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地理的表示保護制度(GI)のメリットとデメリットを解説!


 

 

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この記事は、地理的表示保護制度のメリットとデメリットを解説しています。

日欧EPA発効に向けた動きが様々な分野で加速しています。その中の一つに「地理的表示保護制度(GI)」があります。EU向けに輸出又は、EU産品を日本に輸入し、販売する場合に関係します。

2017年12月15日、日本とEUは、GI(地理的表示保護制度)に関する合意に達し、お互いの国(圏内)において、地域産品を守ることになりました。これにより、これまで一般的であった「欧州の地名を使った商品名」の使用ができなくなったり、欧州で、日本の地理的表示品(八丁味噌など)を勝手に使用できなくなったりします。GIは、日本とEU市場で「偽物」を撲滅する仕組みです。

そこでこの記事では、日欧EPAで重要になる「地理的表示保護制度(GI)」を説明していきます。

地理的表示法(GI)とは?

地理的表示法は、ある地域において生産される商品が「地域の特徴」と強く結びついているときに、他の地域産物と区別するために「特別な表示(排他的)」を認めることです。

例えば、地理的表示保護制度の対象品の一つに「八丁味噌(はっちょうみそ)」があります。八丁味噌は、愛知県で飲まれている赤ダシ用の味噌です。GIに登録している情報によると、八丁味噌とは次のものだと説明されています。

「八丁味噌」の生産地である愛知県は、高温多湿な気候であり、味噌造りで重要な製麹過程で腐敗することが多く、安定した味噌造りができなかった。そこで、「八丁味噌」に関しては、高温多湿でも安全に麹造りができるように大豆だけで味噌玉を作って大豆に直接麹菌を付ける「味噌玉造り製法」が定着してきた歴史がある。しかも、「八丁味噌」は、仕込後の熟成温度も高いため、大豆の分解が進み易く、うまみが強く、色が濃い特徴的な味噌ができる自然的な条件を備えていた。これらの自然的条件を備えた生産地(愛知県)において「八丁味噌」を生産することにより、「八丁味噌」は、他の産地の一般的な味噌(米味噌等)と比べて、色が濃く、適度な酸味があり、うまみが強いだけでなく、苦渋味を有するといった特性が生まれる。

引用元:農林水産省

GI(地理的表示)とは「商品 と 地域」が密接に関わることです。「この地域だから、この商品が生まれた!」そんな事実が必要です。この前提条件を頭に入れたままもう一度、上記の文章にある赤文字部分にご注目ください。それによると、次のようなことがわかります。

  1. 愛知県は、高温多湿の気候であった。
  2. そのため、高温多湿でも安全に麹づくりができるようにする必要があった。
  3. 高温多湿でも麹づくりができるようにしていたら、うまみが強い味噌が出来上がった。
  4. 愛知県の自然的な条件と、色の濃い八丁味噌が誕生したことは、大きな因果関係があった。
  5. よって地理的表示法の商品に適しています。

なぜ、この地理的表示法が重要になるのでしょうか? 地理的表示法を利用するメリットとデメリット、急速に普及する背景を説明していきます。

地理的表示法のメリットとデメリット

地理的表示法のメリットとデメリットは、どのような点があるのでしょうか? 主なメリットは、次の4つです。この内、特に大きなメリットは、模範品の排除とブランドイメージによる価格の上昇などがあげられます。

地理的表示のメリット

  1. 模範品を排除できる。
  2. 一定の品質が担保されていることを消費者にアピールできる
  3. 海外展開を見据えた日本プランドを構築できる。
  4. 地域の財産として共有できる。
  5. GIの保護の対象は、GIの相互協定の相手国にも及びます。

地理的表示制度の大きな特徴は、地域と商品が結びついていることにあります。それにより、他地域(他国で生産)された物との差別化を図りやすくなりました。

例えば「夕張のメロン」のように地域名を聞いたからすぐに「商品名」が浮かんでくるような存在のことです。少し思い浮かべてください。

夕張のメロンと、鹿児島のメロンと聞いて、どちらの方がブランド力があると思われますか? 一般的には「夕張のメロン」と聞いた方が何だか高級なイメージがありますね。つまり、GIとは、私たちの頭の中にある、何となくのイメージが形となって現れた物です。しかも、その形が「日本政府のお墨付き」で形になるため、他地域で生まれた商品との差別化をしやすくなります。

仮にあなたが日本の商品を輸出するのであれば、GIマークによって「Made in Japan」の正規品であることを外国の消費者へアピールできます。GIマークは、日本政府と協定を結んでいる国であれば、日本国内と同じように保護の対象になるため「偽物」を排除する意味でも心強い仕組みです。

■ポイント
GIマークの保護の対象は、日本国内だけではなく、日本とGI保護の協定を結んでいる外国にも及びます。
GI・地理的表示制度

画像・農林水産省のサイトから引用

 

地理的表示のデメリットとは?

地理的表示のデメリットは、次の2つです。

  1. 知らずに法令違反をする
  2. 地域の共有財産という考え方

1.知らずに法令違反とは?

