2018年12月30日、環太平洋パートナシップ協定(TPP)が日本、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの間で発効しました。これにより、五億人の人口をかかえる一大経済圏が誕生しました。そこで、この記事では、TPP11で大幅に関税が下がる品目をご紹介していきます。
TPPで大幅に引き下がる品目リスト
TPPによって関税がどのように下がるのかは「TPPの譲許リスト(関税引き下げ予定の書類)」に書かれています。譲許リストは、およそ1200ページの電子文章です。この文章には、削減される品目、HSコード、撤廃時期、削減年数などが細かく記載されています。各商品の関税の下がり方を確認できるため、必ず確認をしてください。
TPPといえば「主要五品目(米、麦、牛肉、豚肉、乳製品)」の関税ばかりが注目されがちです。しかし、TPPで関税の引き下げが行われるのは、そのような狭い品目だけではなく、もう少し広い品目にわたり関税が削減されると覚えておきましょう!
例えば、高い関税で有名な「落花生」があります。2016年現在、落花生の関税は「一定の数量以内」について「10%」の関税がかかります。もし、一定の数量を超えてしまうと、1キロ当たり617円という高額な税金がかります。しかし、このような特別扱いの落花生であっても、TPPでは例外扱いされません。
TPPの譲許リストによると、落花生の関税は、以下の二つの予定で「撤廃」されることが決まっています。
1.数量内に対する関税→「発効後、即時撤廃」
2.数量以上の関税→「発効後8年目」
ところで一定の数量とは、どのようなことでしょうか。実は、落花生をはじめ、ある特定の商品は、一年間で日本に輸入できる「数量」が決められています。これを「関税割当制度」といいます。
例えば「100個の落花生までは、5%の関税をかける。101個以上の落花生には、20%の関税をかける」などの仕組みです。これによって、国内に必要な量だけを低関税でたくさん輸入して、それ以上を高関税で防止できます。
さて、先ほどの落花生のお話に戻ります。上の1番と2番の関税の撤廃予定によると、発効から8年が経過すれば、輸入数量などは一切関係なく、関税が撤廃されます。もちろん、関税が削減されるのは、落花生だけでありません。「天然のはちみつ」の関税も対象です。
2018年現在、天然のはちみつには「25%」です。しかし、こちらも「TPPの発効後8年」で完全に撤廃される予定です。天然のはちみつは、2018年現在、締結されているEPAを使っても無税になりません。しかし、TPPの場合は、このような例外品目であっても「例外なく関税を撤廃」していきます。
TPP11は、さまざまな分野の関税を….
- 「即時撤廃」
- 「一定の年数後に撤廃」
- 「撤廃例外品目」のいずれかに分類しています。
どの商品がどこに含まれるのかは、記事の冒頭でお伝えした「関税譲許リスト」で分かります。そこで、この記事では、関税譲許リストを基にして、TPP11で関税が下がる主要な商品を紹介していきます。TPP発効後の関税の削減は、ウェブタリフで確認ができます。
TPPで大幅に削減される品目リスト
当サイトは、外務省などが発表している資料によって、TPPで撤廃される品目を調べています。撤廃リストをご覧いただく前に、下記の注意事項をお読みください。
TPP関税撤廃リストの一例をご覧になる前に…..
1.各品目は単なる一例です。
これから紹介する関税の撤廃リストは、単なる一例です。すべてを網羅できているわけではありません。いくつの例示を通して「幅広い品目が関税削減の対象になっていること」を感じ取っていただくのが狙いです。もちろん、詳しく知りたい方は、譲許表をご覧になり、貴社の商品が該当する箇所を調べることをお勧めします。
2.引き下げのタイミングは「即時」「6年」「11年」
TPPによって引き下げられる関税は、発効後、すぐに関税が撤廃される物(即時撤廃品目)、数年後に撤廃される物などがあります。関税は、これらの設定期限に向けて、徐々に引き下げられていきます。以下の画像をご覧ください。
例えば、協定発効後4年で撤廃される物は、赤色の期間以降(黄色の3月31日の翌日)から関税が無税です。
関税が引き下がる期間は品目によって異なるため、TPPの譲許リストで確認することをお勧めします。譲許リストでは、関税の引き下げ率を「B6」などと表します。B6は「TPPが発効してから6年」で関税が撤廃されることです。「B11」であれば、11年目の4月1日に関税が撤廃されます。
もし、TPPの譲許リストで関税率の下がり方を確認するときは、以上の2つを頭に入れておきましょう!
