海外向けに販売する商品の価格は、どのように決めるのでしょうか? 商品代金の他、輸出通関費用や国際送料などが必要な気がします。となると、輸出価格は、それらの輸出関連費用や利益などを含めた価格にする必要がありそうです。
そこで、この記事では、自社の商品を輸出価格の決め方、FOB価格に含めるべき費用についてご紹介していきます。
FOB価格(輸出価格)の決め方
海外に商品を輸出する場合、当然、輸出価格を決める必要があります。国内取引であれば、商品代金と配送料を考えるだけで価格を決められます。しかし、外国向けの価格には、当然、販売価格に含めるべき費用が増えます。
海外向けの輸出価格は….
輸出費用+利益+為替変動リスク
この3つを含めて設定します。また、輸出価格の算出は、次の2つの方法があります。
- 積算方法
- 逆算方法
輸出費用の内訳から説明した後、為替変動リスクや積算、逆算方法などをお伝えしていきます。
輸出時における価格の大切さ
海外販路開拓等をする場合は、必要な準備があります。その一つが価格の準備です。展示会等で、どれだけ良い商品を展示しても、結局、いくらで販売できるのか?を把握していない限り、自社商品に興味を持つバイヤーと交渉はできないです。
一般的に海外販売(輸出)する場合は、自社の商品の海外向け販売価格を用意しておきます。代表的な価格は、次の3つです。
上記の中でも特に「FOB価格」は重要です。実際の海外交渉現場では、FOB TOKYO 5000USD 等と価格を提示することが多いです。
では、FOB価格には、何を含むべきなのでしょうか?
FOB価格の内訳(含めるべき費用)
輸出価格(FOB価格)には、輸出費用と期待利益の2つを含めて考えます。このとき、輸出費用には、大きく分けると次の2つがあります。
- 商品価格
- 港や空港の諸費用(輸出通関・船積み等)
詳しくみていきましょう!
1.商品価格
輸出商品の価格代金と、輸出取引を実現するための諸費用と利益があります。
- 商品を仕入れるときの価格
- 輸出者の販促費や通信費
- 輸出者の利益
2.船積み関連費用
輸出の準備費用とリスクに備える為の費用です。
- 輸出通関・船積み費用
- 貿易保険(輸出相手が倒産したときに補償を受ける保険)
- バンニングや倉庫料金
- 銀行手数料など
輸出通関費用は、税関に対しての輸出申告を通関業者に代行してもらう費用です。貿易保険は、輸出先の倒産などにより輸出代金の未回収を避けるための物です。また、バンニングは、コンテナに貨物を積める費用。銀行手数料であれば、信用状(LC決済)の通知手数料があります。
参考情報:輸出価格をCIFで提示する場合
輸出取引をCIFやCIP、又は、D系のインコタームズで行う場合は、上記の商品代金や船積み費用の他、国際輸送費や海上保険代金を含めます。
国際輸送に必要な費用
最後に必要な費用は、国際輸送費です。この中には、次の2つがあります。
- 国際輸送費
- 海上保険代金
国際輸送費は、輸出先に運ぶための航空機、鉄道、海上輸送費を指です。また、海上保険代金は、輸送上で発生する可能性(貨物損傷やダメージ)に対して、補償してもらう費用です。
輸出国側・輸入国側の費用例一覧
国際輸送費や海上保険は、インコタームズによって輸入者側で負担することもあるため、一概に輸出費用に計上するべき費用とは言えません。その他、輸出価格の代表的な内訳は次の通りです。
輸出国側の費用例
- 商品の生産代金
- 生産した工場から輸出港までの輸送費用
- 輸出通関費用
- 輸出税関検査費用
- 輸出港~輸入港への輸送費用
- 海上保険金
- 生産者の利益
輸入国側の費用例
7.輸入地での輸入通関費用
8.輸入港~納品先までの費用
9.輸入者の利益
10.バイヤーの利益
関連的な疑問
- 輸出価格の4倍ルール
- インコタームズと輸出費用の関係
- 輸出消費税はどうなる?
