- ネットでよく目にする「オススメの両替屋はココ❤️」情報は、果たして本当なのか?
- 損しないための基本事項「日本では両替しないこと」
- 帰国時、余ったバーツを日本円に戻すのもタイでした方が良い
- 「じゃあ、タイに着いたら、どこでどのように両替すればいいのか?」
- 「じゃあ、しかるべき両替屋ってどこだ? 教えろ」
- プラトゥナム地区に複数ある「スーパーリッチ」各店舗等を調査
- その日、各店のレートはいかほど?
- 「タニヤスピリット」が営業するタニヤ通りに到着。いま、真相に迫る!
- 目立たないけどシッカリ営業中。穴場の両替屋「Purple Drugs」
- 赤いカラーが目印。インディーズ系両替屋「Value Plus」
- 哀愁のテンカウント! タニヤスピリット王座陥落
- 総括「街中では、どこで両替しても大差はない。無理せず近場で」
ネットでよく目にする「オススメの両替屋はココ❤️」情報は、果たして本当なのか?
その実、タイの方が日本よりも「決済の電子化」は進んでいる。たとえば屋台でさえ、店主と客でQRコードを示し合うことにより、即座に「銀行口座から銀行口座へ」送金し、支払いを完了させていたりする。
しかも、この送金手数料はなんと無料の使い放題。いかにタイが官民一体となって電子化を進めたのかを窺い知ることができる。巨大な利権にしがみつき、手を変え品を変え、庶民からむしり取ることばかりを考えるジャパンとは、えらい違いだ。
さて、これらの恩恵に与ることができるのは、現地タイの銀行口座を保有する者だけだ。仕入れのために滞在するノービザ旅行者の身分では口座開設できないから、やはり日本円をタイバーツへと物理的に両替する必要がある。
諸兄も日本出発前、リサーチと称して「バンコク 両替 オススメ」などのキーワードでグーグル検索し、ヒットしたブログなどを参照しては
「ほォ、この両替屋がお得でオススメなんだな。メモメモ」
タイ到着後は得意げに、その店に向かったことがあるやもしれぬ。
しかしながら、それらの情報を鵜呑みにするのはお待ちいただきたい。なぜなら私自身が「お得どころか、むしろ損した」両替をこれまで何度も繰り返し、ある日、そのバカさ加減に気付かされた苦い経験があるためだ。
ひと昔前とは異なり、スマホの機能が向上し、ネット通信環境が日進月歩で便利になっている現在。それらを駆使することで最適な両替屋を見つけ出すことは容易くなっている。
その観点からは、本稿はあまり実用的ではないことをお断りしておく。それよりも、知的好奇心を満たすこと、或いは「自分の足で真実に迫る大切さ」をテーマに、筆者が私立探偵として調査した事実を報告したい。
損しないための基本事項「日本では両替しないこと」
初めての海外旅行者などに時折見かけるのが、「外国に到着した時に現地通貨がないと困るじゃないか」と心配のあまり、日本の銀行支店や空港内で両替してしまう慌てん坊さんだ。
これは、最もやってはいけない両替だ。
理由は簡単、レートが激渋だから。これは需要と供給になぞらえると理解し易い。日本国内で保有している最も多い通貨は日本円だ。つまり、円の在庫がたっぷりある。
一方、外国通貨はずっと少ない。このような市場では、「日本円を支払うから希少なタイバーツを頂戴」とお客に言われたら、店主はシメシメとばかり高く売りつけるだろう。タイでは4円で買える1バーツが、日本では5円弱だったりする。
帰国時、余ったバーツを日本円に戻すのもタイでした方が良い
帰国時に使いきれなかったタイバーツが財布に残っていることがある。このとき、タイ出国前と帰国後、どちらで日本円に戻すのがよいか?
