日本の農業は、その生産力を維持するために多くの肥料を輸入しています。本記事では、日本における肥料の輸入先、輸入割合、輸入手続き、輸入量、規制等をご紹介します。最低価格は、ラオス産肥料の57円/KGです!
肥料の輸入価格
農産物の収量を安定させるために肥料を使う方は多いでしょう。自然農法、オーガニック農法等があったとしても、やはり肥料を使うことが一般的です。
しかし、流行病やウクライナ侵攻などが始まってからは、肥料価格の高騰に悩まされている方も多いです。当然、この上昇は、一般の農産物価格へと転嫁されて私たちの生活に影響を与えます。そういえば、私が小さい頃は、スイカが一個980円程で買えていた記憶です。最近では、一つ2000円、4000円なる物が普通に販売されています。やはり、これも肥料が高騰した結果、円安の影響があるのかな?と考えます。
今回は、この肥料を貿易分野の観点から考えていきたいと思います。
農業の現状
但し、最近では、JA全農から次のような情報が発表されています。
2023年11月から2024年5月にかけての肥料販売価格が、前期と比べて最大で1割程度値下げされた。要因は、次の通りです。
- ロシアや中国からの肥料原料の供給が比較的安定したこと。
- 肥料の国際相場が下落傾向である。
- 世界的に肥料の安定供給に対する過度の不安が後退した。
- ただし、現在の肥料価格は依然として高水準
輸入肥料の現状
日本の肥料は、ほぼ輸入に依存しています。円安の影響や肥料自体の高騰が農産物価格に高騰につながりやすい状況です。
では、輸入肥料は、いくらで取引されているのでしょうか?
貿易統計で調べてみます。輸入肥料のHSコードは、31類です。全ての輸出入は、このHSコードと紐づけて記録されています。具体的には、HSコードにより次の情報がわかります。
- 肥料の輸入先(全ての国)
- 肥料の輸入価格(日本の税関時点での価格)
- 輸入数量の変化率
- 輸入価格の推移
- 輸入元税関官署
実行関税率表
税関の実行関税率表には、HSコードと対応する品目の条件が記載されています。また、税関に申告されたデータは、まとめて貿易統計に反映されます。なお、肥料のHSコードは、肥料の中身(定義)によって細かく分類されています。
- 赤枠=HSコード
- 青枠=HSコードに定義されている条件
肥料の輸入先とその割合
今回、当サイトでは、貿易統計を使い肥料を調べてみました。ここでは、その結果を共有します。まずは、前提的な数字です。
31類、肥料全体の数字
- 輸入数量:908214トン
- 輸入品目:25品目(HSコード)
そして、31類の肥料は、以下3つの肥料(HSコード)が60%を占めています。
- 3104.20-000 カリ肥料(鉱物性肥料及び化学肥料に限る。) 23.9%
- 3105.30-000 オルトりん酸水素二アンモニウム(りん酸二アンモニウム)
20.1% - 3102.10-000 尿素(水溶液にしてあるかないかを問わない。) 17.4%
2023年度の上位3品目の輸入国、輸入数量、単価
上記、3品目の輸入先国と割合は、次の通りです。
- 数量とは、2023年度の年間数量(トン)
- 単価とは、2023年度の年間単価(トン当たり)
- 価格は、日本の輸入港到着価格(CIF)
例えば、310420-000のカリ肥料は、カナダからの輸入数量が最も多く、ラオスからの輸入品が最も安いことがわかります。肥料の価格は、この輸入価格(CIF)に対して、輸入業者の中間マージン、通関用、物流費用、関税、消費税、その他の中抜き業者のマージンがオンされて、農家の皆さんの価格へと変化します。
なお、下記の価格は、税関へ輸入申告をした全ての業者の平均値であるため、当然、表示価格よりも高い場合もあれば、安い場合もあります。=平均的な参考価格です。
ラオス産の肥料であれば、キロ単価57円です!
