【輸入アパレルビジネス】暫定8条とEPAの使い分け

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日本と東南アジア諸国によるEPA(経済連携)締結により、中国からの脱出を図る動きが加速しています。

これからアパレルビジネスを始めるなら東南アジアがお勧めの理由でもお伝えした通り、中国国内の人件費が東南アジア諸国よりも高くなっていること、相変わらずの対日観の悪さを考えると、東南アジアへの「脱出」は当然の流れであります。今回は、脱中国を達成した、とあるアパレルメーカーが、どのように東南アジアと中国を「使い分けているのか」を紹介します。

二つの関税制度を併用して運用

先ほどから述べている通り、海外のアパレルを輸入するビジネスモデルは、中国からの転換期を迎えています。日本とアセアン諸国(東南アジア)との友好的なEPA制度が構築されたことにより、東南アジアからの輸入が増えています。以下の図をご覧ください。こちらは、財務省統計局の情報をグラフに示したものです。

下記のグラフにかかれているのは、2003年から2016年5月までに、東南アジアから日本へ輸入された「金巾(かなきん)HSコード:5208.12.092」の数量の推移を表しています。

アセアン金巾-HUNADE-2

EPA発効による効果

図中にある黄色丸が「日・インドネシアEPA」「日・アセアンEPA」が発効された年になります。また、赤丸の時点では「日・インドネシアEPA」が発行されています。この表を見ると、EPA発効後、すぐには輸入数量が増えていかないことがわかります。しかし、発効から数年経過してから徐々に、そして確実に輸入数量が伸びていることがわかります。

なぜ、発効後、このような形で増えたのかは不明です。関税の「譲許表(関税の下がり方を定めた表)」などを確認しましたが、金巾は発効後、関税即時撤廃品目の「A」が指定されています。したがって、関税の問題ではないことがわかります。となると、考えられる事として企業の設備投資です。EPA発効後、一定期間の様子見をした後、中国などから工場を移転したことを予測できます。

この表は、アパレルの中でもたった一つの「金巾」の輸入数量の推移を表したものです。そのため、この表だけを見て、脱中国の動きが加速しているとはいえません。しかし、日本の市場で吸収できるある一定の量が決まっているとしたら、どこかの国の輸入数量が増えれれば、その代わりとしてどこかの国の輸入量が減ることになります。

したがって、この場合であれば、東南アジア諸国からの金巾の輸入が増える一方、中国からの金巾が減っていると考えるのが普通だと言えます。では、以前から中国の工場で製造をしていた会社は、現在、どのように効率的なアパレルビジネスを展開しているのでしょうか。

中国の工場からアパレルを輸入していて、最近、ベトナムへ移転をした某社の方にお話を聞いてみました。

具体的な説明をする前に、説明の中に出てくる「暫定八条(ざんていはちじょう)」と「EPA(けいざいれんかいきょうてい)」「EPAの域内(エリア内)と域外(エリア外)」についての理解を深めてからご覧いただくと良いです。

暫定8条とEPAの使い分けシーン5選

以下に暫定8条とEPAをどのように使い分けるのかを示していきます。

1.日本にある第三国の生地を使って、EPA国の工場で最終加工する場合

状況:ベトナムに生産工場があり、日本にある第三国で生産された生地(Made in chinaなど)をベトナムの工場へ輸出します。工場で加工した後に、製品を日本へ輸入します。

この場合、EPAによる免税輸入を行うためには「日本かベトナム」で製造された生地を使用する必要があります。そのため、この場合であるとEPAを適用することはできません。したがって、その代わりとして日本から輸出する時点で「暫定八条」を使って減税を適用できるようしておきます。

日本から資材を輸出-HUNADE

 

2.一旦、第三国の生地を日本へ輸入した後に、EPA国の工場で加工する場合

状況は1番と似ています。ベトナムに生産工場があり、必要な資材を第三国(中国など)から日本へ輸入します。輸入した生地をベトナムの工場へ送り、製品となったものを日本へ輸入する場合のお話です。

