今、あなたは、いろんな商品を見ながら市場を歩いています。「おっ、このTシャツいいね」手に取り感触を確かめ、値札を探す。ところが値札がない。他の商品を見ても値札が付いていない。「一体、いくらなんだ!?」そう思ったとき、ニコニコしながら店主が近づいて来ます!
さあ、交渉開始です!
「How much?」
そこで、この記事は、バンコクバイヤー歴10年の私がバイヤーになるたのポイントとバンコクで買い付けをするコツをご紹介していきます。もし、買い付けをするポイントのみを知りたい場合は「こちら」をクリックしてください。
一体、100バーツで何が買えるのでしょうか?
タイでバイヤーになるポイントと買い付けのコツ
バイヤーになるためには?
バイヤーとは、お客さんの希望の商品を探して買い付ける仕事です。では、バイヤーに必要なものは、なんでしょうか?やはり、それは「好奇心」だと思います。
自ら市場へ出向いていろんな商品を見て、売れるかどうか検討し、提案もしくは実践してみる。売れればその商品をすすめ、売れなければその原因を考え、次なる商品を見つけに行く。この繰り替えしです。自らが選んで、お客さんに提案した商品が売れたときの喜びは、この仕事ならではの幸せです。
トラブルはつきもの。それを解決してこそ、評価が違ってくる。
バイヤーの仕事の流れをご説明します。まずは、お客さんからの買い付け依頼から始まります。メールやスカイプで色、サイズ、枚数、見積もりなどをやり取りし、決定したら市場へ行きます。まれに日本に帰国して、会議に呼ばれることもあります。
市場を探し回り希望のモノがあれば買い付けます。買い付け後、業者に荷物を取りに来てもらい、発送して完了です。日本に荷物が到着したら、依頼人から連絡をいただきます。これが基本で、スムーズに仕事が完了した例です。
しかし、実際は、何かしら問題が起きます。
- 「売っている商品の枚数が足りない」
- 「売り切れで、入荷に2週間かかる」
- 「黒の生地が品薄で、価格が上がった」
これらの問題に対処できるのか?がお客さんからの信頼を勝ち取れるかの分かれ目です。やはり、どんな商売でも、お客さんの願いをかなえることが大原則です。そのためにも、地道に市場を歩き回って、市場ニーズの把握と商品情報のインプットを大切にしています。
短く、簡単に。英語での交渉は伝わることが大切
市場の商品には値札が付いていないため、交渉による購入が一般的です。もちろん、日本語ではなく、最低限、英語が必要です。ただし、欲を言えば、やはり、タイ語がベストです。英語でも問題はありませんが、細かいニュアンスが通じないことが多いです。タイ人と話す英語は、なるべく短く、単語だけにするのがポイントです。
例えば…..
客「Could you please give me a discount?」などの丁寧な表現は不要です。代わりに「Discount Ok?How much?」の一文で伝えるのが効果的です。
英語での交渉は、文法通りにうまく話すことではありません。相手に伝わることが何よりも重要です。“Could you please”と言っている欧米人は見たことがありません。
ホームページやブログで、自分らしさをアピール
では、バイヤーになるには、どうしたらいいのでしょうか? 一番効果的なのは、ホームページを製作することです。
しかし、その前にすることがあります。いろいろな市場の商品を見て買って、実際に自分で売ってみてください。E‐bayなど、海外からでも出品できるオークションを利用して、どのような反応があるかを確かめてみるのがいいです。
売れればまた買い付けし、他にも売ってみたい商品があれば出品。その繰り返しで、自分で買って売るバイヤーとなってもいいでしょう。より多くの人から注文を取りたいのであれば、ブログやホームページにて商品が売れたことをアピールしてください。
ホームページには、何かしら“武器”になるモノがないと反応はありません。ましてバンコクには、バイヤーがたくさんいます。同業者との差別化を図る上でも“自分らしさ”を大いにアピールすることがポイントです。
どこに何があるか?市場を熟知していないと同行は出来ない。
買い付け代行以外にも、日本から来るお客さんを市場へ案内する「同行」などもバイヤーの仕事です。
どの市場に何があって、どれぐらいの価格で買えるかをインプットしておきます。巨大市場のチャトチャックへ行って、どこに売っているか迷っているようでは失格です。チャトチャックに商品がなかった場合、どの市場へ行けばあるかなど、お客さんの欲しい商品を探して見つけることが第一です。
また、市場を歩いていれば、様々な商品が目に留まります。お客さんから“この商品はどうですか?”との質問にも答えられるように、どの商品も「触り」は知っておくべきでしょう。「このビーチサンダル、タイ人の若い女性が履いているのを結構見ましたよ」このような感じです。商品を知らずして同行は出来ません。
タイ語が出来ると心強い。とお客は思っている?!
