メーカーは、製造した商品に責任を持ちます。この根拠が「製造物責任法」です。
例えば、あるメーカーが粗悪な商品を製造。これを使った消費者がケガをした場合、治療費・慰謝料などの支払い義務が生じます。これは、海外商品を輸入し、国内販売をする人にも適用されるので注意が必要です。そして、この賠償責任における金銭部分をカバーするのが「PL保険」です。
そこで、この記事では、PL保険の概要、おすすめの保険会社などをご紹介していきます。
製造物責任法
製造物責任法は、製造した商品に悪い部分あり、それがもとで消費者にダメージを与えたときに、商品を製造した人がその責任を負うと定めている法律です。要は製造者は、自らが製造した商品の品質に責任を持ちなさい!と法的に要求している物です。
例えば、スケートボードを製造していたとします。工場出荷時は、完璧な状態だった。しかし、製品に不具合が見つけり、これによって、負傷する事故が発生した。つまり、粗悪なスケートボードが消費者を負傷させてしまったのです。このようなときに責任を明確にするのが製造物責任法(PL法)
- 負傷の原因は、粗悪なスケートボードにある。
- 粗悪なスケートボートを作った工場が悪い。
- よって、粗悪なスケートボードによるケガはメーカーが補償するべき
スケートボードの交換は、もちろんのこと、負傷した方の治療費や慰謝料まで支払うように義務付けています。=英語では、Product liabilityと表現します。
製造物責任法と輸入者の関係
製造物責任法では、責任者を「商品の製造者」と定めています。そして、海外から商品を輸入した商品の製造者は「輸入した者」と定められています。その根拠は、製造物責任法2条3-1にあります。
引用元:製造物責任法2条3項の1
3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
例えば、中国から商品を輸入して国内販売をしたとしましょう。輸入した商品に何らかの欠陥があり、それが基で消費者にケガをさせた場合は「輸入者」が全責任を負います。ちなみに、製造物責任法上の負うべき責任は、次の三つがあります。
- 商品代金自体の弁済
- 不良商品を使用したことによる治療費と慰謝料
- 不良商品を回収する責任
ポイントは、不良商品が「起因」となるすべての事象に対する責任を負う点にあります。当然、万が一の事とは言え、一度、商品自体に欠陥がでると、金銭的にも、精神的に非常に大きな負担を強いられることになります。そこで、この負担の内「金銭面」のリスクをカバーするのが「PL保険」です。
引用元:製造物責任法3条
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。
PL保険とは? 責任範囲はどうなるの?
PL保険は、製造物責任法による損失補填が発生したときに、金銭面で補償をする保険です。具体的には、次の2つの補償内容があり、特約により、自分で必要な補償内容を選ぶ仕組みです。
- 製品の欠陥に基づき発生した治療費や慰謝料
- 製品を回収するための費用(リコール)
1番は、消費者への直接的な補償に対する物。2番は、万が一、行政当局から全量回収命令が出された場合に、それを回収するための全費用を補償することです。特にリコールが付保されているかどうかをしっかりと確認することが大切です。
- PL保険の加入者:商品を製造する人又は、海外から商品を輸入する人
- リコール(回収)部分まで含むかを要確認
輸出者がPL保険をかけている場合もあり!
PL保険の種類と加入条件等(個人事業主等)
PL保険は、各社によって法人のみとしていたり、個人事業主まで対象としていたりと様々です。加入方法は、民間の保険会社や各地にある商工会議所などを通して加入します。
1.各保険会社が提供するもの
2.団体契約の中にある個別契約
1つめは、民間の保険会社が提供しています。ネット上で「PL保険 輸入」などと検索をすれば、すぐに見つかります。また、最近では「PL保険の選び方」がわからない方に対して、会社の状態に合わせたPL保険を設計する専門業者もいます。
三井住友、AIG損保など
2つめは、各種団体が提供する個別契約です。この団体には、主に商工会議所があります。商工会議所が保険会社と大口契約をして、会員は、その中で小口契約を結ぶ形です。保険料金単体で見ると、商工会議所の保険料金の方が安いです。しかし、商工会議所の会員になるには、年会費が発生するため、それを併せて考えると、本当に安いのかは疑問です。
もし、すでに商工会議所のメンバーであるなら二番の選択。個人事業主など、特に商工会議所に加入していないのであれば、1番を選べばいいと思います。
実際、多くの輸入者さんは、AIG(旧AIU)さんを使われている所が多いです。
お勧め→ AIG(旧AIU)
- あいおいニッセイ同和損保
- 東京海上日動
- 日本包装機械工業会
- 共栄火災
- 三井住友海上/ビジネスプロテクター
- 全国 商工会 連合 会
- 全国中小企業団体中央会/中小企業海外PL保険制度
- 損保 ジャパン/海外展開サポートプラン
- 大阪商工会議所
- 日本商工会議所/ビジネス総合保険制度
PL保険が決まる2つの基準と概算相場
PL保険の料金を決める基準は「売上高」と「補償タイプ」の2つです。売上高とは、年間で見込まれる売り上げの額。補償タイプとは、粗悪な商品の回収費用まで対象にするのか?を意味します。
- 年間の売り上げ高の見込み
- PL保険単体のみなのか?PL保険+回収なのか?
