この記事では、輸出入通関のよくある疑問と答えをご紹介していきます。なお、およそ23000文字で構成しているため、興味がある項目のみをご覧ください。
- 輸出入通関の疑問を解決する!
- この記事の目的
- 輸入”通関”の基本知識
- 輸入申告実務関連
- 通関と関税の違いとは?
- 輸入通関の相談をするには?
- 植物、食品、何にどんな法律が関係するの?
- 個人で輸入通関代行をしてもらうには?
- 貿易書類は、どうやって入手しますか?
- 自分で申告と通関業者を使う場合、どちらがいい?
- 自分で申告する場合は、どこに申告すればいいですか?
- 輸入通関を依頼する基準は?
- 輸入通関業者とのやり取りの内容は?
- 通関業者の業務範囲とは?
- 輸入後、貨物にダメージが!!
- 輸入申告の内容を間違えた場合は?
- 輸入通関で多いトラブルは?
- 税関は怖いですか?
- CIF? FOB? 輸入申告価格がよくわからない。
- 輸入申告価格の加算要素 何を加算するの?
- 値引きを受けていた場合は?
- 価格を何かと相殺値引きしている場合は?
- いつのレートが適用されますか?
- 申告区分とは?
- セット品、無料貨物の取り扱いはどうなる?
- 修正申告のやり方と加算税、期限
- 加算税の種類は?
- 分割申告は可能?
- 原産国の表示義務は?中国産をUSA産でも良い?
- ラベル等、箱の表示での注意点は?
- 輸入関税等の延納はできますか?
- 延滞税は何パーセントですか?
- 建値の意味が分かりません。
- 税関検査の概要と費用例
- 特殊関係とは?
- 関税と消費税の納税方法は?
- 薬事法(薬機法) と化粧品、サプリの関係を知りたい。
- すでに輸入が終わっている商品の扱いはどうなりますか?
- 食品届が必要な品目を繰り返し輸入する予定です。都度、申請が必要ですか?
- アリババ等の買い付け代行業者は食品届の手続きをしてくれますか?
- 買い付け代行で輸入する場合は、どのタイミングで食品申請ができますか?
- ドアツードアで配送されてくる商品の食品申請方法は?
- どこの食品検疫所に相談をすればいいですか?
- 複数の貨物(食品届が必要)を輸入する予定です。まとめて申請は?
- ワシントン条約関連を教えてほしい!
- ワインの輸入通関を知りたい!
- 関税・消費税関係
- 関税減免(安くする仕組み)
- 特殊な輸入
- 輸入品目例解説
- 輸入の基本知識
- 貿易関連用語
輸出入通関の疑問を解決する!
この記事の目的
- この記事は、随時情報を追記していきます。
- お気に入り登録推奨(PCのみ表示→画面右側のボタンを押す。)
- 輸出入通関に関する質問は「解説希望りクエスト」として受け付けます。
- 個人輸入通関の依頼→お受けします。
- 通関の専門家による有料相談サービス→申し込み
利用方法
この記事は、輸入通関に関する様々な疑問に応えるように「Q&A風」に記載しています。上から順番にご覧いただくのも良いですし、見たいところだけ確認されても良いと思います。記事の右側サイドバー(PC限定)は、この記事内のリンクを並べています。よろしければ、ご活用ください。
各Q&Aの大分類は、次の7つです。
輸入”通関”の基本知識
輸入通関とは?
関税法の規定では、輸入とは「日本国内に貨物を引き取る行為」とされています。また、輸入する者が「納税義務者」となり、貨物に関わる関税などを支払う義務があるとも記載されています。(根拠:関税法6条)
輸入者は、貨物を引き取るときに税関に「○○を輸入したいので許可を下さい」と申告。この結果、貨物を引き取れるのかが決まります。
輸入申告→ 審査 →納税 →許可 →貨物の引き取り
上記、一連の行為を「輸入通関」といいます。
(納税義務者)
第六条 関税は、この法律又は関税定率法その他関税に関する法律に別段の規定がある場合を除く外、貨物を輸入する者が、これを納める義務がある。引用:関税法6条
輸入者の定義? 納税義務は?
基本、輸入者は、B/L等に記載される「荷受人(コンサイニー・consignee)」です。そして、この荷受人が納税義務者です。ただし、バイヤーズコンソリ等のサービスを実現するために、フォワーダー等が輸入者となったり、保税転売により第三者が輸入者(納税者)になったりすることもあります。
例えば、保税転売を考えてみましょう。保税転売とは、日本に貨物が到着した後、日本国内に貨物を引き取らないまま(保税地に保管されている状態)、第三者に転売することです。
関税法では、納税義務者を「日本国内に貨物を引き取る者」と定義しています。この場合の引き取るとは、日本税関の管理下から離れることです。(保税地域等から貨物を引き取る行為)
- Aが日本保税地域まで輸入(輸送)
- 保税状態でAがBに転売
- Bが保税地域から貨物を引き取る=輸入者の扱い。
- Bに納税義務が発生
ポイント:貨物を日本まで持ってきた人=必ず納税義務者にはならない。
輸入代行と輸入の違い
弊社の有料サポートサービスには「輸入代行をしてほしい」との問い合わせがあります。ここでは、輸入代行の持つ意味をご紹介していきます。
輸入で重要な点は「輸入者」です。世間一般でいう輸入代行には、この輸入者の部分が曖昧になっているものが多いです。あなたの輸入代行とは、次の内、どちらですか?
- あなたが「輸入者」貨物を輸入する
- 第三者が「輸入者」輸入した物を日本国内で買い取る。
本来の輸入取引を希望する場合は、1番です。輸入代行は、2番です。この違いは、次の通りです。
納税義務 | 製造物責任法の義務 他法令の義務 | 中間マージン | |
ケース1 | あなた | あなた | なし |
ケース2 | 第三者 | 第三者 | あり |
誰が輸入者になるのか?によって、納税義務、製造物責任法の義務、中間マージン等が変わります。一般的な商売輸入は、ケース1です。ケース2は、いつまでも大元を牛耳られてしまい、無駄な中間マージンが含まれる分、どうしても価格競争力を実現できないです。
通関は誰ができますか?
通関は、ご自身の貨物をご自身で行う分には、誰でもできます。(無届・無資格・無許可でOK)。一方、他人の物を有償・無償問わず代行するには、通関業の許可を持つ「通関業者」しかできません。無許可で輸入通関すると、厳しく罰せられます。
例えば….
