輸入とは?
このレッスンで学べること
輸入ってなに?どんな種類があるの? 「自分で使うために買う輸入」と「ビジネスとしての輸入」の違いがわかります。
使い方によって手続きが変わるって本当? 同じ商品でも、「自分で使う」のか「売るために仕入れる」のかで、手続きが変わることを学びます。
輸入にかかわる流れを知ろう 注文してから商品が届くまで、どんな手順で、どんな役所や会社が関わるのかをつかめます。
関税・検査・通関・ラベル表示ってなに? 税金、検査、申告、商品ラベルなど、基本的なルールや考え方をやさしく紹介します。
はじめての輸入で大切な考え方とは? 初心者が失敗しないために、まず意識しておくべきポイントや視点を整理して学べます。
輸入とは何か?
「輸入」とは、海外で製造または販売されている商品を日本に持ち込み、自分で使用したり他人に販売したりする一連の行為です。言い換えると、「日本の外から日本に商品を入れること」であり、そこには物理的な移動に加えて、契約、支払い、物流、税金、法律、検査などが絡みます
この輸入には、大きく分けて2つがあります。
1. 個人輸入
- 自己使用が目的(転売不可)
- 関税・消費税は基本的に発生。ただし、1万円以下の少額貨物は免税対象(例:郵便物)や、簡易税率の適用対象となる場合もあり
- 化粧品、食品など一部は「数量制限つきで届出不要」のケースあり
- インターネット購入(例:海外ECサイト)も含まれる
2. 商業輸入(営業輸入)
- 販売や事業活動を目的とする輸入
- 食品衛生法、電気用品安全法(PSE)、薬機法、家庭用品品質表示法、PSC、特定計量器など各種法令への対応が必須
- 輸入申告、許可、税金納付を適切に実施する体制が必要
商業輸入と個人輸入の違い
比較項目 | 個人輸入(自分用) | 商業輸入(販売用) |
使い道 | 自分で使うだけ(売るのはNG) | 販売やビジネスに使う |
通関の流れ | 配送会社が簡単な手続きで通関してくれる | 通関業者を使って、正式に申告する必要がある |
規制の扱い | 数が少なければ一部のルールがゆるくなることも | 原則すべての法律やルールが適用される |
必要な書類 | 商品や送る方法による | インボイス、パッキングリスト、B/Lなどが必要 |
ラベル表示など | 特に義務はない | 日本語ラベルや成分表示、PSEマークなどが必要なことが多い |
責任の範囲 | 自分で責任を取る | 事業者として、お客さんへの対応など責任が発生 |
輸入に関わる主な手続きと全体の流れ(商業輸入例)
商売目的で輸入する場合の流れは、以下の通りです。
- 仕入れ先の選定・契約交渉(価格・納期・インコタームズ確認)
- インボイス・パッキングリスト・B/L作成(主に輸出者が作成)
- 輸送手配(航空・海上、FCL・LCL選択)
- 日本側での通関申告(通関業者を通じて)
- 関税・消費税納付(CIF価格ベースで計算)
- 検疫・法令検査(必要時)
- 輸入許可、商品の引き取り
- 保管、表示ラベル貼付、販売準備
まず、海外の仕入れ先を探すことから始まります。信頼できる相手かどうかを見極めるために、商談時には価格だけでなく、納期や輸送条件(インコタームズ)なども確認しましょう。
次に、契約が成立すると、輸出者側がインボイス(請求書)やパッキングリスト(梱包明細)、B/L(船荷証券)などの書類を作成します。これらは日本の税関に提出する大事な書類です。
輸送方法は、航空便か海上便(FCLまたはLCL)から選びます。少量ならLCL(混載)、大量ならFCL(コンテナ単位)を選ぶのが一般的です。
日本に到着したら、通関業者(通関士を含む)を通じて輸入申告を行います。ここで、関税や消費税の金額が決まり、CIF価格(商品代+保険+運賃)を基に計算されます。
