外国の商品を日本へ輸入するときは、税関、船会社などに必要な書類を出します。輸入手続きで使う書類は、外国にいる相手と取り交わした書類です。輸入者は、この書類を利用して、税関へ申告します。(税関用に特別な書類を用意するわけではありません)
提出する輸入書類は、様々なものがあります。主な物としては、インボイス(仕入れ書)やパッキングリスト(梱包明細書)などがあります。この他、原産地証明書などもあります。これらが税関へ提出する書類です。
この他、船会社などへ提出する書類もあります。代表的な物は「B/L Instructions(旧:ドックレシート)」です。船会社へ貨物を預けたときに発行される「船荷証券(B/L)」の基になる書類です。このように輸入書類といっても様々な物があります。輸入ビジネスをするときは、提出する先の機関と、提出する書類の種類を覚えることが重要です。
そこで、この記事では、輸入で必要になる書類をご紹介していきます。なお、この記事の前提として「商業目的での輸入であること」「輸入手続きを通関業者へ代行依頼していること」としています。
輸入書類の流れ
輸入で必要になる書類
輸入手続きで必要になる書類は、税関用と船会社用の2種類です。税関用は、輸入貨物の許可を受けるための書類です。一方、船会社は、貨物を引き取るための書類です。
1.税関へ提出する書類
税関から輸入許可を得るには「輸入書類」を出さなければいけません。輸入関係書類と言っても特別な物を用意する必要はありません。輸出者が作成してくれる書類をそのまま提出するだけです。代表的な書類が次の5つの書類です。もし「特恵関税(関税が安くなる制度)」を利用するときは、あわせて「特定原産地証明書(貨物の原産地を示す書類)」も提出します。
書類名 | 作成者 |
インボイス | 輸出者 |
パッキングリスト | 輸出者 |
アライバルノーティス | 船会社 |
B/L(船荷証券) | 船会社 |
絵柄(写真・イラストなど) | 輸入者や輸出者 |
各書類の説明は、以下の通りです。
インボイス
輸出者から発行される書類(仕入れ書)です。この中に「どんな貨物をいくらで売買契約したのか?」が書かれています。税関への輸入申告のときは、インボイスに記入されている金額に必要な費用をプラスして、輸入申告をするルールになっています。(輸入申告は、CIF価格に変換して申告します。)
詳細:インボイスとは?
パッキングリスト
貨物の梱包明細書です。「このコンテナには、●●という商品が56ケースあります」など、貨物の梱包数を記載した書類です。税関検査などで、この書類以外の商品が見つかると「無申告」扱いになります。「コンテナの中に入れてしまえばわからない」との考えは通じません。コンテナの中へ入れる場合は、傘一本たりとも申告漏れがないようにしなければなりません。
詳細:パッキングリストとは?
B/L(船荷証券:ふなにしょうけん)
輸出国において、輸出者が船会社に貨物を預けると発行される書類です。輸入国で船に預けた荷物を引き取る場合は、このB/Lの原本が必要です。輸入者は、この書類の原本を輸入国側で差し出すことによって貨物を引き取れます。しかし、税関手続き上は、アライバルノーティスだけで申告ができます。B/Lが必要になるのは、EPA(関税ゼロ貿易)などを利用するときです。
詳細:船荷証券とは?