- 個人の方が自分の荷物を輸入通関する→ OK
- 会社の従業員が自社の貨物を輸入通関する→ OK
- 他人の貨物を輸入通関する→ NG(通関業の許可が必要)
なお、ご自身の貨物を輸入通関する方法は「実践・自社通関記事」で紹介しています。また、弊社では「自社通関サポートサービス」も提供しています。よろしければ、ご検討下さい。
通関に必要な書類を教えてください。
輸入する商品にもよりますが、一般的には、次の書類を用意します。なお、これ以外にも必要な書類があれば、通関業者の担当者から案内がきます。(例:○○の書類が足りないなど)
- 委任状
- 税関コード(法人番号)
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L
- アライバルノーティス
- 原産地証明書等(必要な場合)
- 貨物の補足資料
資料の詳細は、上記リンクをご確認ください。ここでは、上記の内、いくつかをピックアップして説明します。
委任状
は、初めて通関業者に通関依頼をするときに必要な書類です。各通関業者ごとに書類形式が異なり、依頼時に求められます。通関業者に依頼すると、記入用の書類をもらえます。
税関コード
一般的には、輸入者は、輸入実績を作るために、輸入者符号(税関コード)を使い輸入申告をします。輸入実績がたまることで、税関検査の確立が下がったり、書類審査が簡素化されたりします。なお、コードは、個人事業主と法人で違います。
個人事業主の方は「税関コード」法人は「法人番号」が税関コードに該当します。
インボイス
は、輸入する商品の価格の根拠を示す書類です。通関業者は、このインボイスの価格に必要な調整をして「課税価格」を算出。この課税価格に関税率等をかけて納付するべき税額を計算します。納税額の算出に直結するため非常に重要な書類です。
インボイスには、コマーシャルインボイスやプロフォーマインボイスがあります。プロフォーマとは「仮のインボイス」であるため、輸入通関には使用できません。必ずコマーシャルインボイスを用意しましょう!
補足資料
補足資料とは、税関が貨物の内容を理解しやすいように添付する資料です。
例えば、商品写真が掲載されているカタログ。ウェブサイトのキャプチャ画像などです。この補足資料を充実させることが税関検査の確立を少しでも下げることにつながります。
輸入許可書の入手方法
輸入許可書とは、税関から「輸入を許可する」と通知する紙です。輸入者は、この許可書と関連書類を輸入許可日の翌日から5年間保管します。通関業者は、輸入許可になり次第、輸入者に向けて、ファックス又はeメールで許可書を送信します。(入手方法)
輸入許可書には、申告区分、税関長、輸入者名等が記載されています。各項目の詳細説明は「輸入許可書の項目を徹底解説」で確認をお願いします。
*輸入代行サービスは、第三者が輸入者となり、あなたに許可書が届かない可能性があります。
輸入通関の費用は?(通関手数や代行手数料など)
輸入通関の費用は、通関手数料の11,800円の他、取り扱い料金や税関検査立会料など様々な項目があります。また、通関費用に関係する言葉に「大額」「少額」「葉」「件」「欄数」などがあります。この辺りは、すべて「通関費用の解説記事」で公開しています。
ちなみに、輸入通関に関わる費用の消費税は、輸入許可前は免税。許可後の費用は課税です。
輸入通関とインコタームズ の関係は?
は、売り手と買い手が「すること」を明確にするものです。このすることの一つに「輸入通関」があります。各インコタームズは、売り手と買い手の内、どちらに輸入通関の義務があるのかを次のように決めています。
輸入手続きの流れ(フロー図)は?
輸入通関の流れは、輸入方法や輸送方法でも違います。以下は、代表的な輸入例と流れです。
- 一般的な商業輸入
- クーリエ&国際郵便
- ハンドキャリー
一般的な商業輸入(コンテナやLCL等)
- 通関業者に必要な書類を送付する。
- 通関業者は、書類チェック後、税関に予備申告する。
- D/Oの処理を完了させておく。
- 本船が入港する。コンテナヤードに貨物が下ろされる(搬入)
- 搬入後、本申告に切り替える&必要な場合は、税関検査を受ける。
- 輸入許可&ヤードから貨物を引き取る。
LCL貨物の場合は、4と5の間に「デバン作業(コンテナ出し)」が入ります。
クーリエ&国際郵便
は、万国郵便連合に基づく輸送サービス。他方、クーリエは、フェデックスなどの民間の国際輸送会社です。(公的配送サービスと民間配送サービスの違い)
国際郵便は、税関が常駐する「税関外郵出張所(国際交換局)」に荷物が集まり、そこで税関職員により課税処理が行われます。他方、クーリエは、各社の「保税地域」で貨物を荷受けして、税関に申告。輸入許可になった物を配送します。
上記は、公的配送と民間配送の違いとなりますが、仕組み的には、輸入者が一切輸入申告や納税等をすることなく荷物が届きます。(輸入者は、荷物が届いたときに、納税をします。)
ハンドキャリー(手荷物)
スーツケース等で荷物を運ぶ方法でも通関ができます。いわゆる「ハンドキャリー通関(旅具通関)」です。この場合、現地で購入した商品と書類等を照らし合わせながら、税関職員により課税処理(賦課課税方式)がなされます。(入国審査の次にある税関ブース)
その他、輸入の流れは、以下の関連記事もご覧ください。
輸入通関を早めるには?
通関を少しでも早くする方法は、国際郵便(一般小包)と一般輸入で大きく違います。一般小包の場合は、適切なインボイスを添付することが一つの方法です。これ以外はほとんどないと言えます。
一般輸入の場合は、貨物の輸送時にHDS(ホットサービス)、B/Lをサレンダーにする。さらに、輸入通関を予備申告にする。または、AEO認定を受けている業者に通関依頼をするなどの方法により、少しでも早く荷物を受け取れます。
輸入前に気を付けることは?
輸入交渉時にまとめべき点はいくつかあります。特に次の3つは、重要です。
1.クレーム品質
2.日本側の輸入規制のために必要な書類
3.安全な梱包
最近の通関状況を見ると、海外から届いた貨物に大きなダメージがある物がたくさんあります。
粗悪な梱包等が主な原因です。実際、輸入後にできるのは、保険会社等への求償請求などに限られます。そのため、輸出者に対して、輸出国側での製品の品質維持と、貨物がしっかりと届くように安全な梱包を要求しましょう!
もし、輸出国側での品質を徹底的に維持したい場合は、サードパーティーのインスペクター会社もあるため、合わせて検討しましょう!
模造品、パロディ系商品を輸入しても良い?
関税法では、他人の権利を侵害する貨物の輸入を認めていません。また、不正競争防止法も関係してきます。不正競争防止法では、他人に混乱させて商売することを規制しています。また、この規制となる「類似」の定義がはっきりしていないため、いわゆるパロディ系の商品を輸入した場合であっても、逮捕される可能性があります。(業として販売する場合)
不正競争防止法と輸入の関係 模造品、パロディ系商品は危ない!?
輸入申告実務関連
通関と関税の違いとは?
