輸入事業のコスト
このレッスンで学べること
輸入でどんなお金がかかる?いつ発生する? 輸入には「商品代」以外にもいろいろな費用がかかります。
FOB?CIF?EXW?その違いってなに? 海外との取引では、条件によって「どこまでが相手の負担か」が変わります。FOB・CIF・EXWといった貿易条件の意味や、費用への影響を学べます。
関税や消費税など、明細を理解しよう 商品を日本に入れるときには、関税・消費税・通関手数料・港での費用(港湾チャージ)などがかかります。それぞれの費用の中身を紹介します。
全部の費用をちゃんと計算するには? 「思ったより利益が出なかった…」という失敗を防ぐために、すべての費用を正確に見積もる実務的な知識が身につきます。
輸入には「見えないコスト」が多く存在する
「海外から安く仕入れて、日本で売れば利益が出る」──これは一見シンプルですが、実際の輸入では多くの“見えないコスト”が関わってきます。商品代金以外に、輸送費、保険、税金、通関手数料などが加算され、思った以上にコストが膨らむケースも少なくありません。
そのため、輸入ビジネスでは「商品単価」だけでなく「トータルコスト」を事前に把握することが極めて重要です。
輸入で発生する主なコストの構成
1. 商品代金(仕入価格)
- FOB(本船渡し):仕入先が港(輸出国の本船搭載迄9まで運び、そこから先の費用(運賃や保険など)は買い手が負担。
- CIF(運賃・保険料込み):仕入先が日本の港までの運賃と保険料も負担してくれる。
- EXW(工場渡し):仕入先の工場で引き取る条件。そこから先の手配と費用はすべて買い手が負担。

取引条件(インコタームズ)によって、どこから費用が発生するのかが変わるため、契約時点で明確にしておく必要があります。
2. 国際輸送費
以下の輸送手段により、国際輸送費が変わります。この輸送費は上記の通り、選定するインコタームズにより負担する側が変わります。
- 海上輸送(FCL、LCL)
- 航空輸送(速いが高コスト)
- クーリエ(DHL、FedExなど)
※重量・容積・仕向地・優先度によって大きく変動します。 ※LCLの場合、最低チャージ(例:1CBMあたり15,000円程度)が適用されることも多い。
3. 通関・港湾費用
日本に荷物が到着した後、日本の港内でかかる費用です。
- 日本に荷物が着いたあと、港で次のようなお金がかかります。
- 通関代行料:通関業者に頼む費用(目安:1万円~)
- 検査費用:X線検査や抜き取り検査などの実費
- 港での費用:荷物を降ろす料金(例:東京港で15,000円/20FTコンテナなど)
- 書類作成料:インボイスやB/Lなどの書類作成費用
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4. 輸入時にかかる税金
- 関税:商品と原産国によって税率が変わります(HSコードで決まる)
- 消費税:関税を含めた金額に10%かかります(あとで控除OK)
- 地方消費税:消費税に含まれます(これも控除OK)
※お酒やタバコなどは、別の税金(酒税など)がかかることもあります。
計算例
課税価格が100,000円、関税率が5%の場合:
→(100,000 + 5,000)×10% = 10,500円(これが消費税)
トータルコスト計算の流れ(簡易例)
費用項目 | 金額(円) |
---|---|
商品代金(FOB) | 100,000 |
海上運賃 | 25,000 |
輸送保険 | 1,500 |
関税(5%) | 5,000 |
消費税(10%) | 13,150 |
通関手数料 | 4,000 |
港湾費用 | 6,000 |
合計 | 154,650 |

このように、単価10万円の商品でも実際に支払う金額は約1.5倍に膨らみます。
コストを安くするためのポイント
- 関税が安い商品や、EPA対象の商品を選ぶ
- 航空便よりも海上LCL(混載便)を使うと安くなることが多い
- 定期的に輸入すると、送料や保険の割引交渉がしやすくなる
- フォワーダーや通関業者から複数の見積もりを取る
- 書類のミスを防ぐことで、追加の検査費用を避けられる
- 通関費用は案件ごとに違うので、事前に相談するのが大切
また、輸送方法も重要です。少量でも航空便は割高になるため、海上LCL(混載便)を使えば他の輸入者とスペースを共有して送料を節約できます。
さらに、定期的な発注に切り替えると、運賃や保険料での割引交渉がしやすくなり、コスト安定化にもつながります。
フォワーダー(輸送業者)や通関業者から複数の見積もりを取り、条件を比較することも大切です。書類の不備があると通関で追加検査や再提出が発生し、余計なコストや時間がかかるため、事前の確認を徹底しましょう。
補足情報
EPA(経済連携協定)とは?
EPA(Economic Partnership Agreement)は、日本と特定の国や地域との間で結ばれる協定で、対象となる商品の関税が大幅に下がったり、なくなったりします。代表的なものには「日EU・EPA」や「日アセアンEPA」などがあり、対象商品や原産地の条件を満たせば、関税にかかるコストをかなり抑えられます。
インコタームズのその他の条件
最近では「DDP(Delivered Duty Paid:関税込持込渡し)」や「DAP(Delivered at Place:仕向地持込渡し)」など、売り手側がより多くの費用やリスクを負担する取引条件も使われるようになっています。
見えないコストの具体例
輸入ビジネスでは、為替レートの変動によってコストが増えたり、銀行への送金手数料、特定の商品(食品、植物、動物関連など)にかかる検疫費用などが発生したりする場合もあります。これらの費用も含めて、総合的なコストを計算することが大切です。
輸入ビジネス初心者が悩みやすいコストと実務Q&A
Q1. FOB、CIF、EXWのどれを選ぶべきですか?
A. 初心者はCIF(運賃・保険料込み)がおすすめです。最初から国際輸送費が含まれているため、コストの見える化がしやすいです。経験を積んだらFOBやEXWも検討しましょう。
Q2. 輸入時に一番見落としがちなコストは何ですか?
A. 港湾チャージ(THCなど)や検査費用です。これらは見積外で請求されることも多く、事前に港湾費用の内訳確認と検査対応の準備をしましょう。
Q3. 関税はいつ、誰が支払うのですか?
A. 輸入申告時に通関業者を通じて輸入者が支払います。課税価格はCIFベースで、通関時にまとめて納税する形です。
Q4. トータルコスト計算はどうすれば簡単にできますか?
A. まずFOB価格を基準に、輸送費、保険、関税、消費税、通関手数料、港湾費を足し算してください。見積時にフォワーダーや通関業者から項目別の費用を取り寄せ、一覧表で管理するのがおすすめです。
Q5. コストを抑えるにはどこを見直せば良いですか?
A. 関税率の低い商材選定、海上輸送への変更、EPA適用確認、複数業者への見積依頼などが有効です。とくに関税と輸送手段の見直しはインパクトが大きいのでチェックしましょう。
まとめ
輸入コストは「商品代金+輸送+税金+通関手数料+港湾費」の合計で見るべきです。貿易条件(FOB・CIF・EXW)によって負担範囲が変わるため、契約時に要確認。利益率を確保するには、販売価格だけでなく「原価構造」を理解することが必須です。
次の記事>>「第5回:HSコードと関税率の調べ方(タリフ検索実践)」
基幹記事
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