貿易の「一問一答コーナー」今回は、純金の輪灯(宗教用具)を輸入するときの免税に関するお話です。
私は、自宅の仏壇に使うために、純金でできた宗教用品を輸入したいと考えています。宗教関係ですから、免税になりますか?
■返答
個人で所有する前提の輸入品には、免税措置はないです。他の貨物と同じく、一定の範囲を超える場合は、輸入消費税、原産国によっては、関税がかかります。
例えば、宗教用具といいつつ、資産保全等が目的の場合は、望む形にはならないので諦めましょう!
純金の輪灯(宗教用具)を輸入する場合の税金の仕組み
日本国内では、宗教法人の宗教活動は、非課税です。この理由から、京都市は、財政がうまくいかず、第二の夕張になるのでは?とも言われています。
さて、そんな宗教、実は、輸入でも優遇措置があります。それが今回の質問と関係してきます。
質問者様の状況整理
まずは、ご質問者様の状況を整理します。
- 海外から純金でできた宗教用具を輸入したい。
- 消費税等の免税措置がないかを知りたい。
- 輸入の目的は、個人使用
- 輸入後に、自宅の仏壇に飾る目的
- どこかの宗教法人等への寄付でもない。
この条件の下、輸入諸税に関する条件と照らし合わせて確認していきます。
関係する法令
今回の商品を免税で輸入できるかを検討していきましょう!主に4つの仕組みが関係します。
- 個人使用時の減税措置(関税定率法)
- 無条件免税(関税定率法)
- 特定用途免税 (関税定率法)
- 輸入品の内国消費税の法律
1.個人使用時の課税価格低減措置(関税定率法)
個人使用目的×海外通販で購入した物は、購入代金の0.6倍が課税価格(税金をかける対象)です。
例えば、アメリカの通販サイトで、日本円換算で一つ1000円の物を購入した場合は、600円に対して、輸入消費税又は関税がかかります。いわゆる「0.6掛けルール」です。
では、このルールは、純金でできた「輪灯・オリン等の宗教用具)」に適用できるのでしょうか? その答えは、関税定率法基本通達4の6-2にあります。下の赤字部分をご覧ください。
⑵ 一般消費者が通信販売により輸入する貨物、外国に所在する知人に購入依頼して輸入する貨物等をいう。
⑶ 「当該貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格」とは、本邦の卸
売業者が一般的に本邦における再販売等の商業目的のために当該貨物と同種の貨物を
当該外国において卸取引の段階で購入するとした場合の価格をいい、「海外小売価格
×0.6」により算出するものとする。ただし、金、白金その他の国際相場価格がある
物品等であって、通常、卸取引の段階と小売取引の段階において、これらの価格の間
に相当の差異がないと認められる物品については、この限りでない。関税定率法基本通達:4の6-2
今回の輪灯は、材質が純金であるため、前半部分の「国際相場」の部分に抵触します。ただし、完全に0.6倍が適用できないわけではなく、卸取引の価格と小売り取引の価格に相当な差があれば、適用できる可能性がありそうです。
例えば、金の単価が1g当たり、8000円。これを1kg使った造形物(商品)が9000,000であれば、ほぼ純金の価格=造形物だと考えられるでしょう。しかし、同じく1kgの金を含むとしても、1,5000,000の造形物(商品)であれば、卸取引と小売り取引との価格に差があるとも考えられます。
どの程度を「差」とみなすのかは、税関側の判断にゆだねている部分が大きいようです。もし、輸入を実行する場合は、必ず関税監査官等に相談しましょう。関税監査官の答えに不服があるときは、再調査の請求、審査請求等の手段もあります。
価格が高い純金商品は、輸入前に相談をした方が良いです。
2.関税定率法(無条件免税)
次に関税定率法14条の無条件免税を適用できるのか?です。これについては、定率法14条-18の部分に以下の記載があります。仮に輸入予定の輪灯が一万円以下であれば、一万円以下免税ルールを使えます。(金は、一万円以下免税ルールの除外品ではない)
課税価格の合計額が一万円以下の物品(本邦の産業に対する影響その他の事情を勘案してこの号の規定を適用することを適当としない物品として政令で定めるものを除く。)
引用元:関税定率法14条-18項
輸入予定の輪灯が一万円以下なら免税です。(輸入総合計価格)
3.特定用途免税(関税定率法)
次は、今回の本題ですね!国内にある宗教法人への優遇措置は、輸入にも存在します。それが「関税定率法15条-5 儀式用又は礼拝用の寄贈物品の特定用途免税」です。
特定の用途に使うことを前提とした免税措置です。この特定用途免税の15-5で儀式用又は礼拝用への寄贈物品が規定されています。
では、今回の輸入者さんのケースで考えてみましょう。
まず、輸入者さんは、個人使用で輸入し、ご自宅の仏壇等で使うことを想定しています。そして、特定の宗教団体等の構成団体員(運営する側)ではないため、特定用途免税の適用は難しそうです。
「宗教団体」とは、宗教の教義を広め、儀式行事を行い及び信者を教化育成することを主たる目的とする次に掲げる団体をいう。
「儀式又は礼拝の用に直接供する物品」とは、上記(1)の宗教団体において式典、祭典その他の行事又は礼拝の用に直接供される物品で、規則第5 条に掲げるものをいう。
おそらく、特定用途免税を適用できる可能性があるのは、次の2つのパターンだと思います。
- 宗教団体の信者が、所属する宗教団体に寄贈することを示す証拠書類を取り揃える。
- 宗教団体の運営者側が、自らの祭殿に使用するために輸入する
なお、宗教団体の定義、物品の使用目的の定義、対象となる宗教用具は、関税定率法15条-5に記載されています。もし、これらの条件に該当する場合、又は、該当するように輸入すれば、消費税は免税扱いです。いずれにしろ、要相談です。
宗教団体は、純金でできた様々な物品(宗教用具の定義にあてはまるもの)を消費税無税で輸入できる可能性が高いです。そういえば、私の知り合いにも600万円相当のおりんを持っている人がいましたね…汗
4.輸入品の内国消費税の法律
最後は、上記1~3を包括的に適用する仕組みです。輸入消費税の徴収に関する法律によると、一万円以下免税ルールに該当する商品、関税定率法15条の2に該当する商品を輸入する場合は、消費税は免税と規定されています。
次の各号に掲げる課税物品で当該各号に規定する規定により関税が免除されるもの=消費税を免除
関税定率法第十五条第一項第二号から第五号の二まで、第九号又は第十号(特定用途免税)に掲げるもの(同号に掲げる貨物にあつては、その用途を勘案して政令で定めるものに限る。)
今回は、純金でできた宗教用具に関する免税措置を検証してみました。上記の法律上、個人の人が純金でできた宗教用具を輸入しても免税にできる可能性は低いです。
例えば、宗教用具として輸入することは建前で、本当は、資産保全(消費税を免税にする)が目的等の場合は、再考した方がいいと思います。普通に課税される可能性が高いです。
もし、あなたが宗教法人や宗教法人の関係者であれば、特定用途免税を活用して、免税で輸入できる可能性は高いです。少なくても個人が輸入するケースよりは、適用できる可能性は高いでしょう。
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