EPAの「完全生産品」とは何か?

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関税ゼロで輸出入ができるEPA制度(自由貿易)を利用するときは、特定原産地証明書(とくていげんさんちしょうめいしょ)を「輸入国側」の税関に提出します。あなたが輸者であるなら、日本側で取得した原産地証明書を相手国側の税関へ提出します。

一方、輸者であるなら、相手(輸出者)の国で発行した証明書を日本の税関に提出します。これによって、本来かかるはずの関税を大きく削減できます。ただし、この証明書を使うときは、いくつかの条件を満たす必要があります。その中の一つに「商品が締約国の完全生産品である事」があります。

そこで今回は、この「完全生産品であること」の”完全生産品”とは、どのような物を指すのか詳しく説明していきます。

EPAにおける完全生産品とは?

EPA(関税ゼロ貿易)を利用するためには、輸出入する商品について、いくつかの条件を満たす必要があります。この条件の一つに「締約国で作られた完全生産品であること」があります。この表現のポイントは、2つあります。一つは、締約国とはなにか? 2つめは、完全生産品とは何か? です。

1.締約国とは?

2017年現在、日本は15のEPAを結んでいます。主な国と地域は、以下の通りです。この表の中に書かれている国が、日本とEPAを結んでいる「締約国」にあたります。

アジア地域シンガポールマレーシアタイ
インドネシアブルネイアセアン
フィリピンベトナムインド
モンゴル
オセアニアオーストラリア
中南米メキシコペルーチリ
ヨーロッパスイス

アジア地域を確認してみると、シンガポールを中心にして、合計で10か国と締結しています。日本は、これらの国と1対1でEPAを結んでいます。ただし、ここで忘れてはならないのが、この東南アジア地域には、二国間EPAの他に、複数の国で適用される「日アセアンEPA」もあることです。

例えば、シンガポールであれば、日シンガポールEPAのほかに、日アセアンEPAもあります。タイであれば、日タイEPAと日アセアンEPAがあります。貿易者は、これらEPAの好きな方を利用して貿易取引を行えます。(利用する協定によって、関税率が違います。

では、先ほど申し上げた「締約国」は、どのようになるのでしょうか? もうお分かりですね。あなたが利用する「EPA」によって、締約国は変わります。

例えば、日タイEPAであれば、日本とタイとの協定であるため、日本とタイが「締約国」にあたります。日シンガポールであれば、日本またはシンガポールが締約国です。ただし、ここで間違えていただきたくないことは、これらの締約国で生産されたとしても、すべて認められるわけではないことです。それが次にお伝えする「完全生産とは何か?」につながります。

ポイント:締約国は、利用する協定の当事国

2.完全生産品

EPAの締約国とは、利用する協定の当事国だとお伝えしました。では、この当事国で生産された物であれば、すべてEPAを適用できるのかというと、そうではありません。EPAで認められている「原産品の基準をクリアしている物」でなければならないことになっています。

具体的には「1.日本で完全に生産された産品であること」「2.日本の原産材料だけで生産した物であること」「3.外国の原材料を実質的な変更した物であること」のいずれかの条件を満たすことです。これら1~3は、さらに細かいルール(定義)が決まっていますが、この記事では、1番の完全生産品について詳しく掘り下げていきたいと思います。

完全生産品って何?

完全生産品とは、日本国内で完全に生産された物、栽培・収穫・採ったもの、回収したものを指します。工場などで生産した物ではなく、どちらかというと、自然的に採れる農産物や水産物・鉱物資源などのことを指します。ここで忘れてはならないのが、鉄くずやプラスチックなど、すでに商品としての価値がないリサイクル資源なども、この完全生産品に該当することです。それでは、この完全生産品ついてもう少し詳しく見ていきましょう!

完全生産品の定義は?

先ほど述べた通り、完全生産品は、どちらかというと、自然的に「とれる物」です。工場などで何らかの材料を使って製造する商品ではなく、栽培した野菜、果実、育てた牛、鉱物資源などが対象になります。では、この完全生産品の定義の部分をもう少し詳しく確認していきます。今回は、日本とタイとの間に結ばれている「日タイEPA」の原産地規則(どのような物を原産品にするのかを定めたルール)から「完全生産品の定義」を抜粋してみます。

