リチウムイオン電池を内蔵する製品を国際輸送するときは、様々な規制(国連38.3、IATA、IMDGなど)があります。海上輸送、航空輸送ごとに梱包方法、規格等があり非常に細かいです。
そこで、この記事では、初心者向けにリチウムイオン電池を国際輸送するときに必要な知識をご紹介していきます。(SP188・特別規定を含めて解説)なお、実際に国際輸送を実行する際は、危険物輸送が得意なフォワーダーに相談をしましょう!
SP188×リチウムイオン電池の海上・航空輸送入門
リチウムイオン電池の危険性
スマホなどの小型家電に搭載されるリチウムイオン電池。身近な存在であるため、ついつい気軽な気持ちで輸送依頼しがちです。しかし、その流行る気持ちは少しお待ちを。リチウムイオン電池の国際輸送には、加熱や衝撃等による発火・重大事故が発生するリスクがあります。
そのため、国際輸送上、リチウムイオン電池は、危険物に指定し、梱包方法や品質基準等を定めています。ただし、リチウムの内、一定の基準以下の物は、SP188により危険物に該当しないです。
例えば、日本海事検定協会の「船舶による危険物の運送基準等を定める告示 別表第一表」によると、以下の単電池又は、組電池は、危険物に該当しないとされています。この場合は、SP188に基づくラベルを貼り付けるだけで国際輸送ができます。
- 単電池(セル)=20W以下であり、リチウムの含有量が1g以下であること
- 組電池(バッテリー)=100w以下であり、リチウムの含有量が2g以下であること
リチウムイオンの種類
リチウムイオンには、リチウムイオンおよびリチウムメタルなどがあります。国連では、このリチウムの種類を番号で分類しています。
例えば、小型家電製品に含まれるリチウムや単独のリチウムイオンは、次の3つに該当します。「UN3480」の部分が重要であり、この番号と輸送方法(海上・航空等)、規格(ワット数)によって、下記で説明する梱包方法やラベル要件を細かく決めています。
- UN3480=リチウムイオンバッテリー
- UN3481=機器に内蔵されたリチウムイオンバッテリー
- UN3481=機器と同梱されたリチウムイオン電池
規制内容・リチウムイオン電池の国際輸送で考えること
それでは、国際輸送(海上・航空)するときに考えるべき点を具体的に確認していきましょう!
- 電池が国連38.3の輸送試験に合格していること
- 輸送ルール:IATA又はIMDGに準拠すること
- リチウムイオン電池の規格(ワット数)
- 同梱、内臓、単独の違いを理解
- 梱包方法、ラベル要件
1.リチウムイオン電池が国連輸送試験38.3に合格していること
まずは、輸送するリチウムイオン電池が国連輸送試験38.3に合格しているか?を確認します。これは、航空、海上、陸路に関わらず、国際輸送するときに必要な基準です。
38.3の試験内容は?
T1~T8までの観点で試験が行われます。
- T1 – 高度シュミレーション
- T2 – 温度試験
- T3 – 振動
- T4 – 衝撃
- T5 – 外部短絡
- T6 – 衝撃
- T7 – 過充電
- T8 – 強制放電
2.IATA又はIMDGに準拠すること
38.3の基準とは別に、輸送方法による基準があります。輸送方法とは、海上輸送、航空輸送、陸上輸送、鉄道輸送などがあります。危険性の観点から、航空機の輸送が最も厳しいです。
- 海上輸送の場合は、IMDGに従う。
- 航空輸送の場合は、IATA DGRに従う。
その他、特定の国(アメリカ)を輸送するときに求められるルールもあります。
- UN:国際連合勧告(危険物)
- ADR:ヨーロッパの陸上輸送
- 49 CFR: 米国内を輸送するときに必要
- RID:鉄道輸送をするときに関係
3.リチウムイオン電池の規格(ワット数、重量、数量)
リチウムイオンの規格(ワット数、重量、数量)なども重要です。
3-1.ワット数
ワット数
は、次の2つの数字が重要です。これら以下又は超えるときに梱包要件、ラベル要件等が変わります。
- 20Wの単電池(CELL)
- 100Wの組電池(BATTERIES)
ワット数の求め方は?
ワット数は、電力(W)=電圧(V)×電流(A)で求めます。
例えば、以下の製品は、12×30=360Wです。
3-2.重量
重量
には、航空と海上、陸上輸送では、次の数字が重要です。
- 航空輸送=5kg、10kg、35kg
- 海上輸送=30kg
- 陸上輸送=333kg
3-3.一つの梱包の入り数
航空輸送の場合
は、一つの梱包につき最大の数量が決められています。入り数を超える場合は、別の梱包箱に分けることが必要です。これらの基準は、ワット数によって変わります。
- 8個以上の単式電池又は、2個以上のバッテリー/1梱包
- 2つバッテリー/1梱包
- 機器に必要な数+2個のバッテリー/1梱包
4.同梱、内臓、単独の違い
リチウムイオン電池の「状態」によっても輸送要件が変わります。ここでいう状態とは、次の三つを指します。輸送予定のリチウムイオンの梱包状況を確認しましょう!
- 一つの梱包箱の中に「単独」で入っている状態(オーバーラップOK)
- 一つの梱包箱に他の物と「同梱」されている状態
- 機器の中に「内臓」されている状態
5.梱包方法、ラベル要件
リチウムイオン電池を国際輸送するときは、個別梱包及びオーバーラップ(個別梱包箱を入れる外箱)に指定のラベルを貼り付けます。貼り付けるラベルは、海上輸送、航空輸送、陸上輸送、リチウムの状態(単独、同梱、内臓)により異なります。
一つのラベルを貼り付けるときもあれば、複合一貫輸送を前提として、複数枚のラベルを貼ることもあります。ラベルの貼り付け要件は、Packing instructions(PI)に詳しく記載されています。
ラベル例:SP188 100W以下×海上、トラック、陸上輸送の場合
Packing instructions=SP188
ラベル例:100W超え×海上、トラック、陸上輸送の場合
Packing instructions=P903
ラベル例:SP188 100W以下×航空輸送×2つのバッテリ/1梱包
Packing instructions=P965
ラベル例:SP188 100W以下×航空輸送×10kg
Packing instructions=P965
ラベル例:100W超え×航空輸送×最大35kg
Packing instructions=P965
まとめ・必要書類とフォワーダーへの相談が重要!
実際に国際輸送をする場合は、フォワーダーから「SDS(安全データシート)」を求められます。フォワーダーは、このSDSの内容から輸送可否を判断します。したがって、リチウムイオン電池の輸送をする場合は、製造者や輸出者等から、この資料を取り寄せる必要があります。
他にもフォワーダーから様々な質問がされてようやく国際輸送ができます。通常の貨物よりも難しいため、ある程度の経験をつんでから取り組むことをお勧めします。
もし、ebay等の小規模輸出をしたい方は、ebayのリチウム電池梱包ガイドをご覧ください。DHLやFEDEX等も専門のリチウム電池梱包ガイドを公開しています。もし、リチウムイオンを海上輸送する場合は、必ず危険品(リチウム)輸送が得意なフォワーダー等に相談をしましょう!
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