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EU税関差止と偽造品の個人輸入|Blomqvist v Rolex判例で学ぶリスクと対策

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偽造品の個人輸入はEU到着時に止められる

  • EU向け通販で偽造品を1点でも輸入すれば、到着時に税関で差止・廃棄され得る。
  • 判例(C-98/13 Blomqvist v Rolex)は「EU消費者向け販売」と評価できれば侵害成立と認定。
  • 日本企業はSKU統制・広告設定・通関即応フローを徹底し、誤出荷や差止リスクを防ぐことが重要。

事件の概要

  • 消費者(被上告人):Martin Blomqvist(デンマーク在住)
  • 権利者(上告人):Rolex SA/Manufacture des Montres Rolex SA(スイス)
  • 裁判所・日付:EU司法裁判所(CJEU)第二法廷、2014年2月6日、事件番号 C‑98/13[F1]
  • 要旨:EU到着で差止・廃棄の道が開く[F1]

EU域外の通販サイトで個人が偽造腕時計を購入しました。商品はデンマーク到着時に税関で止められ、権利者の申立てにより廃棄が求められました。

CJEUは次のように判断しました。

  1. 出品や広告がEUの消費者を狙っていたと評価できる場合(指向性あり)
  2. 商品がEU域内に到着している場合

この条件がそろえば、商標侵害が成立し得るとし、税関差止や廃棄を適法としました[F1]。

日本企業にとっては、EU向け発送時に偽物混入を防ぐ真贋管理やSKU統制を徹底することが、通関段階でのトラブル回避に直結します。

事件の背景と主要争点

事実の流れ:デンマークの消費者が中国の英語サイトで「ROLEX」と表示された時計を購入 → デンマーク到着時に税関が差止 → 権利者が廃棄を申請。

争点は以下の3点

  • (A) 個人輸入でも知的財産権侵害が成立する?
  • (B) 税関規則(当時:規則1383/2003)による差止・廃棄の範囲
  • (C) 「出所混同」ではなく、販売・広告・使用として侵害が成立するか[F1, F3]

CJEUの判断(要旨):

  • 税関差止の前提には、商標侵害が成立し得る状況が必要。
  • EU域外サイトでの販売や広告であっても、EU消費者を対象にしていれば、申込受付・販売・広告といった「使用」がEU内で行われたと評価できる[F1]。
  • よって、個人向け1個の配送でもEU到着時点で権利行使の対象となる。税関は規則1383/2003(現行は608/2013)に基づき差止・廃棄を進められる[F1, F3]。
  • 買主が個人使用目的でも結論は同じで、判断の軸は「EU向けに販売したかどうか」である[F1]。

判断の骨子

  • 商標指令(2008/95/EC)第5条:「商標の使用」として、販売申出・広告などを列挙。EUの消費者を狙うWeb販売は、商標の使用に該当し得ます[F2]。
  • EU商標規則(207/2009)第9条:EU商標の専用権に関する使用差止の根拠。オンライン申込の受付・広告も“使用”に含まれ得ると理解されます[F4]。
  • 税関規則(1383/2003):侵害がある前提で、入域時点から差止・廃棄の措置が可能。現在は規則608/2013に置き換えられていますが、考え方の芯は同じです[F3]。
  • (補足)著作権指令(2001/29/EC)第4条の頒布権も併せて参照され、「配布」概念の理解が補強されています[F5]。

日本の貿易実務者にとっての課題

  • EU向けB2Cは「1個でも対象」:ECサイトや広告がEU消費者を狙っていれば、個人宛て1点の配送でも入域時に差止・廃棄の対象となります。“少量なら大丈夫”は通用しません[F1]。
  • 真贋管理の不備は通関で露見:型番が近い「似たSKU」やサプライヤー混在は誤出荷による差止の典型例。さらにEU側で再販売許容表示が欠けていると、化粧品や医薬部外品では致命的リスクとなります(本件は商標だが、L’Oréal v eBayの論理と接続)[F1]。
  • 「指向(Directed to)」の基準が鍵:Pammer/Alpenhof事件が示した「言語・通貨・配送・広告」などの要素は、EU内での「使用」判断の根拠になります。EU市場を狙うならEU仕様の体制が必須、狙わないなら指向シグナルを抑制する工夫が欠かせません[F1]。

貿易実務者が学ぶべきポイント

1)EU向けSKUの“白黒”をカタログで明確化

EU向け/非向けを型番・バーコードレベルで区分。パッケージ表示・付属書類も合わせて束にし、EU向け以外は出荷画面でブロック。似番置換(近い品番の取り違え)をUIで禁止[F1]。

2)広告・販売設定の「指向」を設計・証拠化

EU言語・EUR表示・EU配送・EU地域広告のON/OFFを四半期ごとに台帳化し、設定画面のスクリーンショットを保存。EU向けONなら通関トラブル前提でのCS・返品・回収動線を用意[F1]。

3)越境倉庫・配送の“誤連係”を塞ぐ

FBA/3PLの出荷ルールにEU向けSKUのホワイトリストを登録。倉庫間振替や逆輸入でラベルがすり替わらないよう、二重スキャンと現地側のロット検品をSOP(標準手順書)に追加[F1]。

4)通関で止まった時の“即応テンプレ”

差止通知(customs suspension)を受けたら、権利者照会・真贋資料の提示・当該SKUの停止を48時間以内に回す社内ハンドブックを整備。誤出荷なら直ちに回収・廃棄同意、グレーならサンプル提出で判定を急ぐ[F1, F3]。

5)B2Cでも“取引停止条項”を準備

EC約款に「偽造・権利侵害の疑いがある場合の取消・返金」条項を明記。個別同意の取得フロー(チェックボックス)で、返品・返金の迅速化と通関滞留コストの最小化を図る[F1]。

中小企業が今すぐ実践できるチェック

  1. EU向けSKUホワイト/ブラックリストを在庫システムで運用(似番置換禁止)[F1]。
  2. 言語・通貨・配送・広告の設定を四半期保存(指向の証跡)[F1]。
  3. FBA/3PLにEU向け出荷ルールを配布し、二重スキャン+現地ロット検品をSOP化[F1]。
  4. 差止通知の即応フロー(48時間以内の判断・連絡・停止)をハンドブック化[F3]。
  5. EC約款の改定(偽造疑い時の取消・返金・連絡方法の明記)。

まとめ

  • Blomqvist v Rolex(C‑98/13)は、EU域外サイト→EU個人宛配送でも、EUに到着した時点で権利侵害に基づく差止・廃棄が可能な枠組みを確認しました[F1, F3]。
  • “EU向けに売るかどうか”の設計と、真贋管理・SKU統制の徹底が、通関段階の実務リスクを左右します。
  • 日本企業は、EU向けの意思決定を可視化し、広告・在庫・倉庫・通関を横串でつないだ誤出荷ゼロ設計を目指すべきです。

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

FACTリスト(英語一次資料)

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