海外から革靴を輸入するときは、日本側で発生する高い関税に気を付けます。安い革靴でも、日本側で高い関税がかかれば、結局、国内で買えばよかったと後悔します。革靴の関税率は「商品価格の30%または、一足当たり4300円(2つの靴の合計)のどちらか高い方」です。革製品は、様々な品目の中でも特に高いことで有名です。
この記事では、個人使用目的で革靴を輸入するときの関税率と計算方法をご紹介します。
*個人使用目的の輸入が対象です。
■この記事の要点
- 革靴の関税は高い。一足4300円と本体価格30%を比較する。
- 1の計算の結果、高い方が納税するべき関税額
- 1の場合における「本体価格」は、個人使用の場合は0.6をかけた金額
- 規模の大小に関わらず、商売目的は、0.6倍できない。
- EPA締約国、特別特恵国など一部の国の革靴は、関税が削減されている。
- EPA締約国からの革靴×20万円以下の物は、自動的にEPA税率を適用。
- コンポジションレザーとは「革のクズ」を集めて作った物
- イギリス製の革靴の関税率は7.8%(2024年11月現在)
- 革靴の関税計算の方法は、こちらをクリック!(ページ内移動)
- 革靴の関税の削減方法(EPA等)は、こちらをクリック!
- 革靴の代表的なHSコードは、こちらをクリック!
- 革靴の各部の名称は、こちらをクリック!
関税が高いのは革製品全体
革靴を含めて製品の一部または全部に革が使われている製品の関税率は非常に高いです。
例えば、革の鞄(かばん)。こちらの関税率は、20%前後です。他の素材でできた鞄が関税率10%前後のところ、革でできたカバンのだけが突出して高いです。
製品の一部または全部に「革」が使われている物は、すべて関税率が高いです!
なぜ、革靴の関税は高い?
革靴の関税が高く設定されている背景には、次の3つがあると言われています。
- 国内産業保護
- 歴史的背景
- 税収確保
- 国内の製靴産業(特に革靴メーカー)を海外との競争から守るため
- 日本の伝統的な靴職人や製造技術を維持する目的
- 日本では伝統的に、皮革を扱う仕事は●●●されていた
- 明治時代以降も、皮革産業には●●●●の影響が残存していた。
- 差別解消と産業育成を同時に進める意図があった。
- その結果として手厚い保護政策が採用された。
- 関税による保護も、そうした政策の一環とされる
1950年代以降、日本の靴産業を保護育成するため、輸入品に対して高い関税率を設定していました。現在でも革靴は、繊維製品と並んで比較的高い関税率が維持されている品目の一つです。なお、革製品は、全体的に高額帯の商品でもあるため、安定した税収源として機能している部分もあります。
関税率は革靴の種類によって異なり、一般的な革靴の場合、税率は30%前後です。ただし、原産国や輸入方法によって実際の税率は変動します。革靴の関税を少しでも安くしたい場合は、EPA制度やLDC制度を検討します。(後述)
革靴の関税率はどれくらい?