通関は、いわゆる「関所=税関」手続きの総称です。関税は、その関所を通過するときに、原産国や商品等に応じてかけられる税金です。なお、輸入時は、この関税の他、消費税(10%又は8%)も課税されます。
輸入通関の相談をするには?
必要な書類の有無や具体的な手続きの方法は、お取引のある通関業者に相談されると良いです。まだ、一度も輸入通関の依頼実績がない場合は、通関業協会のサイトで業者を探しましょう。もし、輸入全般の相談をしたい場合は、ミプロなどにも相談ができます。
植物、食品、何にどんな法律が関係するの?
特定の品目を輸入するには、税関の許可を受けるあたり、他機関の確認を必要とする物があります。代表的な物が食品、植物、肉類、乳製品などがあります。これを「他法令の確認」といいます。中には、ぬいぐるみなど、食品とは関係ない物も該当するため注意が必要です。
詳しくは輸出入他法令のまとめ記事をご覧ください。
個人で輸入通関代行をしてもらうには?
率直にいうと、通関業者は引き受けてくれない可能性が高いです。理由は「信用がない」からです。そして、この信用には、次の3つがあります。
- 輸入諸税や費用をしっかりと支払うこと
- 申告外の貨物を積んでいないこと
- 輸入申告に誠実な対応をすること
例えば、通関業者は、荷主が間違った情報に基づき代行をすると、税関から呼び出しや事情確認等がなされます。通関業者は、荷主と二人三脚の立場であるため、このような扱いをうけます。これが通関業者が新規荷主を断る理由です。
弊社では、個人様、個人事業主様にも対応した通関代行サポートサービスを提供しています。よろしければ、ご利用ください。ただし、上記のリスク上の理由から、90%以上の費用を「先払い」としております。
税関で留められました。どうすればいいですか?
まずは、なぜ、留められたのか?を確認しましょう。税関等のハガキに問い合わせ先が記載されているはずです。そこに連絡をすれば、わかります。多くの場合、他法令違反の疑いです。
例えば、幼児が舐める可能性がある器具を輸入する。食品関係類の輸入。美容関連機器、化粧品などです。これらは、非常に身近な物があるがゆえに、極めて「簡単」に考えて輸入する人が多いです。
実際、税関で留められた商品を輸入する場合、各種申請作業や費用の関係から、荷物をそのまま破棄するパターンが多いです。特に食品届や薬機法関連の疑いがかけられている場合は、その可能性が高いと考えた方が良いです。
輸入=常に責任と費用が伴います。この意味を本当に理解しないと、非常に厳しい結果になると考えましょう!商売目的の輸入は、第一に「輸入規制の確認」です。これ以外にないです。
そもそもどれだけ儲かる商品だとわかっても輸入できなければ無意味ですよね? これは誰にでもわかるはずです。でも、一切、調べずに輸入を実行してしまう。ここが非常に不思議です。
貿易書類は、どうやって入手しますか?
輸入者の場合、貿易関連書類は、輸出者が作成した物を受け取ります。具体的には、次の流れで書類を受け取り処理をします。
- 輸出者がインボイス、パッキングリスト、原産地証明書等を用意する。
- 輸出者が船積みを完了する。B/Lを受け取る。
- 輸出者は、インボイス、パッキング、B/L等のコピーを輸入者にEメールする。
- 輸出者は、必要な書類の原本をEMA等で輸入者に送付する。
- 輸入者は、通関業者に貿易書類(コピー)を送付して、予備申告に入ってもらう。
自分で申告と通関業者を使う場合、どちらがいい?
通関にかける時間とコストを考えます。
例えば、ご自身で通関をする場合、業者に支払う通関代金等を削減できるかもしれません。しかし、輸入申告にかける時間も消費しているため、これを「コストゼロ」と考えるのはナンセンスです。基本、餅は餅屋です。
たった数万円の費用を節約するよりも、人ができることは、どんどんと外注化してしまい、儲けを最大にした方が賢明だと思います。
自分で申告する場合は、どこに申告すればいいですか?
輸入申告は、輸入する貨物が保管されている場所を管轄する税関長にします。AEO認定を受けている通関業者は、申告自由化が行われていますが、それ以外は、旧来通りです。
申告先の探し方は?
輸入貨物が到着したときに発行されるアライバルの中に「蔵置先」が書かれています。この蔵置先を基準にして、各税関に問い合わせをすれば教えてくれます。(税関のサイト内でも探せます)
輸入通関を依頼する基準は?
輸入通関を依頼する目安は、一度の輸入価格が20万円をこえるくらいからです。これは、個人使用目的、商売目的問わず共通です。もし、20万円以下であれば、簡易税率が適用されて、自動的に貨物が届きます。
輸入通関業者とのやり取りの内容は?
通関業者は、営業部と通関部に分かれている所が多いです。各荷主とのやり取りは、すべて営業部経由の所もあれば、通関士が対応等をするところもあります。通関業者とやり取りする内容には、次の物があります。
- 納期の打ち合わせ
- 書類の内容に関する質問
- D/O関連処理のトラブルなど
通関業者との間で、書類に関する質問や納期の打ち合わせなどが完了したら、後は、輸入許可と配送等されるのを待つだけです。
通関業者の業務範囲とは?
通関業者の基本サービスは、輸出入申告の代行です。しかしながら、これだけでは収益性が低いため、通関関連の作業を一緒に引き受けている場合が多いです。例えば、次の業務ができます。
- 通関代行(税関検査立会)
- 食品届、植物防疫法対応
- 国際物流の見積もり
- 輸入許可後の国内配送の手配
輸入後、貨物にダメージが!!
輸入後、貨物を受け取ったらダメージが会った場合は、通関業者にすぐに報告をします。おそらく、フォワーダー(輸送会社等)へのクレームノーティスと、保険会社に求償請求をします。
輸入通関で多いトラブルは?
通関士歴20年以上のベテランが、現場で経験をした様々なトラブルをご紹介しています。
税関は怖いですか?
個人の申告者に対しては優しいです。他方、申告を代行する通関業者には厳しく、ネチネチと指摘することが多いです。
値引きを受けていた場合は?
「一回目の取引で不良品が発生したから、二回目(今回の)のインボイスで価格を引いている。」
このような場合は「値引き前の本来の価格」が輸入申告価格です。
価格を何かと相殺値引きしている場合は?
例えば、売り手と買い手の相互で、何らかの理由により価格を相殺している場合は、相殺前の価格が輸入申告価格です。
例えば、本来貨物の代金は、10000円。AさんからBさんが購入します。Aさんは、Bさんに対して2000円の債務(払う金額)があるとしましょう。この場合は、次の通りです。
- 相殺後の価格8000円(10000-2000)→申告価格とはできない。
- 相殺前の価格10000円→輸入申告価格とする。
アンダーバリューとは?
