航空便と海上輸送では、費用や納期、取り扱える貨物に大きな違いがあります。本記事では、航空便と海上輸送の価格差・比較や、航空輸送できないもの、航海日数の計算方法まで、実務に役立つ視点でわかりやすく解説します。最適な輸送手段の選び方が見えてきます。
この記事で取り扱う話題
- 航空便と海上輸送の価格差・比較
- 航空輸送できないもの
- 航海日数の計算
航空便と海上便の違いを徹底解説!
海上輸送と航空輸送の特徴と違い
海上輸送は、費用を抑えたい大量貨物の輸送に最適です。一方、航空輸送は、納期が厳しい場合や高付加価値品の輸送に向いています。
- 海上輸送:コンテナ単位または混載単位での運搬。コストは安いが日数がかかる。
- 航空輸送:小口貨物向け。費用は高いが短納期。

選択のポイントは、価格重視か、スピード重視か、または貨物の特性(壊れやすい・腐りやすい)にあります。
海上輸送の特徴 メリット・デメリット
- たくさん運べてコストが安い
- 大きな荷物や危険物もOK
- 環境にやさしい(CO₂が少ない)
- フェリー便はスケジュールが安定
- 時間がかかる(特に長距離)
- 港によって使えないことがある
- 荷物が水や湿気で傷むことがある
- 事故や会社の倒産リスクあり
- 天候やスケジュール遅延リスク
- サーチャージ(追加料金)の不透明さ
- コンテナや貨物のダメージ
- 共同海損リスク
- 港湾インフラへの依存
国際輸送は、東京港・横浜港などで使い分けられています。詳細は東京港と横浜港の違いをご参照ください。
航空輸送の特徴 メリットとデメリット
- とにかく早い
- 通関や手続きもスムーズ
- 安全性が高く、追加費用が少ない(一部、追加費用アリ)
- 高付加価値・高鮮度商品の輸送に最適
- 内陸部へのアクセス性
- 運賃が高い
- 大きい荷物や危険物は送れない
- CO₂が多く、環境に負荷がかかる
- 輸送量・貨物サイズの制約
- 危険物や特殊貨物の制限
- コストの高さ
- 環境負荷の大きさ

航空輸送では「ULD(Unit Load Device)」という専用のパレット・コンテナを使って積載します。最大重量やサイズには制限があります。詳しくは航空輸送の様々な制限(最大積載量、高さ制限等)をご覧ください。
コスト比較:船便は航空便の5分の1!?
一般的に、同一ルート・同一貨物量で比較すると、航空輸送は海上輸送の5~7倍の費用がかかります。常に(地域や貨物によっては2倍~10倍の差があります。)
たとえば、1CBM(立方メートル)の貨物を東京からバンコクへ輸送する場合:
- 船便:おおよそ15,000〜20,000円
- 航空便:おおよそ80,000〜100,000円
ただし、航空便は保険料や梱包費などの周辺費用を削減できる場合もあるため、総合的なコスト比較が必要です。また、燃料サーチャージや為替レートの変動などが価格に影響するため、常に最新の情報をチェックしましょう。
航空便は下記のような価格吸収力がある製品にピッタリです。
- 電子部品
- 医薬品等
- 書類 重要な書類
所要日数の違いと到着のズレに注意
輸送時間は、航空便のほうがずっと早いです。急ぎの荷物は、基本的に航空便を使います。
例えば、海上輸送では、天気(濃霧)や港のストライキ、船会社のトラブルなどが原因で、大きく遅れることがあります。時間に余裕がない荷物や、大事な物は、航空便で送るのが安心です。
海上輸送では、ETAがよくズレるため、最新のスケジュール確認が重要です。コンテナ船が遅延する7つの理由もあわせてご確認ください。
航空便が向いている荷物の例
- 季節物の衣類や食品(アメリカンチェリーなど)
- 緊急書類や手荷物扱いの貨物
- 生産に必要な重要部品や原料
小口の荷物を複数まとめて送る方法として「混載航空便(Consol便)」があります。コストを抑えたいときに有効な選択肢です。詳細はコーロード(混載)とは?で解説しています。
所要日数の目安
- 航空輸送:出荷から配達まで約2~5日(通関を含む)
- 海上輸送:1週間~数週間(航路や混雑状況による)
特に東南アジア向けでは、航空便ならその週のうちに届きますが、海上便だと2~3週間以上かかることもあります。季節や港の混雑で、ETA(到着予定日)はずれるので、事前に納期をしっかり確認しておきましょう。
航海日数の計算方法は?
○○から、○○までは、何日かかるのか? このような航海日数は、「コンテナの航海日数まとめの記事」や「標準航海日数表」で調べられます。
航空輸送の制限品目と重量制限
航空輸送では、以下のような制限があります。
- 危険品(電池、スプレー、薬品等)は制限または禁止
- 液体や粉末、リチウム電池は特別な包装と申告が必要
- 重量やサイズに上限(1梱包あたり100~300kg程度が目安)
また、空港ごとの規制や航空会社ごとの制限もあるため、輸送前に必ず確認を取りましょう。特にリチウム電池などの危険物は、IATAの規制に基づいた梱包・申告が必要です。具体的な規制内容はリチウムイオン電池の海上・航空輸送ガイド(SP188)で紹介しています。
海上輸送に向かない荷物とは?
次のような荷物は、海上輸送にはあまり向いていません。
- すぐに傷む食品や花など(※冷蔵・冷凍コンテナを除く)
- 精密機器や高額な電子部品(湿気・衝撃に弱い)
- 納期が短いサンプル品や販促物
このような荷物は、スピードが早く品質も保ちやすい航空便を選ぶのがおすすめです。
航空便で送れるもの・送れないもの
航空便では、何でも送れるわけではありません。ここでは、よくある品目が「送れるかどうか」をわかりやすくまとめました。
記号の意味は以下の通りです。
- △:条件つきで送れる(航空会社によってNGの場合あり)
- ×:基本的に送れない(特別な許可が必要)
下の表を参考にして、あなたの荷物が航空輸送に向いているかをチェックしてみましょう。
- エアゾール(△)
- 化粧品(△)
- バッテリー(△)
- 酸化銀電池(△)
- 酸素ボンベ(×)
- ヘア・アイロン(△)
- ヘア・カラー(△)
- ガスシリンダー(×)
- ガス・スプリング(×)
- 液体(△)
- 電化製品(△)
- グリス(△)
- グリセリン(△)
- マグネット(△)
- マッチ(△)
- マニキュア(△)
- 漂白剤(△)
- 腐食性物質(△)
- ドライアイス(△)
- マンガン電池(△)
- 医薬品(△)
- モバイルバッテリー(△)
- リチウムイオン電池(△)
- ガスコンロ(×)
- ガスボンベ(×)
- ポータブル電源(△)
- 精密機器(△)
- ニッカド電池(×)
- ニッケル水素電池(×)
- ネオジム磁石(△)
【危険物】リチウムイオン電池の海上・航空輸送ガイド SP188

