日欧EPAを利用して関税の免除を受けるときは、その産品の原産国が日本又はEUであることを証明する必要があります。この原産品である基準を決めているのが原産地規則(品目別規則)です。品目別規則の中には、CCやCTH、EXWなどの専門的な用語がたくさん並んでいるため、なんだかとても難しく感じます。
そこで、この記事では、日欧EPAの品目別規則の中に登場する用語をできるだけ理解しやすいように解説していきます。
日欧EPAにおける品目別規則と用語
日欧EPAを活用して関税の免税を受けるには、その産品が協定国の原産品であることを証明する必要があります。この原産品の基準を示すのが「日欧EPA付属書三-A及び三-B」です。三-Bには、いわゆる品目別規則が書かれており、それを読み解くための注釈が「三-A」に記載されています。この記事は、この三-Aの中で記載されている用語の解説をしていきます。
付属書三-A(注釈)に記載されている8つの用語
- CC(類変更)
- CTH(項変更)
- CTSH(号変更)
- EXW(工場渡し価格)
- FOB(本船渡し価格)
- MaxNOM(非原産材料が占められる最大の割合)
- RVC(最少の域内原産品の割合)
- VNM(非原産材料)
1.CC(類変更)
協定上の原産品を判断するときのルールの一つに「関税分類変更基準(CTC)」があります。これは、完成品のHSコードと、そこに含まれる原材料のHSコードを見比べて、決められた変更レベルを満たすときに原産品と見なすルールです。
例えば、完成品のクッキーを見てみましょう! 左側には、完成品のHSコード(1905.90)がありますね? そして、右側には、その完成品に含まれる小麦粉(1101.00)などがあります。完成品のHSコード1905.19と、それぞれの原材料を見比べて、どれほどHSコードが変化しているのか?を考えます。
決められている変更レベルとは、6桁のHSコードを先頭から二桁、四桁、六桁のくくりで確認することです。下の図をご覧ください。先頭から二桁部分が「類=CC」、4桁部分が「項=CTH」、6桁部分が「号=CTSH」です。品目ごとに決められている原産地ルールを確認して、変更レベルを満たせば、原産品です。
2.CTH(項変更)
完成品のHSコードから原産地ルールを調べた結果「CTH」と記述されているときは、完成品と原材料のHSコードが上から4ケタの部分で変化していればOKです。
3.CTSH(号変更)
品目別規則の原産地ルールを調べた結果、「CTSH」と書かれているときは、上から6桁のレベルでの変更です。
例えば、日欧EPAの場合、HSコード「1301.20~1302.19」に該当する物の原産品は、材料との間で「CTH=項レベル」の変更が必要です。つまり、仮のお話として、使用している材料の中に、1301項が含まれている場合は、関税分類の変更をしていないです。1301項と1302以外の材料が使われていれば、CTH基準を満たします。(1303項など、1301と1302以外はすべてOK)
要は、協定上の品目別規則の中で規定されている原産地規則が何であるのか?を調べた結果、各原材料が決められた変更レベルで変化していることを確認できればいいです。ちなみに、日欧EPAにおける原産地規則は、付属書三-Bの品目別規則か、税関が運営する「原産地規則ポータル(予定)」で調べられます。関連記事:【EPAマニュアル】関税ゼロ貿易の始め方(導入編)
4.EXW(工場渡し価格)
日欧EPAでは、完成品の価格基準として、FOBに加えてEXWが登場します。EXWとは、工場から出荷するときの価格を指します。協定上は、このEXWの価格を「最後の作業または加工をした製造者に対して支払われる工場渡し価格」としています。つまり、その製品を製造するときのすべての費用です。ただし、工場渡しが前提です。具体的には、原材料費用、生産費用(人件費など)、工場の利益などを含みます。
5.FOB(本船渡し価格)
とは、商品の売り手に対して支払われる本船渡しの価格です。先のEXWが工場から出荷するときの価格でしたが、FOBは、そこからさらに進んだ地点、輸出港に停泊している本船に積み込むまでの価格です。具体的には、EXWにプラスして、工場から輸出港までの輸送費用や通関費用を加算した価格です。
6.VNM(非原産材料)
完成品に占められている部材を分解した後、日欧EPA上の原産部材か、非原産部材かを判断します。このとき、非原産部材と判断した物を「VNM」といいます。VNMとは、商品の中に含まれる非原産材料の合計価格です。もし、この非原産部材が外国から輸入した物であるときは、その輸入部材が日本港に到着したときの輸入価格(CIF)がVNMの価格です。
EPAは、安易に原産部材にしないことがポイントです。本当は日本で製造している。でも、あえてすべての部材を非原産にして申請します。理由は、原産部材として申請すると、その部材の原産性を証明する各種書類が必要になるからです。
7.MaxNOM(非原産材料が占められる最大の割合)
MaxNOMとは、完成品に使われている原材料の内、非原産材料が占められる最大の割合を基準に考えます。
例えば、一つ100ドル(EXW)の商品があります。この商品のMaxNOVは、30%に設定されているとします。使われている部材は、以下の通りです。
・部品A(原産材料) 20ドル
・部品C(原産材料) 30ドル
・部品C(非原産材料)35ドル
この場合、MaxNOMを計算すると…
35/100*100=35%です。
よって、商品に決められているMaxNOMの値30%を超えているため、この商品は「協定上の原産品」にすることはできません。
MaxNOMを求める公式
実際のEPA協定書には、次のように記述されています。
8.RVC(最少の域内原産品の割合)
RVCとは、完成品に含まれる域内原産割合の最小値を指します。この域内原産割合とは、次の費用の合計額を指します。この合計額が完成品価格に対して、一定の割合を超えている物を原産品と判断するルールです。
これらの合計が「RVC」に含まれます。RVCの公式は、次の通りです。
RVCの公式
また、RVCも同じく協定上には、次のように示されています。
すでにお分かりいただける方も多いと思いますが、日欧EPAでは、2402.20-2403.99に該当する産品は、
・CTH
・MaxNOM35%
・RVC70%
など、一つの産品に対して複数の基準が設定されています。このように複数の原産地規則がある場合は、いずれか一つを満たせばいいです。
原産部分の対象になる物
- 完成品を作るときに使用した原産部材
- 工場の設備費用(電気、水道、重油など)
- 製造するために必要な人件費
- 工場の利益
- 製造経費
- 販売促進費
- 工場から輸出港までの輸送費用
まとめ
- 日欧EPAでは、EXWでの価格が登場するのが特徴です。
- 一見、難しい用語に見えますが、他のEPAとさほど変わりません。
- VNMやRVCなどは、同じ価格を左から見ているのか?右から見ているの違いです。要は、非原産の部材を基準に考えるのか。原産部分を基準に考えるのかです。
- 輸出する商品のHSコードを調べて、そこに決められている原産地規則を確認しましょう!
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