海外からスニーカーを輸入するときの関税は、どれくらいになるのでしょうか? この記事では、スニーカーの関税率、関税額の計算ツールをご紹介しています。
この記事の要点
- スニーカーの関税率は基本6.7%、EPA適用で無税
- 少額輸入貨物の簡易税率は適用不可。
- 一万円以下免税ルールは一部適用
- 個人使用目的の0.6倍ルールも適用可能
- 革の有無により、関税率が全く異なる
スニーカーの関税率
スニーカーの輸入状況
2023年度のスニーカーの輸入状況は、次の通りです。
- 6402.99-010 40395265
- 6402.91-000 12220810
- 6402.20-000 646825
- 6402.12-010 575137
- 6402.12-090 616916
- 6402.19-000 3249683
- 6402.99-021 8940807
- 6402.99-029 3141784
- 6402.99-090 3990094
この記事では、最も数量が多い6402.99-010を基準に解説していきます。この一覧には、革靴は含まないためご注意ください。
関税率、よくある3つの誤解
スニーカーの関税率を調べるときに多い3つの誤解を解いておきましょう。
- 靴のブランドで関税率は変わらない。
- 購入するショップで関税率は変わらない。
- 靴を輸送する運送会社で関税率は変わらない。
1.靴のブランドで関税率は変わらない。
例えば、ナイキ、ニューバランス、FC-Moto、G.O.A.T、SAPPUN、VANS、コンバースなどのブランドによって関税率はかわらないです。
2.購入するショップで関税率は変わらない。
アマゾン、BUYMA、セカイモン、タオバオ、ebay、end、STOCKX、WIGGLE、SVD、Trekkinn、YOOX、hanon、SNS(Sneakersnstuff)、SHOPBOPなどのショップによっても関税率は変わらないです。
3.靴を輸送する運送会社で関税率は変わらない。
EMS、fedex、UPS、DHL等の配送会社によっても関税率は変わらないです。
靴の関税率とブランド、ショップ、配送方法に関係はないです。
スニーカーの関税決定要件
スニーカーの関税率は、次の3つにより決まります。
- 輸入目的
- 靴の原産国
- 靴に革の使用
1.輸入目的
輸入する目的が重要です。輸入目的とは、次の2つです。
- 個人使用目的
- 商売目的
個人使用目的とは、個人が個人のために使うために輸入することです。他方、商売目的とは、規模の大小に関わらず、スニーカーを販売する目的で輸入することです。例:メルカリ販売など
上記2つは、関税を計算するときの「課税価格」の計算方法に違いが出てきます。課税価格とは、関税率をかける対象価格です。例:一つ100円の商品に5%の消費税=100円が課税課価格
- 個人使用目的の課税価格=商品価格のみ×0.6倍
- 商売目的の課税価格=商品価格+配送料金+保険代金等の全ての合計額
つまり、商売目的で輸入する方が関税率等をかける対象の価格が大きくなり、納税額が上がる仕組みです。まずは、この輸入目的が大きなポイントです。
2.靴の原産国
靴の原産国です。靴の生産国により、優遇された関税率が適用されます。=EPA
2024年現在、日本とEPAを結んでいる国は、次の通りです。もし、あなたがこれらの国を原産とするスニーカーを輸入する場合は、一般の税率(WTO)よりも優遇された税率が適用されます。
2024年4月現在 | |
発効済(利用できる国) | シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP12、TPP11、日EU・EPA、米国、英国、RCEP(韓国+中国+アセアン+オーストラリアなど) |
交渉中 | トルコ、コロンビア、GCC、日中韓 |
その他(交渉中断等) | カナダ、韓国 |
靴の関税率と原産国の関係
2024年現在、靴(6402.99-010)は、基本税率20%、WTO6.7~8%、その他、EPA税率があります。
国名 | 関税率 |
メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、アセアン、フィリピン、スイス、ベトナム、ペルー、オーストラリア | 無税 |
CPTPP、EU、英国 | 2.9% |
RCEP(アセアン+オースト+ニュージーランド) | 6% |
RCEP(中国) | 6.5% |
RCEP(韓国)+日米貿易 | 除外 |
特別特恵国 | 無税 |
3.靴に革を使用している?
靴に革を使っているのか?