TPP発効後、即時撤廃品目
それでは、TPPで関税が削減される品目をご紹介していきます。まずは、協定発効後、即時撤廃される品目です。2018年12月30日付けで、次の物が対象です。魚介類、魚介類の加工品、生鮮果実、生鮮野菜、果実や野菜の加工品、アパレル関係。アパレルでは、50類~63類のほぼすべての品目の関税が即時撤廃です。
品目 | 現状の関税(%) | 品目 | 現状の関税(%) |
たら | 6 | くるみ | 10 |
生鮮ぶどう | 17 | コーヒー | 12 |
食用落花生≪数量内≫ | 10 | 寒天 | 10 |
魚の油脂 | 7% OR 4.2円/kg | さけの加工品 | 9.6 |
ニシンの加工品 | 9.6 | かつおの加工品 | 9.6 |
かたくちいわし加工品 | 9.6 | にしん(気密容器以外) | 11 |
たらの卵 | 9 | 保存処理したトマト | 9 |
トリフ | 9.6 | 保存処理したアスパラガス | 17 |
ひじき | 17 | ぶどうのしぼり汁 | 23 |
紙巻たばこ | 8.5%+290.7円/1000本 | ホワイトラワン、ホワイトランチ(製材) | 6 |
絹紡糸 | 14 | 梳毛織物 | 14 |
亜麻織物 | 10 | ラミー織物 | 10 |
オーバーコート | 12.8 | ジャケット | 9.1 |
ベッドリネン | 10.9 | テーブルリネン | 10.9 |
カーテン | 10.9 | フェロマンガン | 6.3 |
4年で関税が撤廃される品目
協定発効後、4年目(2022年4月1日)で関税の撤廃が行われる物です。特に17類の糖類に関連する物に注目をしましょう。
品目 | 現在の関税率(%) |
かえで糖 | 20.8円/kg |
6年で関税が撤廃される品目
協定発効後、6年目(2024年4月1日)で関税が撤廃される品目です。生鮮のフルーツ・加工フルーツ・たまねぎ、落花生などが含まれています。高関税で有名な落花生もこのステージで完全に無税品です。
品目 | 現在の関税率(%) | 品目 | 現在の関税率(%) |
殻付きではない卵黄 | 20% または48円/kg | 生鮮のたまねぎ | 8.5 |
かんしょ | 12 | マンダリン | 17 |
グレープフルーツ | 10 | サワーチェリー | 8.5 |
処理済グレープフルーツ | 10 | 緑茶 | 17 |
紅茶 | 12 | マテ | 12 |
いぐさ | 8.5 | ラード | 8.5円/kg |
大豆の粗油 | 10.9円/kg | ひまわり油 | 8.5円/kg |
マーガリン | 29.8 | ショートニング | 12.8 |
みつろう | 12.8 | さば加工品 | 9.6 |
育児用の調整品 | 23.8%+679円/kg | ビスケット・クッキー | 15 |
保存処理をしたトマト | 13.4 | 保存処理をしたマッシュポテト | 13.6 |
保存処理をしたたけのこ | 13.6 | 砂糖で調整をしたあんず | 18 |
柑橘類のジャム | 16.9 | 落花生(ピーナッツバター以外) | 23.8 |
かんきつ類の果実 | 23.8 | トマトジュース | 29.8 |
ぶどうジュース | 29.8 | 野菜ジュース | 8 |
混合ジュース | 23 | ぶどう酒 | 112円/L |
8年で関税が撤廃される品目
協定発効後、8年目(2026年4月1日)で関税が撤廃される品目です。注目は、天然はちみつです。これは現状のEPA制度でも関税の撤廃が除外されている品です。しかし、TPPでは関税を撤廃する品目に加えられています。
品目 | 現在の関税率(%) | 品目 | 現在の関税率(%) |
天然はちみつ | 25.5 | とうもろこし粉 | 21.3 |
