貿易の「一問一答コーナー」、外貨建てに関するご質問です。
■質問内容
貿易(例:輸出)は、必ずドル建てでないとだめですか?
質問者様:株式会社●●●所様

■ご回答
ドル建て以外にも円建て、ユーロ建て等があります。重要な点は、為替リスクをどこまで許容するのか?です。(自社が許容する必要がある取引関係なのか?)相手との力関係を考えて、自社にとって都合が良い通貨を選びます。
貿易(輸出価格)は、ドル建てが基本?
海外取引は、基本的にドル建てでのやり取りが多いです。しかし、これは、絶対的ではありません。輸出経験が豊富な企業は、自社と相手との取引関係(立場の上下)を精査し、相手よりも優位だと判断した場合は「円建て」を提示することが多いです。
一体、どのような判断により行っているのでしょうか?
そもそもドル建て、円建てとは?
ドル建て、円建てとは、海外の取引をする際、どの通貨を使い、貿易代金を決済するのか?を示します。ドル建てなら、基本は「米ドル」を使い決済。円建てなら「円」を使い決済します。
例えば、アフリカの小さな国に何らかの商品を輸出するとしましょう。この国では、通貨「Z(架空)」を使います。あなたが日本の企業だとして、この国の企業と取引をするときに、以下、どちらの通貨を使い決済をしますか?
- 通貨Zでしょうか?
- 円でしょうか?
よほど、変わったお考えを持たない限り、通常は「円」での取り引きを選ぶはずです。なぜなら、小国Zの通貨を受け取っても、通貨自体の信用性が低く、いつ、通貨の価値がなくなるのかわからないです。流動性も著しく低いでしょう。
では、米ドルと円ではいかがでしょうか? 今度は、日本とアメリカ企業との取引ですね!どちらも基軸通貨であり、世界中で通用します。
しかしながら、流通量で言うと、やはり「米ドル」です。よって、一般的には、米ドルを使い、貿易取引を決済することが多いでしょう。その方がアメリカ企業にとっても有利です。
自国通貨以外の取引は為替リスクをはらむ
貿易取り引きにおいて、自国通貨以外(日本なら円以外の通貨)で決済すると、その分だけ為替リスクを抱えます。つまり、円安や円高による収益の変化ですね!
円相場は、マネーサプライ(流通量)や機関投資家の動き、政策金利によって変化をする為、一企業では、為替リスクに対処することは難しいです。したがって、円以外での取引は、必ずアンコントロールなリスクを抱えるといってもいいでしょう。
貿易取引は必ずしも米ドル建ては間違い。
上記のリスクを考えると、できるだけ外貨での取引は避けたい所です。しかし、実際の貿易取引では、何も考えず「米ドル建て」取引を選ぶ方が大半です。
では、貿易取引は、必ず「ドル建て」が前提になるのでしょうか? 答えは、ノーです。円建てでも取引が行われています。
取引上の立場が上の方の通貨を提案すると良い
例えば、あなたが日本の輸出者だとします。海外のバイヤーから「○○を購入したい」との打診を受けたとしましょう。このとき、提案する通貨は、米ドル建てですか?
このときに考えることは、自社と相手は、どちらが取引上の立場が強いのか?です。少し高飛車な態度に感じますが、相手の欲求度、自社の取引の必要性等を判断して、決定します。
例えば、某県には、船の部分品を製造する会社があります。この会社は、世界の他企業では、作れない、ある特殊な技術を利用して製造する製品があります。優位な立場から交渉ができる為、海外の取引相手に対して「日本円」で取引価格を提示しているそうです。

*日本円建てを提示して断られても構わないとのスタンスです。
もちろん、相手の企業が巨大であり、自社にとって必ず契約をしたい場合は、米ドル等でも対応しているそうです。つまり、自社と相手との取引上の力関係、欲求度等を分析して、採用する通貨を決定しているのですね!
逆に自社が海外のバイヤーに売り込みに行ったり、取引上の力関係が自社の方が弱いと判断できる場合は、世界の基軸通貨である「米ドル」での取引提示が無難であると判断できます。
重要なことは、海外取引は、必ず米ドルが前提だと考えないことです。海外相手との取引上、自社の立場が強いのに、あえて為替リスクを許容する理由はどこにもないです。
回答は以上となります。

自国通貨で取引をすれば、一切、為替リスクを負わないです。