アライバルノーティス(船の到着を知らせる書類)
日本へ入港する1日~2日前に船会社が発行する「本船の入港通知」です。この書類が発送されると、いよいよ船が日本へ到着することを示します。このタイミングで予備申告を行い、なるべく早めに税関審査が終わるように手続きができます。税関の審査が終ってしまえば、日本の港へ貨物が搬入されたら段階で輸入許可になります。
絵柄・イラスト
申告している貨物の概要がわかるように写真やイラストが必要です。手書きでも良いですし、何かのカタログのコピーでも構いません。
ここまでが税関へ提出する書類となります。次に、日本側の船会社へ提出する書類をご紹介します。
2.船会社に提出する書類
船会社(代理店)に提出する書類は、船荷証券の原本、LG(銀行の信用状)などがあります。これらの書類と必要なチャージ(アライバルノーティスに記載)を支払えば、港で必要になる「D/O」と呼ばれる書類を受け取れます。もし、船荷証券の中に「サレンダー」の印が押されているときは、アライバルノーティスに記載されている金額を支払うだけです。
1.アライバルノーティス(船の到着を知らせる書類)
アライバルノーティスは、船の到着を知らせるために船会社が発行する書類です。ここには、船賃や燃油サーチャージ、CTHなどの港での作業料金が記載されています。このアライバルノーティスに記載されている金額を支払えば、D/Oが手に入ります。この書類を港のヤードや倉庫に持っていけば、貨物を引き取れる仕組みです。ただし、このD/Oをもらうためには、B/Lの原本が必要かどうかが重要になります。
2.B/L(船荷証券)
輸出国側で輸出者が船会社に貨物を差し入れるとB/Lが発行されます。このとき、輸出者が発行されたB/Lを船会社に戻すと「サレンダー」となります。この状態であると、日本側でB/L原本を差し出す必要はありません。この場合、アライバルノーティスの金額を支払ってしまえば、D/Oを入手できます。(B/L差し入れ不要)
一方、この逆で輸出国側でB/Lを戻していなければ、日本側でB/Lの原本が必要になります。この場合、輸出者は、日本側のD/O交換に間に合うように、貨物とは別の輸送方法(クーリエ)で、B/Lの原本を輸入者へ送付する必要があります。この作業の連携ができていないと「B/Lがないから貨物を引き取れない」という困った状況になります。
*サレンダーについて知りたい方は、B/L原本がないのでD/Oの交換ができないといわれた場合の原因をご覧ください。
ここまでの説明で各セクションごとに必要になる書類を説明してきました。ここからは、それら書類がどのような動きをしていくのか、輸出国側から順に確認していきます。
輸出国側の書類の流れ
1.船積み後、B/Lを入手します。
輸出国で貨物の積み込みを終えると、船会社からB/L(船荷証券)を受け取ります。このとき、B/Lを船会社へ差し戻せば、B/Lが「サレンダー」になります。この場合、日本側で貨物を引き取るときにB/Lの原本は不要です。
一方、輸出国側でB/Lを戻さないのであれば、輸入国側で貨物を引き取るときにB/Lの原本が必要です。輸出者は、輸入者との決済が終わった段階で、速やかにB/L原本を輸入者へ発送します。このときの輸送方法は「クーリエやEMS」などのスピード配送を選ぶことが多いです。また、輸入者は、この書類の配送を追跡できるように「荷物の問い合わせ番号」をもらいます。
2.輸出者から輸入者へ書類を流す
輸出者は、輸入者に向けて、シッピングアドバイス、インボイス、パッキングリスト、B/Lをファックスします。ここまでで輸出者側で行うべき書類の流れは終了です。
日本側の書類の流れ
次に日本側での書類の流れを説明していきます。日本側では、主に2つの流れが同時に動いていきます。
- 税関への手続き
- 船会社への手続き
税関への手続きは輸入許可を受けるための物です。一方、船会社への手続きは「船から貨物を受け取る」ための物です。これら2つの手続きは、相互に関係しないため、同時に進めていきます。
なお、通常であれば、通関手続きも船会社への手続きも通関業者が代理で行ってくれます。あなたが何かの手続きをする必要はありません。では、船会社(代理店)への手続きを詳しく見ていきましょう!
