日中間の貿易を始めたばかりの方々にとって、「なぜ突然納期が遅れるのか」という疑問は少なくありません。実は、遅延の多くは、季節的なイベントによって、ある程度の予測ができます。
この記事では、日本と中国の主要なイベントごとに、遅延リスクと対策について解説していきます。
年間の主要イベントと納期遅延対策
大型連休の共通事項
中国、日本、どちらも大型連休前(時期を問わず)は、物流が非常に混雑します。理由は貨物の増加に加えて、地方出身のドライバーが帰郷し、ドライバー不足に陥る為です。
春節(旧正月)期間:最大の物流停滞期
春節は中国最大の祝日で、多くの企業が1~2週間の休暇に入ります。イメージは、日本のお盆と年末年始が同時に来るようなものです。この時期は工場の生産から物流まで、すべての業務がストップするため、年間で最も注意が必要です。
影響期間: 1月下旬~2月下旬(約1ヶ月)
主な遅延リスク:
- 工場の生産が完全に停止する(約2週間)
- 出荷業務の停止する。
- 税関の処理能力が低下する。
- 春節明けの物流集中により遅延する
対策ポイント:
- 発注のデッドライン:春節の45日前までに発注
- 在庫の確保:通常の1.5倍程度の在庫準備を推奨
- 春節明けは混雑するため、急ぎの案件は避ける
五月節(メーデー):ゴールデンウィーク並みの影響
日本のゴールデンウィークと同時期に中国でも大型連休があります。春節ほどではありませんが、多くの企業が1週間程度の休暇を取ります。
影響期間: 4月末~5月初旬(約1週間)
主な遅延リスク:
- 工場の生産停止(約1週間)
- 港湾・空港のスタッフが減少する。
- 連休前後Bに混雑する。
対策ポイント:
- 連休の3週間前までに重要案件の出荷を完了させる。
- 連休明け1週間は納期に余裕を持つ
梅雨期:輸送品質リスクの高まる時期
梅雨は日本特有の気象現象です。しかし、実は、中国南部も同様に雨季です。この時期は天候不順による輸送遅延だけでなく、湿気による商品品質への影響も考慮する必要があります。また、台風等の影響を受けることも多いです。
影響期間: 6月~7月
主な遅延リスク:
- 天候による港湾作業の中断等が発生
- 湿度による商品の劣化する。
- 航空貨物の遅延が増加しやすい。
対策ポイント:
- 防水梱包の徹底
- 代替輸送ルートを確保しておく。
- 納期に1週間程度の余裕を持つ。
中秋節と国慶節:秋の長期物流停滞期
9月から10月にかけて、中国では中秋節と国慶節という2つの重要な祝日が続きます。この時期は断続的に休暇があり、生産・物流への影響が長期化しやすいです。また、秋冬物の輸入時期にも当たる為、より一層、シビアな状況です。
影響期間: 9月中旬~10月初旬
主な遅延リスク:
- 2つの祝日による断続的な停止
- 工場の生産調整
- 輸送能力の低下
対策ポイント:
- 祝日をまたぐ納期設定は避けた方が良い。
- 9月初旬までに重要案件の出荷を完了する。
- 10月中旬以降に納期を設定
年末年始の繁忙期:日中双方の混雑
クリスマスや年末商戦の影響で物流量が増加。日本の年末年始休暇と中国の春節準備期間が重なり、繁忙期を迎えます。
影響期間: 12月~1月
主な遅延リスク:
- クリスマス商戦による物流増加
- 年末年始休暇による業務停止
- 寒波による輸送遅延など
対策ポイント:
- 12月15日までに年内必着案件の出荷を完了
- 年始は1月10日以降の納期設定がおススメ!
年度末の駆け込み需要期
日本企業の決算期に当たる3月に向けて、多くの企業が駆け込みで輸出入をするため、物流が増加します。また、春節の影響が残る時期とも重なります。
影響期間: 2月下旬~3月
主な遅延リスク:
- 決算期による出荷の集中
- 海上・航空運賃が高騰しやすい。
- 緊急扱いの出荷が増える。
対策ポイント:
- 可能な限り2月中旬までに出荷を完了させること
- 運賃高騰に備えた予算を確保すること
日常の対策
- 情報収集と共有
- 在庫管理
- 納期設定
情報収集と共有
物流の遅延は突然発生するように見えて、実は何らかの前触れがあります。日々の情報収集と関係者との共有が、予期せぬ遅延を防ぎます。
- サプライヤーの休暇を事前に確認すうR(工場の休み、現地の祝日カレンダーの入手、臨時休業の把握など)
- 船会社・航空会社の運航スケジュール変更に注意(台風等の気象情報の把握)
- 現地スタッフとの情報交換(LINEやWechatなどでの共有も有効)
在庫管理
適切な在庫管理は、物流遅延による影響を最小にします。ただし、過剰在庫は資金繰りに影響を与えるため、バランスの取れた管理が大切です。
- 特に重要な商品は、祝日前に在庫を増やす
- 季節商品は、3ヶ月前から準備を開始する
- 安全在庫レベルを考慮する。
例えば、売り上げへの影響が大きい在庫を優先的に確保したり、繁忙期、イベント等を考慮した在庫レベルの調整をしたりすることが重要です。仮にアマゾンで販売している方は、日数や週ごとの販売個数がわかるはずです。この数字を基準にして逆算をしていくと、中国側に発注をするべきタイミングがわかります。
ただし、このタイミングは、季節等に大きな影響を受ける為………..
- ある時期は、1か月前の発注でも問題なかった。
- しかし、別の時期だと2か月に発注しないと間に合わない。
こういうことも十分に考えられます。
納期設定のコツ
適切な納期設定は、顧客との信頼関係を築く基礎となります。遅延リスクを考慮しつつ、現実的な納期を提示することが重要です。
- イベント期間の前後1週間はバッファ(余裕期間)として確保
- 顧客への納期は、実際の予定より1週間余裕を持つ(通関トラブル、遅延等も考慮)
- 天候リスクの高い時期は更に余裕を持つ
イベント期間の納期は、普段と比較して輸送期間がながくなることを想定します。先方に対して無理な納期を設定しすぎると納期遅延につながり損害賠償の請求になることもある。早めの到着の方が顧客満足度は高い。しかし、遅延すれば、一気にマイナスの印象を与えることにある点に留意した方が良いでしょう。
まとめ:遅延を防ぐための3原則
- 先手を打つ: 各イベントの2ヶ月前から対策を開始
- 余裕を持つ: 標準納期+イベント影響期間で計画
- コミュニケーション: 関係者全員と情報共有を徹底
初めての貿易では、思わぬトラブルに遭遇することもあります。しかし、これらの季節イベントによる影響は、事前の準備で大きく軽減できます。この記事を参考に、計画的な貿易を目指しましょう!
HUNADEでは、日中間の貿易カレンダー(シルクロードカレンダー)を公開しています。季節性イベント等を考慮した輸送料金の変動、混雑度、カットタイム等を一つのカレンダーにまとめて掲載しています。よろしければ、ご活用ください。
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