この記事は、リインボイス、スイッチインボイスの役割と基礎的な知識、EPAでリインボイスを使う場合の注意点等をご紹介しています。
海外との貿易をするときは、何をいくらで購入したのかを証明するために「インボイス」という書類を使います。世界各国の税関(日本税関を含む)は、このインボイスを基にして、関税や消費税などの課税をしています。今日、お伝えするのは、そんなインボイスの一種「リインボイス」です。
インボイスの頭に「リ」がついていることからわかる通り、このインボイスは「再発行されたもの」です。なぜ、インボイスを再発行するのでしょうか?
リインボイスとは?
一般的な貿易取引だと、輸出者と輸入者の二社の間で売買契約がなされます。この契約の結果、輸出者から輸入者へ取引明細としてインボイスが発行されます。インボイスには、次のような項目が記載されています。
- どこの国の人(会社)から購入したのか?
- 何を購入したのか?
- いくつ購入したのか?
- いくらなのか?
などです。輸入者は、これらの項目が記載されてているインボイスを輸出者から入手した後、輸入の申告を行う税関へ提出します。関税は、このインボイスやその他の書類をもとにして計算していきます。
- 輸出者→ インボイスを発行。
- 輸入者→ 発行済みのインボイスを輸入税関に提出して納税
これが一般的な貿易取引です。しかし、実は、この二者以外も貿易取引に関係するときがあります。それが「三国間貿易」です。
三国間貿易とリインボイスの仕組み(意味)とは?
とは、輸出者と輸入者の他、第三国がその間に入る取引のことです。なぜ、第三者が間に入るのでしょうか? それを知るために、まずは以下の図をご覧ください。
三角形の形をしています。下の左右が輸出者と輸入者。三角形の頂点部分には、第三国が入ります。実は、この第三国は、貿易代金の決済をするためだけに存在します。物を輸出したり、輸入したりなどは一切おこなわず、言うなら書類の横流しだけをする会社です。物自体は、輸出者ら輸入者へ直送される点がポイントです。三国貿易を具体的に説明すると、次の通りです。なお、説明上、この第三国の会社を「第三国」と表します。
お金は、輸入者→仲介者→輸出者と流れます。
輸出者から仲介者に向けられたインボイスは、仲介者が受け取ります。その後、仲介者は、自らのマージンをのせたインボイスを輸入者に対して発行します。このインボイスを「リインボイス(インボイス・スイッチ)」と言います。
- 第三国は、輸出者から物を購入します。ただし、自国へ輸入するためではなく、別の国へ送るためです。上記の図であれば、輸出者から輸入者です。また、このとき発行されるインボイスは、輸出者発行の元、第三国あてになります。
- 次に、第三国は、輸入者に対してインボイスを発行します。つまり、インボイスの発行主は、第三国。宛先は、輸入者です。そして、このとき、インボイスの値段を変更して、自身のマージンをのせたものにします。(これがリインボイスです。)
- 輸入者は、第三国が発行したインボイスを基にして輸入する税関へ申告をします。
この1~3のことを三国間貿易といいます。そして、リインボイスとは、ステップ2.第三国の会社がインボイスの価格を書き換えたものを指します。リインボイスは、第三国が基のインボイスに自社の利益を上乗せした物です。これだけを見ると、輸出者と輸入者からすれば「なんと、ヒドイ商売をしているんだ!」と思うかもしれません。しかし、この第三国は、別にマージンだけを抜いているだけではないのです。
輸出者と輸入者が新しく取引を始めるときの信用不安の軽減や、その他、リソースなどを仲介することにより提供している側面もあるのです。だからこそ、輸入者と輸出者は、マージンを抜かれているとわかりつつ、このような三国間の取引を望むところが多いです。また、リインボイスを使うことにより、次のようなメリットもあります。
リインボイスのメリット
リインボイスを作成することにより、輸出者や輸入者、どちらにとっても「為替差損」を低くできる可能性があります。
例えば、東南アジア諸国を考えてみましょう。中国、シンガポール、タイとの三国間で貿易をします。それぞれの関係性は、次の通りです。
中国 | 輸出者 |
シンガポール | 第三国(仲介者) |
タイ | 輸入者 |
物流(物の動き)は、中国からベトナム。
商流(決済・書類の動き)は、中国→シンガポール→ベトナムです。
この場合、中国からシンガポールに向けたインボイスの決済を中国人民元ベースで行います。次に、シンガポールからタイに向けたインボイスの決済をアジア現地通貨ベースで行えば、輸出者と輸入者は、双方とも為替差損(為替の変動による損)を少なくできます。このようなメリットがあるため、マージンを抜かれつつも「リインボイス(大枠では三国間貿易)」を受けいれている輸出者や輸入者が多いのです。
「EPA貿易」三国間貿易×リインボイスの仕組み
では、EPA(自由貿易)での三国間取引を考えてみましょう!自由貿易を行う上で、重要なことは、貨物に関する原産性を証明する書類(特定原産地証明書)を輸入国税関に提出することです。貨物の生産国で作成された特定原産地証明書を提出しないと、輸入するときに、現地の関税をかけられてしまうからです。
ただ、すでに説明した通り、三国間貿易の書類は、常に仲介者を通して行われます。そして、実際に、輸入者が手にするインボイスは、輸出者が発行した書類ではなく、仲介者が発行したインボイスになりますね。
つまり、輸入者に書類が回ってきたときは…
- 仲介者が発行したインボイス
- 輸出者が取得した特定原産地証明書
の2つがあります。よろしいでしょうか? 特定原産地証明書を取得するのは、輸出者です。でも、インボイスの名義は、仲介者になっているのです。二国間貿易の場合であれば、輸出者名義の特定原産地証明書とインボイスになっています。しかし、三国間貿易では、原産地証明書とインボイスの発行人の名義が異なっています。この点は、どのようになるのでしょうか?
実は、この場合であっても、EPAを利用することはできます。
このような三国間貿易でEPAを活用するときは、
- 貨物の製造国で発行した特定原産地証明書(輸出者名義)
- 三国間の仲介をした会社が発行するインボイス
の2つを現地税関に提出することにより、二国間貿易のときと同じようにEPAを活用できます。なお、この貿易の形として似ているのに「バッグ・トゥ・バッグ」があります。これは、第三国(仲介者)が物を含めて仲介する方法です。この場合は、EPAの直送規定の関係から、認められている協定と認められていない協定があります。
まとめ
- リインボイスは、第三国がマージンを上乗せして発行したインボイス
- リインボイスのメリットは、輸出者、輸入者ともに為替差損を最小にできる。
- このリインボイスの仕組みをグループ内企業に活用すると、特定のグループ会社に為替差損を押し付けられます(コントロール可能ということ)
- EPA×第三国貿易のときでもEPAは使えます。
- ただし、条件としては、輸出者から発行される特定原産地証明書があること。仲介者名義のリインボイスがあることの2つです。
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