日本の米が近年、世界で注目を集めています。高品質で美味しい日本米は海外で高級ブランドとして認知され、その需要は年々高まっています。しかし、国内では米の価格が高騰し、家計に影響を与えています。
Xなどでは、コメに対して輸出補助金を出している~、アメリカなどでは、日本のコメが激安で販売されているなどとコメントを見ることが多いです。この記事では、そんなXでささやかれているコメントを含めて、日本の米輸出と国内価格高騰の関係について詳しく解説していきます。
日本産米の輸出
日本米の輸出は成功している?
日本米が海外で評価される理由は、その品質にあります。粘り強さと甘みを兼ね備えた日本米は、高級レストランや富裕層で愛されています。特に新潟県や北海道などのブランド米は、現地の寿司店で広く使われています。
政府もこの輸出を後押ししており、農林水産省は日本米の輸出促進政策を推進中です。2024年には過去最高を記録しました。主な輸出先は香港やシンガポール、そしてアメリカ。これらの国では日本米が高級食材として定着しています。
大量の助成金を出している割に効果が乏しいとも言われています。
国内価格高騰の背景
輸出成功の裏で、国内では米の価格が上昇しています。この価格上昇の背景には、いくつかの要因が絡んでいます。
減反政策の強化や生産コスト(農業資材や燃料費)の上昇、2024年では異常気象の影響による収量の減少などがあげられます。その他、一部の補助金を活用し、輸出用のコメなどに転化している部分があるのではないかと推察しています。
政府は違法なことをしている? 輸出の補助金?
日本も加盟するWTOでは、輸出品に対して、政府(日本含む加盟国)が補助金を出すことは明確に禁止されています。
例えば、政府が補助金を出し安い製品を製造し、それを外国に販売するなどです。(韓国などがよく指摘される)当然、WTOに加盟する日本もその対象です。仮に補助金を受けて製造した商品が流入していると疑われる場合は、各国政府は「相殺関税」を発動し、その商品が自国の市場に流入し難くなるように調整することも認められています。あわせてWTOに提訴も可能です。したがって、Xなどでつぶやかれているコメの輸出補助金などは、事実とは違います。
但し、少し怪しい助成金?が存在することも事実です。それは、農林水産省が実施している「水田活用の直接支払交付金」です。この中にある「コメ新市場開拓等促進事業(110億)」があります。
もしかすると、これが拡大解釈されて、新市場=輸出市場と考えて、輸出用コメを製造している事業者に対して補助金まがいのものが支払われている可能性があります。
引用元:農林水産省
これは、WTO的にも少しグレーな存在だと思います。
貿易統計データから見る米輸出の実態
香港では、日本米が贈答品として人気です。一方、アメリカでは寿司ブームが追い風となり、高級寿司レストランが日本米を積極的に採用しています。
では、実際にどれほどの規模でコメの輸出が増加しているのかを貿易統計で確認してみましょう。貿易統計は、税関に輸出申告されたデータをまとめた物です。=
輸出入を数字でとらえる場合は最も正しい情報です。
なお、貿易統計は、各商品をHSコードで管理します。詳細は省きますが、コメに関するHSコードは次の2つです。他、玄米もありますが、今回は省略します。
- 白米=1006.30.000
- パックご飯=1904.90.010
2023年度、1006.30-000
このコメは、精米。無加工な状態の物です。2023年度では、59か国に輸出しています。
輸出先国(59か国)
国名 | 年間数量(トン) | 単価(円・トン) |
香港 | 8656 | ¥248416 |
アメリカ合衆国 | 6519 | ¥260095 |
リベリア | 3294 | ¥54629 |
台湾 | 2454 | ¥284147 |
カナダ | 1793 | ¥245580 |
シンガポール | 1791 | ¥256940 |
タイ | 1343 | ¥247341 |
オーストラリア | 1298 | ¥322835 |
英国 | 716 | ¥332484 |
輸出推移
ネット上では年々、増加しているようなことが言われています。ですが、事実とは異なります。
単価に注目してみましょう!あれ?2023年度、¥229,584円です。これは一トンなので229円/KGです。かつ価格は、FOB価格=日本の港での価格です。港での価格なので農家は、もっと安い価格で出荷しています。
あれれ?? えっと、今、日本国内でコメを購入すると、5KGでいくら? やはり、強烈な闇を感じますよね。。。汗
年月 | 年間数量(トン) | 単価(円・トン) |
2014 | 25984 | ¥86,984 |
2015 | 49678 | ¥77,524 |
2016 | 23595 | ¥121,842 |
2017 | 30758 | ¥110,713 |
2018 | 40084 | ¥102,281 |
2019 | 42533 | ¥114,250 |
2020 | 35390 | ¥146,085 |
2021 | 35923 | ¥154,054 |
2022 | 21935 | ¥260,594 |
2023 | 34493 | ¥229,584 |
2023年度、1904.90-010
輸出先国(33か国)
国名 | 年間数量(KG) | 単価(KG) |
アメリカ合衆国 | 731487 | ¥537 |
香港 | 264420 | ¥641 |
台湾 | 211446 | ¥826 |
シンガポール | 99192 | ¥580 |
大韓民国 | 93631 | ¥530 |
タイ | 83471 | ¥464 |
ミャンマー | 41640 | ¥1,346 |
オーストラリア | 24007 | ¥1,033 |
マレーシア | 20473 | ¥497 |
1904.90-010の推移
パックご飯は、年々と増加しているようです。
年 | 年間数量(kg) | kg単価(円) |
2017 | 658294 | ¥522 |
2018 | 922724 | ¥512 |
2019 | 1018063 | ¥504 |
2020 | 1205320 | ¥546 |
2021 | 1131484 | ¥528 |
2022 | 1384075 | ¥571 |
2023 | 1597303 | ¥632 |
現在のコメ不足?コメの高騰を是正するには?
今回は、日本のコメの輸出状況と国内の需給状況との関係を説明していきました。仮に本当に国内のコメが不足しているなら、輸出などはせず、今すぐ国内消費に回すべきだと考えます。国内で生産するコメの他、日本政府には、国際ルールに基づいて輸入するミニマムアクセス米(最低輸入数量)もあります。従前からいわれる減反政策の見直しも重要です。
また、この記事で紹介をした、いわゆるコメの輸出に関する迂回的な助成金が存在するなら、やはりそれは見直すべきだと考えます。仮にこの事実を各国政府が知ったら、日本がやり玉に挙げられるのは火を見るよりも明らかです。
というか、国内のこの状況を少しでも改善するために、各国政府に対して、日本国内のこの制度(コメの新市場開拓に関する助成制度)があることを伝えると効果的かもしれません。
「おい、日本!それは、コメに補助金を出しているんじゃない!」と、指摘する声が大きくなるほど、何らかの反応をしなければならない状況に陥る。つまり、それは、結果、日本国内のコメの流通の安定化につながるのではないないか?と考えます。
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