輸入に必要な手続き
このレッスンで学べること
輸入に必要な書類とその意味 輸入には、インボイスやパッキングリストなど、いくつかの書類が必要です。それぞれがどんな役割をしているのかをわかりやすく説明します。
書類はどんな場面で使うの?どう読むの? 書類の内容をどう見ればいいのか、そして実際にどのタイミングで使われるのかを具体的に解説します。
輸入のときに必要な役所の手続き 食品や動物製品などを輸入するときは、検疫や許可、届け出などの手続きが必要です。その流れを学びます。
商品によって注意するポイントが違う! たとえば、食品、化粧品、電気製品などは、それぞれ輸入のときのルールが違います。カテゴリごとの注意点を紹介します。
書類を出すときのチェックポイント 作成ミスや書式の違いがあると通関で止まることも。提出前に確認すべきポイントや書式の確認方法も解説します。
輸入の流れと書類の使いどころがわかる 輸入の全体的な流れの中で、どの段階でどの書類が必要なのかを時系列で整理して学べます。
輸入に必要な書類は「通関・許可・販売」の3段階に分かれる
輸入ビジネスでは、仕入れから販売までに多くの書類が必要です。これらは「通関」「法律のルール対応」「販売時の表示」などに使われます。
書類の不備があると、荷物が止まり、販売できなくなることもあります。
そのため、書類はとても大切です。
書類は次の3つの目的に分けられます。
- 通関のための書類(インボイス、パッキングリストなど)
- 法律や規制に対応する書類(食品・化粧品なら検査書など)
- 販売のための書類(ラベル、成分表など)
輸入通関で必要となる代表的な書類
インボイス(Invoice)
- 請求書。仕入金額・数量・取引条件・通貨などを明記されています。
- HSコードと一致する品名、原産国が記載されている必要あり。
- インコタームズ(FOB、CIFなど)と一致しているかも重要
パッキングリスト(Packing List)
- 梱包明細。箱の数、重さ、体積、内容物が明記されている。
- 税関検査や物流会社の荷受時に照合資料として使用される。
B/L(船荷証券)またはAWB(航空貨物運送状)
- 船便・航空便の輸送契約書。貨物の所有権を証明する書類。
- 近年は電子B/LやSea Waybillの利用も増加。
原産地証明書(Certificate of Origin)
- 関税優遇措置(EPA等)を受ける際に必要。
- 発行元は商工会議所や税関指定機関。様式や記載方法に注意。
保険証券(Insurance Certificate)
- 輸送中の事故に備えるための保険契約書類。
- 補償範囲や条件(ICC A/B/Cなど)も確認ポイント。
商品別に必要な追加手続きと書類
輸入商品によっては、上記以外の書類も必要です。代表品目は、食品、化粧品、電気機器などです。
食品・健康食品
- 食品等輸入届出書(厚生労働省に提出)
- 成分表・ラベル案・製造工程表などを添付
- 検疫所での届出が完了しないと通関許可が下りない
- 差し止め事例(例:検疫所差し止め事例年約500件超。食品衛生法不備など)
【食品輸入の完全ガイド】初心者でもできる手続き&許可のポイントを徹底解説!
化粧品・医薬品
- 化粧品製造販売届出書(医薬品医療機器総合機構など)
- 成分リスト・製造元情報・GMP(製造工程管理)資料など
- 試験成績書不足での差し戻し事例も多い
電気製品・玩具
- PSEマーク(電気用品安全法)対応資料
- PSCマーク(消費生活用製品安全法)関連証明
- 対象製品では第三者試験機関の成績書が必須
衣類・繊維製品
- 組成・洗濯表示・原産国表記などのラベル義務あり
- 特に肌に触れる商品は表示内容に注意
書類の不備が招く主なトラブル
- インボイスに単価や通貨が記載されていない → 課税価格不明で保留
- 成分表が不完全、または英語表記のみ → 食品や化粧品の検査通過不可
- 原産地証明の発行機関や様式が誤っている → EPAの適用却下
- ラベルが外国語のみ → 販売前に日本語表示の追加対応、再梱包コストが発生
輸入時の書類不備は、通関の遅延や追加コストの原因です。
たとえば、インボイスに単価や通貨がないと課税価格が不明となり保留扱いに。食品や化粧品では、成分表の不備や英語のみの記載で検査が通らないこともあります。また、EPAを使いたい場合でも、原産地証明の様式や発行機関が誤っていると適用が却下されます。
ラベルが外国語だけだと、販売前に日本語表示を追加する再作業が必要になり、時間とコストが余計にかかります。書類の正確さは、輸入成功の基本です。
補足情報
電子化の進み具合と注意点
貿易では、書類の電子化が進んでいます。B/L(船荷証券)やAWB(航空運送状)は「電子版(e-BL、Sea Waybill)」が使われています。
日本では、通関手続きに「NACCS(ナックス)」というシステムを使い、書類の提出や税関対応もオンライン化されています。
2025年10月からの変更点
2025年10月12日から、輸入時の申告項目が増えます。これは以下の理由によるものです。
- 越境ECの増加(ネット通販など)
- 違法な薬物やニセモノの対策
- 脱税防止
特別な申請が必要なケース
以下のようなものは追加の許可や書類が必要です。
- 農産物・繊維などの関税割当商品:申請書と承認証が必要
- ワシントン条約の対象品(例:象牙、特定の動物の革製品)
- 医薬品・化学品など:輸入許可や証明書の提出が必要
実務での注意点
- 電子申告でも入力ミスやファイルの不備があると通関が遅れることがあります。
- 書類提出前のチェックがとても重要です。
輸入書類と手続きに関するよくあるスタートアップQ&A
Q1. インボイスとパッキングリストは必ず分けて用意しなければいけませんか?
A. はい。インボイスは取引条件と金額を示す請求書、パッキングリストは貨物の梱包明細です。役割が異なるため、通関では両方の提出が必須です。1枚にまとめることは推奨されません。
Q2. 原産地証明は全ての輸入品で必要ですか?
A. いいえ。EPAなど関税優遇措置を利用する場合のみ必要です。通常の輸入では不要ですが、EPA適用時に不備があると関税が免除されません。
Q3. 食品や化粧品の検疫手続きは通関の前にするべきですか?
A. はい。これらは検疫所での届出が完了しないと、通関許可が下りません。通関業者と連携し、事前に必要書類を準備・提出しておきましょう。
Q4. PSEやPSCの対象製品かどうかをどう判断すればよいですか?
A. 経済産業省の対象品目リストを確認しましょう。また、通関業者や専門の輸入代行業者に事前相談することが、トラブル回避につながります。
Q5. 書類作成を外注した場合でも、最終的な責任は誰にありますか?
A. 輸入者(=あなた)が最終責任を負います。書類作成を委託しても、税関や検疫に対する申告者は輸入者であるため、内容確認は必ず自分でも行いましょう。
まとめ
- 輸入には、通関、規制対応、販売表示の各ステージで異なる書類が必要
- 各書類は税関・検疫・販売先それぞれでの役割を持ち、整合性が重要
- 書類の記載ミスや不備は通関遅延やペナルティに直結するため、慎重な確認と専門家との連携が必須
- 規制対象品は特に慎重に。事前に保健所や通関業者と相談し、必要な書類を揃えておく
次の記事>>「第7回:輸入通関の仕組みとフォワーダーの選び方」
基幹記事
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