貿易事務の仕事に資格
は必要なのでしょうか?
資格といっても種類は様々。どれが役に立つのでしょうか。これから就職、転職で貿易事務を目指す方。既に貿易事務として働いていてさらなるキャリアアップを目指したい方。そんな方にどの資格を取得すれば良いのか、必要な順にご紹介していきます。
貿易事務で必要な資格(貿易の資格一覧)
- TOEIC
- 貿易実務検定
- 通関士
- 日商ビジネス英語検定
- 銀行業務検定 外国為替
- 国際航空貨物取扱士
1.TOEIC
(就職/転職★★★★★ 昇進★★★★★)
貿易をする上で必要となるのが英語力です。貿易事務では実際に会話する機会はほぼないものの、ある一定の英語力を求められます。自身の英語力を示すために企業から求められるのがTOEICのスコアです。スピーキング、ライティングのテストもありますが、まずはリスニング、リーディングから始めるのが良いでしょう。
目安となるのがTOEIC600点。600点あると、ある程度の英語の知識はあると企業は安心することができます。大手や外資系の企業の場合700点が必須です。英語力に自信があります、と面接時に言うには800点。書店ではありとあらゆる種類のTOEIC対策本を見つけることができます。様々な対策アプリも無料で取得できます。
独学でも十分に高得点を取得する為の知識とテクニックを得ることが可能です。しかし自身の力だけではスコアが伸び悩む方には、通学でのTOEIC対策講座の受講も有効です。問題には傾向があります。また時間管理も高得点を狙うには大切なポイントです。専任講師からこの2点を徹底的に指導されることで壁を打ち破ることもできるでしょう。
英語の資格=TOEICといえるほど、日本ではメジャーな資格です。就職、転職だけではなく、キャリアアップを目指す方にとっても必須な資格です。
- 主催/運営:一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
- 受験料:5,830円(税込)
- 実施時期:年10回(2月、8月以外)
- 試験時間:リスニング45分、リーディング75分
2.貿易実務検定
(就職転職★★★★☆ 昇進★★☆☆☆)
貿易業界で働いた経験のない方にとって最初の壁になるのが専門用語の多さです。様々な種類の書類に港湾での独特な言い回し。銀行や保険会社との取引など、一般には馴染みのない単語に最初は戸惑うでしょう。基本的な専門用語を取得し、そして貿易の流れを把握するのに貿易実務検定試験は有効です。
初心者向けのC級から、貿易業界のエキスパートともいえるA級の3つの難易度があります。C級、そして中堅向けのB級は独学で取得可能です。書店で購入できる対策本を繰り返し勉強することで十分に対策ができます。主催者である株式会社マウンハーフジャパンでは過去問も販売しているので、過去3回分も解けば良いでしょう。
しかし、A級は独学で取得するにはかなりの努力が必要になります。国家資格である通関士資格よりも難易度が高いとさえ言われています。通学や通信教育を利用するのが良いでしょう。
昇進の条件にこの資格が必須項目になっていることはあまりありません。就職、転職時に優位に働きます。従って、新卒の方にはC級、転職ではB級を取得していると企業から好評価をもらえるでしょう。
- 主催/運営:日本貿易実務検定協会、株式会社マウンハーフジャパン
- 受験料:C級5,980円、B級7,150円、A級12,324円
- 実施時期:C級 年5回(3月、5月、7月、10月、12月)、B級 年3回(3月、7月、12月)、A級 年2回(7月、12月)
- 試験時間:C級 貿易実務90分、貿易実務英語45分
- B級 貿易実務・貿易マーケティング105分、貿易実務英語60分
- A級 貿易実務・貿易マーケティング120分、貿易実務英語70分
3.通関士
(就職転職★★★☆☆ 昇進★★★★☆)
貿易業界唯一の国家資格である通関士は、貿易業界で働く人にとって取得していて損はない資格です。輸出入するときに必要なのが税関と関税です。輸出入が禁止または制限されている商品。関税を抑える為に有効な様々なルール。そして輸送や保管する為の規則を網羅しています。平均合格率が10%前後の難関ではあります。
しかし、取得していると間違いなく就職、転職時に優位に働きます。過去問をベースに、その時々の時事が問題として取り上げられます。過去問を10年分、最低5回は解くと良いでしょう。最大の難関は通関実務です。奇をてらった問題が出題されることも見られます。関税法を正しく理解し、電卓を正確にかつ素早く使いこなすことが要求されます。
対策本も書店で見つけられます。しかしより確実に、早く合格する為には通信教育や通学講座の受講が有効です。通関実務の問題では一つの問題の占める得点が大きく、一問間違えるとそれだけで合格が不可能になる場合もあります。問題をただ解けるようになるだけではなく、人に解説することができるほど理解する必要があります。独学でその域までたどり着くにはよほどの努力が要ります。
時間を有効活用する為にも、ある程度の自己投資、つまりスクール等で講師からの指導を受けるのが良いでしょう。
