輸出する貨物を20フィート(約6m)や40フィート(約12m)のコンテナに詰めることを「バンニング」といいます。自社が取り扱う貨物を外国に送る為の作業です。一般的にバンニングは、港近くの専用倉庫で行います。ただし、ある一定規模になると、自社の倉庫や工場でバンニングをすることが多いです。いわゆる工場バンニングやメーカーバンニングです。
そこで、この記事では、工場バンニング(メーカーバニング)をする為の基礎知識、注意点、作業手順などをご紹介します。
自社の敷地するバンニング=工場バンニング
海外に輸出する商品を自社の敷地内でバンニングすることを「メーカーバンニング」と言います。メーカーといいますが、他社の商品を仕入れる商社が行う場合も含まれます。輸出者は、バンニングが完了すると、その旨を通関業者等に伝えます。その際、コンテナ番号やシール番号を伝えます。
輸出者から連絡を受けた通関業者は、税関に対して輸出申告をします。*2020年現在、メーカーバンニング及び輸出申告は、どなたでも利用できます。
ここでコンテナー扱いのメリット、デメリットを確認します。また、あわせてコンテナー扱いの注意点を説明します。
自社バンニング+コンテナ扱いのメリット・デメリット
自社が所有する倉庫または工場でコンテナ詰(バンニング)する場合は、以下のメリット・デメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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メリット1.コスト削減効果
自社で商品をバンニングするため、バンニング代金はかかりません。ただし、次の費用は掛かります。
- 港とバンニング場所までの往復ドレージ代金
- 自社の人件費×投入時間

港でかかるバンニング代金と上記2つの費用を比較検討します。
メリット2.柔軟に貨物の追加や削除
自社バンニングは、コンテナの残容量を考えながら柔軟に貨物の追加や削除ができます。
デメリット1.バンニング技術
バンニング(コンテナの詰め方)にはコツがあります。コンテナ詰の経験が未熟な場合、想定よりも少ない貨物しか詰めないことが多いです。また、場合によっては「詰め方の悪さ」によっては、貨物の破損につながります。
デメリット2.追加費用が発生する可能性
自社バンニングは、港から空のコンテナを手配します。この運送をドレージといいます。一般的に自社バンニングは二時間以内に終える必要があります。コンテナの運転手は、バンニングの間、その場で待機する必要があるからです。二時間以内に終わらない場合は、一時間辺り約3,000円ほどの「待機料」が発生します。
もし、バンニング時間が二時間を大きく越える場合は、最初から「切り離し」を選びます。切り離は、ドレーの車両部分とコンテナ部分を切り離した状態で貨物を詰めることです。ヘッドとコンテナを分離することで、運転手は違う現場に行けます。この場合、待機料は発生しませんが、再度、運転手が港から出向く必要があるため「二往復分」のドレー代金を請求されます。
- 待機料金の支払い料金
- 二往復分のドレー代金
この2つを比較検討します。
例えば、20フィートのコンテナの配送料金が、ラウンド20で20,000円だとします。(ラウンド:港から往復の距離を表します。片道10キロ=ラウンド20)この条件で「切り離し」をした場合は、20000円のニ往復で40000円を支払います。これであると、通常支払う運送料金より20,000円余分に支払います。
切り離しをするのか、待機料を支払った方が良いのかを判断するときは、増加する20,000円をもとに計算します。
20,000円を一時間辺りの待機料3000円で割ります。20,000円/3,000円=約6時間です。つまり基本料金2時間+6時間で最大8時間以内に終わるなら、待機料金を支払ってドライバーにその場で待機してもらった方がいいです。逆にこの時間内に終わらないなら、最初から切り離しをしたほうが良いです。
3.税関検査への対応が大変
自社バンニングをする人は、バンニングが終了しだい輸出申告をし、輸出許可までの時間を短縮できます。しかし「税関検査」には注意が必要です。
税関検査は、輸出申告をした書類の内容と実際の貨物との間に違いがないのかを確かめることです。特に貿易実績が少ない荷主には集中的にします。そのため、最初の内は、税関検査になる前提で輸出準備をします。税関検査には強制力があります。また、検査になるのかは輸出申告で判明します。そのため、仮に輸出ためにコンテナの中に貨物を詰み終わったとしても、税関検査によっては、コンテナを開封されて調べられます。
搬入前検査願いと指定地外検査許可との関係は?
