利用の流れ
- 輸入許可を取る
- 税金支払い
- 倉庫に移動・保管
- 出荷の指示で搬出
倉庫でできること
検品、ラベル貼り、FBA納品対応など
倉庫保管料の計算方法
倉庫保管料の計算方法は契約方法で異なります。
1.寄託契約(きたくけいやく)
倉庫に「保管+作業」までお願いする契約です。荷物の出し入れや管理なども含まれます。まさに一般的な「倉庫サービス」です。
料金の決まり方は、以下のようにいくつかのパターンがあります。
- 個数ベース:1個いくらで計算
- 容積ベース:縦×横×高さのサイズで計算(例:1㎥=2000円)
- 面積ベース:保管に使う平米数で計算
- パレット単位:何枚のパレットを使っているかで計算
- 重量ベース:1kgあたりいくらで計算
- 期間ベース:10日ごとの保管数で計算(特殊なケース)
期間ベースの例(10日ごと)
1ヶ月を3つの期間(1〜10日、11〜20日、21日〜月末)に分け、それぞれの期間ごとに以下のように料金を出します。
【計算式】前の期間の在庫数+その期間中の入庫数×単価
- 前回の在庫数500個
- 今回の入庫100個と50個
→ 合計650個 × 単価で計算
この方法で、1ヶ月に3回の倉庫代が計算されることになります。
2.賃貸借契約(ちんたいしゃくけいやく)
こちらは「倉庫の場所だけを借りる契約」です。作業はすべて荷主側(=あなた)が行います。商品チェックや出荷作業は倉庫側では対応しません。
料金は主に2つの方法で決まります。
- 面積で計算:「〇〇㎡あたりいくら」
- 容積で計算:「〇〇㎥あたりいくら」
たとえば、荷物が1㎥で、倉庫の単価が1㎥あたり2000円なら、月の保管料は2000円になります。
D/Rで請求される費用の読み方と注意点
D/R(Delivery Receipt)には多くの費目が記載されます。以下のような費用は特に注意して読み解く必要があります。
- THC(ターミナルハンドリングチャージ)
- D/O費(搬出指示書の発行費)
- 書類作成費・コミッション費用
見積書とD/Rの内容に相違がないかを必ず確認し、不明点は事前に問い合わせることがトラブル防止になります。
フリーハウスチャージ、フリーハウスデリバリーとは?
フリーハウスデリバリーは、売り手が買い手の指定場所(自宅・倉庫など)までのすべての費用を負担する貿易条件です。費用には、輸出手数料・国際送料・保険・通関費用・関税・国内配送などが含まれます。
つまり、「完全無料配送」のようなイメージです。ECサイトでの販売やプレゼント時に使われることもあります。
DDPとの違い
フリーハウスはインコタームズではなく、明確な責任分担が定義されていません。一方、DDP(Delivered Duty Paid)はインコタームズの1つで、売り手がすべての費用・リスクを負うと明記されています。
問題点
- 法的な責任が曖昧
- 事故や遅延の際、トラブルになりやすい
- ウィーン売買条約(CISG)が自動適用される可能性
特にCISG第67条では、買い手への引き渡し前のリスクは売り手が負うとされており、フリーハウスでの事故は売り手責任と見なされやすいです。
対策
- 明確な責任範囲が必要な場合はDDPを使用
- 契約時に「インコタームズ」を指定する
- 保険や配送条件の明文化
フリーハウスは便利に見えて、リスク管理が不十分になりがちです。確実性を重視するなら、インコタームズのDDPなどを使う方が安全です。
費用交渉と業者選定のポイント
- 費目の詳細を事前に確認し、不明点は納得できるまで問い合わせる
- 複数社から見積もりを取得し、構成内容と金額の妥当性を比較する
- 業者の信頼性、説明責任、対応力(トラブル発生時の柔軟性)も重要な判断材料
とくに「追加費用がどこまで発生しうるのか」について事前に明確にしておくと安心です。
国際輸送の最新動向と注意点
近年の国際輸送では、次のようなリスクやコスト上昇要因に注意が必要です。
- サプライチェーン混乱による納期遅延や港湾混雑
- 燃料価格や為替変動による運賃変動
- 繁忙期(ピークシーズン)の運賃急騰
- CO2排出削減の潮流による環境チャージの導入
契約前には、これらの要因が見積金額やスケジュールにどう影響するかを確認しましょう。
見積書から読み解くコスト最適化のヒント
見積書を読む際のコツは、「費目の中身を一つずつ把握すること」です。担当者まかせにせず、自社で理解することで、
- 不要なサービスの削除
- 他社との費用比較
- 交渉材料としての活用
が可能になります。
特に、インコタームズの違いによって「どこまでの費用が含まれるか」が大きく変わるため、FOB、CFR、DDPなどの違いを把握しておくことが重要です。
まとめ
- 国際輸送費は「基本運賃+チャージ」で構成される
- 見積もりには9つの基本情報が必要
- System ChargeやCFSチャージなどの追加費用に注意
- D/Rと見積の比較確認がトラブル防止に有効
- FCLとLCLの選択は総コストだけでなく輸送条件も加味する
- 最新動向を反映した交渉と事前確認がリスク低減につながる
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