食用落花生(数量外) | 617円/kg | グレープフルーツジュース | 23 |
スパークリングワイン | 182円/L |
9年で関税が撤廃される品目
協定発効後、9年目(2027年4月1日)で関税が撤廃される品目です。パスタなどの麺類、ピザ、ワッフルなどの小麦を使った品目の関税が撤廃されます。
品目 | 現在の関税率(%) | 品目 | 現在の関税率(%) |
パスタ(卵含有) | 30円/kg | ワッフル | 18 |
ピザ | 24 |
10年で関税が撤廃される品目
協定発効後、10年目(2028年4月1日)で関税が撤廃される品目です。
品目 | 現在の関税率(%) |
魚の粉 | 10 |
11年で関税が撤廃される品目
協定発効後、11年目(2029年4月1日)で関税が撤廃される品目です。実は、TPPのほぼすべての品目は、この11年によって関税が撤廃されます。
この中で特に注目すべき品目は「革製品」です。輸入品で革は、かなり特別な存在です。あり得ないほどの高関税をかけている品目ですが、ついにTPPでその聖域が完全になくなります。革関連品は、容赦なく、関税が撤廃されます。革の衣類、ハンドバッグ、アクセサリーなどは、ぐっと値段が下がるはずです。
品目 | 現在の関税率 | 品目 | 現在の関税率 |
牛のくず肉 | 12.8 | くり | 9.6 |
バナナ・プランテイン | 20 | りんご | 17 |
冷凍パイナップル砂糖添加 | 23.8 | 処理済さくらんぼ | 17 |
処理済オレンジ | 16-32 | 処理済くり | 9.6 |
落花生の粗油 | 8.5円/kg | いわしの加工品 | 9.6 |
うなぎ加工品 | 9.6 | イカ | 10.5 |
ぶどう糖 | 29.8% | チューイングガム | 24% |
キャラメル | 25 | ビーフン | 27 |
クースクース | 24円 | スイートビスケット | 20.4 |
かんきつ類のフルーツピューレ | 34 | パイナップルの加工品 | 25.5 |
オレンジ・パイナップル・リンゴジュースなど | 23~26 | トマトケチャップ | 21.3 |
トマトソース | 17 | テキーラ | 17.9 |
清酒 | 70.4円/L | 葉巻たばこ | 16 |
パイプたばこ | 29.8 | 湿潤牛のなめした革 | 30 |
乾燥羊のなめした革 | 30 | ミット | 12.5 |
衣類の付属品 | 10 | 革製のハンドバッグ | 14 |
携帯用化粧道具入れ | 16 | 合板 | 10 |
生井 | 6978円/kg | 革製履物 | 30% または 4300円 |
16年で関税が撤廃される品目
協定発効後、16年目(2034年4月1日)で関税が削減される品目です。重要品目である牛に関しては、関税が9%です。その他の商品は、関税が撤廃されます。
品目 | 現在の関税(%) | 品目 | 現在の関税(%) |
生きている馬 | 3400,000円/頭 | 牛 | 63750円/頭 |
豚 | 19508円/頭 | 牛肉 | 38→9 |
フレッシュチーズ | 22.4 | プロセスチーズ | 40 |
シャモア革 | 25 | パテントレザー | 20 |
ベルト | 12.5 | ミンク | 15 |
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まとめ
- 関税の削減は重要五品目以外にも様々にある。
- 関税の削減予定は「譲許表」を確認する
- 現時点において設定されている関税は「ウェブタリフ」を確認する
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