船会社へ提出する書類の流れ
ここでの手続きは、船会社から貨物を受けとるための「準備」です。この準備を終えると、税関の輸入許可後に貨物を引き取れるようになります。ちなみに、この作業のことを「D/O交換」と言います。ちなみに、D/O交換は、通関業者がサービスで行ってくれます。
1.船会社(代理店)にB/L原本を差し入れる
先ほど述べた通り、輸出国側でB/Lを差し入れていない場合は、輸入国側でB/Lの原本が必要です。
2.アライバルノーティスに記載されている金額を支払います。
B/Lの原本を差し入れるときに、アライバルノーティスに記載されている費用を支払います。費用を支払うと、船会社からD/Oと呼ばれる貨物受け取り用の書類が発行されます。運送会社は、この書類を持ってコンテナターミナルや保税倉庫に貨物を受け取りにいきます。
通常、D/Oの交換は、輸入者の代理である通関業者がサービスとして提供しています。通関業者がアライバルノーティスに記載されている諸チャージを立て替え払いしてD/Oを取得。この費用を後日、通関費用と合わせて請求しています。したがって、輸入者の人は、D/O交換といっても、何か特別なことをするわけではありません。
*最近は、D/O自体もレス化(紙無し発行)されているため、お目にかかる機会は少ないです。
関連記事:海上運賃の内訳とは!?
税関へ提出する書類の流れ
1.輸出者から輸入書類を受け取ります。
輸出者からは、インボイス、パッキングリスト、B/LなどをFAXで受け取ります。ただし、FAXで受け取ると、書類の字がつぶれていることが多いため、あまりお勧めしません。少しでもきれいな書類を受け取るために、書類をPDFにした後、Eメールなどで送付した方がいいです。
2.受け取った輸入書類を通関業者へファックスします。
1番で受け取った輸入書類を通関業者へFAXで送信します。基本的に税関への書類は、すべてコピーでかまいせん。よくあることとして、通関業者に輸入書類の原本を送ってくる人がいます。輸入書類には保管期限がありますので、そもそも通関業者へ送るのは間違いです。輸入書類は、コピーで十分です。
通関業者はファックスなどで受け取った書類をもとにして、輸入申告のための書類準備を進めていきます。通関業者へ依頼する場合、あなたが行うのはここまです。ここから先はすべて通関業者が代理で行ってくれますので、あとは納品を待つだけです。
3.船会社からアライバルノーティスが届く
本船が日本へ入港する直前になると、アライバルノーティスが届きます。このとき「ETA(入港日)」の部分に本船が入港する日がのっています。実は、この時点で商品の納品日をおよそ確定することができます。
あなたがコンテナで輸入している場合は、入港日の翌日以降が納品日です。混載便で輸入している場合は、入港日の翌々日以降が納品日になります。この納品日は、輸入実績や船会社との契約(個別搬入など)によっても異なります。後述の「税関検査」が確定すると、予定納期より大幅に遅れる可能性もあります。関連:搬入があがるとは?
では、どの時点で税関検査があるのか、ないのかわかるのでしょうか?
通関業者は、アライバルノーティスが到着したら予備申告をします。予備申告をした瞬間「審査区分」が判明します。これは、あなたの過去の輸入実績や違反事例などを基にして、機械判定によって決められます。このとき、書類の区分が「3」であれば、その時点で税関検査が確定します。ケースによっては、区分3であっても検査が取り消しになることもあります。しかし、多くの場合、ほぼ確定だと考えておいた方がいいです。
つまり、この時点であなたの納品予定日は、延期になる可能性が高くなります。必要であれば、納品先へ税関検査にあたった旨を伝えておくことが理想です。多くの場合、税関検査による遅延であれば「わかりました」の一言で済むお話です。しかし、税関検査による納品延期は仕方がないにしろ、その旨をできるだけ早く伝えることがあなたの信頼へとつながります。
関連:税関検査とは?
4.本船から荷物がおろされる。
船からコンテナなどが降ろされて「荷物の搬入」が完了すると、上記の予備申告で区分「1」や区分「2」の人は、輸入許可になります。区分「3」の人は、税関検査の日付を決めて検査を実施します。この検査で問題がなければ、輸入許可にいたります。
まとめ
輸入書類の流れを輸出国側から輸入許可に至るまで紹介しました。普通の輸入者としての立場であれば、今回の内容はほとんど通関業者に任せられます。しかし、流れを理解した上で任せることと、理解しないまま任せるとでは、あなたと通関業者の力関係、つまり交渉力が変わってきます。そのため、浅くても広く理解することが大切になります。
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