お客さんとの同行で信頼を勝ち取る一つのポイントは、タイ語の交渉が出来ることです。現地の言葉を話せるのかで随分と印象が違います。お客さんは、自分が言いたいことをタイ語で伝えてくれる。これほど心強いものはありません。
お店の主であるタイ人も、細かいニュアンスの英語が出来ない人が多いため、タイ語での交渉は、大助かりです。実際、タイ語で交渉すると、タイ人はホッとした顔になります。また、交渉中、お客さんには聞かれたくないこともあるかと思います。実は、お客さんの目の前で、タイ人店主との間で、次のようなやり取りをしていることもあります。
バイヤー:「とにかく、ああだこうだうるさい客なんだ。今回だけ頼むよ」
バイヤー:「えっ、仕入れるのを忘れたの?じゃあ、客には入荷しなかったって言っておくよ」
稼ぎたいなら、市場を歩き回ること。偶然の出会いが待っている!?
バイヤーとして、市場を知っている。いろんな商品に精通している。タイ語も出来る。あとは、稼ぎ方を知っていることが重要です。この点が一番難しい課題ですが、先にも述べたように、まずは市場を歩き、自分で売って見ることです。そこに何かしらのヒントが隠されています。
また、毎日の市場散策により、ひょんなことで仕事が舞い込むことも多いです。タイの市場には、たくさんの日本人観光客も来ています。買い付け中、同じ店でばったり出会い、仲良くなる。そこから仕事につながるなどもあります。
また、現地の親しい日本人が勤める旅行代理店から“タイ語出来るから、市場を案内してくれる?”と持ち掛けられたり、バイヤーの横のつながりで“古着に詳しいから、お客さんに同行して”など頼まれたりすることもあります。このように様々なケースから仕事につながることが多いです。常連のお客さんから、新しいお客さんを紹介されたときは、とてもうれしく感じられるはずです。やはり、人とのつながりが仕事を生みます。
売れないときこそ、バイヤーの力の見せ所
もし、あなたが買い付けた商品(代理購入)が売れないときはどうなるのでしょうか? お客さんの希望する商品を買い付けるわけですから、売れなくてもバイヤーが悪いわけではありません。しかし、そこはお客さんとしても一言あるでしょう。「もっと他に商品を提案してくればよかった!」このようなことを言われることもあります。中には「やってられない」と、契約を打ち切ったこともあります。
やはり、本来は互いに協力して、今後どうするか意見を出し合い続けていくことがベストです。「お店の商品ではなくて、試しにオリジナルオーダーをしてみてはどうか?」「日本人だけでなく、E‐bayなどで外国人に売ったらどうだろう」売れないor売れた、そんなこんなで10年以上お付き合いしているお客さんもいます。売れないときこそ、バイヤーの腕の見せ所です。
買い付けのポイント
次に実際にタイで買い付けをするときのポイントをご紹介していきます。
市場の商品は、値札なし。
タイでは、衣料品、植物、陶器、民族衣装など、あらゆる商品が「市場」で売られています。日本では、市場と聞くと、証券市場を連想します。しかし、タイを含む東南アジアでは、市場とは、店が連なり、所せましと商品が販売されている所です。(以下の写真のイメージ)この市場をめがけて、現地の人、観光客、そしてバイヤーなどが訪れます。
タイ国内の「市場」には、どこにも値札はありません。日本のように商品と価格がセットになっていないため、交渉により価格が決まります。つまり、交渉が上手な人は、相場よりもお得に購入ができる一方、交渉下手な人は、相場より高く買わされます。(交渉は英語)
商品を購入するときの代表的な流れは、次の通りです。
客「How much?」
店「200B」
客「Discount please」
店「180B」
客「No, 150B」
店「Oh No. If you buy 2, 1 is 150B ok」
客「Just a moment」
交渉するための英語は、難しくありません。単語だけでも十分です。むしろ、英語よりも「いくらまでディスカウント出来るか」がポイントです。私の経験上、日本人の場合、200Bのモノを180Bと言われたら買う人が多いです。
一方、欧米人などは、自分の欲しい価格でないと「No」と拒否します。当初の価格が200Bの物であれば、120B、もしくは100バーツ迄下がるなら買おう!と考えているようです。これがインド人になると、ほとんど交渉がまとまりません。いきなり「50B」と極端な価格を伝えるので、店主も首を振り「帰ってくれ」と手で追い払います。
交渉は勝負でもありますが、楽しむことが大切です。「130B迄落ちなかったか。まあ、いいか」この位の気持ちでいいと思います。
自分の欲しい価格で購入するには?複数購入が前提
お店や商品にもよりますが、1枚の購入では、値切り価格が決まっています。タイ人は、目先のお金を欲しがる人が多いです。それも多いに越したことはありません。1枚買うよりも2枚3枚買ってくれる客の方が好きです。3枚買えば1枚の価格が2枚買うよりも下がることが多いです。そこを狙いましょう。
ただし、いきなり「3枚買うから安くして」と言わずに、まずは1枚から交渉しましょう。何度か値下げの交渉をしたところ「ああ、もう下がらないか」と感じたら、2枚買うからいくらにできるかと交渉します。この場合、店主も「おっ、それならもう20Bディスカウントするか」と聞く耳を持つことが多いです。まさに心理戦です。
お店側で二枚購入での価格を提示されたら、考え込むフリをして「やっぱり1枚でいい。あと10B下げて」と伝えます。すると、お店の半分は、この値下げに承諾してくれることが多いです。
ポイント ディスカウントは、二枚以上の方がやりやすい!
