バンコクには、アパレルに特化したファッションモールが点在しています。比較的新しいパラディウムもその一つ。バイヤーの視点に立ってパラディウムをご紹介します。
パラディウムが廃墟化!
バンコクの中心街にあるショッピングセンター
バンコクの中心街プラトゥーナーム地区には大型ショッピングセンターが点在し、日々、観光客やバイヤーが訪れています。ここに、パラディウムはあります。ISETANが併設されているセントラルチッロムから歩いて5分程。ペップリー通りに面した場所で、近くにはアパレルの宝庫プラチナムや、インド人観光客ご用達のインドラスクエアーなどがあります。
活気あふれるロケーション抜群の地にありますが、正直、パラディウムはぱっとしません。詳細は後ほどご説明しますが、同行したお客さんは口々に“ここは、今ひとつですね”と言われます。しかしながら、バイヤーにとっては良い点もあるのです。
パラディウムには、どんなお店が入っているのか?
5F建てのショッピングセンターで、ホテルも併設されています。館内をご紹介します。
B1F
シルバー、天然石、革製品などのお店が入っていて、バイヤーが買い付けに来ています。タイの民族衣装を扱うお店もあり、ここは知る人ぞ知る有名店です。もともとはナライパンにあったシルバー店などが移動してきたのですが、ナライパン時代と比べると客の入りは減っていて、年々お店を売りに出している数が増えています。また、DHLやFedExなどの発送取次業者も結構入っているので、バイヤーにはうれしい限りです。
かれこれ10年以上の付き合いのあるタイ人業者の所には、常連の日本人客がかなりいます。口コミで“愛想があって、サービスもいい”と広まり、B1Fでは一番大きな業者に成長しました。そんなことから、シルバー店よりもなぜか発送業者が目立つB1Fです。
1F
まあまあ、客は入っていますが、果たしてこれが買い物客かと言うとウーンって感じです。
涼みに来る人も結構います。アパレル、雑貨、サンダル、コスメなどのお店がごちゃごちゃありますが、たいして売れているようには見えません。プラチナムのお店と比べると完敗です。そもそも私は、1Fで商品を買い付けた記憶がありません。ほぼ毎日行くのですが、それは1Fに郵便局があって発送するためです。ここの郵便局は使えます。11時オープンと遅いのですが18時迄営業しており、土日もオープン。そんな利便性もあってか、日々混んでいます。
館内の入口近くにはマクドナルド、ケンタッキーがあり主にインド人観光客でにぎわっています。しかし、一番の問題はお店の売り物です。近頃は空いているスペースにハンガー屋台が古着のジーンズやTシャツなどを格安で売っていますが、その中にはリーバイスや有名ブランドのモノはまるでありません。知らないブランドばかりです。ときどき、プラチナムのお店の経営者とコーヒータイムをここでするのですが、彼女曰く“たとえ家賃が500Bでも借りない”と。プラチナムで売れているお店なら、そうだと思います。
2F
1Fよりもひどい状況です。アパレルのお店がぽつんぽつんとありますが、奥に行くほどシャッターが閉まり「貸します、売ります」の紙が貼られています。ほぼ誰も歩いていない中で“あなた、マッサージ!”といろんな所から呼ぶ声がします。そう、マッサージ店がグンと多くなりました。
タイの場合、あるお店がつぶれると、次はマッサージ店かセブンイレブン、最近ではカフェになることが多いです。この傾向はチャトチャック市場でもそうで、アパレル店がつぶれると今はマッサージ店になっています。それだけ需要があるのでしょう。土日のみオープンですが、あれだけ観光客が来れば、歩いて足が疲れる人はマッサージへ行きたいでしょう。話がずれましたが、パラディウムもいつかは“マッサージ店の宝庫”になってしまいそうです。
3F
もう、悲しいくらいひどいです。2Fよりもシャッターが閉まっているお店が多いです。営業中のアパレル店は数える程。どこにでもあるような服を扱っていて、これでは誰も買わないでしょう。ここにフードコートがあるのですが、これがまたわかりにくい場所です。もともとB2Fにフードコートはありました。その頃は客の入りも良く、タイ料理以外にも中華やインド、ちょっとしたイタ飯も揃っていました。3Fに移ってから客とお店が激減。私も行かなくなりました。
4F&5F