*日タイEPAの原産規則の抜粋です。

  1. 生きている動物であって、当該締約国においてうまれ、かつ、生育されたもの
  2. 当該締約国において狩猟、わなかけ、漁ろう、採集または捕獲により得られる動物
  3. 当該締約国において生きている動物から得られる産品
  4. 当該締約国において収穫され、採取され、又は採集される植物、動物および植物性生産品
  5. 当該締約国において抽出され、又は得られる鉱物その他の天然の物質
  6. 当該締約国の船舶により、両締約国の領海外の海から得られる水産物その他の産品
  7. 当該締約国の領海外の海底又はその下から得られる産品。ただし、当該締約国が 当該海底又はその下を開発する権利を有することを条件とする
  8. 当該締約国において収集される産品であって、当該締約国において本来の目的を果すことができず、回復又は修理が不可能であり、かつ、処分又は部品もしくは、原材料の回収のみに適するもの
  9. 当該締約国における製造もしくは加工作業または消費から生ずるくず及び産品であて、処分又は原材料のみに適するもの
  10. 本来の目的を果すことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から、当該締約国において回収される部品又は原材料

引用元:日タイEPA原産地規則PDF資料

上記10個の内、分かる範囲で一つずつ解説していきます。

■注意点
以下に記載している品目は、協定上、可能ということであり、実務上、必ずできるわけではありません。この理由は、原産部分を証明するための資料を取りそろえることができないことにあります。例えば、水産物の場合を考えてみましょう。この場合、漁師さんからの協力を得る必要があります。しかし、実際のところ、このような協力を得られることは難しいことが多いです。その他、廃プラスチックなどの回収品もです。原産品として申請するには、プラスチックの原材料部分を示す書類や、それをどのように入手しているのかなどを含めて細かく証明する必要があります。そのため、協定上、OKであっても、実務上、証明が難しい物がたくさんあります。

1.生きている動物であって….

日本またはタイにおいて、生きている状態の動物を輸出するときです。

例えば、乗馬用の馬、種牛などが考えられます。

2.狩猟、なわかけ、漁ろう….

狩猟やわなかけであれば、山で捕獲する動物(イノシシ、鳥?)、漁ろうであれば、水産物(魚など)が当てはまります。

3.生きている動物から得られる産品…..

生きている動物から得られる産品とは、牛乳、卵、または肉そのものを指します。

4.収穫され、採取され、又は採集される植物、動物および植物性生産品….

野菜、果実、木から作られるかご、動物の革で作られる○〇、動物の骨を利用した〇〇などが考えられます。また、木に生えている果実、木のみを加工したナッツなども含まれます。

5.抽出され、又は得られる鉱物その他の天然の物質…

主に鉱物資源を指します。また、広義には、何かを絞った後にできる油、砂糖、塩なども対象になります。

6.両締約国の領海外の海から得られる水産物その他の産品..

この一文のポイントは、締約国に「所属する船舶」が「領海外=公海上」でとることです。

自国の領海内ではなくても、締約国に所属する船がとった水産物は、締約国の完全生産品扱いにすると書かれています。

7.当該締約国の領海外の海底又はその下から得られる産品…

この一文については、少しあいまいです。領海外かつ、その下を開発する権利となっているため「EEZ=排他的経済水域」を指しているはずです。この海底または、その下から得られる産物ですから、海底にいるサンゴ礁?などに始まり、ボーキサイト、シェールオイルなどの資源なども指していると思われます。

8.収集される産品であって、本来の目的を果すことができず….

この一文のポイントは、収集した物。 本来の目的を果せない。 回復は不能。 原材料のみに適する物の4つです。つまり、これは、廃プラスチックなどの資源ごみの指します。

9.加工作業または消費から生ずるくず及び産品であって….

こちらも8番と似ています。加工作業や消費などから発生するクズと書かれています。これは、ザックリいうと、鉄くずなどを指します。

10.本来の目的を果すことができず、かつ、回復又は修理が不可能な産品から…

この一文のポイントは 本来の目的を果せない。 回復不能。 締約国で回収されるもの。 です。

おそらく、家電そのものは厳しいとは思いますが、「部品を取り出した後」の物であれば、定義にあてはまる可能性があります。

まとめ

EPAで重要になる「完全生産品」について詳しくご紹介していきました。完全生産品は、日本の国内で製造した物というより、生産、収穫、採掘、回収など、自然状態の物をそのままとった物のことを指します。もし、あなたがの商品がこの完全生産品の定義に当てはまらないときは、その他、2つの定義を満たすかどうかを考えることになります。

さらにEPAについて学びたい方は「スタートEPA」をご覧ください。

EPAを利用できるように、HUNADEに相談したいときは「EPA取得サポートサービス」が便利です。

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