輸出価格に影響を与える2つの要素
- 貿易の取引条件
- 為替変動リスク
1.貿易の取引条件
海外取引は「インコタームズ」を使います。インコターズを採用すれば「輸送費用」や「危険負担」など、輸出者と輸入者の負うべき責任が明確になるからです。
例えば「FOB」の場合、輸出者は輸出国側の本船に乗せるまでの費用と責任を負います。貨物を本船に乗せた以降の日本への輸送費用などは、すべて輸入者側が負担します。
CIFの場合は、輸出者が輸入港へ届けるまでの費用を負担することします。先ほどは、輸入者が船賃を負担していましたが、CIFは逆です。インコタームズによって、どちらが船賃を負担するのかが決まります。下に記載している1~6をご覧ください。
- 商品の生産代金
- 生産した工場から輸出港までの輸送費用
- 通関業者へ支払う輸出通関費用
- 輸出港~輸入港への輸送費用
- 海上保険金
- 生産者の利益
例えば、上記の費用があるとします。このとき、相手側と「何のインコタームズで取引するのか?」を決めます。このインコタームズによって、あなたが提示する輸出価格は変わります。
FOBの場合(輸出価格に計上するべき費用例)
FOBは、輸出国から先のすべての費用を輸入者が負担するため、下記の費用の合計が輸出価格(FOB価格)です。
- 商品の仕入れ代金(生産代金)
- 生産した工場(倉庫)から輸出港までの輸送費用
- 通関業者へ支払う輸出通関費用
- 自社の利益
CIFの場合(輸出価格に計上するべき費用例)
CIFは、輸出者が輸出国からの海上運賃と海上保険代金を負担するため、次の費用を合計して輸出価格を算出します。
- 商品の生産代金
- 生産した工場から輸出港までの輸送費用
- 通関業者へ支払う輸出通関費用
- 輸出港~輸入港への輸送費用
- 海上保険金
- 生産者の利益
■ワンポイント
基本的に海外のバイヤーは「FOB YOKOHAMAだったらいくら?」などと質問をしてきます。
2.為替変動リスク
外国企業と取引は、外国通貨で決済を行うのが一般的です。ほぼアメリカドルで行います。このとき、一点、困ることがあります。それが「外国為替の変動リスク」です。
外国為替とは「1ドル=100円や120円」と交換できるレートです。ご存知の通り、このレートは世界の情勢によって刻一刻と変化していきます。では、次の事例を考えてみてください。
4月16日の時点で1ドルは100円だとします。このとき、A社は、B社に対して1000ドルの機械を販売する契約をしたとします。契約した4月16日に1000アメリカドルを受け取り、同日中に日本円に変更した場合、1000円×1000ドル=100,000円になります。よって、B社へ行った輸出は、100,000円の売り上げもなりました。では、これとは違うパターンを考えてみます。
4/16日に1000ドルで輸出する契約をしたとします。それから約1カ月たった後に、取引が完了して1000アメリカドルを手にしました。しかし、ここで困ったことがおきました。なんと、一カ月前は1ドルは100円だった為替が、5月16日では1ドルが80円になっています。このレートで日本円へ換算したら、80円×1000ドル=80,000円の売り上げになってしまいました。
先の例では、1000ドルのアメリカドルに対して100,000円の日本円を手に入れることができました。しかし、後者の方は、同じ1000ドルなのに80,000円しか手に入れられません。1000ドルであることは変わりませんが、日本円に切り替えると、受け取る額に大きな違いが出ます。これが「為替リスク」です。
■ポイント
外国のお金で決済をするため、常に為替の変動があることを忘れないようにします。契約当初は1000ドルの価格を設定すれば十分な利益が取れていたとしても、為替が変動することによって利益がぐっと少なくなることも多いです。もちろん、この逆で契約当初より利益が増えることもあります。要は為替は常に変動することを前提として、先を見据えた輸出価格を設定することが大切になります。
魅力的な輸出価格を算出する方法
現実的な相場観をもって輸出価格を決めることが必要です。一発逆転ホームランのような高価格で売りつけるのであれば、相手のバイヤーに拒絶される可能性が高くなります。
では、具体的には、どのような方法があるのでしょうか? 考え方としては、積算方式と逆算方式の2つがあります。積算とは、輸出に必要な費用を積み上げていき、最終的な輸出価格を決める方法です。