現在はパソコン店が入っていますが、まだまだ空きは多いです。パラディウムの近くに、パンティプというパソコン専門店の入った大型ショッピングモールがあります。ここが取り壊される予定で、何店かがパラディウムに移動してきたのです。しかし、空きが目立ちます。客のほとんどいない空間に、音楽がガンガン鳴っています。
B2F
タイの会社が入っています。
屋外
夕方18時頃になると、屋外にハンガー屋台が並びます。Tシャツやバッグなどアパレルモノが多いですが“ここもまた”のようなモノばかり。同じく夕方になると、パラディウムの横でナイトマーケットが開かれます。一度行きましたが10分程で帰りました。バイヤーが欲しそうなモノはありませんでした。
ロケーションがいいだけに、もう少しやりようがあるのではと思っています。ライバルのプラチナムには、どう転んでも追いつけない状況。いや、プラチナムはライバルとは思っていないでしょう。2Fや3Fの悲惨な光景は、どこかで見た記憶があるのです。そう、マレーシアのペナン島にあった大型ショッピングセンターがこんな感じでした。客のいない中、音楽だけが鳴っていました。“つぶれた”と知人から聞きました。この現在の状況はとても残念です。
どんなお店が入っているかで、ショッピングセンターの価値がわかる
パラディウムにはマックやケンタはありますが、スターバックスはありません。これはタイのショッピングセンターの傾向ですが、新しく出来た所には必ずと言っていい程スタバが入ります。パラディウムには韓国系のカフェ店が入口にあったので、そのためスタバが入らなかったのでしょう。現在はありませんが、それでもスタバは新規参入しません。
また、ショッピングモールには必ず銀行が入りますが、パラディウムには一行のみです。タイNo1のバンコク銀行は入っていません。銀行以外に、WatsonsやBootsなどのドラッグストアもありません。それぐらい魅力がないのでしょう。まあ、客の入りやお店の状況を見れば、担当者はためらうでしょう。なんとか、がんばって欲しいものです。
フードコートの活かし方は、いろいろある
フードコートはショッピングセンターのメインではありませんが、集客する力のあるものだと思います。良いアパレルのお店がなくても、フードコートの“あの料理”がおいしいから行く、というのはあるでしょう。他にもくつろぎやすい、お店が豊富、カフェも併設されているなど、集客するための方法はいろいろあります。
パラディウムの場合、3Fのわかりにくい場所にフードコートが移動したのもありますが、その努力を怠ったとも言えます。3Fに移動したとき、賃貸はフリーになったそうです。1日の売り上げの中から、何パーセントかをパラディウムへ払うだけでいいことになりました。
知人の日本人が“やる”と飛び付き、今でもやっていますが“客が来ない”と嘆いています。アイデアは良かった、しかし客を集めるための魅力作りを怠った。タイ料理店ばかりにするのではなく、審査して日本料理や中華、イタ飯、洋食、そしてカフェを増やすなどの工夫がなかった。だだっ広いだけで、客のいない殺風景な空間で食事をして果たしておいしいのか?これがサービスと言えるか?まずフードコートが変わらないと、パラディウムは変われません。
今後、どうなっていくのだろう?
私は買わない1Fのお店に、買い付けに来るバイヤーはいます。しかし、今のままではいずれお店は減ってしまうでしょう。ある階を全面改装して「フード街」にする、スーパーマーケットを呼び込むなどそれぐらい何か画期的なことをしないと、と思うのです。
今回はかなり辛口になっていますが、モノを買いはしないが毎日1Fの郵便局へ行き、B1Fの業者で発送し、ローカルなカフェで休憩する身にとって、やはりパラディウムには親しみがあります。プラチナムのように活気あふれるショッピングセンターになって欲しいのです。しかし、タイだからこのまま何も変わらずに時が流れていくような気がしてなりません。
まとめ
- 観光客やバイヤーが訪れるバンコクの中心街、そこにパラディウムはある。
- プラチナムに比べると、客の入りは泣けるぐらい少ない。勝負にならない。
- 上の階に行くほど客はいない。お店のシャッターが閉まっている所が多い。
- ショッピングセンターなら、どこにでも入っているスタバなど有名店が少ない。
- 今のままでは、未来はなさそう。画期的な改装が待たれる。