関税や消費税は、課税価格を基準に計算します。そして、この課税価格を本来よりも低くして納税額を減らす行為を「アンダーバリュー」といいます。これは、脱税行為に当たるため注意しましょう。特に中国からの輸入品は、このアンダーバリューをしている可能性が高いです。
いつのレートが適用されますか?
インボイス等には「○○ドル」と、外国通貨で記載されているのが一般的です。輸入申告時は、このような外貨(ドル)を円に換算します。このときに適用するレートは、次の通りです。
「輸入申告する日が属する週の前々週における平均レート」
なんだか少し難しいですね!でも、税関のサイトを見ればわかります!
申告区分とは?
輸入申告をすると、輸入者の実績に応じた「区分」が表示されます。これは、税関が所有するナックスが輸入者の実績、申告内容等、他の荷主の申告内容との比較などから、判断した結果です。
区分は、次の3つがあり、輸入許可書に記載されています。この内、税関検査が行われるのは「区分3」と判定された輸入者又は、区分2と判定された後、区分落ちで3になった方です。
- 区分1→ 十分な実績があるため簡易審査扱い(優等生)
- 区分2→ 一般ピープル扱い。
- 区分3→ 何だか怪しい人扱い
セット品、無料貨物の取り扱いはどうなる?
セット品は、セットの中身がわかるようにインボイスに記載してもらいます。また、サンプル等、無料の貨物を受け取った場合は、貨物の個数、価格に関わらず、すべてインボイスに記載します。この記載が漏れると「無申告扱い」になる可能性があります。
また、サンプル品の価格は「本来の貨物の価値」を示します。
例えば、この取引では、サンプル品のお金を支払わないから「サンプル代はゼロと申告」するのは誤りです。貨物の価値はいくらなのか? それを示すのがインボイスです。
修正申告のやり方と加算税、期限
修正申告とは、納税した税額に「不足」が判明したときに、自ら修正する手続きです。修正申告はご自身でもできますし、通関業者に依頼している場合は、業者を通じて行います。修正申告の加算税は、修正の結果、増えることになった額「増差分」に応じて決まります。
例:差額の10%や差額の5%など(額や悪意等で判断)
加算税の種類は?
加算税には、以下の4種類があります。
- 延滞税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
分割申告は可能?
一つの輸入で運んできた貨物を分割して申告できるのでしょうか?
結論としてはできます。ただし、分割するためには、費用や時間がかかります。
例えば、一般貨物と食品を一緒に運んできた。一般貨物の輸入審査は終了しているけれど、食品の審査が終わっていないから「両方とも引き取れないとき」などで分割申告を検討します。
原産国の表示義務は?中国産をUSA産でも良い?
原産国の表示は、輸入通関時に「○○の記載がいる」などと決められてはいません。問題があるのは、本来の原産国とは違う原産国が直接・又は間接的に表示されている場合です。
例えば、中国産の貨物であるのに、ダンボールには「Made in USA」と記載されているなどです。
ラベル等、箱の表示での注意点は?
ラベルや箱等での注意点には、原産国ルールの他「薬機法」などがあります。
例えば「これを飲めば痩せる」など、効果や効能を標榜することは問題です。日本では、効果や効能は、薬機法上の基準をクリアする物のみ表示が認められており、それ以外は、NGです。
この問題は女性が美容関連品を輸入するときに多いです。美容機器は、常に医療行為と隣り合わせの部分があり、表記内容には細心の注意が必要です。特に、箱やラベルなど、すべての文言を一文字一句確認することが重要です。少しでも効果等をうたっている文字があれば、その時点でアウトです。
薬機法上、問題があると判断されると、輸入者の手段は、破棄及び積戻しの二択です。もちろん、すべての責任と費用は、輸入者がとります。
具体的に輸入をするまえに、必ず税関等に確認することを強くお勧めします。
輸入関税等の延納はできますか?
担保を差し出すことにより、関税等の延納ができます。
延滞税は何パーセントですか?
延滞税は、年率7.3%です。
建値の意味が分かりません。
とは、価格を「立てる基準とする物」です。
税関検査の概要と費用例
税関は、申告内容に疑義がある場合、貨物の中身を検査する権限があります。いわゆる「税関検査」です。税関検査には、大型X線検査やコンテナの中身をあける検査などがあります。また、検査費用は無料です。ただし、検査には立会いや検査貨物の移動等があるため、通関業者は「税関検査代金」の名目で費用を請求しています。
検査指定票のサンプル
特殊関係とは?
特殊関係とは、輸出者と輸入者が特別な関係があることにより、貨物の価格が適切に反映されない可能性がある場合に適用される考え方です。
例えば、輸出者が父親、輸入者が息子などです。この場合、親子関係があるため、例えば、本来の価格よりも50%も安い価格をインボイスに反映する可能性がありますね? 本来よりも安い価格で申告されると、税関としても、関税や諸税等が少なくなってしまいます。
この理由から、輸入者と輸出者との間に、特殊な関係がある場合は、インボイスなどの価格ではなく、別の方法で価格を算出するとしています。この親子関係以外にも本社と支社、株の所有等も特殊関係があるとみなされます。
詳細:特殊関係と評価申告
関税と消費税の納税方法は?
関税と消費税は、通関業者が立て替えた後、荷主に請求するパターンが多いです。その他、荷主がリアルタイム口座等を開設して、直接、荷主の口座から諸税が引き落とされる仕組みもあります。なお、国際郵便などの小包の場合は、自宅や会社で荷物を受け取るときに、税金を支払います。
薬事法(薬機法) と化粧品、サプリの関係を知りたい。
化粧品やサプリメントなどの輸入を始めたいと考える方は意外と多いです。どちらも薬機法や食品衛生法等が関係するため注意が必要です。共通点は「医薬成分が含まれるものは扱えないこと」です。
例えば、
基本的に化粧品は「化粧品製造販売許可」を有する代行業者により輸入をして国内販売する方法しかないです。他方、サプリメントの場合は「単なる食べ物」を前提として輸入します。この場合もパッケージ等の効果や効能等を標榜することは認められていないです。
関連する可能性がある期間:食品検疫所、県庁にある薬務課、市区町村の保健所、消費者庁
すでに輸入が終わっている商品の扱いはどうなりますか?
「食品届が必要な子供玩具があります。すでに輸入を済ませており、手元に商品があります。今から、食品の手続きはできますか?」
回答:食品届の手続きは、輸入時に行う必要があります。輸入許可後は申請できません。なお、この場合は、販売等をせず、個人的に使用するしかないです。仮に商売目的で輸入したのなら全損と同じ扱いです。
食品届が必要な品目を繰り返し輸入する予定です。都度、申請が必要ですか?