例えば、靴の甲のみ。本底のみと、一部に革を使っている時点で、一気に税率が変わります。
以上、3の点を総合して、スニーカーの関税率は決まります。
結局、スニーカーの関税率はどうなる?
一般品目の場合、輸入総額が20万円を超えるのか?で、簡易税率と一般税率の使い分けができます。
- 課税価格が20万円以下の場合=簡易税率
- 課税価格が20万円越えの場合=一般税率
しかし、スニーカーの場合は、簡易税率の適用はなく、すべて一般税率が適用されます。
スニーカーの一般税率
輸入価格、目的に関わらず、スニーカーには、一般税率が適用されます。一般税率とは、およそ10000品目から輸入する品目に最も適切な税率を選びます。(WEBタリフ又は実行関税率表を使用。
スニーカーの所属はわからない場合は事前教示
もし、商売目的等で継続的にスニーカーの輸入を考えている場合は「事前教示」を使い、正しいHSコードの特定をすることをお勧めします。他方、個人使用等が前提になる場合は、スニーカーの商品価格に約20%の諸税が発生すると考えておけばいいと思います。(革を一切使っていない前提)
スニーカーの関税の計算方法
それでは、これまでの内容を振り返り、個人使用目的、商売目的のケースにおける関税の計算方法を確認していきましょう!
- 個人使用目的の場合:海外の販売価格を0.6倍した価格×関税率=関税額と計算する。
- 商売目的の場合:スニーカーの価格+送料+保険料金の合計額に対して、関税率をかける。
個人使用目的で輸入するケース
- 原産国:ベトナム
- スニーカー価格:500ドル(50000円)
- 送料+保険代金:100ドル(10000円)
- 輸入目的:個人使用
まずは、個人使用目的で輸入です。原産国はベトナムなので、EPA適用で関税は0です。個人使用目的のため、送料等を除外した上で、海外価格に0.6をかけた価格が税金を計算する対象価格です。
- 50000(商品価格)×0.6(個人使用の減免)×0(関税率)=0(関税額)
- 30000(消費税の課税価格)×0.1=3000円(消費税額)
- 関税額:0円、消費税額3000円
商売目的で輸入するケース
- 原産国:アメリカ
- スニーカー価格:500ドル(50000円)
- 送料+保険代金:100ドル(10000円)
- 輸入目的:商売
アメリカとの間には、日米貿易協定があります。しかし、64類の靴は、関税上の恩恵はないです。=WTO税率を適用します。仮にこれを6.7%としましょう。次に目的です。このケースでは「商売」のため、スニーカーの価格に送料と保険代金を加えます。つまり、以下の式に至ります。
- 50000円+10000円)×0.067=4000円(関税額)
- 消費税の課税価格(50000円+10000円+4000)×0.1=6400
- 関税額:4000円、消費税額:6400円
スニーカーの簡易関税計算ツール
スニーカーの関税率を調べる簡易ツールです。こちらのツールは、一切の革を含まない、一般的なスニーカーを前提にしています。一部又は全部に関わらず、少しでも革が使われている場合は、全く違うため、十分にご注意ください。
なお、関税率は、2024年1月現在の値です。この先、毎年4月1日前後に、さらに関税率が下がる可能性があります。
よくある疑問
Q.一万円以下免税ルールは?
輸入価格の合計額が一万円以下の場合、スニーカーによっては、一万円以下免税ルールが適用されます。このルールは、一万円免税ルールの除外品、合計金額の理解と、個人目的と商用目的の課税価格の考え方の違いを正しく理解することが重要です。
例えば、海外のネットショップで日本円に換算後、これに0.6をかけた後の価格が10000円を超えないときは関税と消費税が免除されます。もし、一つの箱に複数個の商品が入っている場合は、合計価格×0.6が一万円以下であれば、関税と消費税は免税です。(個人使用目的での輸入)他方、商業目的の場合は、商品価格+送料+保険代金の合計額が日本円換算で一万円以下だと免税です。
ただし、靴の素材部分の一部にでも「革(レザー)」「スエード(合皮)」が含まれていたり、一万円以下免税ルールの除外品目の靴に該当したりする場合は、関税は免除されません。一万円以下免税ルールは、商売目的、個人使用目的のどちらにも適用できます。(課税価格の計算方法に違いがあるため注意)
根拠法:関税定率法14条の無条件免税
- 個人使用目的:海外小売価格に0.6をかけた後が一万円以下
- 商売目的:海外小売価格+送料+保険料の合計額が一万円以下
Q.関税の払い方は?