では、革靴の関税率を確認してみましょう。確認方法は、ウェブタリフです。こちらのサイトに品目名をいれると、商品の関税率を調べられます。今回は、このサイトを使って、革製品の関税を調べていきます。なお、輸入目的は「個人使用目的」です。
下の画像をご覧ください。画面下に革製の履物に関する分類が並んでいますね。革靴は、HSコードでいうと、6403~6404に含まれます。どこに分類されるかは、用途、本底や甲の部分の材質により異なってきます。下の画像の青文字部分(6403など)を押してみます。
上記画像の青色部分の数字を押すと、下の表が表示されます。この画面には、左側から「HSコード」、品物の特徴、関税率と並んでいます。紫の部分には、革製品の関税がのっていますね!緑入りが輸入する品目、紫色が対応する関税率です。
紫入りの部分を見ると、多くの場合、30%や60%または、4800円の表記ですね!これが日本に革靴を輸入したときの関税率です。ただし、EPAを利用すると、関税ゼロの扱いを受けられる可能性があります。
日欧EPA×個人通販 ヨーロッパから輸入するときの関税を削減する方法
さらに下の画像をご覧ください。左側の数字(HSコード)は、赤矢印のように親子関係にあります。
例えば、640419190に属する革靴であって、メキシコで生産されたものであれば「無税」で輸入ができます。革を使っているのにです。同じ要領ですべての物をチェックしていくと、革製品でも無税輸入ができる品があります。
革靴の関税率のポイント
革靴を生産した国 × 革靴の特徴 = 革靴にかかる関税率 革靴の関税を安くするときは、特別特恵、EPA税率をチェック
下の画像の中にある赤枠や緑枠の部分をご覧ください。これらが「革靴の関税率」を表しています。よく見ると「60%又は4800円/足のうちいずれか高い方」「30%又は4300円/足のうちいずれか高い方」という表記があります。革靴の関税は「30%又は4300円~」は、このことを言っています。
しかし、この関税率は、あくまで一般的な物です。あなたが「どこの国から輸入したのか?」それが「どんな特徴の革靴なのか?」によって、支払うべき関税額は、大きく異なります。革靴の関税率は必ずしも高いわけではないことをご理解いただきたいです。
最も一般的な革靴は?
革靴を輸入数量ベースで順に並べると以下の2つが多いです。
- 6403.99-015(男性用)
- 6403.99-016(女性用)
上記、2つに該当する革靴の特徴は、次の通りです。
- 本底がゴム製、プラスチック製、革製またはコンポジションレザー製
- 甲が革製
- くるぶしを覆わないもの
- 男性の靴又は女性用の靴
- 中底の長さが19cm超
- 室内用ではない(外履き用)
なお、どちらの品目も指定数量内は21.6%(2024年11月現在)、超える部分は、30%又は4300円/足のどちら高い方の関税がかかります。但し、後述するEPAを適用できる革靴は、関税が無税となり、ぐっと削減できます。詳細は、後述します。
革靴の関税の計算方法
それでは、個人使用目的で革靴を輸入する場合の計算方法を確認していきましょう!
アメリカ製など、多くの革靴の関税率は、「30%又は4300円/一足のいずれか高い方」に該当します。ごく一部の国の産品に対して優遇税率が適用されます。今回は、「30%又は4300円/一足のいずれか高い方の関税」で計算してみます。
まずは「30%または4300円/足の内、いずれか高い方」のルールを以下の2つに分解します。ルールでは、このうち、高い方の関税額を支払います。では、以下で具体的な計算をしてみましょう。
- 課税価格の30%の関税を支払う
- 靴一足あたり4300円の関税を支払う
革靴の関税及び消費税の計算例
- 海外のお店での革靴の価格:日本円で40000円相当
- 輸入目的:個人使用目的の輸入(非商売性)
上記の条件では、革靴の価格に0.6をかけた価格を課税価格にできます。
革靴の課税価格を求める
40000円×0.6=24000円(課税価格)
関税額を求める場合は、この課税価格に税率をかけます。今回は、30%または4300円/足を前提とするため、以下の2つに分解して計算します。
革靴の関税額を求める
- 課税価格の30%の関税=8000円が関税額(24000円×0.3)
- 4300円/一足=4300円の関税
上記の1と2の関税額を比較して高い方が適用されます。今回の場合は、1番の8000円が支払うべき関税額です。
革靴の消費税額を求める
次に革靴の輸入消費税額を求めます。消費税額は、次の計算式です。
(商品代金(0.6倍)+関税額)×0.1
→(24000+8000)×0.1=3200円
革靴の納税額の合計
- 関税額:8000円
- 消費税額:3200円
- 合計:11200円
40000円相当の革靴を輸入するのに約10000円もの税金がかかります!
革靴の関税を削減・減額するには?
