2024年7月11日、21:30分頃、アメリカの労働省労働統計局(Bureau of Labor Statistics, BLS)から消費者物価指数(CPI)を発表されました。
円相場は、一ドル161.5付近から30分足らずで157.5付近まで一気に円高へ。一段目、二段階目と2つに分かれて強烈な動きがありました。当時、この異状な動きに対して、Xでは、指標の発表とあわせて介入が入ったのでは?との推測も出ていました。
さて、貿易をする者としては、今後の円安や円高の方向性が気になります。海外貿易には、商品の買い付け時や販売時に、必ず円転又はドル転のタイミングがありますので…汗
この記事では、為替との貿易取引の関係、為替に影響を与える重要指標、為替によるリスク、貿易実務における為替ヘッジの方法を解説していきます。
画像引用:みんかぶ
貿易と為替の関係
一ドルは、○○円と交換する。これが為替です。日本円と外貨を交換する時に関係します
例えば、海外から商品を輸入する場合は、円からドルに交換した後、ドルで商品代金を支払います。海外へ輸出する場合は、この逆です。もちろん、自国通貨建ての取引を実現できれば、為替による影響は受けないです。
為替レートは、円やドルなど、通貨に対する需要で決まります。円が欲しい人が増えれば、円高へと変化。=円高。この場合は、少ない円で外貨(米ドル)などを得られます。逆にドルが欲しい人が増える=ドル高。この場合は、上記とは逆です。
2024年7月現在、円は、世界の様々な通貨に対して通貨安(円安)です。つまり、以前よりもより多くの日本円を支払わない限りドルやユーロを手にできない状況です。
貿易と為替レートの変化による影響
為替の取引は、基本的に土日を除き、24時間、世界中で行われています。主な市場は、米国、ユーロ圏、日本とオーストラリア圏です。時差の関係上、これらの地域の取引が順々に行われていき結果、24時間の取引にいたります。この内、最も活発に取引されるのは、アメリカと欧州市場が重なる時間帯(日本時間、22時~24時)です。
貿易では、24時間、世界中で取引されている為替レートの変化により、為替差損や差益が生まれます。
例えば、一ドル=100円のときに50個×10ドルで購入する買い手側の立場だとしましょう。タイミングが悪く、為替レートが一ドル120円に変化しました。すると、一つ当たりの単価は同じであるにも関わらず、20円×50個分、余分に支払います。=為替差損です。
もし、上記の取引が売り手側の立場なら為替差益が生まれます。同じ事象であるにも関わらず、立場の違いにより、それが益であったり、損であったりします。これが貿易の難しい所でもあり、妙味である所です。
為替に影響を与える特に重要な指標と円安、円高の関係
では、この為替レートは、どのようなことで決まるのでしょうか? 以下は、為替レートに大きな影響を与える重要な指標の一覧と円高、円安に振れる条件例です。2024年7月11日の21:30分に発表されたのは、上から3つ目のアメリカの消費者物価指数です(CPI)
- FRB、日銀の金融政策決定会合
- 雇用統計
- 消費者物価指数(CPI)
FRBのFOMC、日本銀行の金融政策決定会合(マネタリーベースの決定)
直近では、7月下旬に予定されているFRBと日本銀行の両方の金政策が今後の為替レートに大きな影響を与えると言われています!
- 円高: 日本銀行が金融緩和を縮小する場合、FRBが利下げをする場合
- 円安: 日本銀行が金融緩和を拡大する場合、FRBが利上げをする場合
- 日銀の金融政策決定会合の結果とFRBとのバランスも重要
- FOMC及び日本銀行共に年8回
市場にまわるお金の流通量を調整することで、円安、円高の方向性が決まります=マネタリーベース
米国の雇用統計
- 円高: 数値が予想を下回る場合
- 円安: 予想を上回る場合
- 発表日:毎月、第一金曜日
消費者物価指数(CPI)、個人消費支出(PCE)デフレーター
- 円高: インフレが予想を下回る場合×金利引き下げ
- 円安: インフレが予想を上回る場合×金利引き上げ
- 発表日:毎月、中旬ごろ
その他、購買担当者景気指数(PMI)、貿易収支、小売売上高、鉱工業生産指数なども円安や円高方向などを決定する影響を与えます。上記の経済指標は、各証会社の「経済指標カレンダー」などで確認ができます。
貿易実務で活かしたい2つの施策
為替レートは、常に変化をしている前提の下、その影響を少しでも小さくする又は、有利にする方法には、どのようなものがあるのでしょうか? ここでは、以下の2つをご紹介します。
- 決済日(送金日)の工夫
- 輸入申告日の工夫
1.決済日(送金日)の工夫
例えば、海外の通販システムを使い、何らかの商品を購入する場合を考えてみましょう。(海外通販)この場合、重要な経済指標が発表される前後には、商品の注文及び決済日を調整するといいでしょう。決済額によっては、発注日や決済日を少し調整をするだけで数万円の違いになるでしょう。ちなみに、多くのクレカ会社は、注文完了日のレートが適用されます。
例えば、7月11日、一ドル161.5円の時点で、一ドル5ドルを100個購入したとしましょう。2024年7月12日、一ドルは158.7に変化しました。となると….
- 7/11日に決済すると….161.5×5×100=80750円
- 7/12日に決済すると…158.7×5×100=79350円
差額は約1400円です。注文日を少しずらすだけで為替による影響をやわらげられます。
2.輸入申告の工夫
為替レートは、日本側の税関に対する輸入申告にも関係します。具体的には、商品の申告価格=課税価格(税率をかける対象の価格)を日本円に変換するときに利用します。税関では、この換算レートは、次の基準で適用するとしています。
輸入申告日が属する週の前々週における平均レート
例えば、7月8日~12日に輸入申告するものは、6月24~28日の平均レートを適用します。
適用するレートは、前々週の平均値になるため、戦略によっては、輸入申告日を調整し、為替レートが円高になった値を適用するなどの方法もあります。
例えば、昨日の7月11日からの円高レートは、7月22日の週の申告分から適用されます。もし、納期も緩く、倉庫保管代金も安い等の条件を満たす場合は、日本の保税区で保税保管をしたまま7月22日に輸入申告すると有利になる方もいます。
又は、まだ発注等をしていない場合は、少し発注日を調整し、7月22日前後に日本に到着するように注文をすれば、少し円高になったレート(7月11日からの円高レート)を適用して輸入申告ができます。
貿易人が行う為替リスク管理の手法と対策(ヘッジ)
貿易取引における為替ヘッジの方法には、次の物があります。
- 為替予約
- 通貨オプション
- 決済通貨の選択
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
【貿易業向け】為替リスク対策7選!為替予約とオプション取引の違い等
まとめ
- 貿易と為替は切れない関係
- 円高は輸入が有利。
- 円安は輸出が有利
- 為替に影響を与える重要な指標を覚えよう。
- 特に各国のマネタリーベースは重要
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