海外取引を行う企業にとって必須となる「貿易保険」。取引先の倒産や政治リスクから自社を守る重要なツールですが、「仕組みが複雑で分かりにくい」という声をよく耳にします。
本記事では、貿易保険の基本的な仕組みから申込み方法までを初心者にも分かりやすく解説します。これから海外取引を始める方、貿易保険の知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
貿易保険
貿易保険とは?
貿易保険とは、海外との取引に伴う様々なリスクから企業を守る保険制度です。日本では、独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が運営する保険制度として提供されています。
主に海外に商品を輸出する人が貿易取引のリスクを下げる為に利用します。
主なリスク
- 代金回収不能リスクをカバー
- 政治的リスクや商業的リスクが対象
- 契約から代金回収までの包括的な保障
NEXIとは?
- 民間では引き受けが困難な政治リスクもカバー
- 政府機関ならではの高い信用力
- 幅広い情報収集能力と分析力
海上保険の違いは?
貿易保険と海上保険は、しばしば混同されがちですが、その役割は大きく異なります。海上保険は、「物に対する保険」です。
- 輸送中の貨物の物的損害をカバー
- 自然災害や事故による損害が対象
- 輸送期間中の保障が中心
一方、貿易保険は「取引に対する保険(例:倒産リスクなどに備えるなど)」です。これらは補完関係にあり、多くの貿易取引では両方の保険に加入することをおすすめします。
貿易保険をかけると得られる安心(メリット)
海外販売をする人は、貿易保険に入ると、以下の安心が手に入ります。
- 取引先の破産や債務不履行のリスクを下げられる。
- 代金の未払いや遅延のリスクを下げられる。
- 戦争や革命などの政治的混乱のリスクを下げられる。
- 為替取引の制限や禁止された時のリスクをリスクを下げられる。
- 輸出入禁止措置に至った場合のリスクを下げられる。
保険の種類
貿易保険には、個別保険と包括保険の2つがあります。何度も取引をする場合は包括(全ての輸出保険を対象)を選びましょう。そして、それぞれには、さらにいくつかの種類があります。
個別保険
輸出取引毎に保険をかけたい方におススメ
- 貿易一般保険(この保険が一番使われている)
- 中小企業・農林水産業輸出代金保険(船積後の代金決済に特化)
- 限度額設定型貿易保険(特定の取引先と反復取引する場合に便利)
包括保険
まとめて保険をかけたい方におススメ=一件あたりの保険料が低額!
- 簡易通知型包括保険
- 簡易一般保険
- 貿易一般保険
- 貿易一般保険
貿易保険は物以外の取引(サービスや知的財産権、投資や融資など)にも適用できます。それぞれの細かい説明は、貿易保険のページをご確認ください。
貿易保険の料金の計算方法
貿易保険の料金は、契約金額、輸出先国(国の格付け)、販売先の格付けにより変わります。
取引金額×料率(国別格付け、決済条件等により変動)
詳細は、貿易保険の料金シュミレーターで計算ができます。
貿易保険の申込から補償までの流れ
貿易保険を利用するまでの流れは次の通りです。
- 保険利用者登録
- 海外バイヤーの登録
- 保険申込み
- 保険契約締結
- 保険料支払い
- 事故発生時に保険金請求
この保険制度を効果的に活用することで、国際取引に伴うリスクを適切に管理し、安定的な事業展開が可能です。特に初めて海外取引を行う企業や、新規市場への参入を検討している企業にとって、貿易保険は重要です。
予備知識1.輸入取引の前払いリスクを下げる為にも使える。
貿易保険は、輸出の他、輸入取引の前払いリスクも下げられます。
- 一回の取引が100万円を超える。
- 輸入者に対して前払いで支払った。
- 取引先が倒産等をして取引ができなくなった。
- NEXIの貿易保険でカバーする。
なお、輸入の貿易貿易保険も取引相手の格付けがいる為、注意が必要です。
予備知識2.取引上、危険な国がわかる。
例えば、世界のどこに輸出しようか?と考えている場合、できる限りリスクが小さい国が良いですね? 政情不安や海賊などに悩まされるのは避けたい所です。そこで、NEXIにある「COUNTRY RISKMAP」を活用します。
カントリーリスクを8段階で評価し色分けしています。青いほどリスクが低く、赤いほど、リスクが高いです。
画像引用元:日本貿易保険
予備知識3.NEXIには信用調査がある!
NEXIは、貿易保険を運営する関係から海外バイヤーの信用力を調査するサービスがあります。日数は3週間から一か月ほどです。国ごとに違いますが、数千円から数万円の範囲で調査ができます。
まとめ
- 貿易保険は輸出取引のリスクを下げられる。
- 貿易保険には、個別と包括の2種類がある。
- NEXIには、信用調査サービスがある。