ここまでの説明で革靴の関税は高いことをお分かりいただけたかと思います。しかし、実は、少しだけ工夫することで、革靴の関税を削減したり、なくしたりできます。主な方法は、次の3つです。
- 特別特恵税率
- EPA税率
- 関税割当
1.特別特恵税利率
特別特恵税率は、世界の貧しい国を支援する目的で、関税等を無税にする仕組みです。もし、特別特恵国に指定されている国の革靴を輸入すれば、関税は無税で輸入できます。なお、特別特恵国の事を別称LDCとも言います。
LDCを原産国とする革靴は関税が無税です。
2.EPA税率
2つ目は、EPA(経済連携協定)です。2024年現在、日本は以下の国々とEPAを締結しています。実は、革靴の関税は、このEPA締結国の産品に対して非常に優遇した税率を適用しています。1番の特別特恵国の扱いに近いルールです。
2024年4月現在 | |
発効済(利用できる国) | シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど) |
交渉中 | トルコ、コロンビア、GCC、日中韓 |
その他(交渉中断等) | カナダ、韓国 |
例えば、ベトナムの革靴、メキシコ、インドネシアの革靴などは、関税上、有利です。なお、EPAは、商売だけではなく、個人通販にも適用してもらえます。
*一回の輸入が20万円以下の場合はEPA税率が自動適用されます!
仮にEPA締約国から革靴を輸入したのに関税がかかっていたら、通関のミスが考えられます。配送会社を通じて税関に問い合わせをしましょう!
- 6403.99-015(男性用)
- 6403.99-016(女性用)
上記の革靴の関税率は、次の通りです。(共通&2024年11月現在)
WTO | 特別特恵、メキシコ、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、スイス | アセアン、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア | CPTPP、日欧、イギリス | RCEP(オーストラリア) | RCEP(中国) | ブルネイ、モンゴル、韓国、アメリカ |
30%又は4300円/一足 | 無税 | 無税~5% | 7.8 | 16.2 | 17.5 | 除外 |
EPA締約国を原産国とする革靴は、無税又は低率です。
3.関税割当
革靴を事業目的で輸入する場合は、関税割り当てを検討しましょう!
関税割当とは、革靴に対する関税率を一次と二次に区分して、ある一定の数量のみに対して低い関税率を適用。一定以上の数量を超える物は、高い関税率をかす仕組みです。関税割り当てを利用する人は、毎年、募集される「割当枠」に申し込みをし、その枠を消化することにより、一定数量までを低率で輸入できます。
詳細記事:関税割当入門
輸入価格が20万円以下におさまるときは自動的にEPAを適用してくれる(対象国の革靴のみ)
参考情報1:革靴の関税率を決める要素は?
革靴の関税率は、大きく分けると、次の2つの要素で決まります。
- 原産国
- 革靴の製品特性
1.原産国
原産国とは、革靴の生産国です。実は、日本は、いくつかの国と自由貿易協定を結んでいます。自由貿易は、お互いの関税を無税または低減する約束です。もちろん、この自由貿易の効果は、革靴を輸入するときにも発生しています。
2019年現在、日本は17の自由貿易協定を結んでいます。そのため、このEPAを締結してる国の革靴は、他国の革靴よりも有利な税率を適用できます。
2.商品特性
革靴の関税を決める2つめの条件は「製品特性」です。商品特性とは、その革靴の材質や使用目的などです。具体的には、次の6つのポイントがあります。
- 本底と甲の材質
- 防水性のスポーツ用
- その他のスポーツ用
- くるぶしを覆うのか
- トーキャップの有無
- 室内用で使う目的?
これら6つの観点から、ご自身が輸入される革靴を考えます。それでは、それぞれの製品特性について詳しく見ていきましょう!
1.本底と甲の材質は
革靴の特性の内、最も大きなことは「本底と甲の部分の材質」です。本底とは、下記の図の青枠です。一方、甲の部分は、図中の赤枠です。それぞれの部分が、ゴム、革、紡織用繊維などの材質により、関税率が変わります。
2.革靴は、防水性のスポーツ目的?
革靴の内、特に防水性に長けている物です。具体的には、スキー靴などが対象です。
3.その他のスポーツ目的?
スキーなどのウィンタースポーツで使う目的以外のスポーツ靴が対象です。
例えば、バレーダンスのシューズ、新体操、テニス、バスケットボール、トレーニングシューズ、その他の競技用の革靴などがこれに該当します。
4.革靴のくるぶしはどうなっている?覆っている?