数字が意味する条件は、税関の実行関税率表と照らし合わせて確認します。
3104.20
国名 | 数量 | 単価・円(トン) |
カナダ | 266019 | 73146 |
ラオス | 5081 | 57817 |
ドイツ | 561 | 113481 |
ベトナム | 320 | 70434 |
中華人民共和国 | 297 | 120084 |
インドネシア | 296 | 99672 |
チェコ | 59 | 989525 |
インド | 42 | 148048 |
大韓民国 | 40 | 75425 |
英国 | 36 | 720500 |
オランダ | 20 | 84750 |
イスラエル | 19 | 107842 |
3105.30
国名 | 数量 | 単価・円(トン) |
中華人民共和国 | 190517 | 86450 |
ベトナム | 41 | 82146 |
ベルギー | 161 | 424329 |
モロッコ | 41185 | 98728 |
エジプト | 100 | 106260 |
3102.10
国名 | 数量 | 単価・円(トン) |
マレーシア | 167256 | 61020 |
中華人民共和国 | 47529 | 68226 |
サウジアラビア | 12419 | 68175 |
ベトナム | 11318 | 66079 |
大韓民国 | 2458 | 94959 |
ドイツ | 1662 | 248153 |
インドネシア | 516 | 129820 |
台湾 | 448 | 205650 |
ポーランド | 340 | 83297 |
エジプト | 260 | 71808 |
オランダ | 208 | 147952 |
オマーン | 110 | 73409 |
アメリカ合衆国 | 31 | 495161 |
英国 | 1 | 639000 |
その他の輸入肥料のデータ
その他の肥料は、以下の表でまとめて紹介します。
- 全体の輸入数量(2023年度の年間量)は、908214トン
- 割合とは、908214に占める割合です。(%)
- 上昇(上昇率)は、2019年に対する2023年の上昇率です。(%)
品目 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 上昇 | 割合 |
3104.20-000 | 41656 | 37283 | 41967 | 109411 | 86198 | 48 | 23.9 |
3105.30-000 | 45868 | 39198 | 65281 | 132869 | 92268 | 49.7 | 20.1 |
3102.10-000 | 38019 | 34412 | 54246 | 102039 | 66829 | 56.8 | 17.4 |
3105.40-000 | 48587 | 43313 | 69610 | 154241 | 103735 | 46.8 | 5.9 |
3105.90-000 | 73295 | 75184 | 77201 | 128640 | 110892 | 66.1 | 3.5 |
3105.20-000 | 58108 | 56200 | 64249 | 131137 | 134379 | 43.2 | 3.4 |
3104.90-000 | 36539 | 34819 | 37245 | 97108 | 73307 | 49.8 | 3.1 |
3103.90-000 | 42310 | 38836 | 42520 | 71731 | 74302 | 56.9 | 3.0 |
3104.30-090 | 56672 | 50302 | 60066 | 119374 | 106758 | 53.1 | 2.8 |
3101.00-000 | 34726 | 31410 | 35015 | 49662 | 55828 | 62.2 | 2.3 |
3102.21-000 | 24889 | 23125 | 29360 | 53020 | 41557 | 59.9 | 2.0 |
3105.10-000 | 70090 | 66103 | 72595 | 121427 | 117693 | 59.6 | 1.6 |
3103.11-000 | 40415 | 36590 | 55307 | 120015 | 87695 | 46.1 | 1.4 |
3102.90-000 | 79495 | 76902 | 75051 | 117319 | 102945 | 77.2 | 1.2 |
3102.30-000 | 48084 | 46046 | 54661 | 97155 | 98206 | 49.0 | 1.1 |
3103.19-000 | 29932 | 26080 | 30242 | 58550 | 53479 | 56.0 | 1.0 |
3104.30-010 | 57026 | 50755 | 55762 | 129016 | 113629 | 50.2 | 1.0 |
3102.50-000 | 76406 | 77726 | 82415 | 160746 | 224345 | 34.1 | 0.7 |
3105.59-000 | 37911 | 37444 | 55378 | 106545 | 87531 | 43.3 | 0.6 |
3102.29-000 | 35888 | 35341 | 31469 | 91120 | 86440 | 41.5 | 0.14 |
3102.40-000 | 43839 | 41137 | 50965 | 108039 | 113956 | 38.5 | 0.11 |
3102.60-000 | 46315 | 50011 | 46452 | 85886 | 82563 | 56.1 | 0.1 |
3102.80-000 | 341600 | 304733 | 286455 | 556667 | 875000 | 39.0 | 0.00 |
3105.51-000 | 54585 | 51480 | 55961 | 123217 | 762000 | 7.2 | 0.01 |
3105.60-000 | 92771 | 88375 | 112464 | 218372 | 399997 | 23.2 | 0.12 |
肥料の高騰問題 解決は肥料の直接輸入!?