この場合もEPAの適用は不可能です。そのため、上記と同様に日本から輸出するさいに「暫定八条」を適用しておきます。これにより、日本へ加工された製品を輸入する際に、暫定八条で減税を適用することができます。

日本から資材を輸出2-HUNADE

3.一つの契約の中で、EPAと暫八を併用する場合

EPAによる免税ができる物は「EPA制度」を適用します。一方、EPAの適用ができないものは「暫八」を適用するようにします。このように一つの契約の中で、EPA免税と暫定八条減税を併用して輸入することもあります。

この併用で重要なことは「資材の原産国」がどこになるのかということです。下の表にある品番Aや品番Bについては、主原料の原産地が「日本やベトナム」になっているため、EPAの域内エリアの生産品としての適用を受けられます。一方、品番Cは、資材の原産国が「中国」になっています。そのため、この場合はEPAを適用することはできませんので「暫定八条」を適用することになります。

製品の型番製品を製造するときに使用する資材の原産国適用する関税制度
品番Aベトナム+日本EPA
品番BベトナムEPA
品番C日本+中国暫定八条

4.EPAを適用できない場合の保険的意味合いの暫八

日本で輸入するときに、税関の判断によって「EPAによる免税が不可」になる場合があります。これは、EPAを適用するためのさまざまな条件をクリアしないときに発生することです。この場合、免税輸入がなくなり「有税扱い」になるわけですから、輸入による大きな利益を吹き飛ばすことになります。

そこで万が一のことを考えて、日本から輸入するすべての原料品について「暫八」をかけておくようにます。これによって、万が一EPA免税を適用できない場合に、暫定八条を利用した輸入に切り替えて対応できるように「保険」をかける企業が多いです。

下の図をご覧ください。このように何のトラブルもなく、EPAを適用して輸入ができれば問題はありません。

しかし、ごくたまに日本へEPAを使って輸入する際に「EPA不適用の判定」がなされる時があります。これには様々な原因が考えられますが、最も大きなこととして「原産地に関する条件」を満たしていないことがあります。EPAは免税で輸入できる点に最大のメリットがあります。このメリットがなくなるわけですから、企業にとっては死活問題となります。

暫八保険-HUNADE

そこで、このようなEPA不適用の判定を受けた場合の保険の意味合いとして、日本から輸出をする貨物について「暫定8条」を適用しておきます。すると、仮に製品を日本へ輸入するときに「EPA」が不適用になったとしても「暫定八条」による減税輸入によって被害を必要最低限にとどめることができます。

暫八保険2-HUNADE

 

5.主原料を第三国からEPA適用国へ輸出。副資材を日本からEPA適用国へ輸出

スカートを作成する場合にメインとなる生地(原料)を中国などからベトナムの工場へ輸送します。それと合わせて、スカートに着けるボタンなどの副資材も日本からベトナム工場へ輸出するとします。

このとき、ベトナムの工場からみると、中国から主原料の生地が輸送されてきて、日本から副資材が輸送されてくることになります。

この場合、中国から送る主原料の生地については、EPAを適用できません。一方、日本から送る副資材については、EPA(日本を原産国とする物)または暫定8条を適用できます。これによって、関税が適用される部分をなるべく最小にするようにしています。

日本産の副資材EPA-HUNADE-

まとめ

今回は、アパレルの輸入実務の現場で、どのように暫定八条とEPAを使い分けているかを説明しました。上記のことを実際に実行する場合は、豊富な経験が欠かせません。

EPAは、何万円、場合によっては何十万円もの関税を免除できる制度です。したがって恩恵が大きい分、おのずと適用までの条件が厳しくなるとお考えください。特にケース4でお伝えをした「暫定八条の保険的な使用」は、EPAを適用する基準の厳しさを表しているとも言えます。

「まずはEPAの全体像を学びたい」→初心者向けEPAマニュアルをご覧ください。

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