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CISG適用の日本判例|東京地裁2020「南通君森 v Waymark」事件と通知15日条項の実務

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CISG適用の日本判決:南通君森

  • 東京地裁(2020年)は、中国売主×日本買主の紛争でCISGを適用し、通知15日条項を合理期間の具体化と認定。
  • 買主の遅れた不適合通知は失権と判断され、未払代金請求が認容された。
  • 契約で通知期間を数値化することが、紛争リスク低減に直結することを示した判決。

この事件は、中国の売主と日本の買主との間で起きた国際物品売買契約をめぐる紛争です。

概要

争点となったのは、CISG(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods=ウィーン売買条約)の適用を当事者が排除できるか(CISG 6条)、また不適合通知(notice of lack of conformity:CISG 39条)の通知期間を契約でどこまで調整できるか、という点でした。

東京地方裁判所は、2020年12月8日の判決で、CISGの枠組みを前提に判断を行いました。具体的には、当事者間で合意されていた「15日以内の通知条項」をCISGが定める「合理期間」の具体化と認め、買主の通知が遅れたことを理由に不適合の主張を退けました[F1][F2]。

事案の背景(タイムライン)

  • 2017年5月・6月:当事者間で衣料品の国際売買契約を複数締結しました。各契約には「到着後15日以内に品質・数量についてクレーム通知を行うこと」(“within 15 days after the goods have arrived at the port of destination”)という条項が盛り込まれていました[F1]。
  • 2017年7月以降:買主の顧客から不適合の申し出や返品、値引き要請が相次ぎました。売主は未払い代金の支払いを請求しましたが、買主は不適合による損害を理由に相殺を主張しました[F1]。
  • 2017年10月27日:買主が不適合を売主に通知しました。ただし、貨物は遅くとも7月21日までに引き渡しを受けていたため、この通知は3か月以上経過後と認定されました[F1]。
  • 2020年12月8日:東京地方裁判所(2018(Wa)No.26853)は、CISG 39条1項の「合理期間」を契約上の15日と解釈し、買主の不適合主張を退けました[F1][F2]。

主張(当事者の言い分)

  • 売主(中国):未払代金の支払いを請求。契約条項で「到着後15日を過ぎた通知は無効」と定めており、不適合の主張は失権(loss of the right to rely on a lack of conformity)したと主張[F1]。
  • 買主(日本):顧客からの返品や値引対応による損害を理由に相殺を主張。通知はCISG 39条の「合理期間」内、または39条2項の2年期間内であるから有効だと抗弁(趣旨)[F1]。

判決理由(要旨)

条約適用と部分的な特約(CISG 6条)

裁判所は、当事者がCISGの適用を全面的に排除(Exclusion)したのではなく、通知期間などの個別事項について効果を修正(Derogation/Vary the effect)したものと理解しました。つまり、CISGの枠組みを前提にしつつ、特約が優先される場合があると判断しました[F1][F3]。

39条1項「合理期間」の具体化

契約で定められた「到着後15日以内の通知条項」は、CISG 39条1項にいう合理期間(reasonable time)を当事者間で具体化したものと評価されました。そのため、15日を過ぎてからの通知は、買主が不適合を主張する権利を失うと判断されました[F1][F5]。

39条2項との関係

CISG 39条2項では、不適合通知の最長期間を2年としていますが、条文上「保証期間(period of guarantee)と矛盾しない限り」という条件が付されています。本件では、契約の15日条項が通知の範囲を39条1項の合理期間として定めたと解釈され、結果として2年以内であっても15日を超える通知は認められないと整理されました[F1][F5]。

判決要旨(25字):「合理期間は合意15日と解す」

判決内容

  • 裁判所・事件番号・日付:東京地方裁判所、2018(Wa)No.26853、2020/12/8。
  • 結論:買主の不適合主張(相殺抗弁)を通知遅れにより退け、売主の未払代金請求を認容(範囲は本文原文記載)。原文は日本語、英語要旨が公開されています[F1][F2]。

課題(なぜトラブルが起きた?)

通知条項の理解不足

「到着後15日以内」という条項が、CISG 39条にいう合理期間の具体化であることを十分に理解できていませんでした。そのため、社内の検収や通知のプロセスが追随できていませんでした[F1]。

「2年規定」への過信

CISG 39条2項の2年という最長期間は、契約で定めた保証期間との関係で短縮され得ることを見落としました。結果として「2年以内なら問題ない」という誤った認識が生じました[F1][F5]。

適用排除条項の不備

「準拠法:日本法」といった一般的な条項だけでは、CISGの適用排除(Art.6)にはならないのが国際実務の通説です。本件ではCISGの一部を排除・調整する明確な条項設計が必要でした[F3]。

上記は、記事執筆者の分析であり立証されていないです。

貿易実務者が学ぶべき5つのポイント

1.「通知15日ルール」をワークフロー化

到着(ARRIVAL)日を起点に、検収→記録→対外通知を営業日で逆算。内部締切10日、対外通知15日を基準にし、休日をまたぐ場合は出荷書類の到着日も併記して証拠化します[F1]。

2.39条2項「2年ルール」は保険ではない

CISG 39条2項の「最長2年」は万能ではありません。保証期間や約款で合理期間が短くなる場合があります。契約書の脚注で明示し、返品承認(RMA)や検査委託の開始条件も契約に結び付けて管理します[F1][F5]。

3.CISG 6条を契約に明文化

「CISG適用。ただし次の点は当事者が変更」と記載し、(a) 通知期間、(b) 検収方法、(c) 代替品・修補(Art.46)の手続を条文に対応づけて列挙。全面排除なのか部分調整なのかを明確にします[F3]。

4.到着基準を客観化

「port of destination」に到着したことを示す資料(A/N、D/O、CY搬入票、ゲートアウト記録)を案件ごとにフォルダ保存・共有。英語表記も併記して証明を容易にします[F1]。

5.相殺運用の前提を整理

相殺を主張するには、不適合を適時に通知していることが前提です。社内稟議テンプレートに「通知日」と「到着日」を自動突合する欄を設け、チェックを徹底します。

今日からできるチェックリスト

  • 契約書に通知・検収条項の日数が明記され、“reasonable time”が数値化されているか。
  • 到着日(destination到着)の記録根拠が一貫して保存されているか。
  • CISG 6条に基づき、全面排除か部分調整かを契約条項で明確にしているか。
  • RMA/QCフローが「15日ルール」で運用できるよう社内SOPを更新しているか。

💡インサイト(中小企業への学び)

「合理期間」は状況により変わりますが、契約で具体的に定めれば客観的に運用できます。本件では「到着後15日以内」との条項がCISG 39条1項の合理期間を具体化し、2年以内でも通知が遅れれば権利を失いました。“2年あるから安心”ではなく、契約で検収・通知の日付を固定化することが、代金回収や品質紛争のコストを抑える最短ルートです[F1][F5]。

要点まとめ

  • CISGの枠組み内での部分調整(Art.6)を前提に、15日通知条項が39条1項の合理期間を具体化[F1][F3]。
  • 39条2項の2年より契約条項が優先し得るため、遅延通知は失権[F1][F5]。
  • 到着日の客観証拠と社内SOPが実務の勝敗を左右。

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