商品によっては、植物検疫や食品検査などの法令検査が必要になることもあります。必要書類やルールを事前に確認しておきましょう。
通関が終わり、税金などを納付すると、輸入許可が下りて、商品を引き取ることが可能になります。最後に、保管や日本語ラベルの貼付などを行い、販売の準備を整えます。
こうした流れは、一見複雑に見えても、経験を積めばスムーズにこなせるようになります。はじめは、信頼できる通関業者やフォワーダー(輸送手配業者)に相談しながら進めるのがおすすめです。
輸入にかかる費用の内訳
下記が輸入時にかかる主な費用です。輸入原価は、下記の合計とも言えます。
- 商品代金(FOB・CIF)
- 輸送費・保険料
- 関税・消費税(日本の輸入申告ではCIF価格を基準に算出)
- 通関手数料・書類作成費
- 保管費・再梱包費用
- 検査・検疫対応費用
まずは、商品代金。これは「FOB(本船渡し)」や「CIF(運賃・保険料込み)」といった条件によって、含まれる範囲が異なります。
例えば、FOBなら「港に積み込むまで」の費用、CIFなら「日本に届くまでの費用」も含まれています。そこに加わるのが、国際輸送費や保険料です。海上輸送か航空輸送かによっても費用は大きく異なります。
さらに、日本に到着してからは、関税・消費税がかかります。これらは「CIF価格(商品代+運賃+保険)」を基準に計算されるため、仕入れ価格が同じでも輸送費が高いと税金も増える点に注意が必要です。
通関業務を任せる場合は、通関手数料や必要書類の作成費もかかります。また、商品によっては検査や検疫、法令に基づいた対応費用が発生することもあります。
そして最後に、商品を倉庫に一時保管する費用や、ラベル貼り・再梱包などの作業費がかかるケースもあります。これらをすべて合計して、初めて「その商品を仕入れて販売するために、いくらかかったのか」が見えてきます。
この全体像を把握しておくことで、適正な販売価格の設定や利益計算ができるようになり、輸入ビジネスをより安定して続けるための土台となります。初めての輸入では、見落としがちなコストが利益を圧迫することもあるので、ぜひ細かくチェックしておきましょう。
初心者が陥りやすい誤解と注意点
- 「安く買える=儲かる」は誤り。送料・関税・検査費用の計算を忘れずに
- 個人輸入と商業輸入の区別は税関も厳密に確認
- 法令違反リスク(例:薬機法、PSC)を常に意識
- 書類不備(特にインボイス、P/L)はトラブルの原因
実際には、商品代金以外にも多くの費用が発生します。国際送料、関税、消費税、そして検査・検疫などの法令対応費用がかかるため、思った以上にコストが膨らむことがあります。特に重量がある商品や検査対象商品(化粧品、食品、電化製品など)は要注意です。
また、「個人輸入」と「商業輸入」では税関の扱いが大きく異なり、審査も違います。自分で使うための輸入(個人使用)であれば一定の免税措置がありますが、販売目的の商業輸入であれば関税・消費税の対象となり、書類や検査もより厳しくなります。
さらに、知らずに法律違反をするリスクにも注意が必要です。化粧品や健康食品を輸入する際は薬機法が関係し、電気製品ならPSEマークが必要な場合もあります。
加えて、インボイスやパッキングリスト(P/L)などの書類の不備は、通関遅延や税関でのトラブルの大きな原因です。内容の誤記、金額の不一致、品名の曖昧さなど、ちょっとしたミスでも手続きがストップすることがあります。
輸入ビジネスでは、「買うこと」よりも「きちんと通すこと」のほうが重要です。費用の全体像、法令の確認、書類の正確さ——これらをしっかり押さえることで、無駄な損失やトラブルを防ぎ、安全・確実な輸入ができるようになります。
個人輸入か商業輸入かの判断方法
次の質問でチェックしてみましょう。
自分で使うため?
→ はい → 個人輸入
→ いいえ → 商業輸入(販売用)
量は家で使いきれる程度?