同じ品目を同じ製造者から輸入する場合は「品目登録」をすることで簡易的な審査扱いになります。仮に違う製造者から仕入れる場合は、新しく別の申請が必要です。
アリババ等の買い付け代行業者は食品届の手続きをしてくれますか?
結論:制度上、仕組み上から、食品届の手続きはできないと思います。唯一できるパターンは、買い付け代行業者が「自らの名前」で食品申請&輸入をし、これを「国内転売」するときです。つまり、あなたは、代行業者が輸入した後の商品を「国内取引」で仕入れる形です。
言葉だけを見ると非常に簡単です。しかし、これを実行するには、非常に面倒です。よって、輸入代行(買い付け代行)は、食品届の申請までは対応していないと考えた方が良いです。
なぜ、この結論になるのか?これには、次の2つの理由があります。
- 買い付け代行(輸入代行)の定義や仕組み
- 食品届の輸入者の定義
一般的に言われている輸入代行業者は「買い付けと運送屋」です。買い付け代行(輸入代行)は、何の免許も必要とせず、少し極端なことを言えば「通関って何?」という素人が「今日から買い付け代行をはじめます!」と宣言すれば始められるビジネスです。また、中国企業等が提供している場合も多く、ほぼ日本側の通関の知識はないです。
また、食品届を申請できる「輸入者」とは、輸入後に、日本国内での責任を取れる者です。(税関事務間人も輸入者になれない)そして、この輸入者の申請の代行をできる業者が「通関業者」です。言葉は似ていますが、通関業者と輸入代行業者は、全く違います。
買い付け代行で輸入する場合は、どのタイミングで食品申請ができますか?
まずは、買い付け代行に依頼するときに、日本に貨物が到着したら「保税で留めてほしい!」と伝えましょう。理由は「通関と食品届を自分でしたい!」です。また、あわせて「ハウスB/L」、「HAWB(ハウスエアビル)」又は、貨物の保税地がわかる書類を発行してもらいましょう!
業者から貨物到着の連絡が来たら、上記のB/Lやインボイス、パッキングリスト、アライバルノーティス等を通関業者に提出して、輸入申告をしてもらいます。もしくは、ご自身で税関官署や食品検疫所に行き、輸入申告(輸入届出)をします。
なお、食品届自体は、輸入貨物が到着する7日前から申請ができます。
ドアツードアで配送されてくる商品の食品申請方法は?
「アリエクスプレスやアリババなどで商品を購入すると、自宅などにそのまま配送されてくる商品があります。このような物は、どのように申請をすればいいですか?」
事前にサプライヤー等に依頼をして、貨物の段ボール等に「商用利用/食品検疫が必要」などと記載した大きなラベルを貼り付けてもらいましょう。必ず外から見えるようにデカデカと「商用貨物であること」を記載します。その後、出荷時に発行されたトラッキング番号を使い、荷物を追跡します。
トラッキングを始めると、ある程度、荷物の場所がわかります。出荷日からある程度の日数が経ったら、日本の食品検疫所(空港の食品検疫所)に連絡をして、トラッキング番号を伝えて「食品届けを申請したい」旨を伝えます。
例えば、東京方面の場合は「川崎外郵出張所」、名古屋周辺であれば「中部国際」又は「関西国際空港」、大阪より西側(九州を含めて)は、「関西空港」、沖縄は「那覇空港」等に設置されている食品検疫所に申請をします。
もちろん、航空機によって、到着地は予想できないため、とりあえず、どこかの食品検疫所に連絡をして「空港で荷物が留まるよう」ようにします。もし、誤って荷物が自宅に到着した場合は、一旦、「受け取り拒否」をして、税関に連絡をしましょう!
税関には「食品届が必要な貨物が誤った到着をした。トラッキング番号は○○。これを受け取り拒否をしたので、次にするべきことを教えてほしい!」などと、空港を管轄する税関官署に伝えます。
どこの食品検疫所に相談をすればいいですか?
「EMS(国際スピード郵便)を使って輸入する場合、日本のどこの空港に届くのかはわかりません。例えば、東京が配送先の場合は、どこに相談をすればいいのでしょうか?」
これは、皆さん悩む所です。船等で配送されてくる場合は、到着の港を所管する食品検疫所に申請や相談をすればいいのですが、飛行機の場合は、そこまで単純ではないです。
例えば、配送地が東京方面×EMSの場合は「川崎外郵出張所」で取り扱うことが多いです。ただ、同じ郵便でもEMS以外は、別の空港に届くなど、非常に複雑です。よって、適切な相談場所を見つけるのは困難ですから、配送地に最も近い空港を管轄する食品検疫所に相談をすればいいと思います。
複数の貨物(食品届が必要)を輸入する予定です。まとめて申請は?
まとめて申請もできます。ただし、品目ごとに審査されることは同じです。また、既述の「品目登録」もうまく活用してください。二回目以降の輸入はぐっと楽になります。
ワシントン条約関連を教えてほしい!
ワシントン条約は、絶滅の危機にある動植物又は、動植物からの派生品の取引を規制するルールです。一般的な輸入にもワシントン条約が関係する可能性は、意外にたくさんあります。
例えば、次の貨物は、ワシントン条約とのチェックが欠かせません。詳しくはワシントン条約入門、又はワシントン条約とお土産特例の記事をご覧ください。
- 革関連製品(財布、バッグ、その他)
- 植物(蘭等、植物関連)
- ○○エキス入り
- ○○の木で作った○○など
- 剥製
ワインの輸入通関を知りたい!
ワインを輸入するときは、関税、輸入諸税の他、酒税が発生します。また、輸入規制には「食品衛生法」などがあります。もし、関税等を削減したい場合は「EPA等」の情報収集も必要です。さらに、輸入するには「酒税免許」の取得も関係することにも留意しましょう!
関税・消費税関係
関税率の調べ方は?
輸入する商品の関税率は、実行関税率表で決められています。この中から最も適切な区分を見つけます。しかし、ご覧いただけるとわかる通り、非常に複雑で専門的です。そのため、実際は通関業者や事前教示制度を使い、関税を調べることが多いです。
お勧めの通関業者の見つけ方は?
こういう抽象的な言葉は不適切です。そもそも「何をもってお勧めといえるのか?」も不明確ですし、どこから、何を輸入するのか? 輸入実績はあるのか?等によっても変わります。
通関業者は、日本通関業連合会で調べられます。都道府県別に業者がリストアップされているので、輸入する貨物が到着する所で営業している業者に問い合わせをしましょう!
関税の計算方法を教えてください。
関税の計算方法は、次の通りです。
- 商売目的=(商品価格+送料+保険代金+その他の加算費用)×関税率
- 個人使用目的=(商品価格)×0.6×関税率
軽減税率は適用されますか?
