
フィリピン市場を狙う日本企業のための実務ガイド
フィリピン貿易の重要性と日本企業の関心
近年、フィリピンは日本企業にとってますます重要な貿易相手国となっています。2025年6月時点で、フィリピンの輸出は前年同期比26.1%増の約70億ドルに達し、その中心は電子機器や半導体です[F1]。一方、輸入も同月に前年比69.6%増の約110億ドルと急拡大し、中国依存度が28.2%と高いのが特徴です[F1]。
日本はフィリピンの輸出相手国として13.9%、輸入相手国として7.9%を占める主要プレイヤーであり[F1]、両国間の貿易・投資拡大はフィリピン商工会議所(PCCI)の重点テーマにも位置付けられています[F1]。
この背景から、日本企業がフィリピン市場に進出する重要性は一段と高まっています。特に電子部品、工業製品、食品・化粧品分野など、関税優遇やブランド力を活かせる分野での成長余地が大きいとされています[F3,F5]。
フィリピン独自の市場性
1. 出稼ぎが支える国民生活
フィリピンでは多くの人が海外で働いており、その数は1,000万人以上と言われています。海外から家族に送られるお金(送金)は毎年3兆円を超え、国の経済を支える大きな柱です。このため国内では、生活水準を良くする食品や家電、化粧品などへの需要が安定しています。
2. 輸入に頼る「買い手市場」
フィリピンは国内の工業や農業の基盤が弱いため、食料や燃料、工業製品の多くを輸入に頼っています。2025年も輸入額が大きく伸び、中国からの輸入が約3割を占めています。こうした背景から「輸入大国」と呼ばれることもあり、海外企業にとっては販売のチャンスが広がりやすい市場です。
3. 日本製品が強みを発揮できる理由
フィリピンの消費者は、安さだけでなく「品質や安心感」も重視します。輸入品が多い環境だからこそ、日本製品の「高品質で信頼できる」というイメージが強みになります。特に食品、日用品、化粧品などは、日本ブランドが受け入れられやすい分野です。
フィリピン市場での落とし穴と最新動向
日本企業が進出する際にまず直面するのは、現地規制の複雑さです。食品や化粧品を輸出する場合、フィリピン食品医薬品局(FDA)の登録が必須であり、検疫証明や原産地証明書の提出も求められます[F4]。この手続きが不備だと通関遅延に直結します。
ペソ安局面
また、2025年はペソ安局面が続いており[F3]、外貨建て取引では為替リスク管理が重要です。物流面でも日本発マニラ着でリードタイムは8〜14日目安とされていますが、港湾混雑や物流費高騰の影響を受けやすく、見積もりの過小評価が失敗例として報告されています[F4]。
現地ECに直接参入
さらに、販路確保においてもShopeeやLazadaなどの現地ECに直接参入する事例は増えていますが、契約条件の未確認や支払いトラブルで回収不能となるケースも存在します[F4]。こうした落とし穴を避けるためには、常に一次情報を確認し続ける体制が不可欠です。
日本企業が取るべき具体的な戦略
フィリピン市場へ進出する際には、次のようなステップを踏むと効果的です。
1. 事前調査とFTAの活用
まず、対象となる商品のHSコードを正確に特定しましょう。そのうえで、日比EPAやRCEPによる関税優遇が利用できるかを確認します[F3,F5]。これにより現地での価格競争力を高められます。商工会議所やJETROが公開している公式ガイドラインを参考にすれば、FTA適用の流れも把握しやすくなります。
2. 輸出入規制への対応
食品や化粧品を輸出する場合はフィリピンFDAへの登録、電子製品ではPSマークの取得が必要です[F4]。不明点があれば「要確認」としたうえで、必ず行政窓口へ問い合わせます。
3. ロジスティクスとリードタイムの管理
日本からマニラ主要港までのリードタイムは8〜14日が目安です[F4]。ただし、最新の物流費用や通関状況は現地フォワーダーに確認するのが確実です。B2B取引ではMOQ(最低発注数量)が1,000USD程度とされ、小規模でも代理店やECを活用すれば十分に参入可能です。
4. 販路の選択
ShopeeやLazadaなどのECプラットフォームを利用すれば、小規模事業者でも低コストで市場に参入できます[F5]。また、現地代理店やディストリビューターと契約すれば、大口のB2B需要を取り込むことも可能です。
中小企業に役立つ5つのポイント
1.小ロット輸出から始められる
MOQ(最低発注額)は1,000USD程度[F4]。試験販売から段階的に拡大できるため、リスクを抑えやすい。