詳細はIATA Dangerous Goods Regulations(IATA DGR、IATA航空危険物規則書)をご確認ください。
航空運賃の計算方法と注意点
航空便の送料は、次の計算式で決まります。
レート(1kgあたりの基本料金)
出発地と到着地で金額が違います。
- 中国・韓国:100~150円/kg
- 東南アジア:150~200円/kg
- 北米・欧州:300~400円/kg+トラック代
課金重量とは?
「実際の重さ」と「大きさで計算した重さ(容積重量)」を比べて、大きい方を使います。
容積重量=縦×横×高さ(m)×1000 ÷ 6
※軽くても大きい荷物は料金が高くなります。
割引交渉できるケース
実重量が大きい荷物(デンシティー貨物)は、フォワーダーを通じて割引交渉できることもあります。
輸送価格は時期によって変動
- 高い:10~12月、GW・お盆前
- 安い:7~8月
海上便が使えないときは急騰の可能性あり
輸送コストを下げる工夫とは?
- 梱包を最適化し、容積を抑える
- デンシティー貨物なら料金交渉を
- 閑散期を狙って出荷スケジュールを調整
- 燃油サーチャージの安い航空会社を選ぶ
- 混載(コンソリデーション)の活用
- 長期契約やフォワーダーとの交渉
- スポット輸送の活用
- 複合輸送(モーダルシフト)の検討
- 輸送費が安い空港を使う。
→料金と納期は必ず事前確認を!
輸送前に知っておきたい手続きと契約のポイント
輸送方法を決めるときは、FOB/FCAやCIF/CIPなどの契約条件(インコタームズ)も大事です。
例えば、FOB契約では、買い手が輸送を手配するため、船便にするか航空便にするかを自分で選びます。航空便は、書類のチェックがとても厳しいです。ミスがあると出荷に遅れが出ることがあるので、次の書類は必ず事前に確認しておきましょう!
- インボイス
- パッキングリスト
- MSDS(危険物の情報)
環境にやさしいのはどっち?
CO₂の排出量で比べると、海上輸送のほうがずっと少ないです。たくさんの荷物をまとめて運べるため、1トンあたりの排出量は航空便の10分の1以下になることもあります。
最近は、企業が環境に配慮した輸送方法(脱炭素経営)を選ぶ動きが広がっていて、海上輸送があらためて注目されています。
どちらを選ぶ?輸送手段の選定基準
最終的な判断は以下の観点で行います。
- 納期:急ぎなら航空、余裕があるなら海上
- コスト:価格優先なら海上
- 品目:壊れやすい、劣化しやすいなら航空
- 輸送量:少量なら航空、大量なら海上
- 環境負荷:CO2排出を考慮するなら海上
- 距離・所要時間:距離・経由地によって航空でも遅い、海上でも早いことあり
- スケジュール安定性:航空は便数多く柔軟、海上は便数少なく遅延時の影響大
- 通関の速さ:航空は通関が早く、海上は時間がかかりがち
- サイズ・重量制限:航空は制限が厳しく、海上は大型・重量物に適する
- 危険物対応:一部の危険品は航空不可、海上で対応
- リスクと保険:海上はリスク高く保険も重要
- 在庫管理:航空は在庫圧縮やJIT納品に有利
- 港・空港の利便性:利用インフラにより選択肢が変わる
また、ハイブリッド輸送(例:航空+トラック、海上+鉄道など)を使った柔軟な設計も視野に入れると、コスト最適化とリスク分散が可能です。最近ではCO₂排出量に応じた「環境チャージ」も導入されつつあります。海運市況の指標と環境コスト(CCFI・BDI等)も参考にして、今後の輸送戦略に役立てましょう。
まとめ
- 航空は早くて高い、船便は遅いけど安い
- 貨物の特性、納期、コスト、環境負荷を踏まえた輸送設計が重要
- 制限品目・容積重量計算など、見積り時の確認を忘れずに!
- 契約条件(インコタームズ)と書類手続きも要注意
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