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eBay単発取引で裁判できる?米国判例Boschetto v. Hansingと越境ECの管轄リスク

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eBay単発取引は買主州の管轄に足りない

  • 第9巡回はBoschetto v. Hansingで「単発のeBay取引では買主州に特定人的管轄は成立しない」と判断[F1]。
  • 理由は、被告が州に継続的義務を負わず、eBayという第三者プラットフォーム利用も能動的ターゲティングには当たらないから。
  • 実務上は、フォーラム条項や配送条件設計、反復性の証拠化で紛争地リスクを事前に管理する必要がある。

事件の概要

eBayでの単発取引をめぐり、買主の本拠地であるカリフォルニア北部地区の連邦地裁に特定人的管轄(specific personal jurisdiction)が認められるかが争点となりました。米国第9巡回区控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the Ninth Circuit)は、Boschetto v. Hansing(539 F.3d 1011 (9th Cir. 2008))で「単発のeBay取引だけでは管轄を認める根拠にならない」と明確に判断しました[F1]。この判例は、越境ECにおける紛争地(フォーラム)選択に直結する重要な判断です。

この事件は、裁判所の管轄権(裁かれる場所)を争った物です。eBayでの単発取引では、買主側の州(ここではカリフォルニア州)裁判所に特定人的管轄は認められないと判断しています。

事案の背景(時系列整理)

  • 2005年、カリフォルニア居住者の原告(Paul Boschetto)が、ウィスコンシン州の個人・販売店からeBayオークションで1964年型Ford Galaxie(フォード・ギャラクシー)を落札しました。受取はウィスコンシン、配送手配は原告側で行いました[F2]。
  • 受領後、広告記載(“R Code”など)と状態が異なると主張し、原告はカリフォルニア北部地区連邦地方裁判所(U.S. District Court for the Northern District of California)へ提訴。請求は違法表示・契約違反・詐欺など州法請求でした[F2]。
  • 被告側は管轄が違う事を理由に却下申立て。地方裁判所は、単発のeBay販売はカリフォルニアでの目的的受益(purposeful availment)を構成しないとして却下し、さらに管轄に関するディスカバリー(jurisdictional discovery)も「推測にすぎない」として不許可としました[F2]。
  • 原告が控訴。第9巡回は2008年8月20日(Filed Aug 20, 2008)に地方裁判所の判断を全面的に支持・維持(affirm)しました[F1]。

例えば、ウィスコンシン州の売主がeBayでカリフォルニア州の買主に自動車を“単発”で販売した場合、売主はカリフォルニア州に拠点も店舗もないため、「この州の裁判所まで呼び出すのは不公平では?」という問題が出ます。 買主は、カリフォルニアで裁判をするべきだ~主張していましたが、裁判では、買主の請求を認めず、カリフォルニアの管轄を否定した。

当事者の主張

原告(買い手の主張)

eBayでの出品・販売は全国からの入札を見込む性質であり、カリフォルニア居住者への販売は被告の予見可能な結果。よって最小限の接触(minimum contacts)がある。

被告(売り手の主張)

当該取引は“一回限りの単発(one-shot)”で、継続的な販売や州内での事業展開はない。配送も原告手配で、州内に継続的義務(ongoing obligations)は生じていない。

判決理由

判決要旨(25字以内):「単発eBay取引だけでは管轄なし」[F1]。

第9巡回は、特定人的管轄(specific jurisdiction)の3要素テストを適用しました。

  1. 目的的受益/目的的指向(purposeful availment/direction)
  2. フォーラム関連性(arising out of or relating to)
  3. 衡平・公正(fair play and substantial justice))。

本件では要件1が満たされないとされました。契約(contract)自体は自動的に接触を生まず、被告もカリフォルニアで継続的義務(保証・アフターサービスなど)を負っていないと判示されています[F1]。

さらに、eBayという第三者プラットフォームを利用した点は、被告がカリフォルニア市場を能動的に狙った証拠にはならず、落札者の所在地は偶然にすぎないと評価されました[F1]。また、管轄目的のディスカバリーも、根拠の薄い「当て推量(hunch)」では認められないとして不許可が維持されました[F1]。

この事件の問題点

単発取引・受渡し州外・買主手配配送:販売の重心が被告地にあり、買主地(カリフォルニア)に「継続的義務」が生まれていないことが致命的でした[F1]。

“プラットフォーム効果”の過大評価:eBayの全国可視性は事実ですが、被告自身の「州への働きかけ(purposeful availment)」の代替にはならないと示されました[F1]。

ディスカバリー戦略の脆弱性:単発以上の販売実態や州向けの狙い撃ち(targeting)を示す材料の提示に失敗し、追加調査の機会も得られませんでした[F1]。

事件から学べる貿易実務アドバイス

例えば、日本からebayにより簡易輸出をしている場合は、以下のようなリスクがあることを十分に理解することが重要です。

裁判管轄権リスクの管理

米国との単発取引では、購入者の居住州(例:カリフォルニア州)の裁判所に管轄権が認められる可能性は低く、基本的には販売者の所在地や取引地で審理されます。ただし、管轄権は取引の性質・継続性・契約内容に左右されるため、取引開始時に「紛争は日本の裁判所で解決する」と明記し、その記録を残しておくことが重要です。

取引継続性への注意

日本の古物営業法や米国の管轄判断では、「反復取引」や「継続的な商業活動」が重要視されます。単発取引ならリスクは限定的ですが、特定州への継続販売はその州の裁判所に管轄を認められる可能性が高まります。販売実績や商品展示の記録管理が欠かせません。

配送と履行条件の設定

配送や引渡しの責任を販売者(日本)側に集約する設計をとれば、不利な州での管轄リスクを減らせます。具体的には、販売者が配送を手配し、リスク移転を日本国内とする旨をメッセージや請求書に明記します。購入者が配送を担う場合は、販売者に「継続的な義務」が発生しない扱いとなる傾向があります。

配送手続きや商品引渡しの責任範囲を販売者(日本)側に集約する設計を採用することで、不利な州管轄のリスクを軽減できます。

商品・知的財産権への配慮

eBay取引では商標権・著作権などの知的財産権侵害に注意が必要です。米国法に抵触すると紛争やアカウント停止につながるため、出品前に必ず確認します。

規約遵守と証拠保全

eBayの利用規約・ガイドライン・禁止商品規定を守るとともに、取引画面のスクリーンショット、メッセージ記録、商品ページ内容を保存し、トラブル時に証拠を提示できる体制を整えましょう。

チェックポイント

  • 取引前に、保証・返品・修理の履行地(place of performance)を自社州に設定する合意をメッセージで明確化し、記録保存する[F1]。
  • 配送条件を売主手配・到着地渡しへ寄せ、売主の自社州での履行行為を伴わせる設計に変更する[F1]。
  • 同一売主の当該州向け反復販売の証跡(出品履歴、レビュー、在庫パターン)を収集・保全する(反復性の立証)[F1]。
  • 可能な限りフォーラム条項・準拠法条項を合意してから決済する(証拠化徹底)。
  • プラットフォーム内の紛争解決手続を使い、商品ページややり取りのアーカイブを即時保存する[F2]。

要点まとめ

  • 単発のeBay販売は、買主州での特定人的管轄を原則基礎づけない[F1]。
  • 契約単体では不足。継続的義務や州への能動的ターゲティングが重要[F1]。
  • 配送・履行条件、フォーラム条項、反復性の証拠化で、紛争地の予見可能性を事前設計できる。
  • プラットフォーム内手続と証拠保存は、実体・管轄の両面で効く[F2]。

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

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