これも答えはタイだ。さきの理屈でいくならば、日本国内でタイバーツを円に両替するのがお得にならなければオカシイはず。ところが日本の銀行は、ここでもレートを激渋にしており、タイの両替屋に軍配が上がるのである。
外国人旅行者がわんさかやって来るタイでは、町中の至るところに簡易店舗で済むワンオペ両替屋もあるほどに商売の費用対効果が高いから、それなりの高設定レートが可能だ。他方、そうでない日本では、ピンハネを大きくしないとやってられないからではないか、というのが私の考察だ。客入りの良いパチンコ屋なら高設定台を置けるが、そうでない店ならボッタクリ設定にせざるを得ないことによく似ている。
いずれにしろ一番良いのは、余ったバーツは次回の訪タイ時にのため保管しておくこと、だ。
「じゃあ、タイに着いたら、どこでどのように両替すればいいのか?」
一例を挙げる。こうすることで、両替差損を最小限に抑えることができるはずだ。
①タイの空港に到着した後、制限区域内にある両替屋はスルーする。入国手続きを終え、制限区域を出た後に見つけた両替屋で「その日1日分」ほどの現金のみを両替する。
→「早く現地通貨を入手しなければ」という旅行者心理に付け込み、制限区域内の両替屋はレートを悪く設定している。初心者狙いのダックハンターである。区域外は誰でも両替できるので、まだマシなレートが設定されていることが多い。さりとて、空港内の両替屋は街中と比べるとレートを悪くしているため、タクシー代や夕食代などの必要最低限のみ両替しておく。
②しかるべき両替屋に行く
→ここでようやく、諸兄の滞在目的に合わせた予算分の両替を行う。
「じゃあ、しかるべき両替屋ってどこだ? 教えろ」
本稿のメインテーマに触れるに際し、諸兄はすでに「バンコクで両替するならタニヤスピリットがオススメ」という噂を見聞きしたことがあるかもしれない。或いは「スーパーリッチが高レートだ」という噂だったかもしれない。
オイラがやらなきゃ、誰がやる
南国の青空が鉛色の曇り空へと豹変する。いつ何時スコールが襲ってくるやもしれぬ雨季のある日、私はこの「噂」が真なりや否や、身をもって証をたてんと欲し、よって、それら両替屋を巡る実地調査へと出発したのである。
「タイ仕入れで泊まるなら、オススメはこのホテル」〜たまに行くならこんな宿〜
プラトゥナム地区に複数ある「スーパーリッチ」各店舗等を調査
「お金を扱うなら大金持ちを連想させる名前にしようぜ」そんな着想から名付けられたであろう商号は、いかにもタイだ。地元タイ人も「両替屋ならスーパーリッチだね」と答えるほどに馴染み深いためなのか、いつしか日本人にもその名が轟くようになった。
しかし、タイに訪れたことのある諸兄の中には、「何か変だぞ」と気付かれた、目敏い方もおられることだろう。
そう、タイには「スーパーリッチ」と名のつく両替屋がいくつもあるのだ。まるで往年のJ-POPグループ「オメガトライブ」に、杉山清貴やら1986やらがくっついて複数その名を持つように、私が知る限りでも5つもの商号が存在するのである。
- スーパーリッチ
- スーパーリッチ・タイランド
- グランド・スーパーリッチ
- OH! RICH スーパーリッチ
- スーパーリッチ・タートル
このように、「スーパーリッチ」の知名度にタダ乗りせんとする同業他社の乱立を招いている。私は疑問解消のため、店頭に立つスタッフにインタビューを敢行した。
探偵
「あなたの店と向かいの店は同じ会社? どっちがオリジナルなの?」
スーパーリッチ店員
「別会社だし、うちがオリジナルだ。見ろ、この1965を! 歴史が違うんだよ」
スタッフが着用するポロシャツに縫われた1965の数字をポンポンと誇らしげに指差し、俺たちが元祖だと胸を張るスタッフ。しかし、向かいのスーパーリッチ・タイランドの店員にも同じ質問をぶつけてみたところ、やはり「俺たちがオリジナルだ」と力強い回答。
まぁ、質問の趣旨を理解していなかったのかもしれぬが……。誰も類似商号に係る不正競争なぞ気にしていないし、何が問題なのかも想起できない。これがタイでの真実だろう。
その日、各店のレートはいかほど?
それでは順次、交換レートがいくらだったのかを発表する。数字は、1万円を出して手にすることのできるバーツである。
1.スーパーリッチ(プラトゥナム地区、写真A) | 2485バーツ |
1-2.スーパーリッチ(ザ・マーケット店) | 2480バーツ |
2.スーパーリッチ・タイランド(写真A) | 2485バーツ |
2-2.スーパーリッチ・タイランド(ゲイソンプラザ) | 2480バーツ |
3.グランドスーパーリッチ(写真A) | 2485バーツ |
4.OH!RICH スーパーリッチ(エンポリアム店 写真B) | 2480バーツ |
5.スーパーリッチ・タートル(チットロム駅天店 写真C) | 2475バーツ |
さすがに写真Aの3店舗は全く同じレートであった。しかし、①–2と②–2から分かるとおり、この店舗からほど近い同系列店では若干レートを悪くしていた。
これは、黙っていても人が集まるモールなどで営業しているからであろう。駅構内にある⑤の亀さんは、地域の最悪レートであった。
調査からは、同じ地区、同じ両替屋でさえ、微妙にレートを上げ下げしていることが判明した。需要と供給の、神の見えざる手が働いているのだ。A・スミスもウンウンと頷いていることだろう。
さて、いよいよ本命のタニヤスピリットが営業するシーロム地区へ向かうことしよう。タニヤ通りは、BTSならばサラデーン駅、MRTならばシーロム駅が最寄りだ。
「タニヤスピリット」が営業するタニヤ通りに到着。いま、真相に迫る!
