この記事では、輸入関税>>国定税率の一つ「暫定税率」を説明します。
商品を輸入するときの関税は「国定税率」と「協定税率」があります。国定税率は、日本の国会で決められる日本独自の関税率であり「基本税率」と「暫定税率」の二つがあります。
そこで、今回は、暫定税率の存在理由、暫定税率から読み取れる政府の関係、暫定率と基本税率の優先について説明します。
輸入暫定税率
基本税率は、一度定めたら基本的に変更がありません。一方、暫定税率は、法律により、ある一定の期間だけ設定する税率です。恒久法ではないため、期限がくる度に延長を審議します。
なぜ、このような暫定税率があるのでしょうか? ズバリ、日本国内における需給バランスの調整です。
玉ねぎに設定されている暫定税率
下の画像は、玉ねぎの関税表です。赤枠にある「暫定」という欄の所に数字がありますね!この部分が暫定税率です。もし、ここが空欄なら、暫定税率はありません。
暫定税率が存在する理由
税関サイトでは、暫定税率を以下のように記載しています。
一時的に基本税率によりがたい事情がある場合に、一定期間基本税率に代わって適用される暫定的な税率(暫定税率)が定められており、常に基本税率に優先して適用されます。平成25年4月現在433の税率が設定されています。
引用元:税関サイト
説明の通り「一時的に基本税率によりがたい事情がある場合」と設定すると書かれています。この部分をより具体的に確認していきましょう!
2016年8月現在、約500の品目について「暫定税率」があります。どの品目に対して暫定税率が適用されているかは、関税暫定措置法の別表に記載されています。
*一部を表にまとめます。
暫定税率が設定されている品目例
魚 | イカ | ミルク・クリーム | 砂糖 |
バターミルク・ヨーグルト | ホエイ | チーズ | たまねぎ |
乾燥した豆 | えんどう | 小豆 | インゲン |
そら豆 | 小麦・大麦 | トウモロコシ | 米 |
落花生 | 海藻 | こんやく | トマトの加工品 |
パイナップル | コーヒー・お茶 | アルコール | 革製品(原皮・革など) |
段階的に暫定税率を下げている物
暫定税率を設定している品目の中には、年度ごとに暫定率を引き下げている品目があります。最初は平成七年から始まり、平成二十九年にかけて少しずつ関税率が下がっています。
- 肉製品(豚や牛)
- ミルク
- ヨーグルト
- ホヘイ
- バター
- 小麦や大麦
- コメ
- 調整食料品
暫定税率が設定されている品目を考察
それでは、上記の暫定税率が設定されている品目をいくつかピックアップしてみたいと思います。
事例1.たまねぎの暫定税率
玉ねぎは、農家が出荷する価格との調整をしています。2016年現在、北海道産の玉ねぎは、スーパーマーケットで1キロ当たり170円ほどで販売されています。
この価格には、農家の生産費はもちろんのこと、店頭に並ぶまでのさまざまな業者の手数料が含まれています。それらの手数料は、ざっと50%前後と計算ができます。したがって170円の玉ねぎの場合、農家の出荷価格は1キロ当たり90円前後と予想ができます。
下の図をご覧ください。赤枠は、玉ねぎの輸入価格が1キログラム当たり73円70銭を超える物については、無税を設定しています。それ以下価格の場合は、別枠の関税率が設定さています。例えば「課税価格が1キロクラムにつき67円以下のもの」については、暫定税率の部分が「空欄」です。この場合は、協定税率の「8.5%」を適用します。
また、青枠はEPA(経済連携協定)税率です。多くの場合、EPA税率は大きな優遇をしています。しかし、玉ねぎの場合は、優遇措置が少なくなっています。いずれの場合であっても、1キログラムあたり73円70銭をこえる物を無税としていることから、国内価格とのバランスを強く意識していることわかります。
事例2.ヨーグルトの暫定税率
下の画像の青枠はヨーグルトに関する基本税率です。対する赤枠は暫定税率です。「限度数量以内のもの」を基本税率よりも低くしています。このことから、生活を支える上で必要。しかし、必要以上に入れたくないとの考えがわかります。
事例3.小麦の暫定税率
小麦は明らかに必要以上を輸入したくないことがわかります。基本税率で「1キロあたり65円」かかるのに、暫定税率で「無税」または「9.8円/キロ」に設定していることから、その意向を読み取れます。
また、青枠は本来、EPA(経済連携協定)の税率が表示されているところです。小麦に関しては、EPA税率が一切設定されていないことから、小麦に対する「保護的要素」が強いことがわかります。
事例4.ミルクの暫定税率
ミルクの関税も基本より暫定の方が圧倒的に低いです。ただし、これについてもやはり「輸入数量」がコントロールされています。ここから、日本の酪農産業を守りたい意向を読み取れます。
4つの品目例から読み取れること
上記の暫定税率例を見ると、政府が言う「一時的に基本税率によりがたい事情がある場合」の表現には、以下のような目的があることが推測できます。
参考:基本税率と暫定税率 優先は?
基本税率と暫定税率の両方が設定されている場合は「暫定税率」を優先して適用します。
まとめ
暫定税率は、国内流通量が不足して物価が上昇することを防ぐために「一時的」に設定している関税です。この暫定税率があることによって、安いパンやお肉を食べられます。
暫定税率は、基本税率やWTO協定税率よりも優先的に適用されます。暫定税率よりも優先されて適用されるのは「特恵関税」「特別特恵関税」「EPA」などです。
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