ピスタチオ監視リスク
- ピスタチオは総アフラトキシン15µg/kg、B1 10µg/kgが国内基準で、推奨LOQは総AF0.5〜1.0、B1 0.2〜0.5µg/kg。
- 高リスク国:イラン(再湿潤)、トルコ(保管湿度上昇)、シリア(出荷前高値)で湿度・水分6%以下、15℃・RH65%以下管理必須。
- サンプリングは殻割り後内部も含め、10kg以上採取・縮分し代表性確保、剥き実は混合後公定法採取。
- 輸送保管は乾燥剤・温湿度ロガー併用、港湾保管短縮、結露防止レイアウト管理、輸送前に水分再測定。
- 違反時は流通停止→隔離→履歴確認→行政報告→原因分析→是正要求、農薬・重金属・微生物も含めた総合検査体制を維持。
ピスタチオ特有の収穫・乾燥・保管工程によるカビ毒発生リスク
ピスタチオは、収穫時に殻が半開きの状態になっているため、果実内部が外気にさらされやすい特徴があります。この構造のため、収穫直後からカビ胞子が侵入しやすくなります。
特に高温多湿の環境で保管すると、アフラトキシンの生成が早く進みます。さらに、果皮や殻に傷や変色がある場合は、汚染リスクがより高まります。
このため、品質を守るには、収穫後の選別精度を高め、乾燥工程を適切に管理することが重要です。
近年の違反傾向と原因(国別アフラトキシン事例・殻付き/剥き実の違い)
- イラン:天日乾燥中や港湾保管時の再湿潤でアフラトキシンB1高値。
- トルコ:保管中の湿度上昇によるカビ毒発生。
- シリア:輸出前検査で高値ロットが検出される事例。
- 殻付きと剥き実の差:剥き実は汚染が均一化し、検査で検出されやすい傾向。
規制値と国際基準の比較
- 日本(食品衛生法):アフラトキシンB₁=10 μg/kg、総アフラトキシン=15 μg/kg
- EU(ナッツ加工品の場合):B₁=8 μg/kg、総アフラトキシン=10 μg/kg
- Codex(国際食品規格委員会):B₁=10 μg/kg、総アフラトキシン=15 μg/kg

輸入ビジネスでは、仕入先や輸出先の規制を理解し、より厳しい基準値に合わせて管理することが望まれます。
アフラトキシン以外の重要なリスク
- 農薬残留:殺虫や防カビ目的で使われた薬剤が、基準値を超えることがあります。
- 重金属汚染:土壌由来のカドミウムや鉛が含まれる可能性があります。
- その他のマイコトキシン:オクラトキシンAなどが混ざって汚染される場合があります。
- 微生物汚染:長期保管により、大腸菌群やサルモネラ属菌が増えるリスクがあります。
これらを含めた総合的な検査体制を整えることが不可欠です。
管理・検査の実践ポイント
推奨管理目標(参考値)
- アフラトキシンB1:0.2〜0.5 μg/kg
- 総アフラトキシン:0.5〜1.0 μg/kg
- 水分:6%以下
- 保管温度:15℃以下
- 相対湿度:65%以下
サンプリング方法
- 殻付き:ロット全体から均等に試料を採取し、殻を割って内部も含めた分析用試料を作ります。総量10kg以上を集め、均等に縮分して最終的に5kgとします。
- 剥き実:全量をよく混ぜ、公定法(四分法など)に沿って採取します。
輸送・保管管理
- 乾燥剤と温湿度ロガーを併用し、記録は30分ごと、またはそれ以下の間隔で取得します。
- コンテナは結露を防ぐため、換気や積載レイアウトを管理します。
- 港湾での保管は湿度上昇を防ぐため期間を短くします。
- 乾燥後は低湿度・低温の倉庫で保管し、輸送前に水分を再測定します。
検査方法の補足
- アフラトキシンの定量には高感度HPLCまたはLC-MS/MSを使用します。
- 農薬残留の検査にはGC-MSまたはLC-MS/MSによる多成分一斉分析法を推奨します。
- マイコトキシンの混合汚染を想定し、複数項目を同時に分析します。
違反事例
港湾保管中に湿度上昇し汚染拡大
→改善策:輸出前保管期間を短縮、防湿設備の活用、湿度ログの保存。
剥き実で均一汚染により基準超過
→改善策:殻付きで輸入、またはロット分割検査の実施。
サンプリングが殻表面のみ
→改善策:殻割り後の実を含めた採取で代表性を確保。
違反発生時の対応プロセス
- 対象ロットの流通を直ちに停止し、在庫を隔離します。
- ロット履歴(COA、輸送記録、保管湿度データ)を確認し、行政へ報告します。
- 原因分析を実施します(乾燥工程、保管温度・湿度、輸送状況、サンプリング手順など)。
- 仕入先へ是正要求を行い、改善計画を文書で確認します。
表示・認証の注意点
- 名称は「ピスタチオ」または加工形態に応じた適切な名称を記載します。
- 原材料名は単一品名で記載し、添加物は用途名と併記します。
- アレルゲン表示は食品表示基準に従います。
- 有機表示を行う場合は、有機JASなどの認証書類を輸入時に提示できるよう保管します。
国別違反傾向・推奨LOQ・サンプリング方法と管理メモ
国・地域 | 近年の違反傾向 | 推奨LOQ(総AF/B1) | 推奨サンプリング | 実務メモ |
---|---|---|---|---|
イラン | 天日乾燥時の再湿潤で高値 | 0.5/0.2 | 上中下層均等採取 | 港湾保管湿度管理を強化 |
トルコ | 保管中の湿度上昇事例 | 0.5/0.2 | 同左 | 乾燥剤併用と低温保管を推奨 |
シリア | 出荷前検査で高値ロット検出 | 0.5/0.2 | 同左 | 輸送直前の再検査でリスク低減 |
入荷時チェックリスト
- COA(分析項目、LOQ、分析日)の確認とロットID一致。
- 水分測定:6%以下を確認。
- 温湿度ロガー記録:異常値がないことを確認。
- 外観確認:カビ、変色、殻割れの有無。
- 表示確認:名称、原産国、加工内容、アレルゲン情報、有機認証情報。
- 違反履歴のある産地は検査頻度を強化。
まとめ
ピスタチオの安全性確保はアフラトキシン対策にとどまらず、農薬や重金属、微生物など複合的なリスクへの対応が求められます。国ごとの規制値を把握し、より厳しい基準を内規として設定することで、取引先や消費者からの信頼を高めることができます。