価格はお店次第であり、外国人によっても違う。
タイの市場には、タイ人価格と観光客価格の2つがあります。日本人は、外国人の中で一番お金持ちと思われています。お店側は、その人の身なり、(時計やスニーカーなど)をよく観察しています。日本人は、総じて身なりが良いので、当然、観光客価格を提示します。ある店主曰く「タイ人と日本人との提示価格の差は、おおむね50B‐70B」とのことです。
ただし、今では、その価格差は縮まり、むしろ、インド人への提示価格が最も高くなっているそうです。インド人は「とにかく値切り方が半端ない!失礼極まる。やってられない」と店主が嘆くほど、値切りにうるさい人が多いようです。
例えば、元々の価格が200Bであって、それを120B迄下げてもらえば、値下げとしては成功しているといえます。しかし、これがインド人であると、200Bのものを平気で50Bと伝えてきます。はっきりと言って商売の邪魔です。ある店主は、インド人に対しては「Not Discount 250B Only」といいやり過ごすことが多いそうです。
ポイント 各国バイヤーの特徴から、訪日外国人に向けての戦略を見直してみよう!
ぼったくり店はしつこいので、無視しよう!
市場の中では、決して買ってはいけないお店があります。「見るだけ。安いね」と日本語で声をかけてくるお店、気軽に肩をたたいてくるお店などが怪しさ満点です。絶対、無視をしましょう。少しでも、買うそぶりを見せると、後々大変です。良心的なお店ではないので、値段をふっかけてきます。
ぼったくり店は、通常であれば、50BほどのTシャツを300Bなどと提示してきます。これに対して「いらない」と答えると、計算機を客に渡し金額を打ち込ませてきます。つまり、ぼったくり店は「あなたの希望する値段を電卓に打ち込んでみて~」と促すわけです。このときに「100バーツ」などと打ち込むと、店員は、驚いた顔をして「ダメだ。250Bだな」などと伝えてきます。
結局、値段が合わず、お店から立ち去ると“Wait! Wait!”と、しつこくまとわりついてきます。それでも買わないと、逆切れするお店もあります。特に、歓楽街にあるナイトマーケットのお店に多いです。
バイヤーと観光客では、当然のように価格が違ってくる。
タイには、世界各国のバイヤーが買い付けに来ます。最初は、彼らもお店と交渉しますが、次回からは、ほぼ卸売価格で買えます。お店も1枚2枚の観光客よりも、大量に買ってくれるバイヤーと取引する方がいいでしょう。
例えば、1枚250BのTシャツ、これを10枚以上買えば1枚150Bに。バイヤーの場合、だいたい120B迄下がります。但し、100枚買っても1枚120Bで、1枚50Bにはなりません。お店には「原価」があり、利益を確保しなくてはならないからです。ただし、急に1枚だけ日本へ送りたいときは、事情を説明すれば、1枚のみでも120Bで売ってくれます。お店も長く取引してくれる客は、大切にしてくれます。まさに商売の基本です。
他の客には売らない、バイヤー専用の商品がある。
の中にある古着店を覗いてみると、まだ大きなビニール袋の中に詰め込まれている商品があります。いわゆる新入荷商品です。この商品は、顔馴染みの客(バイヤー)のための商品です。
チャトチャック市場にあるいくつかのお店は、バイヤーと取引しています。これらのお店に「タイ人や観光客に売らないの?」と聞いたところ、次のように答えました。
「大量の商品を見せて、1枚や2枚しか買ってくれない客と何度もやりとりするのはめんどうだ。それにディスカウントしてくるし」やはり、お店の主としても、50枚や100枚買ってくれる方が商売は楽しいでしょう。だからこそ、観光客とバイヤー向けの態度には、明らかに大きな違いがあります。
もし、あなたがバイヤーとして、このようなお店と長く付き合いたいなら、下手でもいいからタイ語を話すことが重要です。タイ人を尊重し、タイに溶け込むことです。これにより、彼らの接する態度が違ってきます。客というよりも、友人のような関係で接してくれます。
