EPA(自由貿易)を活用して関税ゼロの恩恵を受けるには、輸出入する商品に「原産性があること」がポイントです。原産性があるとは、EPAを結んでいる国々の産物であることです。
例えば、日インドネシア協定であれば、日本とインドネシアで生産された産品が協定上の原産品です。フィリピン、ベトナム、タイなど、その他の国で生産された産品は、日インドネシア協定上では、原産品ではありません。ただし、このときの原産性とは、すべて「完成品」に対しての判断です。
この記事でお伝えする「原産材料と非原産材料」とは、完成品に含まれる「原材料」の原産性を指します。EPAでは、この原材料の部分に関する原産、非原産の考え方が非常に重要です。そこで、この記事では、完成品に含まれる原材料の「原産材料と非原産材料」を判断するときのポイントと必要書類をご紹介していきます。
原材料の原産性とは?
EPAで関税上の恩恵を受けるには、商品自体に「原産性があること」が重要です。この原産性という言葉の中には、次の2つの意味があります。
- 完成品に対する原産性
- 完成品に使われている原材料の原産性
EPAでは、これら2つを明確に区別して考えます。もし「EPAは、原産性が必要だから、すべての原材料を日本で仕入れなければならない」と考えている方は、この材料と完成品に対する原産性を理解されていない可能性が高いです。EPAの原産性がある「完成品」には、必ずしも「原産性がある材料」を使う必要はありません。
原産性がない材料(非原産材料)を使っても、必要な加工をすれば、協定上の原産品とみなされるからです。では、何をもって原産材料になるのでしょうか?
■最重要ポイント
- 完成品には原産性が必要
- 完成品の部材には、原産性が不要
原産材料とは?
ここから先の記事は、すべて「原材料」の原産性についてです。完成品に関する原産性ではないため、あらかじめ注意しながらお読みください。
グローバル化した世の中において、ある一つの完成品を仕上げるときは、諸外国からたくさんの原材料(部品)などを輸入して一つの完成品にすることが多いです。
例えば、自動車を作るとしましょう!この中には、フロントガラス、ハンドル、ブレーキ、エンジンなど、たくさんのパーツがあります。もちろん、すべての原材料を日本で賄うことができればいいのですが、コスト的な問題から、現実的には不可能です。一般的には、パーツごとに様々な国から輸入します。
- フロントガラスは、台湾から~
- ハンドルは、インドネシアから~
などです。そして、これら「原材料」をまとめて一つにしたものが「最終完成品」である自動車です。よろしいでしょうか? やはり、ここでも完成品と、それに含まれる原材料をわけて考えることが重要です。
完成品 | 原材料 |
自動車 | フロントガラス |
ハンドル | |
ブレーキなど |
では、原材料の「原産性」とは、どのようなことをいうのでしょうか? 先ほどの日インドネシアであれば、日本またはインドネシアの工場で製造すれば、すべて原産性があると判断できるのでしょうか? すでにお分かりの通り、それは間違いです。
原材料の原産性を判断するときのポイントも、日インドネシアにおける原産地規則の基準をクリアすることです。ここは、とても重要なポイントです。完成品に対する原産性の判断も、完成品に含まれる原材料の原産性の判断も、すべて日インドネシア協定の原産地規則で判断します。
■原材料の原産性を判断するときのポイント
日本の工場で製造している=必ずしも協定上の原産品ではない。 完成品に使われている原材料の原産性も、対象の協定で定められている原産地規則で判断する。
非原産材料とは?
一方、非原産材料とは、原産材料の逆の意味です。利用する協定(例:日インドネシア協定)で定められている原産地規則を満たさないものです。
例えば、日インドネシア協定を使うときは、日本とインドネシア以外で生産された原材料は、すべてこの非原産材料に該当します。ただし、実は、非原産材料には、この他、もう一つ重要な考え方があります。それが「原産性を証明できない物も非原産材料とする」です。本当に日本やインドネシアの工場で生産する原材料であっても、原産性を証明できなければ、非原産材料です。
■非原産材料に該当する2つの条件
- 利用する協定上で決められている原産地規則の基準をクリアできないもの
- 原産性を立証できないもの
原産性を立証できないとは?
EPAでは、完成品に使われる原材料を「原産性がある」と申請するときは、その原産性があることを証明するための「サプライヤー証明書」が必要です。サプライヤー証明書とは、その原材料を供給しているサプライヤー(あなたの仕入れ先)が「原材料に原産性があること」を証明するための資料です。
具体的には、サプライヤーは、供給する部材の協定上の原産地規則を確認して、その基準を満たすことを確認します。無事に自社の供給する部材が協定上の原産品と判断できたら、原産品判定依頼を出す人(最終完成品の生産者や輸出者など)に対して、サプライヤー証明書を発行します。そして、原産品判定依頼を出す人は、サプライヤーから入手したサプライヤー証明書を添付することで、その部材の原産性を立証します。
関連記事:【重要】 サプライヤーが証明書を発行するときの注意点
つまり、原産性を立証できないとは、このサプライヤー証明書の発行を受けられないことを指します。または、その他、原産性を証明する書類を用意できないことです。
証明する上でポイントと必要書類
では、完成品に含まれる原材料が原産なのか?それとも非原産なのか?は、「完成品」の原産性を証明する上で、どのように影響するのでしょうか?
先ほど、述べた通り、原材料の内、原産品として申請するときは、サプライヤー証明書が必要です。この証明書を取得するときは、サプライヤーに頼み、サプライヤー証明書を入手する必要があります。そのため、サプライヤーに対して大きな負担をかけます。この理由から、実際の証明時は、まずは、すべての原材料を「非原産」として申請するのが基本です。
すべてを非原産品としても、決められた原産地規則を満たす限り「完成品」としては、原産性が認められます。もし、すべての原材料を非原産として申請を試みた結果、原産地規則を満たさないときは、条件を満たさない原材料のみを「原産品」に切り替えます。つまり、原産材料としては、必要最小限に申請するのがポイントです。
まとめ
- 完成品に含まれる原材料は、すべて非原産として申請を試みる。
- 本当に日本の工場で生産されていても「非原産材料」にする。
- 非原産材料であっても、原産地規則を満たせば「完成品」が原産品になる。
- もし、非原産材料で原産地規則を満たせないものは「原産品」に切り替える。
- つまり、原材料を「原産品」として申請するのは必要最低限にする。
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