人の飲食用の食べ物(食品表示法の対象貨物)には、軽減税率が適用されます。
関税減免(安くする仕組み)
輸入する商品の関税額や消費税を知りたい!
関税は、輸入する産品、原産国、量、輸入のタイミングなどによって、非常に細かく分かれています。そのため、的確な関税額を算出するのは、プロであっても、多くの時間と資料が必要です。そこで、当サイトでは、簡易的な関税計算ツールを提供しています。
関税計算ツールは、商用、輸入価額、個人使用等、目的などに応じて使い分けられるように複数用意しています。ご自身の目的にあった物をお使いください。なお、こちらのツールによって、正確な関税額を算出することは難しいです。
より正確で適切な関税率を知るには、事前教示制度で「関税率の特定」をし、かつ、課税価格を正確に計算する必要があります。多くの場合は、これらの作業は、通関業者が代行します。
原産地証明書とは?
原産地証明書とは、貨物の「原産国」を証明する書類です。主な目的は、輸入国側の関税率を引き下げにあります。
例えば、ベトナムの商品を輸入。このときの関税率を削減したいときは、ベトナム側が発行する原産地証明書を日本税関に提出します。この逆であれば、日本発行の原産地証明書をベトナム税関に提出します。これにより、輸入国側の関税を大きく削減できます。
特殊な輸入
化審法関連の手続き
人の健康に害を与える可能性がある物質は「化審法関連の法」に順守する必要があります。詳しくは、経済産業省のガイドラインをご覧ください。
バイヤーズコンソリ
バイヤーズコンソリとは、輸出国側で複数の店舗や倉庫から荷物を集めた後、一本のコンテナにのせて輸送する方法です。この場合、輸出国側のシッパー、及び輸入国のコンサイニーは、どちらもフォワーダーになっていることが多いです。
輸入品目例解説
Q.化粧品の輸入
化粧品類(バスソルト、石鹸、その他、肌、頭、体につける製品全般)を輸入するには、化粧品製造販売業の許可が必要です。許可を受けた後、厚生局から薬監証明を取得。それを税関に提出することで、初めて輸入ができます。
Q.CBDオイルの輸入
CBDオイルは、〇麻を原料として生成する製品であるため、輸入するハードルは高いです。輸入先からの複数の資料の提出を受けた後、税関から事前教示、厚生局から「〇麻でないことの確認」などを受ける必要があります。決して「海外通販のノリ」で輸入できないため注意しましょう!
なお、弊社では、法人様限定、輸入先から適切な資料を入手できる方限定で、輸入コンサルサービスを提供しています。
Q.植物類の輸入
植物類を輸入するときは、次の3つが関係します。
- 植物防疫法
- 食品衛生法
- ワシントン条約
それぞれの法律と目的は違います。植物防疫法は「国内に海外の害虫の侵入を防ぐこと」が目的。食品衛生法は「食の安全性の観点」、ワシントン条約は「絶滅危惧種(サボテン等)」の観点で審査されます。つまり、輸入する「植物の状態」によっても、関連する法律が変わります。
Q.アパレル品の輸入
アパレル品を輸入する場合、輸入時の規制は特にありません。強いていうなら、商標権と誤表記等、輸入後に実施する必要がある「家庭用品品質法」などがあります。
例えば、中国産であるにも関わらず「イタリア産のタグが付いている」、ブランドの正規ライセンサーが作っていない商品の輸入などです。特に商標権の問題は、ブランド側と税関が緊密に連携をしているため、何が疑義があれば「認定手続きが開始」されます。
Q.コーヒー豆の輸入
コーヒー豆の輸入は、次の2つの法律が関係します。
- 植物防疫法
- 食品衛生法
植物防疫法は、コーヒー豆の「加工具合」で必要かどうかが変わります。食品衛生法は、残留農薬と日本で禁止されている添加物の有無で判断されます。
Q.革製品を輸入したい!
革製品の特徴は、非常に高い関税率が設定されていることです。輸入時は、この関税の削減に注力する必要があります。関税を下げる方法は、次の3つです。
詳しくは「革製品の輸入マニュアル」をご覧ください。
Q.お酒の輸入
お酒を輸入するときは、次の2つの法律が関係します。
- 酒税法
- 食品衛生法
酒類は、輸入時「酒税免許」が必要です。免許区分は、輸入した後の「販売先」や「販売方法」等で細かく分かれるため「お酒の輸入ビジネスマニュアル」及び「国税庁のサイト」を確認して下さい。輸入後の「業界規制」等も合わせて確認します。
Q.食品を輸入したい
食品を輸入するときは「食品衛生法」が関係します。食品衛生法の主な観点は、次の2つです。
- 日本で禁止の添加物が含まれていないか?
- 医薬成分が含まれていないか?
この2つを確認するために、仕入れ先から食品成分リストを取得。これを「食薬区分リスト」と照合をして「問題がない食品」であることを証明します。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
輸入の基本知識
輸入のメリット、デメリット
輸入販売のメリット、デメリットは、次の通りです。
メリット
- 日本にはない貨物を輸入することでビジネスになる。
- 事業立ち上げにかかる費用は少ない。
- アマゾン等を活用することで、ゼロから立ち上げる割に再現性が高い。
- 事業の一部を外注化することで、省力化ができる。
- あえて大企業が参入できない市場を選ぶことで、小さな市場のトップになれる。
- 海外からの輸入と、日本の事業を組み合わせると、様々な収益をあげられる。
- 組織に縛られない生活を送れる。=嫌いな人間と絡まなくてもいい。
- 物販事業は、銀行からの融資を受けられやすい。
- 一人法人等の運営により、事業的にもプライベート的にも最大の恩恵を受けられる。
デメリット
- 為替の影響を受ける。
- 在庫リスクを抱える。
- 輸入法令違反、関税法リスクがある。
- 無知は、費用の出費につながる。
円高、円安と輸入の覚え方
円高と円安の言葉は、少し混乱しそうですね!でも、覚え方は、簡単です。
- 円の価値が安いから、多くの円でドルに交換する。=円安
- 円の価値が高いから、少ない円でドルに交換できる。=円高
円安とは、一ドルが100円だったものが110円等に変化することです。一方、円高はこの逆です。円の価値が上下することで、ドル(外国通貨)に交換するときに必要な円の量が変わります。
ちなみに、輸入の場合は、外国通貨で商品を購入する必要があるため、少ない円で外国通貨を取得できる「円高」が有利です。輸出場合は、外国通貨の商品を売って外国通貨を得ます。そして、それを円にするため「円安」の方が有利だと言われています。
しかし、昨今は、税制上の優遇措置を利用するために、海外に子会社等を設置。子会社を通して海外販売する所が増えています。そのため、昔よりも円高だと輸入が有利、円安だと輸出が有利とはいえなくなってきました。
直接貿易と間接貿易の違い
直接貿易とは、売り手と買い手が直接、貿易取引をすることです。間接貿易は、売り手と買い手との間に商社が入ることです。それぞれは、次の特徴があります。
取引相手 | メリット | デメリット(リスク) |
海外の工場等(直接貿易) |
|
|
商社(間接貿易) |
|
|
関連:三角貿易とは?