- 主催/運営:税関
- 受験料:3,000円
- 実施時期:年1一回(10月)
- 試験時間:通関業法50分、関税法等100分、通関実務90分
- 合格率:14,6%(2019年)
4.日商ビジネス英語検定
(就職転職★★★☆☆ 昇進★☆☆☆☆)
より実践的な英語力を示す為に良いのがビジネス英語検定です。通常言われる英検とは異なり、ビジネスのシーンに特化しているのが特徴です。貿易にまつわる海外との取引時に使われる表現、メールの書き方などが出題されます。貿易実務に関する問題もあります。例えばパッキングリストやインボイスなど、実際に使用される書類を模しての問題です。その為、英語力だけではなく貿易に関する実務の知識を示すにも良い資格です。
3級から1級まであり、書店では対策本も種々取りそろえられています。昇進等で問われる英語の資格といえばTOEICが主流の為、特に就職、転職時に有効です。学生ではなかなか業務そのものをイメージすることが難しい為取得が特に困難でしょう。難しい級を目指すには、やはりスクール等で専門の講師から指導を受けるのが無難です。
- 主催/運営:商工会議所
- 受験料:3級4,200円 2級5,240円 1級7,330円
- 実施時期:3級/2級 毎月第3金曜日 1級年2回(2月、10月)
- 試験時間:3級30分 2級40分 1級90分
5. 銀行業務検定 外国為替
(就職転職★★☆☆☆ 昇進★☆☆☆☆)
海外との貿易に銀行は切っても切り離せません。海外への代金の支払い、また受取に銀行が大きな役割を果たします。物理的に距離が離れている、莫大な金額を取り扱うからこそ、独特なルールと書類が存在します。貿易業界の仕組みを分かりにくくしている大きな要因の一つです。銀行にまつわる書類や決裁の方法を知っていることは貿易業界の重要な部分を把握していることと同じです。
銀行業務検定とは、銀行等の金融機関で勤務する人がどの程度の専門知識を持っているか、どの程度の能力があるかを測る資格試験です。その中の外国為替では、LCや海外送金に関する知識を問われます。3級、2級がありますが、貿易業界で働く人にとっては3級の取得で十分でしょう。対策本と過去問が販売されています。3級の場合、その本での独学で十分に対応できます。
物流関係の分野の業務ではあまり使用頻度はありませんが、LCを日常から取り扱うメーカーや商社での勤務を希望する方にとって、この資格で得られる知識は有効です。転職を優位に進める、他の人と差をつける為にも取得していて損はない資格です。
- 主催/運営:銀行業務検定協会
- 受験料:3級4,400円 2級6,600円
- 実施時期:年によって異なる
- 試験時間:3級/2級 180分
- 合格率:3級38.6% 2級29.0%
6.国際航空貨物取扱士
(就職転職★☆☆☆☆ 昇進★★★★★)
特に航空貨物を取り扱う企業で勤務を考えている方に必須なのが国際航空貨物取扱士、IATAディプロマの資格です。基礎コース、危険物コース、そして危険物資格更新コースの3つがあります。航空貨物を扱う代理店では2人以上の資格取得者が在籍していることが要件にあげられるほど、航空業界ではメジャーな資格です。昇進の必須条件にあげられていることが多くあります。
特徴は全世界共通の問題である、ということです。つまり、試験は全て英語で出題されます。航空貨物の運送状や輸送スケジュールの作成、運賃計算等の知識が問われます。危険物コースでは2年ごとの更新が必要になります。受験資格は特にありません。しかし、受験するにはJAFA(一般社団法人航空貨物運送協会)に受講登録をする必要があります。
受験申し込みをするとテキスト一式が郵送されます。それを使用し試験対策をします。テキストを元にきちんと勉強をすれば合格は難しくありません。ネックになるのは全てが英文であることと受験費用が高額であることです。航空業界に勤めてから、会社負担で受験する人が大多数を占めるのがこの資格の特徴でもあります。逆にいうと、転職時にこの資格を取得していると他の人とは大きく差をつけられるということです。航空業界での勤務を切望している方は受験を検討すると良いでしょう。
- 主催/運営 : 一般社団法人 航空貨物運送協会
- 受験料 : 基礎コース 47,000円 危険物コース42,500円
- 実施時期 : 基礎コース年2回(3月、9月)
- 危険物コース年4回(3月、6月、9月、12月)
- 試験時間 : 基礎コース180分、危険物コース210分
- 合格率 : 基礎コース60% 危険物コース40%
まとめ
貿易事務を目指す方にとって資格は必ずしも必要ではありません。業務は実際に働き始めてから覚えることももちろん可能です。就職、転職時に資格が重要になるのは書類審査の際です。書類審査に通るだけの要素が他にある方には資格は必要ありません。しかし少しでも良い条件の企業で働きたい方、書類審査になかなか通らない方はご紹介した中から最低でも2つは資格取得していた方が良いでしょう。(★の数が多いほど必須、必要であることを意味します)
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