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AWBのDeclared Valueと責任限度|モントリオール条約22条とBrink’s v. Air Canada判例

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AWBの特別利益申告で責任限度は変わる?

  • Brink’s v. Air Canada(2025)では、AWBに金額未記載+追加運賃不払で特別利益申告は不成立。
  • 裁判所はモントリオール条約22条を適用し、事故時点の上限22SDR/kgを適用。
  • 実務はAWB「Declared Value」欄記載+追加運賃証憑保存が限度突破の必須条件。

事件の焦点:申告価額で限度突破できる?

Brink’s Inc. v. Air Canada(Federal Court of Canada, 2025 FC 110、Docket T-2124-23、判決日 2025年1月20日・Strickland判事)は、金塊や紙幣の盗難をめぐる事案です。

裁判所は、モントリオール条約22条3項(貨物の責任限度額)を適用し、上限を 22 SDR/kg と判断しました。その上で、AWBに記載された特別利益申告(special declaration of interest)によって限度を超える請求を行うことは認められず、申告不備により22 SDR/kgの上限が適用されると結論づけています[F1]。要旨(25字):申告不備で22SDR/kg適用。

なお、現在の限度額は 26 SDR/kg に改定済みですが、本件では事故発生日(2023年4月17日)時点の上限(22)で計算されています[F1][F2]。

なぜ争いになったの?

本件は、チューリッヒからトロントへ輸送された約400kgの金塊と紙幣が、到着直後にAir Canadaの保管下で盗まれた事件です。Brink’sは損害額の全額(約2,000万カナダドル)の賠償を求めました。その根拠として、AC Secureなど高額貨物向けサービスを選んでいたことや、FWB/FHLに貨物の価値情報を記載していたことから、特別利益申告(special declaration of interest)が成立すると主張しました。

一方、Air Canadaは、AWBの「Declared Value for Carriage」欄に金額が書かれていないこと、追加運賃(supplementary sum)の支払い証拠もないことを理由に、モントリオール条約の責任限度額を適用すべきと反論しました[F1]。

裁判所が重視したポイント理由

特別利益申告(Art.22(3))の要件

成立には次の2条件が必要です。

  1. 到着時の利益を特別に申告(monetary valueを明示)
  2. 追加運賃の支払い

本件では、VAL/PRIのIATAコード付与やAC Secureの利用、FHLへの価額記載があっても、AWBの「Declared Value for Carriage」欄に金額を明記し、追加運賃を支払った証拠がなければ不十分と判断されました。Brink’sの「高額扱い=申告」という主張は退けられ、特別利益申告は不成立となりました[F1]。

限度額の適用

その結果、モントリオール条約の22 SDR/kgの責任上限が適用されました。算定は金塊8,811 SDR、紙幣1,177 SDR、合計9,988 SDR。裁判所はサマリージャッジメントでこれを認め、さらに「追加運賃支払いの証拠がない」点も補足的に指摘しました[F1]。

時点の問題

限度額は2024年12月28日に26 SDR/kgへ改定されましたが、本件事故は2023年発生のため、当時の22 SDR/kgが適用されると整理されています[F1][F2]。

参考判例(補助)

訴訟地(FNC)やAWB記載の位置づけを扱った事例です。AWBの価額記載や条項の管理が紛争の結論を左右することを示す補助的な参考判例とされています[F3]。

中小企業が同じ失敗を避けるためには?

AWBの記載と保存

AWBの「Declared Value for Carriage」欄に必ず金額を記載し、追加運賃の請求書や領収書を案件フォルダに保存します。価額の明示と追加運賃の支払い、この2要件を同時に満たすことが必須です[F1]。

高額貨物の事前稟議テンプレ

貨物価値と責任限度額(SDR/kg)を比較し、上限を超えるかを数値で判断。必要なら自動的に特別利益申告と追加運賃を選ぶ稟議フローを作成します。

フォワーダー/キャリアへの発行指示

AWBのドラフトを事前確認し、「Declared Value」欄と課金ラインを二重チェックすることを義務化します。

契約文書の突合

レート契約、見積、メールでの合意、SLAに価額申告や追加運賃の合意が明記されているかを確認し、証拠として残します。

限度額26 SDR/kgの反映

社内SOPや計算シートを最新の限度額に更新します。また「事故発生日時点の係数を適用する」と明記しておくことが重要です[F2]。

現場で実装するチェックリスト

出荷前:

  • 価額が社内基準を超える場合は、AWBのDeclared Value欄に金額を明記。
  • 追加運賃の請求書・領収書を発行前に確保。

書類管理:

  • AWB最終版、FWB・FHLログ、課金明細を一式保存。
  • 件名は “AWB××× Declared Value & Supplementary Sum”で統一。

受託後(到着時):

  • 受領時に損害・盗難などCARGO IRREGULARITYがあれば、Art.31に基づき通知を期限内に送信(貨物14日/遅延21日)。
  • 通知は到達記録を保全。

教育:

営業・購買・物流に対し、“VAL/PRI表示=申告ではない”ことを年次訓練で明示。

インサイト:中小企業への学び

Brink’sのような大企業でも、「高額扱い=特別利益申告」と誤解した結果、数億円規模の回収が不可能になるケースがあります。限度額を超えるには、

  1. AWBの「Declared Value」欄に金額を明記する
  2. 追加運賃を支払った証拠を残す

この2点が必須です。VAL/PRIやSLAの文言だけでは不十分であり、実務で再現性の高い重要な教訓となります[F1]。

要点まとめ

  • VAL/AC Secure ≠ 申告価額。AWBのDeclared Value(数値)+追加運賃が必須[F1]。
  • 本件は22SDR/kg(事故時点)。現在は26SDR/kg。社内SOPの時点適用を明記[F1][F2]。
  • AWBドラフトの事前レビューと証拠化(請求・領収・FWB/FHLログ)が回収の土台。
  • ChimetはAWB記載・管轄の重要性を補強する参考例[F3]。

末尾注:※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です

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