他方、逆算方式は、現地の価格を調べた上で、そこから逆算して「日本の輸出価格はいくらがいいのか?」と考えることです。
当サイトとしては、後者の「逆算式」により輸出価格を決めることをおススメしています。やはり、諸売は、出口を確保しなければ、商売として成立しないためです。別の言い方をすれば、自分本位の価格ではなく相手本位の価格にするべきだと考えます。
この具体的な方法が次の2つです。
- 貿易統計
- 現地のスーパーマーケット
1.貿易統計の価格
「便乗輸出マーケティング」は、財務省統計局のサイトから輸出品目と輸出先の国を指定して「輸出価格」を調べる方法です。いくらで輸出すればいいのかわからない」と悩んでいる人にとって、ある一定の「アタリ」を付ける意味で役立ちます。
「財務省統計局」は、日本の税関へ「輸出入されたデータ」がすべて公開されています。
例えば「大根が国から中国から、10円で、何本輸入されているのか」「みかんは、パキスタンへ、10キロ、100円で輸出されている」などの情報を調べられます。この統計データーを使えば、輸出先国へのおよその価格を調べられます。
2.スーパーマーケットリサーチ法
現地スーパーマーケットのリサーチもお勧めです。輸出予定国のスーパーを見ることで「現地の消費者の現実」がわかります。
例えば、スーパーでは様々な価格帯の商品が販売されています。同じ商品でも相場よりも5割ほど高い商品もあれば、逆に安い商品もあります。これらの商品のうち、どれが最も消費されているのかを調べれば「現地消費者の相場観」がわかります。
貴社が輸出する予定の商品の売り場を入念にチェックしてください。売り場にある商品価格を一つ一つ調べていくことによって「輸出価格をどれくらいにした方がいいのか」がわかります。
スーパーマーケットの売り場からわかる輸出価格
スーパーマーケットの売り場をみると、同じ商品であっても、さまざまな価格帯が存在することがわかります。これらの価格帯を一つ一つ表にまとめていくと、売り場における商品の相場が見えてきます。ここでは、アイスクリーム売り場の市場価格を調査するため、商品を価格帯ごとに仕分けして、価格とアイテム数をセットにしてグラフに落とし込むこととします。
現地のアイスクリーム売り場には、次の商品があるとしましょう。100円のアイスが4アイテム、130円のアイスが3アイテム、180円が10アイテム、200円が6アイテムです。これをグラフにまとめた物が以下の図です。平均価格は、164円です。(100*4+130*3+180*10+200*6)/23=164円
次に価格とアイテム数に注目します。以下のグラフをご覧ください。赤矢印は、アイスクリーム売り場の価格幅です。最低価格の100円~200円までの幅があります。次に黄色矢印に注目します。これはアイテム数が多い価格範囲を表しています。
以下の図であれば、180円~200円の価格帯のアイスクリームが多いことがわかります。平均価格帯も高く、中心の価格帯も180円~200円となっているため、高級なアイスクリームに需要があることがわかります。つまり、このスーパーにおける顧客は、お金に余裕がある層と言えます。
一方、こちらのグラフであれば、100円のアイテム数が一番多いため、売り場の平均価格もぐっと低いです。当然、中心となる価格帯も「100円~130円」となり、低価格のアイスクリームが求められていることわかります。この場合の顧客は、一般的な経済力の層です。
海外市場調査では、商品の価格とアイテム数を表にまとめます。これにより現地販売店の売り場における「価格の幅」や「中心となる価格帯」「お店がターゲットにしている顧客の層」がわかります。日本の輸出価格の3倍~4倍の価格が現地での小売り価格です。
- 複数の現地スパーで価格調査をする。
- 売り場で最低価格~最高価格までの「価格の幅」を調べる。
- アイテム数が多い価格帯に注目。これが売り場の「中心的な価格帯」
- 中心的な価格が「高価格帯」であれば、それが輸出で狙うべき市場
- もし、低価格帯が中心の商品であると、薄利多売の商売になりやすい。
- 中心的な価格を3や4で割った価格が理想的な輸出価格。もし、この価格が商売の最低ラインを下回るのであれば、その市場は避けるべき。
まとめ
- 輸出価格は、輸出費用を算出後、バイヤー目線で考える。
- 輸出価格は、貿易統計や現地スーパーのリサーチが良い。
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