三角貿易とは、書類の流れ(商流)と商品の流れ(物流)が三者間で行う取引です。
- 輸入者A:アメリカ
- 輸出者B:中国
- 工場C:日本
例えば、輸出者BからAに商品を販売したとしましょう(輸出)この場合、輸出者Bから輸入者Aに対して、インボイスが発行されます。しかし、輸出者Bの商品は、中国にはありません。日本の工場で作っているため、日本からアメリカに商品を輸出します。
- 書類は、BからAに行く。
- 商品は、CからAに行く。
- (工場CはBに対してインボイスを発行)
書類と商品の流れが違いますね!この形を三国間貿易といいます。なお、この三国間貿易で関連する言葉が「リインボイス」や「スイッチB/L」です。
輸入代行の基礎(アメリカ等)活用方法とメリット
輸入取引には「輸入代行」があります。輸入代行とは「輸入したい!でも、言葉の壁等で自分で輸入が難しい方」に対して、商品の購入を代行したり、国際輸送を代行したりするサービスです。
輸入代行業を始めるときは、許認可、資格等は不要です。いつでも、誰でもすぐに始められるため、参入障壁が低いです。そのため、様々なトラブルになることも多いです。
例えば、お金を支払ったのに、貨物が届かないトラブルなどです。
輸入代行業者には、海外の法人格がある所があったり、日本国内で個人事業主として活動していたり、活動形態は様々です。また「代行」の形もたくさんあり、商品の購入を代行する所もあれば、国際輸送のみを代行する所もあります。
いずれの場合も輸入や国際輸送ができない方をサポートしています。なお、HUNADEとしては、アメリカとタイの輸入代行サービスとして、次の会社をお勧めしています。
輸入代行の手数料、メリットとデメリット
輸入代行サービスの手数料は、商品価格の10%前後~の所が多いと思います。
例えば、商品価格が1000円であれば、100円が手数料です。その他、輸入代行業者の配送料表に基づき、国際輸送代金がかかります。(代行業者は、商品代金の10%+国際輸送部分で利益を取る)
上記の点から、輸入代行サービスを使う場合は、ご自身で輸入交渉ができないときに輸入ができるメリットがある一方、業者のマージンがかかる点がデメリットだと言えるでしょう。
輸入ビジネスと輸入代行の関係性
転売輸入ビジネスをされている方は、代行業者に手数料を支払うと、利幅が小くなります。輸入代行は、一般消費者として利用する物であり、事業性の貨物を輸入するときには利用しないです。
その他、輸入代行を使う場合は「輸入者」が曖昧になっている点も注意が必要です。
例えば、輸入代行サービスを使い化粧品を輸入した場合は、日本で販売できないです。なぜなら、化粧品を輸入するときは「化粧品製造販売業の許可」が必要であり、それを持っていない代行業者が輸入した物は、全て無許可輸入になるからです。万が一、そんな貨物を代行で入手したら大変ですね!
他、上記と関係していますが「PL法(製造物責任法)」にも注意します。日本では、輸入品におけるPL法の責任者を「輸入者」としています。よって、輸入者が曖昧である輸入代行サービスは、日本の一般消費者に対して様々なトラブルになる可能性があります。
例えば、輸入代行で輸入した、おもちゃを日本で販売していた。このおもちゃを使っていた乳児が重大なケガをした場合、その責任は、誰にあるのか?が問われます。すでに述べた通り、輸入品は「輸入者」がPL法の責任を負います。
では、輸入代行を使った場合の輸入者は、誰に当たるのでしょうか? これは、輸入代行業者が提供するサービス形態によるため、一概に判断することは難しいです。もし、輸入者が不明な場合は、代行業者のサービスを利用する前に「輸入者は誰になるのか?」許可書はもらえるのかを確認します。
この二点が曖昧な業者は、おそらく、ちょっとヤバい所だと思います。ぜひ、輸入代行業者を使う際の判断材料の一つにしましょう!
関連的な知識 輸入代行と消費税の件
輸入代行には、消費税がかかるのでしょうか? これは、その代行業者がどこの国を所在地としているのかで変わります。
例えば、輸入代行業者がアメリカを所在地とする会社の場合は、日本にいる方との取引には、消費税はかからないです。役務の海外取引に該当するからです。もし、消費税なる名目を業者から請求されている場合は、おかしいです。必ず業者の所在地と請求書にかかる消費税の有無を確認しましょう!
