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航空貨物クレーム完全ガイド|モントリオール条約の責任限度・26SDR/kg・通知期限・時効2年を解説

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貨物事故の線引きを1枚で理解する(SME向け)

  • モントリオール条約は航空貨物事故の責任範囲・限度額・期限を明確化し、2024年12月以降は26SDR/kgが上限。
  • 空港外の事故は原則対象外だが積替等は航空中と推定され、抗弁や通知期限(14日/21日)、2年時効が結果を左右。
  • 実務では特別利益申告で上限引上げ、証拠確保と期限管理の自動化がSMEの損失回避に直結。

事件の概要

国際航空貨物で損害(滅失・き損・遅延)が発生した場合、中小企業がまず押さえるべきポイントは次の3つです。

  1. 航空会社の責任範囲はどこまでか?
  2. 請求できる金額はいくらか?
  3. どの国の裁判所に訴えるのか?

これらはすべてモントリオール条約1999(Montreal Convention)で明確に定められています。

最新の限度額は 26 SDR/kg(2024年12月28日以降) であり、さらにクレーム通知の期限や訴訟の消滅時効(2年)も条約によって固定されています[F1][F2]。このルールを理解することで、事故発生時にスムーズに対応し、請求のチャンスを逃さずに済みます。

責任の成立と限度額・期限の「落とし穴」を避ける

航空貨物のクレームは、次の3点を押さえるかどうかで大きく結果が変わります。

1. 航空運送中に起きたか?

「carriage by air(航空運送中)」に発生した損害であることが必要です。空港外の陸送や内陸水路での事故は原則として対象外です。ただし、積込・引渡し・積替のために外部運送中に起きた損害は、航空運送中に起きたものと推定されます(反証可能)[F1:Art.18(3)(4)]。

2. 航空会社の抗弁(defences)

以下の場合、航空会社は免責されます。

  • 貨物自体の固有の欠陥(inherent defect)
  • 第三者による梱包不良(defective packing by others)
  • 戦争行為(act of war)
  • 公的機関による行為(act of public authority)[F1:Art.18(2)]

3. 責任の限度額と期限

貨物の損害賠償は、SDR/kgで上限が決められています。通知・提訴の期限も厳格で…….

  • ダメージ(損傷):貨物受領後14日以内に書面通知
  • 遅延:引渡可能日から21日以内に書面通知
  • 訴訟提起:2年以内に行う必要あり

また、2024年12月28日以降は限度額が 26 SDR/kg に改訂されています[F1:Art.22(3), 31, 35][F2]。

すぐに使えるクレーム実務テンプレ(荷主SOP)

輸送区間の切り分けメモ

出発空港、到着空港、そして空港外の陸送区間をAWB番号(Air Waybill)と一緒に案件フォルダへ整理。どの区間で損害が発生したかを、Art.18(3)(4)に沿って特定できるようにします[F1]。

証拠パック

  • 破損・水濡れ・匂いなどは、開梱前の外観→開梱直後→内容物の順で撮影。必ず日時と場所を記録。
  • 温度/衝撃ロガーの原データ、ULDや保冷材の使用記録を保存。貨物駅やターミナルのCCTVは、開示請求の起点をメモ化。
  • 梱包仕様書と梱包者(荷主/委託者/第三者)を特定。第三者梱包の場合は、Art.18(2)(b)の抗弁に備え、指示書や作業票を保全[F1]。

通知の自動化

引渡当日をトリガーに、ダメージは14日以内/遅延は21日以内に書面通知(メールテンプレ+送達証跡)を自動送信。件名にAWB番号・到着日・“Art.31 notice”を明記して証跡化します[F1]。

限度額突破の設計

高価格品や温度管理品は出荷前に“Special declaration of interest(特別利益申告)”=申告価額をAWBに記載し、追加運賃を支払ってSDR/kgの上限を引き上げます[F1:Art.22(3)]。

社内では例えば「1,000万円相当/ロット」などのしきい値を設定し、購買と物流が事前に合意できる稟議フォーマットを用意しておきます。

フォーラムの先読み

紛争時に提訴できるのは原則4択です。

  1. 航空会社の本拠
  2. 主たる営業所
  3. 契約締結地の営業所
  4. 仕向地(目的地)。

旅客専用の「第5の法廷」は貨物には使えません。必要に応じて、仲裁合意(Art.34)で上記のいずれかを指定しておきます[F1:Art.33, 34]。

荷主が今すぐ整えるチェックポイント

契約前:

  • 高額・リスク貨物は特別利益申告(Art.22(3))の社内基準と稟議ルートを明文化。
  • 仲裁条項(Art.34)または準拠法/裁判管轄の下書きを用意(第4の法廷=目的地に合わせる等)。

出荷時:

  • 梱包仕様書・作業者の記録(第三者梱包なら社外者名を明記)。
  • 温度/衝撃ロガー搭載と回収計画(データ抽出担当を指名)。
  • AWB情報の一元台帳(発地・仕向地・契約営業所)。

到着後:

  • 受領検査プロトコル(写真順序・温度ログ保存・不具合の即時記載)。
  • Art.31通知の自動送信(14日/21日)と送達証跡のPDF化。
  • 提訴期限カレンダー(到着・到着予定・運送停止の3起算日で最短日→2年)を案件管理に自動登録(重複アラート)。

インサイト:中小企業への学び

  • “どの区間の出来事か”の特定能力が回収力を左右します。Art.18(4)の推定規定は、空港外での積替等に光を当てる実務利器です。輸送設計と現場記録をつなぐだけで、因果の線が強くなります。
  • 限度額の“設計”は荷主主導で行えます。特別利益申告+追加運賃という条文上の手段を、社内のしきい値と事前稟議でルーチン化すれば、ハイリスク貨物での数百万円規模の取り逃しを抑えられます。
  • 期限は待ってくれません。Art.31の通知・Art.35の2年消滅時効は硬い。自動トリガー化とテンプレ運用が最も費用対効果の高い対策です。

根拠と引用(一次資料)

  • [F1]Convention for the Unification of Certain Rules for International Carriage by Air (Montreal Convention, 1999) — EUR-Lex(Official Journal L 194, 18/07/2001, p.39–49)https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:22001A0718(01):en:HTML
  • [F2]ICAO(国際民間航空機関):2024年改訂「Revised Limits of Liability Under the Montreal Convention of 1999」https://www.icao.int/secretariat/legal/LEB%20Treaty%20Collection%20Documents/2024_Revised_Limits_of_Liability_Under_the_Montreal_Convention_of_1999_en.pdf
  • [F3]Court of Justice of the European Union(CJEU):Art.31の位置づけ(受領時無催告=適正受領の推定)を前提にした判断。例:Case C‑258/16(判決文参照)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:62016CJ0258

要点まとめ

  • 航空運送中の出来事がポイント。空港外でも積替等目的の外部運送は航空中の推定。
  • 抗弁(固有欠陥/第三者梱包不良/戦争/当局行為)を逆算して証拠を集める。
  • 限度額は今は26 SDR/kg(2024/12/28〜)。高額品は特別利益申告で上限引上げ。
  • 通知は14日(ダメージ)・21日(遅延)の書面。2年で請求権は消滅。
  • 提訴先は4択(本拠/主たる営業所/契約営業所/目的地)。貨物には第5法廷なし。

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

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