関税の支払い方法は、海外通販による輸入か? 又は、コンテナなどを使った一般的な輸入か?などで違いがあります。
海外通販の場合は、郵便やフェデックス、DHLなどの業者が立て替え払いをした後、荷物を届けるときに回収します。=自宅で配送業者から荷物を受け取るときに、関税や消費税を支払います。
一方、一般輸入の場合は、通関業者が関税や消費税を立て替え払いした後、指定の日数後に輸入者から受け取る形が一般的です。
海外通販/小口輸入の場合
輸入する額が20万円以下の場合は、郵便による課税処理又は、フェデックスなどのインテグレーターによる課税処理がなされた後、自動的に荷物が届きます。荷物の受け取り時に、関税と消費税を支払います。(発生している場合のみ)
一般輸入の場合
を使い輸入申告をする場合は、業者が一旦、関税や消費税を立て替えます。その後、数日以内に立替金の請求が来るため支払います。なお、この立て替え金は、いわゆる輸入諸掛り(配送料や通関料などの請求)とは別に来るため、注意しましょう!
Q.革製品は?ブーツ等は?
64類の3項~5項は、スニーカーの一部に革が使われている場合に当てはまります。この場合は、関税率が一気に上昇するため注意します。革靴に関する関税は、次の記事をご覧ください。
Q.関税割当(TQ)
革製品には、関税割当の仕組みがあります。関税割当とは、一定量までを低率の税率。超える量を高い税率にすることです。革関連製品には、この関税割当の仕組みがあります。詳しくは「関税割当入門」をご覧ください。
Q.消費税はかかりますか?
関税定率法14条の無条件免税に該当しない限り、輸入品にも「輸入消費税」が発生します。これは、関税が無税の場合でもかかるため注意しましょう。
Q.アメリカのアマゾンで購入した場合の関税は?
アメリカのアマゾンで購入した商品は、商品代金の決済時に、日本側の関税等も一緒に支払う仕組みがあります。
Q.靴の関税は、いくらからかかる?
例えば、記述の一万円以下免税ルールが適用される革靴であれば、商売目的、個人使用問わず「課税価格が1万円を超える部分」から関税が発生します。*個人使用と商売目的の課税価格は違う。
Q.革靴の関税が高い理由は?
大人の諸事情によるものだと思います。事実かは別として、一説には、江戸時代の皮産業から由来するともいわれています。=既得権益
Q.関税を回避する方法は?
関税を回避する方法は脱税です。インボイス等を偽造等などをして嘘の申告をするのは犯罪です。やめましょう。ただし、合法的に削減する方法はあります。それがかねてから説明をしている「EPA」の活用です。
Q.靴を修理する場合の関税は?
靴が壊れてしまい、海外の工場に「修理目的」で輸出。これを日本に再輸入する場合の関税は、どうなるのでしょうか?
これは関税定率法第11条の修理のための輸出手続きをすることで、一年以内に再輸入する限り、日本側で関税等が発生しないようにできます。ただし、輸出時に「確認申告書の作成」が必要になるため、専門の業者に依頼をする必要があります。
Q.輸出するときに関税は発生する?
関税とは、輸入時に発生する物です。気にするとしたら、輸出先国の「輸入関税」です。2020年現在、輸出関税は、中国やロシアなどの一部の国、かつ、一部の戦略物質に限られています。
Q.海外旅行時のスニーカーの関税は?
海外旅行から帰国するときのスニーカーの関税は「海外旅行時の関税制度」が適用されます。これは、この記事の冒頭で説明する簡易税率や一般税率とは違います。最も大きな特徴は、20万円までの免税枠です。個人使用目的で持ち込む限り、持ち込み手荷物の合計が20万円までは免税です。
また、海外で購入した物を現地で履いてしまえば、この20万円の免税枠に入れなくてもよくなる可能性があります。
Q.海外のスニーカーショップの探し方は?
海外のスニーカーショップは、アマゾンやグーグルショッピングなどを活用すると便利です。
まとめ
- スニーカーの関税率は6.7%前後
- EPA協定を締結している国はほぼ無税
- ただし、オーストラリア、欧州、TPP加盟国の産品は無税から除外されている。
- 課税価格が一万円以下であれば関税はかからない。
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