海外販売をする上で、海外交渉(輸出交渉)は避けて通れないです。交渉では、何を?いくらで?どのようにお金を支払い?いつ出荷するのか?などを決めていきます。売り手や買い手は、交渉を通して、納得できる部分、できない部分を一つ一つ整理して、妥結を目指します。
輸出交渉の全体像は、どのように行うのでしょうか?
そこで、この記事では、輸出交渉の全体像、代金の受け取り方法、輸出価格の算出方法について説明してきます。
海外交渉(輸出交渉の全体像)
海外交渉のきっかけは様々です。国際見本市、ウェブサイト等からの問い合わせなどがあります。一般的には、海外のバイヤーから見積もりや問い合わせのメールが届き、それに応える形で交渉が開始されます。
海外交渉には、次の言葉があります。
- オファー
- 引き合い
- アクセプト
冒頭に申し上げている通り、海外交渉で決まったことは、ウィーン売買条約の規定通りに拘束されます。
ウィーン売買条約とは、国際的な物品の売買契約を結ぶ際、その基本となる法律です。2023年現在、約90か国が加盟しており、加盟国間の企業が売買契約をする場合は自動的に適用されます。(二者間でウィーン売買を不適用と合意することも可能)
輸出交渉の流れ
輸出交渉は、買い手からの問い合わせにより始まることが多いです。売り手は、買い手から問い合わせを受けたら、プロフォーマインボイスを作成し取引条件を示します。その後、買い手は、プロファーマインボイスの内容を確認し、交渉部分が無ければ署名をして返信します。その後、売り手は、プロフォーマインボイスを基にしてコマーシャルインボイスを作成して、正式な契約手続きを進めていきます。
海外バイヤー(買い手)の心に響く提案メールのポイント 中学英語でも大丈夫!
プロフォーマインボイスの記載内容
連絡先、有効期間、価格、インコタームズ、取引時方法、ペイメント等方法、商品詳細情報、発送日、デリバリーポイント、他に必要な費用(特別な書類、法的必要書類、検査料(証明書)、特別の梱包など)など
プロフォーマインボイスに修正希望点がある場合は?
もし、売り手が発行したプロフォーマインボイスに交渉したい部分がある場合は、その旨を伝えます。
例:価格部分を交渉したいなら、希望価格を提示するなど。
売り手は買い手から提案に対して、受け入れるのか? 拒否するのか?を決めます。このように疑問点を正確に伝えて一つ一つ交渉していきます。その結果、最終的にコマーシャルインボイスができあがります。

プロフォーマインボイスが交渉のたたき台の役割です!
輸出価格の算出方法(相手に提示する価格)
輸出価格とは、日本から出荷できる価格をさします。具体的には「FOB TOKYO US2000ドル」等です。この場合「東京港出しの価格で2000ドルで取引します!」と相手に伝えています。この内、FOBの三文字部分をインコタームズと言います。売り手と買い手は、11のインコタームズの内、取引希望条件に合わせて、一つの物で合意します。その結果、売り手と買い手の費用負担や危険負担が明確になります。
関連:輸出費用の算出とFOB価格の決め方 バイヤーも納得!?
話を戻します。海外との交渉は、貴社の商品をいくらで輸出できるのか?を提示できる状態にしておくことが重要です。海外のバイヤーは、製品が気に入った。では、それをいくらで購入できるのか?の部分を知りたがります。このとき、具体的な価格を用意できていない場合は商機を逃します。当然、この輸出価格は、国際展示会に出展するときに用意するべき資料でもあります。
では、輸出価格には、何を含めるべきでしょうか? 主な費用は次の通りです。
- 日本側:利益
- 日本側:販売する為の諸経費
- 日本側:商品代金
- 日本側:商品梱包代金
- 日本側:国内配送
- 日本側:各種書類作成代(例:特定原産地証明書取得代)
- 日本側:輸出通関
- インコタームズによる費用:国際輸送代、保険代金
上記の合計がバイヤーに提示する「輸出価格」です。ただし、輸出通関、国際輸送代金、保険代金等は、選択するインコタームズにより含めたり、含めなかったりします。インコタームズによる含めるべき費用は、別記事のインコタームズ入門をご覧ください。なお、簡単にFOB価格を算出する為の「FOB価格計算ツール」もあります。
最低限、3つの輸出価格を用意するべき!