では、肥料にかかるコストは、どのように下げればいいのでしょうか?
ここでは、農法自体を変える、代替肥料を検討する又は、肥料の使用をやめる等の観点ではなく肥料を輸入する前提で考えてみたいと思います。
現時点で輸入の正確な再現性判断は難しいですが一つの方法としては、直接、海外から肥料を輸入するのが有効だと考えます。
既述の通り、日本に到着した肥料価格と卸売り価格には、10倍前後の開きがあります。よって、ある程度の量で輸入できる方は、自ら海外の肥料会社と直接取引をすることで、大幅に肥料単価を下げられる可能性があります。
例えば、現在、農家をしている。肥料の高騰に苦しめられているなら、次のようなビジネス展開を考えてみましょう!
- 農家仲間と共同で輸入する。
- 自社で輸入し、仲間農家へ再販売する。
- 又は、農業+農業資材の輸入商社を創る
などです。J●等を含む中間業者を全て省き低価格肥料の供給を実現します。
輸入手続きと規制・関税・消費税
肥料を輸入し、国内で販売する場合に関係する法令、輸入税等をご紹介します。
輸入税
31類の肥料に対する関税率は、品目、原産国問わず、全て無税です。輸入時、10%の輸入消費税のみ支払う義務があります。
例えば、50万円分の肥料を輸入する場合は、5万円の消費税を支払います。
法規制
法規制は、輸入時と販売時にあります。最も重要な法律は、肥料取り締まり法です。肥料を輸入しようとする物は、農林水産大臣への登録が必要です。輸入時の税関申告では、この登録証が必要になるため注意しましょう。
肥料取締法の目的
肥料取締法の目的は、粗悪な肥料を規制することで農業生産能力を維持して、国民の健康保護を実現することです。ようは、変な肥料を輸入して販売するな!ということですね!この目的から考えれば、肥料の輸入時は、肥料その物の安全性を立証することポイントになるといえるでしょう。
この法律は、肥料の生産等に関する規制を行うことにより、肥料の品質等を確保するとともに、その公正な取引と安全な施用を確保し、もつて農業生産力の維持増進に寄与するとともに、国民の健康の保護に資することを目的とする。
引用元:E-GOV
詳細は、独立行政法人、農林水産消費安全技術センターのページをご覧ください。輸入法令(他法令コード)、関税率等は、税関の実行関税率表で確認します。
肥料に関する他法令(コード)一覧
- FL=肥料取締法
- PL=植物防疫法
- AN=家畜伝染病予防法
- CR=化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
さらに肥料を販売する際は、都道府県知事に対して肥料販売開始届出書を提出して、販売業の届け出をすることが義務付けられています。
肥料の輸入を検討する際の手順
上記の通り、肥料の輸入には、様々な規制があります。したがって、肥料の輸入を検討する際は、まず、これら規制をクリアできるか?を考えます。肥料の購入自体は、誰でもできます。問題は、その後のお話です。国際輸送、輸入通関をクリアできるのか?です。この前提の下、以下の手順で検討します。
- 輸入を検討する費用のHSコードを特定する。
- HSコードに定められている他法令を確認する。
- 海外販売者を探す&コンタクトを取る。
- 必要な書類を入手する。
- 入手した書類を税関等の行政機関に提出して確認を受ける。
- 農林水産大臣への登録等を含む
- 実際に輸入する
などです。一つ一つを順序だてて行わない限り、輸入は難しいです。もし、ご自身での手続きが難しい場合は、ゼロイチコンサルで支援ができます。
よろしければ、ご検討ください。
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