基本的に輸入代行サービスは、一般消費者として利用するものです。
仕入れ先の選定(売り手の見つけ方)
海外の売り手は、どのように見つければいいのでしょうか? 大きく分けると、オフラインでの方法とオンラインでの方法の2つがあります。オンライン(インターネット)で見つける場合は、次のサイトが便利です。
サイト名 | 主な特徴 |
アリババ | 中国最大級のB TO Bサイトです。 |
グローバルソース | 香港を拠点とするサプライヤーとつながれます |
eWorldTrade | 50万人以上のユーザーが登録するB TOBサイト |
トーマス | 北米のサプライヤーを見つけるときに便利 |
Kompass | 約60か国のサプライヤーとつながれるB TO B |
書類の保管方法
税関関連書類は、帳簿書類、貿易書類、取引相手との記録などを書類や電子データ等で保管する義務があります。税関関連は、5年間、帳簿類は、7年間であるため、どちらも7年間は保管をお勧めします。詳しくは税関関連の書類の保管方法を解説をご覧ください。
輸入の在庫管理(倉庫保管料や消費税等)
輸入品の在庫管理は、まずは次の2つで考えます。
- 保税状態での保管
- 国内貨物での保管
保税状態の貨物とは、輸入許可を受ける前の貨物です。航空機や船などで日本に到着後、輸入許可を受けずに倉庫に保管します。この方法により、日本国内の売れ行きに合わせて必要最小限を輸入して販売ができます。(無駄な関税や消費税の負担義務がない)
一方、国内貨物の保管とは、輸入許可を受けた貨物の保管です。この場合は、自社で倉庫を用意する他、アマゾンの倉庫(FBA)やオープンロジ等、港近くにある混載業者などの他社倉庫を利用して保管ができます。
*いずれの場合も輸入品の物量に応じた倉庫代金が必要です。なお、保税状態の貨物に対する倉庫保管代金は免税。許可後の貨物保管代金は、有税です。
大量購入
EMSやフェデックス等の比較的、小さな輸入から、コンテナ等の大量輸入に切り替える場合は、次の点に留意します。
- 商品の品質(不良品率)
- 適切な輸送モード(フォワーダーの選定)
- 過剰在庫の防止
- キャッシュフロー
例えば、同じ商品を一度の大量に輸入すると、一つの商品に対する国際輸送費が小さくなるため、コストの削減としては有効です。ただし、大量に商品を買い付ける場合は、商品自体の品質や過剰在庫に気を付ける必要があります。
例えば、通常の小規模であれば、品質等は特に問題なかった。不良品があったとしても一個や二個程度だった。小規模の輸入であれば、この不良品率は小さいかもしれません。これが20フィート一本分となると、小さな不良品であっても、インパクトが大きくなります。
仮に商品代金が200万円だとしましょう。この商品の不良品が約1%の場合は、輸入した瞬間、約2万円分、損していることと同じです。もちろん、売り手側にクレーム等も言えますが、面倒な部分も大きいです。これが2%なら4万円です。
大量に輸入すると、このような「○○率」のインパクトが大きくなるので注意しましょう。
他、大量輸送となると、国際輸送業者(フォワーダー)との取引が必須です。海上輸送なのか?(FCL、LCL)、フェリー船が良いのか? それとも航空輸送が良いのか?を貨物の種類や納期等から最適な物を検討します。
過剰在庫にも気を付けます。輸送コストを圧縮するために、商品の売れ行き以上に仕入れをすると「過剰在庫」につながります。過剰在庫は、キャッシュフローを悪くし、経営的な体力を小さくします。一度に大量輸送を絶対的な物と考えず、適切な時期に適切な量を運ぶ方が良いです。
例えば、中国からの輸送なら、高速海上フェリー船が良いです。週に五~七便程、出ているため、比較的、小規模で輸入ができます。
輸入と税理士の活用方法
輸入取引に最適な税理士は、EPAに精通している方だと思います。EPAとは、日本側の関税を削減する仕組みです。関税は、一つの物販に関わる輸入税に過ぎないと考えがちです。
しかし、それが大きな誤解です。実際は、会社全体に大きなインパクトを与えて、大企業程、その重要性を理解しています。
貿易統計
どこの国から、何をいくらで輸入しているのか?
これは、財務省が公開する貿易統計で調べられます。情報元は、全国の税関が使用するナックスになっているため、信憑性は極めて高いです。まずは、全体的な情報収集をする場合は、貿易統計のデータを確認してみましょう!
貿易関連用語
BP(輸入許可前引き取り承認)通関
関税相当分の担保を差し入れた後、輸入の許可前に貨物を引き取れる仕組みです。
例えば、展示会等に出店するための産品で時間的な余裕がない。特恵関税を適用するための原産地証明書が届いていないなどの状態のきに「ビフォーパーミット=BP通関」をします。
CY(コンテナヤード)
の一角。コンテナ単位の貨物を船からおろしたり、積んだりする所です。
EPA
は、特定国との間で関税の免税や減免をしあう仕組みです。2020年9月現在、日本は、17のEPAを締結しています。
HSコード
は、世界共通の品目コードです。
例えば、123456をリンゴ。 567891をなしなど、世界各国で共通の品目と番号を使うことで、貿易取引を円滑にしています。インボイス、B/L、EPAなど、貿易関連の様々な書類に登場します。
SDS/MSDS
別称「安全データシート」といいます。有害な物質を含む製品を譲渡、売買するときに、製品の状態を証明するために使います。
例えば、EPAで対比表を作成するときに、SDS(MSDS)の情報を基準にすることもあります。
ミルシート
主に鋼材等の品質を証明する「鋼材検査証明書」のことです。主な目的は、輸入申告価格の「アンダーバリュー」を防ぐことです。
意見書とは?
ブランド物が輸入されようとするときは、税関は、商標権リストと照合して、問題がないかを確認します。その結果、問題があると判断した場合は、輸入者に「認定手続き開始」を通知します。このときに、輸入者は「意見書」を提出して、自己の貨物の正当性を主張します。
NACCS
税関、通関業者、フォワーダー等を結ぶオンラインシステムです。このシステムを使い、輸出入申告などをします。
NET WEIGHT
ネットウェイトは、貨物のみの重量。グロスウェイトは、貨物+梱包材の重量です。
X線検査
空港などの手荷物検査で導入されているX線の大きいバージョンが「大型X線」です。20フィートや40フィートのコンテナを丸ごとスキャンできる優れものです。実際、このX線検査によって、コンテナ内部にある小さな箱も発見できます。
デバンニング
は、コンテナから貨物を取り出す作業。この逆がバンニングです。これらに関連する用語がLCL(CFS)、搬入確認、デバンニングレポート
デマレージ(デマレッジ)
倉庫やヤード等に搬入された後、一定の期間(フリータイム)までは無料で保管ができます。(おおむね5営業日)期間を過ぎた後に貨物を取り出すときは「デマレッジ(延長料金)」が発生します
フォワーダー
フォワーダーは、船舶や飛行機などを所有するキャリアからスペースを買い取り、それを各荷主に販売する仕事をしています。詳しくは「フォワーダーとは?」の記事をご覧ください。
レンジアウトとは?
輸入申告データは、日本全国から集まるため、輸入国や品目ごとに「平均値」がわかります。
例えば、ベトナムからリンゴを輸入するAさんは、一つ100円と申告。Bさんは、一つ5円と申告したとします。この場合、明らかにBさんの価格が低くなっていることがわかりますね!このように平均的な申告価格から著しく外れている物を「レンジアウト」といいます。
レンジアウト=疑義がある輸入申告
他法令
とは、税関が輸入許可を出す上で、他機関からの確認を必要することです。
例えば、食べ物関連は、食品検疫所。植物関連は植物防疫所などが担当します。税関は、これらの貨物が申告された場合は、他機関から確認が取れた後に、輸入許可を出します。ちなみに、他法令は、輸出・輸入のどちらもあります。
保険はどうなるの?
輸入関連の保険には、次の2つがあります。
- 海上保険(マリン保険)
- PL保険
は、国際間の輸送時に貨物ダメージが発生した場合に補償。他方、PL保険は、輸入後、日本国内販売で不具合が発生した場合に補償します。詳しくは、それぞれのリンク先をご覧ください。
個別搬入とは?
輸入貨物は、コンテナヤードや倉庫等に保管されると「搬入」という状態になります。搬入は、一括搬入と個別搬入の2種類があります。個別搬入は、他の貨物よりも優先して行うため、より素早く貨物を引き取れます。詳しくは「HDSとは?」の記事をご覧ください。
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