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コーヒー豆の結露損害と立証責任|Volcafe v CSAV判例(UK最高裁2018)とHague-Visbyの実務

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コーヒー豆の結露損害と立証責任

  • Volcafe判例は、荷主が到着損傷を示せばキャリア側に立証責任が移ると明確化した。
  • inherent vice抗弁には「適切に取扱っても不可避だった」ことの数量的証明が必要。
  • 梱包仕様や温湿度ログなどの証拠管理が不十分だとキャリアは抗弁に失敗しやすい。

事件の概要

本件は、コロンビア産の生豆(green coffee beans)を無通風コンテナ(unventilated containers)で欧州へ輸送した際、コンテナ内の結露(container sweat)で袋が損傷した事案です。

B/LはLCL/FCLで、コンテナの準備と詰込(stuffing)はキャリアの責任でした[F1]。荷主は「船積み時は良好だったが到着時には損傷していた」と主張しました。これに対しキャリアは、Hague(Hague‑Visby)規則 Article III rule 2(Properly and carefully…)違反はないと反論し、さらにArticle IV rule 2(m)=inherent vice(貨物自体の欠陥)を抗弁(反論)に使いました[F1, F4]。

結論(事実認定)

本判決は、荷主が「受渡し時に貨物が損傷していた」と示せば、キャリアが「注意義務を守った」または「除外事由(例:inherent vice=貨物自体の欠陥)に当たる」と立証しなければならないと明確にしました[F1, F2]。特にinherent viceを理由に抗弁する場合、キャリアは「適切に扱っても損害を防げなかった」ことまで証明する必要があります。

要点は、立証責任がキャリア側にあるという点です[F1, F2]。

判断の骨子

裁判所はまず普通法の寄託(bailment)原則を確認し、受寄者(bailee)であるキャリアが無過失を立証する責任を負うと整理しました。そのうえで、Hague(Hague-Visby)は立証責任の配分を変えていないとし、実務では次の手順で判断されるとしました。

第一:荷主が「引渡時の損傷」を示すことでprima facieのケースが成立。

第二:キャリアが「Article III rule 2の義務違反が損害原因ではない」こと、またはArticle IV rule 2の除外事由を立証する必要があります。特にinherent viceについては、適正な取扱いでも損害が不可避であることを証明しなければならないとされました[F1, F2]。

なぜ、この問題が起きたのか?

本件の核心は「結露は予見でき、管理可能か」という点にあります。

無通風コンテナで温暖地から寒冷地へ輸送すれば、放湿による壁面結露は物理的に必然です。そのため、吸湿紙の設計(素材・厚み・層数・貼付範囲)などの予防措置が輸送品質を大きく左右します。

しかしキャリアは、使用した紙の仕様や作業実態、代替措置の適否について数量的な証拠を示さず、「結露は豆の性質(inherent vice)」という抽象的な主張にとどまりました。このため除外の抗弁は認められませんでした[F1]。

キャリアが反論するには、無理があるという結論です。

本件から貿易実務者が学べること

梱包仕様を数値で明記

コーヒー豆のような吸湿性貨物は、吸湿紙の銘柄・gsm・層数・貼付範囲(天井/側壁)を仕様書に明記し、航路ごとに標準を定めます。英語原文も併記して保存し、B/Lや作業指示と整合させます[F1, F4]。

責任の分担を契約に明示

LCL/FCL・CY/CY・SLACなど、詰込責任の所在を契約やB/Lに明示します。キャリアが詰込を行う場合は、Article III rule 2に基づく適切な取扱いを示す資料(チェックリスト・写真・紙のロット票)を取得します[F1, F4]。

反証資料を事前に準備

温湿度データロガー、露点計算シート、コンテナ内壁の結露痕写真、紙重量の実測記録(受入検査で抜取計量)、貼付エリアの寸法図をルーチン化します。これにより「適切に対応しても不可避だった」と数量で示せる状態を整え、紛争時の証拠とします[F1]。

inherent viceの線引きを書面化

水分含有率(beans moisture)の検査成績、保管履歴、出荷前乾燥条件、包装材の仕様を明確にし、貨物起因と輸送管理の責任範囲を合意文書に残します[F1]。

代替手段を検討し記録

通風コンテナの利用可否、ライナー装着、追加層のコスト比較を記録し、費用対効果と品質に基づく意思決定を可視化します[F1]。

今日からできる行動チェックリスト

  • 仕様書の改訂:吸湿紙の gsm・層数・貼付範囲を航路別テンプレに反映。英語原語で格納。
  • 現場記録:詰込時の写真・動画、紙の実測重量(抜取)、温湿度ログ、チェックリスト署名を定型化。
  • B/L・契約:詰込責任、データ保存義務、証拠提出期限、代替措置検討の記録化を条項に追加。
  • 荷主側データ:水分含有率、焙煎・乾燥条件、保管履歴の証跡を出荷ロットごとに保存。
  • 教育:担当者にArticle III rule 2/Article IV rule 2(m)の要点とbailment の立証責任をレクチャー。

中小企業、ここが重要!

「結露は避けられないから不可抗力」と思い込むと、余計なコストが発生します。Volcafe事件は、結露は予測可能な現象であり、取扱い設計と証拠管理をしていればキャリアの抗弁は認められにくい(反論が難しい)と示しました。数値を伴う梱包設計と、詰込・輸送・受入の証拠をそろえる運用は、請求回収の可否だけでなく、不良在庫や値引き、再選別費用の抑制にも直結します[F1, F2]。

要点まとめ

  • 荷主が到着損傷を示せば、法的立証責任はキャリア側に移る[F1, F2]。
  • inherent viceを主張するなら、適切な注意でも不可避だったことの立証が必要[F1, F2]。
  • 包装厚み等の数値証拠が欠けると、キャリアは抗弁に失敗しやすい[F1]
  • 契約で詰込責任を明確化し、温湿度ログ・紙重量の実測など反証パックを常備する[F1, F4]。

Factリスト

・[F1]UK Supreme Court Judgment:Volcafe Ltd and others v Compania Sud Americana De Vapores SA, [2018] UKSC 61(2018/12/5)。Judgment PDF. https://www.supremecourt.uk/uploads/uksc_2016_0219_judgment_cd4db82a6e.pdf ・[F2]UK Supreme Court Press Summary:Volcafe Ltd and others v CSAV(2018/12/5)。“the legal burden of disproving negligence rests on the carrier…”。https://www.supremecourt.uk/uploads/uksc_2016_0219_press_summary_760902857e.pdf ・[F3]BAILII:Volcafe Ltd and others v CSAV(HTML)。https://www.bailii.org/uk/cases/UKSC/2018/61.html ・[F4]UK Legislation(Carriage of Goods by Sea Act 1971, Schedule=Hague Rules as amended):Article III rule 2/Article IV rule 2(m)(inherent vice)テキスト。https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1971/19/schedule

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

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