今後、地理的表示が大きく関係するのは、日欧EPAが発効したときです。特に日本では「〇〇スタイル」や「○○風」とい言うヨーロッパの地名を用いた商品名をつけている所が多いです。しかし、今後は、これらの表示が行えなくなる可能性が高いです。

例えば、イタリアには「ゴルゴンゾーラ」という名前のチーズがあります。日欧EPAが発効すると同時に、このゴンゾーラは、地理的表示保護の対象になり、EUの正規品以外使用できません。保護の対象は、商品名はもちろんのこと、商品の内容を説明する文章、宣伝文などに広く適用されます。

ファミリーレストランのメニューで使用されている表示内容も保護の対象となり、削除や修正するなどを行う必要があります。つまり、GIの存在を理解していないと、知らない間に法令違反をする可能性があります。

2.地域の共有財産である考え方

地理的表示制度の大きな特徴は、地域全体で独占的に利用するための権利です。これを逆に言うと、対象の地域で生産している人であれば、誰にもでも権利を開放することです。これをデメリットとしてとらえるのかは、あなた次第です。しかし、これが後述する「地域団体商標制度」との大きな違いでもあります。

以上が地域表示保護制度のメリットとデメリットです。先ほど、少し述べましたが、この地理的表示保護制度と似ている仕組みとして「地域団体商標制度」があります。この2つの違いを確認しておきましょう!

地域団体商標制度と地理的表示法の違いとは?

地域団体商標と地理的表示法の大きな違いは、権利を主張できる範囲です。地域団体商標制度は、地域の団体のみが使用できる強い排他性があります。一方、地理的表示法は、地域全体が所有する権利です。したがって、対象の地域で生産している人であれば、誰でも地理的表示を使うことができ、GIで設定されている商品条件を満たす限り、商標法などに基づき訴えることはできません。

地理的表示法(GI)地域団体商標制度
権利の位置づけ地域の共有の財産的価値を保護一団体における権利を保護
利用できる人地理的表示保護対象の生産者または、その生産者から直接・間接に仕入れた人であれば、誰でも自由に使えます。ある団体(農協や漁協など)が独占的に使用したいときに便利な仕組みです。地理的表示法よりも独占色が強く、他者を排除する働きが強い仕組みです。
保護対象農林水産物、飲食料品のみ(酒以外)すべての賞品とサービス
特に大きなメリット日本国内、海外へ販売する商品についてGIラベルを使うことができます。日本政府が認めた公式な日本製品としてのお墨付きがもらえます。

以上が地理的表示保護制度の全般的な説明です。では、実際にこの仕組みを利用するときは、どのように登録すればいいのでしょうか。

地理的表示保護制度への登録方法

地理的表示制度の申請は、農林水産省に対して行います。申請できる基準は、申請対象の地域で25年以上、生産活動が行われているのか?です。申請できる人は、該当地域で生産活動をしている団体が農林水産省に対して「明細書、生産行程管理業務規程等」を提出して審査を受けます。登録に関する免許税は9万円必要になるため、基本的には、該当地域で利益を得る人たちが協力するのが望ましいです。

詳しくは、GI登録のための農林水産省の説明ページをご覧ください。

地理的表示(GI)マークを使用するには?

GIマークは、地理的表示保護を取得している団体に所属する生産者の方が利用できます。ただし、これ以外にも、そこに加入している生産者から、間接、または直接、仕入れた物を販売する人なども利用できます。

例えば、卸売業、仲卸業、インターネット講義業などの方でも使用できます。

日欧EPA発効に向けて着々と行われている調整とは?

平成29年12月15日、日欧EPAによるGI分野の最終的な合意内容が発表されました。それによると、EU側の産品71品目と日本側産品の48品目が地理的表示保護制度の対象として、お互いの国で保護することになりました。一方、日本の産品に対するEU側の保護は、以下の物品に対して行われます。

EU側へ日本の商品を輸出するときは、このGIをうまく活用して、差別化を図ることが重要です。逆に日本にEU産品を輸入するときは、GIで保護されている「正規品のみ」を仕入れるようにします。今後は、輸出、輸入ともに地理的表示保護されている物品に対して、しっかりと事前調査が重要です。

あおもりカシス但馬牛神戸ビーフ夕張メロン
八女伝統本玉露鹿児島の壺造り黒酢くまもと県産い草鳥取砂丘らっきょう/ふくべ砂丘らっきょう
三輪素麺市田柿加賀丸いも三島馬鈴薯
下関ふく能登志賀ころ柿十勝川西長いも十三湖産大和しじみ
連島ごぼう特産松阪牛米沢牛西尾の抹茶
くろさき茶豆東根さくらんぼみやぎサーモン大館とんぶり
大分かぼすすんき田子の浦しらす万願寺甘とう
飯沼栗紀州金山寺味噌美東ごぼう木頭ゆず
上庄さといも琉球もろみ酢若狭小浜小鯛ささ漬桜島小みかん
岩手野田村荒海ホタテ奥飛騨山之村寒干し大根八丁味噌堂上蜂屋柿(
小川原湖産大和しじみ入善ジャンボ西瓜香川小原紅早生みかん宮崎牛
近江牛辺塚だいだい鹿児島黒牛

日EUEPA 地理的表示保護制度の対象品全リスト

まとめ

地域の産品を独占的に使用できる地域表示制度は、新しい貿易時代を迎えるにあたり重要です。日欧EPAでは、このGIによる商品保護の動きが加速していきます。インターネット通販における商品説明文、広告掲載文、ホテルやレストランなどで表示されているメニュー表示に至る部分まで保護対象です。そのため、これまで当然使っていたような名称が一部で使用禁止になる可能性があります。

一見すると、これは、とても自由がなくなることだと感じてしまいます。しかし、保護の対象は、EU国内でも同様です。これまで「日本産」と偽っていた商品がEUの当局により、規制の対象になり、偽物日本製品をEU市場から追い出すための保護制度にもなります。したがって、一部不便は感じていても、大部分は、良い制度だと考えています。今後、EU諸国と貿易をするときは、このGIを意識して取り組むことが重要です。

ゼロから覚える日欧EPA 原産地規則、用語の解説など

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