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L’Oréal対eBay判決に学ぶ|オンラインマーケットプレイスの商標差止と責任範囲(CJEU 2011)

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オンライン・マーケットプレイスでの商標侵害の差止範囲

  • L’Oréal v eBay事件でEU裁判所は将来の商標侵害防止を含む差止を認めた。
  • EEA外品や無包装品販売、商標広告利用も差止対象とされた。
  • プラットフォームは迅速対応義務を負うが、常時監視は不要とされた。

事件の概要(誰と誰の越境ECトラブルか)

  • 商標権者(原告):L’Oréal SA(フランス)ほか欧州グループ会社
  • プラットフォーム運営(被告):eBay International AG/eBay Europe Sàrl(ルクセンブルク)/eBay (UK) Ltd ほか
  • 裁判所・日付:EU司法裁判所(CJEU)大法廷、2011年7月12日、事件番号 C‑324/09[F1]
  • 要旨(25字以内):中間者差止に将来防止を含め可[F1]

本件は、eBay上でEEA(欧州経済領域)外向け商品やテスター品・無包装品がEUの消費者に向けて販売・広告された事案です。L’Oréalは、こうした出品が商標の機能(出所表示・品質保証)を害するとして差止を求めました。またeBay自身が検索広告(AdWords)でL’Oréalの商標キーワードを購入し、ユーザーをeBayサイトの出品に誘導していた点も問題となりました[F1]。

事件の背景と主要争点

1)EEA外向け・無包装・テスターの扱い

EEA外の市場を想定した商品を、EUの消費者に意図的にターゲットして販売・広告した場合、権利者は差止めを求め得ます。とくに化粧品のように必須表示が欠落する無包装品・テスターの再販売は、商標機能を損ないうるとして差止対象になり得ると判断されました[F1]。

2)プラットフォームの商標キーワード広告

eBay自身が商標を含む検索広告を出稿し、消費者をeBay内の出品へ誘導していた場合、その広告表示が出所の誤認(権利者の公式と誤解)を生むなら、権利侵害として差止可能と示されました[F1]。広告の文言や表示の仕方が重要です。

3)ホスティング免責(電子商取引指令14条)

プラットフォームは、ユーザーが投稿・出品した情報について、一定の条件を満たせばホスティング免責を受けられます(違法を知った後に迅速に削除等)[F5]。しかし、出品の提示・推奨・最適化に事業者が積極的に関与するなど能動的役割を果たすと、免責の対象外になり得ます[F1]。

4)中間者差止の射程(IP執行指令11条)

裁判所は、侵害に使われたサービス提供者(ここではプラットフォーム)に対し、将来の侵害防止まで含む差止(injunction)を命じ得ると判示しました。ただし、一般監視義務は課せられません(電子商取引指令15条)[F1, F4, F5]。そのため、比例原則の範囲で、反復侵害者の停止や出品者の識別性向上(KYC強化)など個別・具体的措置が想定されます[F1]。

SMEにとっての課題

出店者(販売者)の立場

  • EU向けの「ターゲティング」が鍵。商品ページの言語、通貨、配送可否、広告の地域設定などがEU消費者を狙っている客観的事情として評価され得ます。EEA外仕様の在庫をEU向けに表示・広告すれば差止リスクが上がります[F1]。
  • 無包装・テスターの再販は危険。表示欠落は品質保証機能を壊し、差止・削除につながりやすい領域です[F1]。

権利者(中小ブランド)の立場

プラットフォームに対し、将来の侵害防止まで含めた具体的な差止措置(反復侵害者の停止、識別性の向上、出品の再確認フローなど)を求める道が示されました[F1, F4]。

自社でプラットフォームを運営するSMEの立場

  • 出品の内容・表示に能動的に関与していると評価される設計(例:内容の最適化、推奨、プロモーションの深い関与)は、免責喪失を招くおそれ。通知(notice)を受けた後の迅速な対応フローの実装・記録が重要です[F1, F5]。
  • ただし、常時の包括的監視を課すことは指令で禁止。個別・具体的で比例的な措置にとどめることが前提です[F5]。

貿易実務者への提案

1)EU向け販売のターゲティング管理

配送先・言語・通貨・広告地域の設定を見直し、EEA外向けSKUをEU非対象に明確化。サイトや広告の地域設定のスクリーンショットを保存し、「EUを狙っていない」証拠を残します[F1]。

2)化粧品等の包装・表示チェック

無包装・テスター品の再販禁止を社内ルール化。入荷・出荷時に必須表示の有無を点検するチェックリストを運用します。改善記録をロギングしておくと、後日の説明が容易です[F1]。

3)広告テキストの“出所明確化”

「商標+公式」を想起させる表現は避け、第三者マーケットプレイス上の出品であることを明示。出所混同を招きにくい定型文をテンプレート化し、審査・承認フローに組み込みます[F1]。

4)反復侵害者対策とKYC(プラットフォーム運営者)

再犯時の停止・制限、販売者の識別性確保(KYC/再確認)、迅速削除を規約と運用に落とし込みます。一般監視義務と誤解されないよう、対象・手順・基準を具体化します[F1, F4, F5]。

5)“積極的役割”に当たらない設計チェック

出品ページの自動最適化や推薦機能の関与度を棚卸し。個々の出品内容に深く介入する設計は免責喪失リスクがあるため、通知後の迅速対応と透明な手順を前面に出します[F1, F5]。

中小企業が今すぐ実践できるチェック

  • 商品ごとにEU対象/非対象、配送条件、広告地域を明示し、画面を保存する[F1]。
  • 無包装品やテスターの受入・出荷をチェックし記録。差戻し時に説明できる体制を整える[F1]。
  • 広告テンプレートを改訂し、出所を明確化する定型文を作成。事前審査をルーチン化する[F1]。
  • プラットフォーム規約を改定し、反復侵害者の停止、KYC強化、迅速削除を条文化。一般監視とならない線引きを明記する[F4, F5]。

まとめ

  • L’Oréal v eBay(C‑324/09)は、オンライン・マーケットプレイスに対し、将来の侵害防止を含む差止を認めつつ、一般監視義務は禁止というバランスを示しました[F1, F4, F5]。
  • EU向けのターゲティング・包装表示・広告表現が実務の分水嶺。能動的関与が強い設計は免責喪失につながる点に注意。
  • SMEは、設定の証拠化、表示チェックの運用、広告テンプレの整備、規約・手順の明確化で、合法と違法の境目を自社でコントロールできます。]

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

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