革靴の内、くるぶしの部分を覆うのか?によっても区分けがあります。念のため、くるぶしを覆うタイプの革靴と、そうでないタイプをご紹介しておきます。
くるぶしを覆うタイプの革靴
くるぶしを覆わないタイプの革靴
5.つま先部分に「トーキャップ」はある?
トーキャップとは、革靴のつま先部分に入っている保護具です。つま先部分をつまんでみて、固い何かがあるときは「トーキャップで保護されている革靴」です。
6.主に室内用で使う目的の革靴?
主に室内で使うことを想定している革靴が当てはまります。一例としては「キャンバスシューズ」などです。
- 本底と甲の材質
- 防水性のスポーツ用
- その他のスポーツ用
- くるぶしを覆うか>
- トーキャップの有無
- 室内用で使うのか?
以上、6つの観点から、ご自身が輸入される革靴を考えてみましょう!
参考情報2.革靴関連の分類
以下の図は、革靴に関する関税要素をツリー上に表した物です。左側から同じレベルで段落ちしている要素を比べるようにして使います。緑線、紫線など、同じレベルにある要素を見比べていき、ご自身の革靴がどれに当たるのかを考えます。
参考情報3.関連用語
中底/中敷き
中底は、甲の部分と一体になっている所(赤線)です。その上にあるのが「中敷き」です。
コンポジションレザー
革製品の製造に適さない革クズを原料にして製造した物です。
天然もの、人工をとわず、紡織用繊維
布で構成された製品全体を指します。(織りや編みに関わらず)
甲に毛皮を使用した物
革靴の「甲」の部分に毛皮を縫い付けている物です。
各部の英語名称
各部の英語名は、次の通りです。材質がわからない場合は、購入する前にショップに確認することをお勧めします。
トーキャップ | Toe cap |
本底 | Out sole |
中敷き | Sock Lining |
中底 | Insole |
よくある疑問
イギリス製の革靴への関税率は?
イギリスからの革靴を輸入する場合は、日英貿易協定を適用することで7.8%(2024年現在)の関税率が適用されます。WTO税率を適用するよりも優遇されています。この他、消費税が10%課されます。
各国別の関税税率は?
原産国別の革靴の関税率は次の通りです。(外国→日本)
- イギリスとアメリカ産の革靴=WTO協定税率
- ヨーロッパ諸国産の革靴=日欧EPA
革靴は、一万円以下免税ルールが適用されません。
関税の計算をするときは、いくつかの条件を満たすことで、この課税価格を小さくできます。その一つが「一万円以下免税ルール」です。
一万円免税ルールは、輸入する商品の合計価格が一万円以下(個人使用のときは16000円以下)のときに、関税と消費税を免税輸入できる仕組みです。ただし、残念なことに、革製品については、この一万円以下免税ルールが除外されることになっています。詳しくは「一万円以下の物は、関税や消費税を免除する制度」をご覧ください。
ウェブタリフを使えば、簡単に革靴の関税率を調べられます。関税率表は、少し特殊な表現方法があるため、混乱される方も多いかと思います。そこで、ここでは、関税率表に書かれている理解しがたいキーワードをまとめてご紹介していきます。
共通限度数量以内の物とは?
革製品には、一定の量まで低率で輸入できる「関税割当」が設定されています。この関割を使って輸入すれば、一般的な関税率よりも低く輸入ができます。ただし、基本的には、商業ベースでの輸入が前提です。(割当枠を消化しなければならないため)
まとめ
革靴の輸入は、高い関税で有名です。しかし、昔の情報をいつまでも覚えているのはよくありません。日本は積極的に経済連携協定(epa)を結んでいます。
革靴の税率は関税割り当て(年間の輸入数量を政府が決める。残数によって一次税率と二次税率を適用する方式)など複雑な制度を利用したとしも一時税率で若干安くなる程度です。しかし、これとは対照的でEPAの活用はすごいです。30%もの関税がかかる製品であっても、EPAを活用すれば無税またはわずかな税率で輸入ができます。
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