ここは日本人御用達、Nightの歓楽街である。日中は、ケバケバしい日本語の看板が目に飛び込んできて、ここが東京新宿・歌舞伎町なのかタイなのか、分からなくなるほどだ。夜の帳が降りると、「アナター、ドーゾー、見ルダケー」と輪唱するキャストの姿を大量に見せられることになる。
さて、このタニヤ通りにある「タニヤスピリット」は、長らく日本人の間で “バンコク最強両替屋” の称号を恣にした。メインは酒屋なのだが、両替商としての顔を併せ持つ。鼻毛を読まれた日本人紳士が夜の蝶へと貢ぎ込むであろうバーツ札を、大量配給してきた重鎮でなのである。
私はこの店をあえて素通りし、タニヤ通りで営業する別の両替屋から調査することにした。絶対王者が提示するレートはいくらであり、果たしてチャンピオン防衛となるかどうか。最後の最後に答え合わせしたかったからである。
目立たないけどシッカリ営業中。穴場の両替屋「Purple Drugs」
これまで、タニヤスピリットが主役級の知名度を誇ったため、通行人レベルの存在感しか得ていなかったこの薬局も、実は日本円に両替してくれるのだ。
BTSサラデーン駅を降りてすぐタニヤ通りがある。通りを入ってすぐ右側で営業中のタニヤスピリットに皆が吸い込まれていくので、通りの奥まった場所に鎮座するこの隠れキャラに気づくことは、やや困難だったかもしれない。
しかし、大手と異なり、「パスポートを提示しろ」「そこにサインしろ」などのウルサイことを言わないこの両替屋は非常にスムーズで、使い勝手が抜群だ。
そして、肝心のレートだが、次のとおりであった。
2,480バーツ
首位に立つ、先のスーパーリッチ各店と5バーツ(約20円)差の暫定2位レートを叩き出したのである。
赤いカラーが目印。インディーズ系両替屋「Value Plus」
タニヤ通りの中程にも、独立団体系の両替屋がある。こぢんまりとしているため、危うく見逃してしまうかもしれない。
えてして、インディーズ系両替屋はレートが悪い傾向にあるのだが、果たしてその結果は……
2,480バーツ
こちらも同率2位キープである。独立団体のパイオニア戦志として、「ショア」と意地を見せた格好だ。
ではいよいよ、王者タニヤスピリットの門を叩こう。
哀愁のテンカウント! タニヤスピリット王座陥落
「たのもォ〜Krap」
入店してみた。酒屋であるタニヤスピリットの店内には、酒を買い求める人よりも圧倒的に両替に訪れる客が多い。奥のレジ横には、番号札を持ち、順番を待つ客の姿がある。
そしてカウンターには、本日のレートを示す紙が掲示されていた。
2,475バーツ!
私は黙祷を捧げた。王者が首位に10バーツも差をつけられ、破れ去ったからである。
かつて、ものの本だったかネット記事だったかは忘れたが、それを読んだ私もタニヤスピリットがバンコク一の高レートであると信じて疑わず、わざわざスクンビットの投宿先から「運賃」と「労力」を費やして両替に赴き、「俺は得しちゃったぜ」と勝利の美酒に酔いしれていたことがあった。
ところがある時、今回と同じような疑問に湧き立ち、レートを調査したことがあった。その時は、タニヤスピリットが1万円で「5バーツ(当時は約15円)」ほどの差をつけて首位であった。
ということは、10万円換金しても50バーツ(約150円)の差だ。一方、タニヤ通りまで赴くには電車を使っても往復で90バーツ(約270円)ほどかかる。しかも、小一時間と数千歩の自力歩行を必要とする。
願いましてェは、50バーツ引くことの90バーツは、赤字が40バーツ也……えっ?
全く間抜けなことに、わざわざ赤字になるための両替をせっせと行っていたことに気付いたのだ。骨折り損のくたびれもうけ、墓穴、てめぇのバカさ加減には父ちゃん情けなくて涙出てくらァ……。あらゆる言葉が自らに浴びせられたのである。
そして今回の調査だ。結果、両替額が2,475バーツであったことで、遂に “バンコク地域一番店” の看板も傾いたのであった。
総括「街中では、どこで両替しても大差はない。無理せず近場で」
調査からは、十万円程度の両替なら、どこで行っても大差ないことが判明した。また、タニヤスピリットが、常に王者のレートを提供している訳ではないことも分かった。
日本人の多くが投宿するスクンビット地区には多くの両替屋があるため、わざわざタニヤ通りまで出かける必要がないのである。いや、むしろ時間と労力が失われる結果となるだろう。
限られた日程でバンコクに滞在するのであれば、サンダルをつっかけて行ける程度の近場の両替屋で、サクッとバーツを入手するのが「オススメ」なのであった。
んっ、「どうしてもお前のオススメを教えろ」と申されるか。そうさのぅ、スクンビット地区なら、エンポリアムのすぐそばにある、このインディーズ系両替屋でしょうな。
レートも概ね良好。待ち時間もなく、パスポート不要で手続きもライトだから。ただし、この情報が真実かどうかは、ご自身の目と足で確認されたい。
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