相手の身になり考えよう!「俺は客だ」と横柄な態度を示せば、店主の気持ちが緩むことはない。つまり、いつまでたっても観光客価格で購入することになる。
オリジナルオーダーをする場合、必ずサンプル品を確認すること。
お店にある商品以外にも、オリジナルオーダーを頼めます。それを目的として、お店と取引を始めて仲良くなることがあります。1枚2枚では無理ですが、だいたい1種類50枚からオーダーを引き受けてくれます。色違い、サイズ違いでもOK。まずは1枚サンプルを作ってもらい、仕上がりを確認。修正箇所を伝えてから、50枚ほど製作してもらいます。
しかし、お店によってはサンプルを作らず、いきなり50枚製作してしまう所もあります。こういう店は外国人との取引に慣れてないので、オーダーをする際は、サンプルを1枚見せてくれとはっきり伝えます。いきなり50枚見せられて、使いモノにならないと思ったとき“大赤字”が脳に焼き付きます。
発送手続きは、どうなってるの?
市場で買った商品は、どのようにして日本へ送ればいいのでしょうか? これは、特に難しいことはありません。チャトチャックなら、市場の中にDHLやFedExを取り扱う業者がいます。そこへ荷物を持って行き、日本への発送手続きをします。
発送方法は、航空便と船便があります。船便の場合、到着に3週間以上かかります。業者とのやりとりは「Send to Japan」とか「How long day?」など簡単な英語で大丈夫です。大まかな流れは、次の通りです。
- 商品を購入
- 発送業者へ持ち込むまたは、取りにきてもらう
- 使う業者と配送種類を伝える(DHLかFedExなどか。飛行機か船か。)
- 商品を梱包する
- 伝票に送り先を記載する
- インボイスを記載する
- 梱包された荷物の重量を図り、料金を払う
- 伝票を受け取る。
- 完了。
発送業者によって、料金や到着日数が違う。
各業者事に料金も違ってきます。一番高くて早いのがDHLです。自社機を持っているので、その日の夕方迄に発送手続きを済ませれば、夜にはタイを出発し、翌日早朝には日本の空港に到着しています。その後通関を終え、DHLから届け先の業者へ荷物を引き渡し、次の日には商品を受け取れます。一刻も早く受け取りたい場合は、DHLがいいでしょう。
「時間がかかっても良いから安くしたい」場合は、DHL以外か郵便局からの発送がいいです。
フェデックスの場合
FedExは、自社機を持っていません。そのため、航空機の荷物が一杯であるときは、次の便を待ちます。それにかかる時間が1日か2日ほどです。また、日本での通関にも時間がかかります。これらの理由から、おおむね到着迄に5‐7日を要することが多いです。(船便であれば、3週間ほどかかります。)
郵便局の場合
郵便局の場合は、民間配送業者のように商品を引き取りに来てくれません。大量の荷物があっても、自分で郵便局へ持って行き梱包します。重量によっては、郵便局の方が割高です。郵便局は、1枚‐10枚位の商品を送るのに向いています。これくらいの少量であれば、フェデックスなどを使うよりも割安です。商品の重量や到着日数などを考えて、業者か郵便局かをお選びください。
まずは、タイの市場を歩いてください。肌で商品を感じてください。素敵な出会いがあります。
まとめ
- 市場の商品には値札が付いていない。交渉で価格が決まる。
- 交渉を楽しむことで、買い物がもっと楽しくなる。
- バイヤーには特典もある。そのためには、お店と仲良くなること。
- 商品を発送する際は、金額、到着日数を検討して業者を選ぼう。
基幹記事:貿易会社の設立ガイド、タイで仕入れて日本で売る。
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