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返却予約不可でのデマレージ・ディテンション課金は違法?米FMC v Hapag-Lloyd判例と実務対応

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返却予約不可でのデマレージ・ディテンション課金は違法?

  • 返却予約枠が不足する日に課されたD&D課金は「不合理」とされ、課金停止と822,220ドルの制裁金が科された。
  • 当事者は最終的に2,000,000ドルの民事制裁金で和解し、FMCが承認した。
  • 争点は返却機会の有無とincentive principleの適合性であり、異議申立ては予約枠・試行ログ等の事実で組み立てる。

結論(要旨)

この事案では、空コンテナ返却の予約(appointment)が不足していた状況で課されたディテンション(detention)料を「不合理(unreasonable)」と認定し、課金の停止命令と民事制裁金が科されました。

FMC(Federal Maritime Commission)の初決定(Initial Decision, 2022/4/22)は、14件の故意かつ認識ある違反を認定し、合計822,220ドルの制裁金と「返却予約が不足する日はD&D課金をしてはならない」という差止命令を出しました[F2]。その後、当事者は2,000,000ドルの民事制裁金で和解し、FMCもこれを承認しています(2022/6/8)[F1, F5]。

初決定(ALJ)要旨:返却不可時の課金は不合理

何が争点だった?

争点は、Shipping Act 46 U.S.C. §41102(c)(just and reasonable practices)とFMCのD&D解釈規則(incentive principle)が示す「課金は貨物フローを促進する場合のみ合理」という原則が、返却予約枠が不足して返却できない日にも適用されるかでした[F4]。

調査では、返却先ターミナルにサイズやタイプごとの返却枠が足りず、モーターキャリアが努力しても返却できなかった日の課金が認められるかどうかが焦点となりました[F3, F2]。

つまり、港にコンテナを返却しようとしているのに、その返却スペースが足りなくて返却ができない。返却できないのは荷主の責任ではないから、そもそもディテンションを課金するはおかしいよね?と、争っています。

事案の流れ

FMCは2021年11月10日、Docket 21‑09の調査命令(Order of Investigation and Hearing)を出し、返却予約がない、または不足している状況での課金実務の適法性を審理対象としました[F3]。

2022年4月22日、FMCの行政法判事(ALJ)は初決定を出し、14件の違反を認定。1件あたり58,730ドル、合計822,220ドルの制裁金を命じるとともに、「返却予約が不足する日はD&D課金をしてはならない」とする差止命令を出しました[F2]。

その後、当事者は2,000,000ドルの民事制裁金を支払うことで和解し、FMCはこれを承認しました(2022年6月8日)[F1, F5]。

判断の骨子(違法課金と認定した理由)

FMCの行政法判事は、FMCのInterpretive Rule(2020年5月18日、Federal Register)に基づくincentive principle(インセンティブ原則)を重視しました。つまり、D&Dは貨物の引取りや返却を促すインセンティブとして機能している場合にのみ合理的と評価されます。

例えば、返却予約が100枠しかない日に125本を返却するよう求められても、物理的に不可能であり、課金しても意味を持ちません。そのため、このような状況での課金は合理性を欠きます。初決定は、予約枠不足を無視した一律課金や、内部ポリシーの不備、担当者教育の不足を、具体的証拠に基づいて指摘しました[F2, F4]。

失敗・3つの原因

第一に、返却予約の「不足」や「サイズ別枠の不一致(タイプ不整合)」といった運用上の現実を考慮しない審査手順がそのまま残されていたことです。

第二に、異議申立て(dispute)の審理において、返却できなかった実情(当日の予約枠、シャットアウト、ゲート通過実績など)を一体的に確認する内部プロセスや記録の仕組みが整っていませんでした。

第三に、D&Dの目的適合性(incentive principle)を評価する社内基準が曖昧で、現場担当者の判断が「返却枠の有無」よりも「自由時間超過の有無」を優先してしまった点です[F2, F4]。

貿易実務者が学ぶべきポイント

1.返却予約の証拠を数値で残す

ターミナルごとの当日枠数やサイズ・タイプ別の枠、予約画面のスクリーンショット、電話記録、シャットアウト通知の時刻を時系列で保存します。こうすることで「返却機会がなかった」と証明しやすくなります[F2, F3]。

2.返却試行の記録を統一する

ドライバーが予約を試みた時刻、代替ターミナルへの問い合わせ、ゲートでの拒否記録(システム出力や警備員メモ)をテンプレート化し、異議申立ての資料として添付します[F2]。

3.請求確認の社内ルール

請求が来たら、その日の枠供給量、空コンの在庫状況、キャリアのシャットアウトカレンダー、端末発表との食い違いをチェックリストで確認します。課金がインセンティブ原則に合っているかを評価します[F2, F4]。

4.契約とメールの工夫

サービス契約や案内文に「返却予約不可時は課金免除」と明記し、紛争時の証拠提出期限や方法も決めておきます。さらに、英語の異議申立てメールの定型文を用意しておくと便利です[F4]。

5.運送業者との連携強化

ドレージ会社に、予約画面キャプチャや電話記録の保存、返却不能の即時通報を義務づけ、インセンティブ原則に沿った反証資料を共同で作成します[F2]。

行動チェックリスト

  • ターミナル別・サイズ別の返却枠スクリーンショットを日次保存(取得時刻入り)
  • ゲートTurn‑Away記録、予約試行ログ、電話・メールの連絡票をテンプレ化
  • 請求受領から5営業日以内に異議申立て草案を作成し、目的適合性の観点を明記
  • サービス契約に「返却不可時の課金否認」条項と証拠提出のプロトコルを追記
  • 社内教育:Shipping Act §41102(c)/Interpretive Ruleの要点と事例共有

インサイト(ここが特に重要!)

D&Dは「急がせるための料金」であり、返却機会がなければ目的を果たせません。本件の学びは、違法課金の主張ではなく「返却機会の不存在」を事実で積み上げることです。

予約枠、シャットアウト、ゲート実績、電話記録を揃えた異議申立ては、FMCの判断枠組みに直結し、過大なD&Dの減免・撤回を現実的に引き出します[F2, F4]。

要点まとめ

  • 返却予約不足日にD&D課金は不合理。差止と822,220ドルの制裁金[F2]
  • 当事者は2,000,000ドルの民事制裁金で和解、FMCが承認[F1, F5]
  • 審点は「返却機会の有無」とincentive principleの目的適合性[F3, F4]
  • 異議申立ては予約枠・試行ログ・ゲートTurn‑Away等の事実で組み立てる[F2]

Factリスト

※本記事は法律的助言ではなく、貿易実務の参考情報です。

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