→ はい → 個人輸入OK
→ いいえ → 商業輸入として扱われるかも
売る予定がある?(転売)
→ はい → 商業輸入(ラベルや法律の対応が必要)
最小テスト輸入例
- 金額目安:5万円未満
- 数量目安:50個以下(商品による)
- 輸送方法:EMS、DHL(小口対応、簡易申告)
ここで紹介している「最小テスト輸入」とは、その名の通り、できる限りリスクを抑えた最小単位の仕入れ方法です。
たとえば、金額は5万円未満、数量も50個以下など、少額・少量にとどめて、以下のような目的で行います。
- 商品の品質や仕様を自分の目で確かめる
- 日本のお客様にどの程度ニーズがあるかをテストする
- 海外の取引先の信頼性を確認する
- 輸入手続きの全体像を体験し、感覚をつかむ
輸送手段としては、EMS(国際スピード郵便)やDHLなどの国際宅配便を利用することで、小口の荷物でも比較的スムーズに輸入できます。これらのサービスは、通常の商業輸入に比べて通関が簡略化(簡易申告)されているため、初心者に適しています。
また、5万円未満の輸入であれば、関税や消費税が免税になる可能性がある点もメリットのひとつです(※商品や条件によって異なるため、詳細は税関の案内を確認してください)。
このように、最小テスト輸入は「本格輸入の予行演習」として非常に有効です。小さく始めて、うまくいけば次の段階へとステップアップしていきましょう。
初心者が押さえるべき輸入Q&A
Q1. 個人輸入でも税関で止められることはありますか?
A. はい。数量や品目によっては個人使用と認められず、商業輸入扱いになる場合があります。特に食品・化粧品・健康食品・医薬品などは要注意です。
Q2. 商業輸入時、最初にやるべき準備は何ですか?
A. 仕入れ先との契約とともに、輸入品のHSコードを調べ、該当する規制(食品衛生法、薬機法など)を確認しましょう。これを怠ると、通関でストップします。
Q3. 個人輸入と商業輸入で送料や関税は変わりますか?
A. 基本的な送料は同じですが、関税や消費税の計算方法、通関手続きの厳しさが異なります。商業輸入では必ず正式な輸入申告が必要となり、コストや手間が増えます。
Q4. インターネットで個人輸入しても、販売したら違法になりますか?
A. はい。個人輸入はあくまで自己使用限定です。転売すると商業輸入扱いになり、脱税行為にあたる可能性があります。
Q5. 初めて輸入する場合、最も安全な始め方は?
A. 少額・少量(目安5万円、50個以下)を個人輸入でテストし、輸送・通関・検疫など一連の流れを経験しましょう。その後、商業輸入に進むのがおすすめです。
補足情報
輸入できない代表例
- 麻薬や指定薬物
- 銃や爆発物
- 偽ブランド品
- 絶滅危惧動物(ワシントン条約の対象)
注意が必要な品
- 食品・医薬品・化粧品
- 植物や動物
- 電気製品(ドライヤーなど)
⇒ それぞれ、担当の省庁へ許可や届出が必要になることがあります。輸入前に、必ず税関や役所の情報をチェックしましょう。
日本に輸入できないもの(禁止)・規制されている物と条件を徹底解説
個人輸入のリスク
- 商品が届かない・壊れていた
- 日本語の説明書がない
- 修理・返品ができない
※個人輸入は「自己責任」です。失敗しないよう注意が必要です。
輸入代行サービスとは?
海外サイトが難しい人は、「輸入代行サービス」を使うのも1つの方法です。購入・配送・通関を手伝ってくれますが、「手数料」や「対応範囲」を事前に確認しておきましょう。
商業輸入では許可や届出が必要なことも
販売目的で輸入する場合、品目によっては次のような法令対応が必要です。
- 食品 → 食品衛生法
- 化粧品・サプリ → 薬機法
- 電気製品 → PSEマーク
- ベビー用品・おもちゃ → PSCマーク、品質表示法 など
⇒ 事前に「何が必要か」を確認して、忘れずに準備しましょう。
まとめ
- 輸入は「商品を日本に持ち込む」以上に、複雑な実務と法令対応が必要なビジネス行為
- 個人輸入と商業輸入は目的・対応範囲が大きく異なるため、最初に明確に区別する
- 商業輸入には通関、検疫、税金、表示義務など多面的な要素が絡む
- 輸入の流れを押さえることで、今後の判断や準備に大きな差が出る
- 初心者はまず少量輸入から始め、書類・通関・検査に慣れることが成功の第一歩
次の記事>>「第2回:どこから輸入する?主要国別の特徴と注意点」
基幹記事
輸出入と国際輸送の手引き
1.取引先を探す。
3.船積み準備
4.法規制
5.国際輸送
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