輸出価格は、最低限、以下3つを用意しておくと良いです。
- FOB価格/FCA 売り手は、日本側の港に停泊する船に乗せるまでの費用を負担する価格
- CIF価格/CIP 売り手は、相手国側の港につけるまでの費用を負担する価格
- EXW 売り手は、日本側の倉庫で引き渡すまでの費用を負担する価格
参考情報:相手先の輸入価格(LANDED COST)の算出方法
日本から相手国に商品を送ると、そこには様々な「諸経費」がかかります。ここでは、どのような諸経費があるのかをご紹介します。諸経費を把握することで相手先国での「LANDED COST」がわかります。
- 日本側:利益
- 日本側:商品代金
- 日本側:商品梱包代金
- 日本側:国内配送
- 日本側:輸出通関&国際輸送代
- 日本側:保険代金
- 日本側:各種書類作成代
- 海外側:輸入税
- 海外側:輸入通関代
- 海外側:国内配送代
- 海外側:輸入者の利益
輸出先(海外)で設定されている関税率、輸入税率は、ウェブタリフで調べられます。
代金の受け取り方法を知る。
ところで、輸出代金は、どのように受け取ればいいのでしょうか?代表的な決済方法は、次の通りです。
- T/T(振込)
- ペイパル等
- L/C
- エスクロー
1.T/T
T/Tは、銀行振り込みのことです。基本的に一般的な貿易取引で価格が200万円以下の場合は、このT/T決済を利用することが多いです。T/T決済は、前払いが前提になるため、買い手のリスクが大きくなります。そこで、実務では、最初に50%をもらい、船積みと共に残りの50%を受け取るなどの方法が持ち入れられます。
但し、中古車の輸出など、比較的、リスクが高い物は100%前払いが理想です。特にアフリカ等へ輸出する場合は、現地側で船積書類(B/L)が無くても貨物を引き取れてしまう現実があることも理解しておきます。
2.ペイパル等
ペイパルとは、お互いのメールアドレスだけで送金ができる国際決済サービスです。一昔前は、EBAY取引の際によく利用されていました。最近では、ペイパルの代わりに「Stripe」「Square」なども利用されています。
これらの特徴は、極めて短い時間で送金ができること、ある一定の価格以下なら銀行振り込みよりも手数料が安い点が魅力だと思います。一定規模以上は、手数料率の関係からぐっと高くなるので注意します。
3.L/C
L/C決済は、売り手と買い手との間に2つの銀行を経由して決済する方法です。一回の取引が200万円超えの場合に利用されることが多いです。銀行を通して決済と貿易書類をやり取りする為、極めて安全性が高い決済です。
しかしながら、L/C開設には輸入者側の信用が必要です。販売先が発展途上国のバイヤーであると、L/Cのオープンができず利用できない可能性が高いです。また、銀行が間に入る分、手数料が高くなり、船積み書類の受け取りまでも長くなります。
4.エスクロー
エスクローとは、売り手と買い手の間に第三者が入り、決済の安全性を担保する仕組みです。代表的なのがアリババですね!アリババでやり取りする貿易代金は、アリババのエスクローの仕組みにより支払いを受け取れます。
バイヤー側の立場から考えると、エスクローは、不良品をつかまされずに済む可能性が高くなります。一方、売り手側は、商品を発送しても代金を受け取れない可能性を低くできます。
参考:海外出張の知恵
もし、交渉や視察などで海外出張するときは、以下の点に気を付けましょう!
- パスポートの有効期間
- ビザの必要性の有無
- 渡航安全情報
- 相手国の入国制限(感染症等)
- 相手国の一般的なビジネスアワー
- 長期連休や祝日
- ビジネスの服装。お土産の有無など
ちなみに、海外出張の際、ATAカルネを使うと、商業用見本を輸出入できます。また、APECビジネスカードで入国すると、金銭的なやり取りがない商行為(視察、交渉、展示会の参加、工場の下見など)が認められます。

