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EU越境ECの裁判管轄「指向」基準を解説|Pammer/Hotel Alpenhof判例と実務対応

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ウェブ表示が「EUの消費者に向けられているか?」

  • CJEUは「サイトが見えるだけ」では足りず、広告・言語・通貨・レビュー等の総合判断で“指向”を認定。
  • EU消費者に向けたシグナルがあれば、消費者は自国裁判所で事業者を訴えられる。
  • 日本企業はEU向けか否かを設計・証拠化し、管轄リスクを選べる体制整備が必須。

事件の概要

  • 消費者:オーストリア在住の個人(Pammer)、ドイツ在住のHeller
  • 事業者:ドイツの船会社(貨物船旅行の手配)/オーストリアのホテル事業者
  • 裁判所・事件番号:EU司法裁判所(CJEU)大法廷、2010年12月7日判決、C‑585/08 & C‑144/09(併合)[F1]
  • 要旨(25字以内):“指向”あれば消費者地で提訴可[F1]

本件は、自社サイトの表示・設定が他国の消費者を「狙っている(directed to)」といえるかが争点です。CJEUは、単にサイトが閲覧できるだけでは不十分で、いくつかの客観的な事実がそろえば「指向」と評価され、消費者は自国裁判所で訴えれると判示しました(旧ブリュッセルI規則=規則44/2001の第15条1(c)の解釈)[F1, F3]。

なぜ、揉めた?事件の背景と主要争点

論点は“指向(directed activity)”の有無です。CJEUは次のような例示的基準を示しました(※全部が必要ではなく、総合評価)[F1, F2]。

  • 国際性の明示(例:海外旅行・国境越えサービスを前提にした表示)
  • 国際電話コード付きの連絡先の記載
  • 他国向けトップレベルドメインの使用(例:.de、.eu、.comなど)
  • 他国から現地への行き方(アクセス案内)の掲載
  • 多言語対応や他国通貨での予約・確認が可能
  • 他国顧客のレビューや利用事例の掲載(国際的顧客基盤の示唆)
  • 他国消費者を狙った検索広告の購入(例:特定国向け広告の入札)

逆に、単に「誰でも閲覧できる」「メールアドレスを掲載」「自国内で一般的な言語や通貨を使う」だけでは「指向」とは言えないと判断されました[F1, F2]。

判断の骨子

  • 結論の枠組み:消費者契約で、事業者が消費者の居住国を「指向」していれば、消費者は自国で事業者を訴えれる(特別裁判管轄)。これは旧規則44/2001第15条1(c)に基づき、現行のブリュッセルI改正規則も同趣旨です[F1, F3]。
  • 「指向」は総合判断:個別の表示や広告設定だけでなく、全体の積み上げで判断。広告ターゲティング、多言語対応、多通貨予約の導線がそろうと「指向」と評価されやすくなります[F1]。
  • 単なるサイト公開では不十分:「サイトが存在する=指向」ではない、と明確化。単に閲覧できるだけではEU各国で訴えられる根拠にはなりません[F1, F2]。

日本の実務者にとっての課題

  • EU向け販売の覚悟の線引き:EU消費者に売る設計(多言語・EUR決済・EU配送・EU向け広告)を採れば、消費者の居住国での訴訟リスクを受け入れる前提が必要です。逆に受け入れないなら、そのシグナルを意図的に抑える設計が求められます[F1, F3]。
  • 広告運用の影響が大きい:国・地域を絞った検索広告は「指向」の有力事情。越境広告の入札設定(地域・言語・通貨)が管轄リスクを左右します[F1]。
  • “証拠化”の重要性:後日の立証のため、設定画面のスクリーンショットや広告配信レポートを保全しておくことが、指向/非指向の説明材料になります[F1, F2]。

貿易実務者の学びポイント

1)EUを狙うかどうかを明確化する事

  • 狙う場合:多言語対応(EN/FR/DEなど)、EUR価格、EU配送、EU向け広告を整備。消費者地で訴えられる前提で、返品窓口・約款・カスタマーサポート体制をEU仕様に。免責規定で逃れるのは困難[F1, F3]。
  • 狙わない場合:EU配送不可を明示、通貨・言語を限定、EU向け広告を停止、.jpなど国内TLDを一貫使用、国際電話コードは非表示。単なる告知だけでは不十分で、実際の導線設計が必要[F1]。

2)広告・購入フローの点検

  • 広告:配信地域や入札対象国を棚卸し。EUを含めば「指向」の証拠になり得る。
  • 購入フロー:他国通貨での価格表示や決済、他国語での通知がONなら「指向」寄り、OFFなら「非指向」寄りの材料[F1]。

3)国際顧客レビューの扱い

国別タグ付きの導入事例やレビューは「国際的顧客基盤」と見なされ指向要素になる可能性あり。掲載方法を社内方針として管理[F1]。

4)連絡先の書き方

国際電話コード(+81など)の強調は「指向」の一事情になり得る。必要最小限にとどめつつ、EC電子商取引指令5条の「迅速な連絡手段」要件は満たすよう調整[F5]。

5)社内でのリスク

管理 四半期ごとにサイト設定(言語・通貨・配送・広告)を台帳化し、画面保存。変更履歴を残し、総合判断に耐える証拠とする[F1, F2]。

中小企業が今すぐ実践できるチェック

  • 戦略の明文化:EU配送・価格・言語・広告の設定を一覧化し、狙う/狙わないを経営判断として文書化[F1, F3]。
  • 広告管理:広告アカウントの地域設定レポートを毎月保存。EUへの配信有無を証拠として残す[F1]。
  • 購入フロー確認:予約・購入時のスクリーンショットを四半期ごとに保存。他国通貨や言語対応の有無を記録[F1]。
  • レビュー方針:国際顧客レビューの扱いについて社内ポリシーを策定し、アピール方法を明確化[F1]。
  • 連絡先基準:法的要件を満たしつつ、国際電話コードの強調を避けるなど過度な越境訴求を抑える社内基準を設定[F5]。

まとめ

  • Pammer/Hotel Alpenhofは、越境ECの「どこで訴えられるか」を決める“指向”基準を明確化しました。
  • 可視性だけでは足りず、広告・言語・通貨・ドメイン・レビュー等の積み上げで判断されます。
  • EUを狙うならEU仕様の体制整備、狙わないなら指向シグナルの抑制と証拠化が、中小企業の現実解です[F1, F3]。

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

FACTリスト(英語一次資料)

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