原則的に税関検査は「税関検査場」にて行われます。この検査場を含む「保税地域」に貨物を入れることを「搬入」といいます。この搬入を行わずに検査をするときに必要な書類が「搬入前検査願い」です。これで貨物を保税地域へ搬入する前に、税関検査を受けられます。
しかし、この状態のままでは「どこで検査をするのか」が決まっていません。そこで「指定地外検査許可願い」を提出して、税関検査を自社の倉庫で受けられるようにします。これでコンテナに貨物を積み込む前に税関検査を受けられるため、無駄なコストが発生する可能性が低くなります。
コンテナバンニングの手順
コンテナバンニングは、次の手順で行います。
- 船舶をブッキングする
- 空コンテナの着日を調整
- 倉庫等で積み込む貨物を用意&適切な輸出梱包を選ぶ
- 貨物に対するパッキングリストを作成する。
- 積み込みながらパッキングリストと照合する
- 全ての積み込みが終わったら封印をする
1.船舶をブッキングする
まずは、買い手との取り決め(インコタームズ)通りに船舶の予約をします。輸送ルートに最適なフォワーダーに見積もりを依頼しましょう!
2.空コンテナの着日を調整
フォワーダー(通関業者)の担当者と打ち合わせをして、予約する船舶に間にあうように空コンテナのピックアップを依頼します。

→ 何月何日に空コンテナを付けてもらい、バンニングを行うかを決めましょう!
3.倉庫等で積み込む貨物を用意&適切な梱包を選ぶ
空コンテナの到着日がわかったら、積み込む貨物の用意をします。商品に応じた適切な輸出梱包を選びます。
例えば、カートンボックス、ラップ等での梱包、パレット梱包等があります。パレットの上にのせれば、フォークリフトでの積み込みができて楽です。
4.貨物のパッキングリストを作成する。
貨物のパッキングリストを作成します。写真、荷姿等を書類に落とし込み、税関の求めがあれば、説明できるようしておきます。
5.積み込みながらパッキングリストと照合する
実際にコンテナに積み込むときにパッキングリストと照合していきます。例えば、積み込んだらチェックを入れるなど。
6.全ての積み込みが終わったら封印をする
コンテナに全ての積み込みが終わったら封印(シール)をします。封印したら、フォワーダーに連絡をいれます。
参考情報:コンテナー扱いの注意事項
コンテナー扱いを利用する上での注意点があります。これはコンテナー扱いに限らず、輸出をする上では必ず守るべき基本的なルールです。
ルール1.ズルいことをしない。適正な申告に努める
税関が輸出者に求めていることは「申告した内容と実際の貨物との間に違いがないように適切に伝える」ことです。この原則を無視すると、大きなペナルティを受ける可能性があります。
ポイント2:輸出してはならない貨物を詰めない。
原則的にどんな物でも自由に輸出できます。しかし、中には輸出してはならない貨物があります。
ではここで質問をします。港にある「漁船」は、輸出しても良いでしょうか? 単なる船であるため、自由に輸出できそうです。しかし、実は漁船の輸出には特別な許可が必要です。これを得ることなく、輸出をすると、外為法違反です。
平成15年5月、根室海上保安部(北海道根室市)は、中古漁船をロシアへ不正に輸出したとして、船舶ブローカー等4人を外国為替及び外国貿易法違反(無承認輸出)、関税法違反(輸出許可の虚偽申告)及び偽造私文書行使罪で検挙しました。
この事件は、平成14年4月、根室市花咲港に活カニ陸揚げのため入港したロシア籍鮮魚運搬船を立入検査したところ、今までに見受けられなかった北朝鮮のポートクリアランス(出港証明書)を持参していたこと、過去に花咲港からフィリピン向けに輸出された元日本漁船にも類似しているという不審な状況があったことに端を発します。引用元:海上保安庁レポート
漁船を輸出する場合には「輸出承認」が必要です。これを得ることなく不正に輸出したため、検挙となりました。輸出には「禁止されている物」「難しい物」「自由な物」の3種類があります。あなたがコンテナに詰めようとしている物は「禁止されているもの」や「難しいもの」に含まれないことを確認します。
ポイント3.コンテナを運転するドライバーにも配慮する。
海上コンテナのサイズは20フィート(6m)や40フィート(12m)があります。自社バンニングをする場合は、貴社の敷地の中に、コンテナが入れるかを確認してください。また、貴社の敷地に接続する周辺道路状況をあわせて確認します。
- 幹線道路から、貴社の敷地へ繋がる道路は、コンテナが入ることができますか?
- 通勤・通学の時間帯に規制される道路ではありませんか?
- 高床のシャーシが入れる太さの道路ですか?
上記のポイントを考えるようにします。
まとめ
コンテナ扱い(自社の敷地でバンニング)を受けるための要件は緩和されて「事前申請」や「一年以内に輸出実績があること」などの条件は廃止されました。これにより、以前よりも輸出申告を行いやすい環境が整ったことになります。
コンテナ扱いで輸出申告するときのポイントは「税関検査」です。検査が行われるかどうかは輸出申告をしてからわかります。仮にコンテナ扱いで輸出申告をしたのち、税関検査となった場合は、税関検査が行われます。もし、税関検査場での検査を避けたい場合は「搬入前検査願い」と「指定地外検査許可願」を提出することで別の場所で行うことができる場合もあります。