2.為替リスク軽減策
ドル建て請求や短期為替予約を活用すれば、急な変動から守れる[F3]。
3.現地パートナーとの協業
PCCIが日系企業との連携を重視しているため[F1]、現地企業との共同進出でリスクを分散できる。
4.成長分野で差別化
電子製品は大手に任せ、中小企業はオーガニック食品、健康商品、化粧品といった小ロット市場に活路を見出せる[F3,F5]。
5.物流費の読み違い防止
複数の現地フォワーダーで見積もりを取り、輸送費変動を契約に盛り込むことが重要[F4]。
小規模事業者向けの貿易チャンスと戦略
比較的小さな貿易実践者にとっても、フィリピン市場は魅力的な機会を提供しています。以下は事実ベースで検討に値する具体的な分野です。
オーガニック食品・健康関連商品
日本発のオーガニック食品や健康食品は、現地EC(Shopee、Lazada)やB2Bマーケットプレイスで成長事例が確認されています[F4]。FDA登録をクリアすれば、現地消費者の健康志向に応えやすいカテゴリです。
中古自動車部品
中古部品市場は一定の需要があり、実際に継続的に取引されている例があります[F5]。ただし規制変更リスクが高いため、輸出を検討する際は常に最新の検疫や通関制度を一次情報で確認する必要があります。

制度改正リスクがあります。
化粧品・美容機器
日本ブランドの信頼性が強く、FDA登録後に現地ECへ参入し売上を伸ばした成功事例があります[F4]。小ロットでも展開可能で、個人事業主レベルでも狙いやすい分野です。
家具・生活雑貨
カスタム家具や高品質な生活雑貨は、フィリピン市場で差別化が可能な分野として成功事例が報告されています[F4]。輸送コストを考慮しつつ、現地代理店経由で販売網を拡大する戦略が有効です。
よくある質問(FAQ)
Q:フィリピン向けに食品を輸出する場合、最初に何を準備すべきですか?
FDA登録が最優先です。加えて、検疫証明や原産地証明も必要です[F4]。
Q:物流コストはどの程度ですか?
不明(要確認)。港湾混雑や為替相場の影響を受けるため、現地フォワーダーでの見積もりが必須です。
Q:EPAを活用するメリットは何ですか?
関税削減により現地での販売価格を下げられます。ただしHSコード誤申告には注意が必要です[F3,F5]。
要点まとめ
- フィリピンの輸出入は2025年に急拡大し、日本は主要相手国の一つ
- 食品・化粧品はFDA登録、電子製品はPSマークなど規制対応が必須
- ロジスティクスはリードタイム8〜14日、MOQは1,000USD程度(更新推奨)
- Shopee/Lazada活用で小規模でも参入可能
- RCEP・日比EPAを利用すれば関税削減で競争力強化が可能
- 不備や誤申告は通関遅延や優遇取消のリスク
出典リスト
- [F1]フィリピン輸出は2025年6月に70億ドル(前年比26.1%増)、電子製品・半導体中心(Philippine Statistics Authority, 2025-07-29)
- [F1]輸入は110億ドル(前年比69.6%増)、中国依存度28.2%(Philippine Statistics Authority, 2025-07-29)
- [F1]日本は輸出13.9%、輸入7.9%を占める主要相手国(Philippine Statistics Authority, 2025-07-29)
- [F1]金の輸出が130.9%急増(Philippine Statistics Authority, 2025-07-29)
- [F1]貿易赤字は縮小傾向(2024年250.6億ドル→2025年前半239.7億ドル)(Philippine Statistics Authority, 2025-07-29)
- [F3]RCEP・日比EPAで関税優遇可能(JETRO公式サイト, 2025-07-29)
- [F4]食品・化粧品はFDA登録必須(Philippines FDA公式サイト, 2025)
- [F4]電子製品はPSマーク必要な場合あり(Bureau of Philippine Standards, 2025)
- [F5]Shopee/Lazadaで小規模参入事例あり(Shopee公式サイト・Lazada公式サイト, 2025)
- [F4,F5]オーガニック食品、中古自動車部品、家具、化粧品の成功事例報告(JETRO公式レポート・PCCI発表, 2024-2025)


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