PL保険の概算相場
では、PL保険は、一体、どれほどの料金がかかるのでしょうか? もちろん、どの部分まで補償するのか?によっても異なりますが、概ね次のような金額です。
年間の売り上げが2億円までは、30万程度(年間)、1億円までは、数万~10万程度(年間)です。この料金には「回収」が含まれているため、PL保険の単体であれば、もう少し安いです。また、PL保険の料金を決めるときは、補償される部分、補償されないケースを確認されることをお勧めします。
例えば、食品を輸入するときであれば「食品表示法」の規制を受けます。この中で決められている賞味期限や消費期限、アレルギー表示が間違っていたことによる消費者へのダメージは、補償対象外になどの適用除外規定があります。「何であれば補償される、されない。」というのは、保険会社との打ち合わせで決まります。その結果、貴社における保険料金が算出されます。
PL保険の算出方法
- 保険期間 一年間
- 支払う保険料=前年度売上高×保険料率
PL法と時効の関係(保証期間/責任期間)
製造物責任法の時効は、被害者が被害を三年間行使しなかった場合又は、製造業者が商品を引き渡した日から10年間経過したときに成立します。ただし、被害が「身体的なダメージ」などにつながっている場合は、3年から5年間など、期間が延びます。
第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行使しないとき。
二 その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したとき。
2 人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
3 第一項第二号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。引用元:製造物責任法
よくある疑問
どんな商品にPL保険がかけられているの?
種類を問わず様々です。例えば、下記の品目などがございます。
お 酒、おもちゃ、エアコン、スキー、スマホ、ハンドメイド、ヘルメット、モバイル バッテリー、アクセサリー、フェイスシールド、プラモデル、ペットフード
海外のメーカーが設定しているPL法は使えないの?
おっしゃる通り、海外メーカーがPL保険を設定しているときは、その保険で賄われる可能性が高いです。ただし、この場合は、対象の製造メーカーと契約書などを結び、賠償範囲の費用的な部分での責任(日本の法律上の責任は輸入者)をどのように負担するのかを話し合いで決めておきます。
例えば、先ほどでもご紹介した通り、輸入者側が当然、守るべきことを怠っていたことによる事故(賞味期限誤表記、アレルギーなど)は、補償の対象外です。メーカー側の落ち度(製造時からの欠陥など)であれば、海外メーカーが加入しているPL保険で賄われる可能性があります。
PL保険が適用されないケースは?
次に示すいずれかのケースに当てはまる場合は、PL保険の対象外です。
- 罰金、懲罰的賠償金
- 契約によって加重された責任
- 予期していた身体的障害など
- 製品自体の損壊
- 汚染物質の排出・流出
- ジョイントベンチャー運営
- 核物質
- 戦争
- 地震、噴火、津波などの自然災害
- アスベスト
- 製品のリコール(特約を付ければ対応可能)
まとめ
- PL法は、日本国内で生産された物が消費者を傷つけたときに補償する法律
- 海外から輸入した物は、それを輸入した人がPLの規制対象になります。
- PL保険は、民間保険会社提供の物と、商工会議所提供の物があります。
- PL保険には、PL保険単体と回収費用が含まれている物の2つがあります。
- PL保険の料金は、年間売り上げ高が一億円を超えるのか?で変わってきます。
- おすすめの保険会社は、保険料の安さから、AIG(旧AIU)をお勧めします。
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